ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

.

文字の大きさ
479 / 1,117
獣人国編~森の番人~

立て

しおりを挟む
ガツッ!『おら、立てレントとやら、危険度(超)のモンスターがこの程度でくたばる訳が無いだろう?』

バキキ…シュゥウウッ…

〔何て威力…だ…私の体がこうも無惨に砕けるとは…〕

『ったりめーだ、全力でぶん投げたんだからな。』


現在レント、鬼神、ノアが居るのは、森の外縁部から200メル程進んだ森の中。
ぶん投げられたレントは、40を越える木々を薙ぎ倒し、漸く停止し、破壊された体の再生が行われていた。

辿り着いた時、その体はボロボロで、腰から下は粉砕し、右腕は千切れて何処かへ飛び、地面には陥没痕が出来ていた。

だが、そんな状態でも鬼神が手を緩める事は無い。


ガシッ!ブォンッ!

バギバギバギッ!ドガガガガガガッ!


レントの胸倉を掴んだ鬼神は、再び森の奥目掛けてぶん投げる。
破砕音を立て、森の中を破壊しながら突き進むレントであったが


ギュルルルルッ!

ガシッ!ガキッ!ガシッ!ガシッ!

ベギベギベギッガガガッ!

ブォンッ!バォッ!ボボボッ!


身を翻したレントは、背中から生えた触手を木々に絡めながら何とか停止。
その際大木を幾本か引っこ抜いたが、それをレントはノアと鬼神に向けてぶん投げる。

ダッ!

それに対して鬼神は眼中に無いかの様に無視してレントの元へ。
ノアは打ち落とす構えの様だ。

ギュルッ!ドドドッ!

『!?』ヒュババッ!

ゴガガガガガガッ!「…っ!?」


突如ぶん投げた大木が形状を変え、槍の様に鋭く変化し、鬼神やノアを襲う。

鬼神は難なく避けられたが、素のステータスであるノアは防御体勢を取って凌いだ。



ズギュルルッ!ガギッ!「うおわっ!?」

バギバギバギッ!!

『おい主大丈夫かっ!?』


防御体勢を取っていたノアの足元から木の根が延びて足に絡み付く。
そのまま引っ張られ、乱立する大木に次々と叩き付けられた。


「大…『バシュッ!』『バシュッ!』丈夫だ!」

ダンッ!


スラスターを2回程発し、勢いを殺したノアは大木を足場にしてレントへと殴り掛かる。

シュゥウウッ!

〔行け。〕

ズズズズ… 「っ!?」


レントが一言呟くと、レントの周囲の地面が盛り上がり、眼の無い巨大な蛇『聖樹の奉り蛇(サーペンテ)』が姿を現した。

ズバァッ!

既に跳躍しているノアは、一瞬回避するか迷ったが、スラスターを使用して加速した。

だが

ジャァアアアアアアアッ!ゴバァッ!

「うおっ!?おわわわっ!?」ギュルギュルッ!


『聖樹の奉り蛇(サーペンテ)』の口から夥しい量の蔓の塊が放たれ、殴り掛かって来たノアをがんじ絡めにして身動きを取れなくした。

しかも魔装鉄甲の関節部に蔓が入り込み、思う様に腕が動かせないでいる為、解くのにも多少時間が掛かりそうである。


『おい大丈夫かよ主?毛玉みたいになってんぞ。』ツンツン。

ゴロン。「くっ…ちょ、ちょっと時間掛かるかも…ねぇお願いだから押さないで…」ゴロン。


蔓が絡まり、地面に転がるノア。
鬼神がツンツンする度にゴロリと転がっており、何ともシュールな絵面である。


〔ふぅ…1人大人しくなりましたか…
これで漸くまともに戦えるな…〕

『その口振りだと、タイマンならマシに戦えるみてぇだが?』

〔2対1よりはマシかな。〕

『ほぅ。ならやってみろ。』

〔良いでしょう。
『聖樹の奉り蛇(サーペンテ)』あなたはここで待機。その少年と戦う場合は拘束が解けてからにしなさい。〕

『つー訳だ、主。
俺はこれからこの舐めた口利かせてるコイツをおがくずにしてくるからよ。
ゆっくりその拘束を解いててくれ。』


ジャァアアアッ!

「わ、分かった。気を付けてな…」


そう『聖樹の奉り蛇(サーペンテ)』とノアに告げたレントと鬼神は、森の奥へと並んで歩いていった。



チロチロ…

「わ!止め…転がすなよ…」ゴロンゴロン…






ザッザッザッ…

〔君らは…危険過ぎる。〕

『何だ急に。』

〔当初は君らを"苗玉"にするのが目的だったが、とてもそんな余裕は無い。〕

『それ程の脅威と見てくれてんのかい、有り難いねぇ。』

〔君らを分断したが、それでも脅威である事に代わりは無い。
"全力"で相手をせねば私達という存在そのものが侵されかねん。〕

『ほーん。それで?何をするつもりだ?』

〔既に分かっている事だろう?
"番人"から上の存在になれば良いのだ。〕

ズギュルルッ!ドスッ!ドッ!ドスッ!ドドドッ!


言い終えたレントの背中から幾本もの触手が延び、周囲に存在する木々に突き刺していく。
最長の物だと、優に100メルはあるだろうか。

シュゥウウウウウウウウウウッ!!!

