ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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獣人国編~森の番人~

コウカサスオオカブトムシ

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「えーっと、魔蛸には"コウカサスオオカブトムシ"の体液で作った硬化作用のある状態異常矢で…『バシュッ!バシュッ!』
ダックス憤怒には"タシナメクジ"と"宥メダカ"から作成した鎮静効果のある状態異常矢で『ギリリ…バシュッ!』っと。」

ヒュドドッ!ギィイイッ!パキパキッ…!
スドッ!グルルォアア…アア…?


エスメラルダが放った状態異常矢を受けた魔蛸は、徐々に体が硬化していき、ダックス憤怒は落ち着きを取り戻して足元をフンフンしていた。



『コウカサスオオカブトムシ』…文字通り"硬化させる"成分を持った昆虫。通常は防御力を上げる薬品に使用されるが、副作用として柔軟性が失われるので<物理耐性>のあるモンスター等に有効。

『タシナメクジ』…鎮静効果を持つナメクジ。少し炙れば効果が強まる。

『宥メダカ』…鎮静効果を持つメダカ。調合の際は最低2匹以上を使用する事。



「よし!爺ちゃん達、今の内に仕留めて来て貰える?」

「ちと待ってくれぃ!少し時間が掛かる!」
「数が多いいのぅ!」
「どんどん沸いてきよる!」

「私が行こう!」ダンッ!


ズドッ!ギュォオオッ!?

ゾリッ!グォオオッ!!


体が硬化し、身動きが取り辛くなった魔蛸の弱点である眉間を一突きしたマドリックは、そのままの勢いで、鎮静化状態となったダックス憤怒の首を大きく斬り裂いた。


ズンッ、ズズンッ!

バチャチャッ…

「「「御美事っ!」」」


手際良く2体を屠ったマドリックに賛辞を贈るドワーフ3人組。


(正直な所、あのレント・レアナが相手だからこの場に居る全員が総動員で討伐にあたる事になると想定していたが、当初のノアの目論見通り、私らは奴等が出現させたモンスターの湧き潰し程度に留まっている…
ノアの奴、この短期間で"中のアイツ"を顕現させるまでに至ったか…
それよりも気になるのが、今現在レアナを蹂躙しているグリードと言う竜人だ…
あれは…恐ろしい存在だな…)


マドリックが向ける視線の先では、レアナとグリードが戦いを…いや、蹂躙が繰り広げられていた。





ドシュッ!ドシュッ!ドシュッ!

ギュルリッ!『『『ブチブチッ!』』』

〔ふっ!ぅうううっ!!〕ブォンッ!

ガジッ!ブチィッ!

〔ガァアァアッ!!〕


現在グリードは、仰向けに倒れたレアナの上に馬乗りとなり、一方的に蹂躙していた。

地面から高速の木の根が幾本も飛び出してグリードを襲うも、更に高速で動かしていた尻尾で絡め取られ、引き千切られる。

その後、イカの踊り食いの様に、器用に尻尾の先端にウネウネと動く木の根を持っていくと、モリモリと食していた。

木の根による攻撃では埒が開かないと察したレアナは、右腕を高速で振り、グリードに攻撃を
仕掛けるも、頬当ての様にグリードの顔を覆っていた龍鱗の下から凶悪な口が現れレアナの腕を囓り止めると、そのまま肩口から引き千切ったのである。


《五月蝿い。》ビョルルンッ!ガギッ!

〔……!!?……!!〕


尻尾を振り、三股に別れた鉤爪状の尻尾先端がレアナの顔面を捉える。


ガキッ!ガシッ!ミチミチミチミチ…

グギギギギ…パキパキッ…


レアナの胸の辺りにある巨大な魔石を掴むと、恐るべき力で引き剥がしに掛かる。
それと同時に、掴んだ顔面から木の軋む様な音が聞こえ、徐々に潰れていく。


ブチブチブチィッ! 

