ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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獣人国編~救出作戦~

スロア領

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ヒュマノ聖王国から北西に2ケメル程離れた場所にあるスロア領には、救出された子供獣人が次々と運ばれてきており、後方支援の者達(ルーシー姉妹含む)や、獣人国から選抜された騎士達(ハナが指揮する『犬姫』含む)が対応にあたっていた。

だが4000を越える数の子供が続々と運ばれて来る為、現場はある意味戦争状態であった。




『『『『『ズルッ!』』』』』

「この子をお願い!喉に何か詰まらせてるみたいなの!吐き出させてあげて!」
「この子を頼む!」
「こっちの子は比較的衰弱していないわ!
後の事よろしくお願い!」
「おい、この子の呼吸が弱まってきている!<身体強化>魔法を掛けてやってくれ!」
「前身ずぶ濡れの子が2人居るんだ!温めてやってくれ!衰弱が激しい!」

『『『『『ズブッ!』』』』』


子供達を抱えた冒険者達が続々と影から姿を現す
冒険者達は子供達を後方支援の者達に託すと、再び影に潜りヒュマノへと戻っていく。


「リナ!衰弱の軽い子は"軽症"へ!
ノンは何やら誤飲した子の処置を頼む!
ガドラは男衆を呼んでありったけの湯を沸かしてもらえ!
ローザは【薬師】のお婆を呼んできてくれ!」

「「はい!」」
「おぅ!」
「畏まりました。」ドンッ!


スロア領の新しい領主となったデミは、作戦に参加しているミミとララ以外の『新鋭の翼』パーティの者達と、【戦闘執事(バトラー)】のローザに指示を出していた。

つい最近まで冒険者をやっていたお陰で指示出しに澱みは無く、パーティや執事の動きにも無駄が無かった。





「ハ、ハナぁ、どうしよう…"中症"の子達が急に熱出して…さ、冷ませば良いのかな…?」

「ま、待ってサクラ!先ずは火を焚いて周りを温め「ハナ!こっちの"重症"の子、嘔吐しちゃった…」
「あぁ、どうしよう…この子震えが止まらない…」
「だ、誰か!<キュア>を使える者は居ないか!?顔色がかなり悪い子が居るんだ!」
「ま、まずい…魔力が尽きてきて…回復が追い付かない…」


今日この日の為に訓練してきた騎士達ではあったが、あまりの規模で皆が皆、何処から手を付けたら良いか分からずパニックに陥り掛けていた。

始まる前は「訓練通りにやれば大丈夫」と、皆に鼓舞していたハナであったが、運ばれてきた子供の数が1000を越えた辺りから既に一杯一杯であった。


「ま、先ず皆お、落ち、落ち着いて…
い、一旦状況を整理して…」


ハナは頭の中が半分真っ白になりながらも何とか指示を出そうとするも、言葉が出てこない様子。

すると


「獣人のお嬢さん、さっきから働き詰めでしょ?落ち着く為にも少し休んでらっしゃいな。」

「え?」


声を掛けられてハナが後ろを振り返ると、領内の各所から集まってきたご婦人方やその娘達約200人であった。

その後ろからは薪や農具、大鍋等の道具を担いだ男衆がぞろぞろとやって来ていた。

ハナに声を掛けてきたのは、その婦人方の中でもリーダー格のおばちゃんであった。


「それじゃあ私らは"中症"~"重症"を。
娘っ子達は"軽症"とその獣人の嬢ちゃん方に付いて補佐に回りなさい。
男衆は子供達を症状別に搬送。
それと後で来るお婆の為に大鍋で湯を沸かしつつ周囲を温めな。
子供達が出した吐瀉物は土ごと回収して1ヶ所に纏め、焼却なさい。
さぁ始めましょ!
子供達はまだまだ来るし、処置は時間が肝心!手早くやりましょう。」

「「「「はい!」」」」

「「「「おぅ!」」」」


リーダー格のおばちゃん指示の下、婦人方やその娘達、男衆はキビキビと動き出した。
但し、後方支援としてやって来た獣人の騎士達から仕事を奪う事無く、補佐に回りつつ協力する形を取った。


