ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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獣人国編~救出作戦~

再びスロア領

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場面は移って再びスロア領。

未だヒュマノ聖王国から救出された子供獣人達が次から次へと運び込まれて来ていた。

だがスロア領に暮らす婦人方の的確な指示、指導を受けた男衆やハナ含む獣人国の騎士達の頑張りにより、当初あった様な大きな混乱も無く作業が続けられていた。



「ほぅれ、お嬢ちゃん達、追加の"果実水"が出来たよ。
胃が極端に弱ってるから"重症"の子には2倍、"中症"の子には4倍に希釈して飲ませてあげてねぇ。
一気に飲ませちゃ駄目よ、数分~数十分置きにね。」

「「「はい!」」」


スロア領に暮らす【薬師】のお婆特製の"果実水"が完成した様だ。


お婆による見立てでは、子供達の栄養状態や中毒症状等、何もかもが悪い状態であるのだが、特に脱水症状が酷いとの事だった。

当初【魔法使い】や【神官】が<キュア>を行い解毒を試みたのだが多少緩和された程度で、長年に渡って蓄積された毒素を完全に抜くには体外に排出するしか無いらしい。


その第一段階として作られのが、お婆特製の"果実水"である。


体外に排出しようにも脱水状態では出る物も出やしない。
だからと言って只の水を飲ませてもなかなか吸収されずにそのまま排出されるだけである。

なので少量でも果実を加え、糖分や栄養素を吸収すると同時に水分も吸収させようと言う訳である。


「体ん中に十分水が満たされれば、上がっておった熱も次第に下がるじゃろう。
後に童達の意識がハッキリしてきたら本人から調子を聞き、良好そうならいよいよ毒抜きじゃて。
獣人国に"ジョナゴル"言う品種のリンゴ売っとるじゃろ?
【薬師】的見解じゃが、あの品種が一番毒抜きには打って付けじゃ。」

「「「は、はい!」」」


騎士達は【薬師】のお婆が言った内容を聞き逃さない様に真剣に聞いていた。

スロア領で一時的ではあるが子供獣人達を受け入れる事になるが、その世話の大半は騎士達や、国から派遣された者達が見る事になるのだ。
真剣に聞くのは当たり前な事である。


そのやり取りを遠巻きに見ていた若き領主デミ・スロアはホッと胸を撫で下ろしていた。


「ふぅ…この手の問題に関して専門家であるお婆が来てくれて助かった…」

「何言ってるのですか若様、あなたの指示があったからですよ。」


つい最近までスロア領の元領主であったコモン・スロアの代わりに領地経営をしていた【戦闘執事】のローザがデミの手腕を褒めつつ歩み寄って来た。


「なに、この程度の事が出来なくては領地経営等夢のまた夢だ。
取り敢えず当初よりは余裕が出て来たな…
リナ、ノン、ガドラ、助力感謝する。」


手助けしてくれた『新鋭の翼』パーティの面々に感謝を述べるデミ。

そんなデミを驚嘆の表情で見るローザ。


(あ、あの…
父親の悪い所全てを受け継いだ様な…
傲慢で、自信過剰で、褒めなければ機嫌を悪くし、少しでも褒めたら30倍の文字数で肯定し続け、人が話題の中心に居ると心底不機嫌になり、決して感謝の弁を述べる事の無かったあのデミが謙遜しつつ人に感謝するとは…)

「う"ぶっ…(吐き気)」

「ど、どうしたローザ!?何か最近おかしいぞ!?」

「あ、いえ、若様があまりにも気持ち悪いもので…」

「ど、どういう事だ!?」

(((分かる。分かるよローザさん…(リナ、ノン、ガドラ))))


10日以上前、"亡くなった父親に代わり領主になるべく領地に戻る"、と言う様な内容の文が届いた時、ローザは机に突っ伏したと言う。

"今まで何とか回して来れた領地経営が終焉を迎える"と覚悟を決めていたのだが、久しぶりに相対したデミは別人かと言う程に性格が変貌していた。

デミと共にやって来た『新鋭の翼』の面々からざっくりとではあるが、王都で何があったのか聞いてみると、皆一様に身震いさせ"今までの行いを改める程の途轍も無く恐ろしい経験した"と言う。