〔……ッ!…ォ…ッ!『グジャッ!ブチッ!』

ガリッ!ゴリッ!バキュバキュ…


体から魔石を無理矢理引き千切られ、首から上を潰され、千切られ、全てがグリードの胃へと収まっていく。


ギュルルルルッ!シュゥウウッ…


体に残っている魔石が光輝き、レアナの体や頭部が徐々に再生していく。
これだけやっても復活するのだから非常に恐ろしいモンスターである。

だがグリードは違った。


《ヒュドラと言い、【魔王】の手下だったシエストラバードと言い、再生持ちは最高ね。
私の底無しの胃袋を満足させてくれるのだもの。》


グリードの表情は恍惚そのもので、欠損した部位が回復するのと比例して、笑みの度合いが増していった。

尚、この時判明した事なのだが、レント・レアナに限らず、こういった再生持ちの大半は、体の4割以上の再生を行う際に身動きが取れなくなってしまい、7割程再生が完了してから行動が取れる様になる様だ。

だがレアナは現在グリードに完全に体の自由を奪われており、回復が完了しても再びグリードに喰われるだけである。

つまりレアナはこれからグリードが自発的に食事を止めるか、主であるノアが止めに入る。
森に保有されている魔力が尽きる、またはレアナ自身が死ぬまで喰われ続けると言う事である。


だがレアナに手が無い訳では無い。
自身の木の根を介して森の魔力を使い、凶悪なモンスターを召喚すれば対抗出来る戦力を確保出来る。

しかし


〔なっ…!?何故だ、魔力が供給出来ない!?
さっきまでは普通に出来ていたの『ガブッ!ミチミチッ!』ガァアァアッ!?〕


ここに来てマドリックが事前に『滅びの森』に撒いていた『根絶椰子の実』製の薬品が効力を発揮、木の根を介した魔力供給が出来なくなっていた。

だがそんなレアナに考える余地を与えない様にグリードがレアナの鎖骨辺りに囓り付き、引き千切る。

このままでは何も出来ないままグリードに喰い尽くされると感じたレアナは、冷静な判断が出来ずにいた。

キィイイイイッ!

《おや?》ムグムグ…


レアナの体に残っていた魔石が光輝き、地面に召喚陣が浮かび上がる。
規模としては直径5メル程の小型の陣だが、放たれている魔力は尋常では無い。

グリードも何が起こるのか分からず、頬をムグムグさせながら様子を窺っていた。







「おぉいっ!次は何を喚び出すつもりなんじゃ!?」
「分からんが魔力量が尋常では無い!」
「早雑魚共を片付けるぞ!」

「これ程の魔力量だと下手すりゃ竜とか喚び出しかねんな…」

「じゃあ早い所阻止しに行かないとマズイんじゃ…」

「あぁ、そうなんだが…」

(何でだろう…何が来てもあの子なら返り討ちにしそうな気がするんだよなぁ…)


状況的には宜しくないハズなのだが、妙に心は落ち着いているのであった。





(〔よし!こやつなら私の魔力の大半を用いれば召喚に応じてくれるハズ!
ふふ…今に見てなさい、貴様なぞコイツ相手であれば一堪りも[足りんな。]

(〔!?〕)

[貴様の持つ魔力だけでは俺を喚ぶには足りん、この程度で喚び出せると思ったか、腹立たしい。
この償いは貴様の命と引き換えさせて貰うぞ。]

〔ま、待て!中止だ中止!〕

《独り言言ってどうしたの?壊れた?》


馬乗り状態のグリードは、下で急に喚き出したレアナに首を傾げていると


ゾブッ!〔オゴォッ!?〕

《あ。》


レアナの心臓部分から龍鱗を纏わせた腕が突き破って出てきた。


シュゥウウッ…〔オ、ゴァァァ…〕ペキペキ…


腕を中心としてレアナの体が徐々に萎れていく。どうやら魔力が根刮ぎ吸収されている様だ。


〔ア"ッ…『ボロボロ…』


短い悲鳴が聞こえた後、レアナはおがくずの様にボロボロと崩れ、散っていった。

ズズズズ…

だがその代わりに強い魔力の反応が召喚陣の中から姿を現す。


[規定量には僅かに足りんがまぁ良いだろう。喚ばれたからには対象となる者を残らず屠ってくれよう。この『亞龍・プロスペリダージ』がな。]   


召喚陣の中心には全長3メル程の小型の翼龍が鎮座していた。
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