「良い?熱が出てきたら周囲を温めてあげるの。
そしたら後でお婆が特製の薬水を作ってくれるから少しずつ与えてやってね、ここまで衰弱していたら水を摂る事すら大変だから。」

「は、はい、ありがとうございます!」


「子供が嘔吐したら吐瀉物が詰まらない様に横向きにしてあげて…そうそう。
それと無理に吐かせようとしない事、それで少し様子を見てあげて。
容態が変わったら教えて頂戴。」

「は、はい!」


「「魔力が尽きた方、マナポーションをお渡ししますので手を上げて下さーい!」」


と、後方支援に来ていたルーシー姉妹は、マナポーションが詰まった木箱を運び込んで来た。

先程から後方支援の者達が中毒症状を起こしている子供達に<キュア>や<ヒール>、身体強化魔法等を掛け続けている為、魔力切れを起こす【魔法使い】や【神官】等が続出していた。


「【魔法使い】の方々、私達も回復に加わります!」

「魔力切れを起こしてしまった方々はマナポーションの補給と休憩に入って下さい。
『無毒の陣』!」


ラベルタは"中症"~"重症"の子供達が横たわる一帯に解毒効果のある陣を発動。
中毒症状を起こして顔を青白くしていた子供達の顔色が次第に良くなっていく。

と、同時に魔力切れを起こした【魔法使い】や【神官】の者達と入れ替わる。


「凄ぇ…流石『鬼神姉妹』だぜ…」

「『黒髪戦鬼』のお2人、少しの間お願いします。」

「「は、はい…」」


ルーシー姉妹は(ファン限定の)通り名で呼ばれる事にむず痒さを感じつつも、自身の務めを果たしに掛かる。




「次の子供達がやって来たぞ!!」


最前に居るデミがそう叫ぶと、再び現場に緊張が走る。
今度は追加で100人程の子供達が運び込まれてきた。


「…はぁ、はぁ、この子を…頼む…」
「…っしょっと…くそっ、足が痙攣してきたな…」
「…流石に全力疾走3往復目ともなるとキツいな…」


子供達を担いでやって来た冒険者達は息を切らせてる者や、膝に手を付き少し立ち止まっている者も居る。

流石に片道2ケメルとは言え、3往復すれば疲れが出てくるのは仕方の無い事である。

作戦に参加している冒険者は1000人なので単純に4往復する必要があるのだが、影移動を発動する為にその場に待機し、道を作っている冒険者を鑑みると5往復する必要がある。

途中で待機している者と交代している者も居るが、全体的に疲労の色が見え始めていた。

そんな中

ズルッ

『追加の子供達だ、宜しく頼む。』

「お、おぅ…」


赤黒い腕を生成し、1人で6人の子供獣人を担いだノアが姿を現す。


「ノ、ノア君大丈夫…?
もう軽く20往復はしてるハズだけど…」

『問題無い、時間が差し迫ってるからこれ位やらんと間に合わん。』


ノアはそう言いつつ周囲の状況を観察する。
疲労の色が見える冒険者と魔力切れを起こしている後方支援の者達を見るや、ノアはアイテムボックスに手を突っ込む。


『冒険者の皆さん、疲れて食い辛いとは思いますが、僕が作った携行食を渡しておきます。
体力とスタミナの継続回復効果があります。』

「お、ありがたい…」
「ありがとう。」
「頂くわ。」

『あとラーベ、ラベルタ、これを。』


そう言ってノアは集まってきていたルーシー姉妹に10個の『指輪』を手渡した。


「へ?」
「ふぇ?ノ、ノア様何を!?」

『何か勘違いしてる様だが、これは余剰魔力を溜め込んでいた指輪だ。
魔力切れ起こしてる冒険者達に配ってやってくれ。』

「あ…そうですよ『ボスッ』へぶっ。」


何やら勘違いを起こしたラーベに肘鉄を食らわせるラベルタ。


『それじゃあここの事宜しく頼むぞ。
"予定だとそろそろ"なんでな。』バチンッ!

「「は、はい!」」


ブォンッ!シュバッ!


ノアは腰に差していた荒鬼神を外したかと思うと、ヒュマノ聖王国のある方角へ向けてぶん投げて転移を開始した。
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