たまに"何かの記憶"が呼び起こされるのか、寝室から叫び声が聞こえた後、汗だくとなったデミが這い出て来る事があるが、本人は何があったか決して話してはくれなかった。

どうやら御前試合で戦った1人の少年が改心の切っ掛けになったらしい。
まさかその少年が今回の作戦の発起人だとは思わなかったが。

(先程何度か姿を見たが…何か赤黒いオーラを発してて…6本腕?
少し近より難い感じがしたが、兎にも角にもこの作戦が終わったら何処かで御礼を言わなければ…)

と、ローザが心の中でノアへの感謝を伝えようと決心した時だった。


「あ、ヒュマノに掛かってた海霧が晴れてってる…」
「予定よりも早くない…?」
「と言う事は作戦終了か…
…あっ!冒険者達が戻って来るぞ!」


ヒュマノ聖王国に掛かっていた海霧が晴れ、正門から仕込んだ商隊が撤退していく。

それと時を同じくしてヒュマノ聖王国へ向かっていた冒険者達が続々と戻ってきていた。


「作戦遂行ご苦労様です。
作戦に参加して下さった各【適正】の方々、点呼を行って人員の確認をお願いします!」


1000人ともなると人数確認も容易では無い為、各々確認作業を行う様に促すデミ。


ズズンッ!「さ、着きましたぞ。」

「あ、ありがとうございます。」グルッ


ヴァンディットとブラッツを抱えた諜報部のにゃんこさんがスロアの地に降り立つ。


「あの、何方かノア様をお見掛け致しませんでしたか…?」

「122、12じゅ…いや、見ていない…」
「ミミとララと共に子供を抱えてた所は見たが…」

ザザッ!

「あ、あの3人ならまだ子供が残ってたので海霧が晴れるギリギリ前にヒュマノに戻ってったぜ…!」

「えっ!?」
「マジかよ!」
「じゃあまだ3人はあそこに…?」


その場に居る者達全員がヒュマノ聖王国に視線を送る。
そこには海霧が晴れ、ヒュマノに建つ巨大な城塞都市が月明かりに照らされて妖しく光っていた。





ズモモ…

「「「「「「ん?」」」」」」


ヒュマノ聖王国の巨城を見やっていた一同だが、その後方に広がる大海原から何か巨大な塊が近付いていきている事に気付き、そちらに目をやる。

恐らくこの中で一番目が利くであろう【戦闘執事】のローザはその正体に気付く。


「…雲?」






~2分程遡った王城・ツェドの部屋にて~


「さて、海霧が晴れてきよったが、救出の方はどうかなっと…」

キィ…

扉を開け、バルコニーに出たツェドは、欄干に手を付き市街を眺め見る。


「ほぅほぅ、こりゃまた綺麗さっぱり連れてって…いや、まだ数人残っとるの…
…ありゃあ変な気配を出しとる赤い坊主じゃないか…
どうやら子供を見捨てれんかった様じゃな。
うむむ、ここから出られんから手助けのしようも…
ん?何じゃありゃ…」


高層に居るツェドは、ふと東側に見える大海原へと目をやると、海上に青紫色の光を放つ人影と、それを中心に海面から積乱雲の様な物が立ち昇っている光景が目に入った。


「……っ!?」


何が起こっているのか分からず、ツェドはその光景をただただ見守る事しか出来ずにいた。







~ヒュマノ聖王国から3ケメル離れた海上~

バチッ!バヂヂヂヂヂッ!

ズドボボボボボボボボッ!


「全く、ノア君は連れないなぁ。
"海は私の領域"なんだから相談してくれても良かったのに。」


青紫色に発光する人物は、ノアが今回の作戦について相談が無かった事に少し不満げな様子であった。

ゴボッ!ドボボボボボボボボッ!

不満を漏らしつつも左手を動かし気流を操作、右手を動かして海水に干渉して膨大な量の水蒸気を発生させていた。


「まぁ、ずっと忙しそうにしてたから仕方無いか。
でもこの作戦の終了目安が"海霧が晴れるる時刻まで"は流石に厳しいわよ…
自然相手じゃ思い通りに事は運べないものよ。
だからせめて私みたいに"天候を操れる者か、自然現象に干渉出来る者"を1人位は入れといた方が良いと思うな。」
 
ズモモァッ!

この場に居ないノアにそう言いつつ、海洋種の王リヴァイアは、ヒュマノ聖王国に向けて膨大な量の水蒸気の塊を発射したのだった。
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