すると周囲の木々から緑色の魔力が流れ、触手を伝ってレントへと集まっていく。


『それでお前さんの気が済むのであれば、やりゃ良い。止めやしないよ。』

〔そう余裕ぶっていられるのも今の内だぞ…?〕


上位存在に進化しようとしているにも関わらず、鬼神は止める素振りすら見せない。

だがその胸中では


(『さて、マドリックの作戦通り事が運ばれていってるが、本当に大丈夫なんか、これ…?
まぁこんな時に冗談言う様な奴では無いから信じる他無いんだがな…』)


鬼神はレントの行為を見ながら、前日にマドリックから伝えられた作戦の事を思い返していた。






~前日の夜中、屋台通りにて~


「えっ?不完全な状態で上位存在に進化させる!?」

「あぁそうだ。
まぁ、戦術の1つとして考えててくれ。」モッシャモッシャッ。


マドリックは飯を頬張りながらさも当然の様に答える。


「い、良いの?そんな事しちゃって…?」

ムグムグ…ゴクン。 

「昔、異世界から来たっつー【テイム】の兄ちゃんがウチの村に暫く逗留してた時があったろ?」

「あ~…"最高のパートナーを作ってやる"って意気込んでた、ちょっと"アレ"なお兄さんだったよね…」

「でも材料に、魔力に、根気が足らなかったから、待てなくなって途中で外に出しちまった結果大惨事になったろ?」

「うん、僕ら子供には見せてくれなかったけど皆、"腐ってやがる、早すぎたんだ"って言ってたよね。
確かラニさんが言うには"グズグズに煮込んだお粥状の…「そこまで事細かに説明しなくて良い。俺は今丼モノ食ってんだぞ…」

「あ、ごめん…」


"『滅びの森』産トン豚の肉過多丼"を食べていたマドリックの手が止まる。
余程悲惨な物だったのだろう。


「…要するに俺が言いたいのは、"条件が揃っていない状態だと、大抵の物は不完全な状態になっちまう"って事だ。
俺が『滅びの森』に『根絶椰子の実』製の薬品を撒いて土壌を一時的に劣悪状態にし、魔力を十分に供給出来ない様にした上でノアの様な特化戦力をぶつける事で意図的に上位存在への進化を促してやるんだ。」

「それで不完全な状態の上位存在に進化するんだよね?
具体的にはどの辺が不完全になるの?」

「ほぼ確定で攻撃力は上がるが、魔力が不十分だと再生力や魔法の多様性は無くなるな。
それだけ、と思うかも知れないが、それだけで十分討伐難度は下がるハズだ。」

「…確かにね…
分かった、その辺も頭にいれておくよ。」

「それよりもノア、お前の両親の見立てだと、ほぼ確実に"女"が出来たみたいだがどんな娘なんだ?」

「ぶふっ!?」


作物等は敢えて劣悪な環境に置く事で、根張りを良くしたり味を良くしたりと利点が多いが、モンスターの中でも特に上位存在はその限りでは無いらしい。
しおりを挟む
感想 1,253

あなたにおすすめの小説

ブラック企業で心身ボロボロの社畜だった俺が少年の姿で異世界に転生!? ~鑑定スキルと無限収納を駆使して錬金術師として第二の人生を謳歌します~

楠富 つかさ
ファンタジー
 ブラック企業で働いていた小坂直人は、ある日、仕事中の過労で意識を失い、気がつくと異世界の森の中で少年の姿になっていた。しかも、【錬金術】という強力なスキルを持っており、物質を分解・合成・強化できる能力を手にしていた。  そんなナオが出会ったのは、森で冒険者として活動する巨乳の美少女・エルフィーナ(エル)。彼女は魔物討伐の依頼をこなしていたが、強敵との戦闘で深手を負ってしまう。 「やばい……これ、動けない……」  怪我人のエルを目の当たりにしたナオは、錬金術で作成していたポーションを与え彼女を助ける。 「す、すごい……ナオのおかげで助かった……!」  異世界で自由気ままに錬金術を駆使するナオと、彼に惚れた美少女冒険者エルとのスローライフ&冒険ファンタジーが今、始まる!

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

ある日、俺の部屋にダンジョンの入り口が!? こうなったら配信者で天下を取ってやろう!

さかいおさむ
ファンタジー
ダンジョンが出現し【冒険者】という職業が出来た日本。 冒険者は探索だけではなく、【配信者】としてダンジョンでの冒険を配信するようになる。 底辺サラリーマンのアキラもダンジョン配信者の大ファンだ。 そんなある日、彼の部屋にダンジョンの入り口が現れた。  部屋にダンジョンの入り口が出来るという奇跡のおかげで、アキラも配信者になる。 ダンジョン配信オタクの美人がプロデューサーになり、アキラのダンジョン配信は人気が出てくる。 『アキラちゃんねる』は配信収益で一攫千金を狙う!

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

「餌代の無駄」と追放されたテイマー、家族(ペット)が装備に祝福を与えていた。辺境で美少女化する家族とスローライフ

天音ねる(旧:えんとっぷ)
ファンタジー
【祝:男性HOT18位】Sランクパーティ『紅蓮の剣』で、戦闘力のない「生産系テイマー」として雑用をこなす心優しい青年、レイン。 彼の育てる愛らしい魔物たちが、実はパーティの装備に【神の祝福】を与え、その強さの根源となっていることに誰も気づかず、仲間からは「餌代ばかりかかる寄生虫」と蔑まれていた。 「お前はもういらない」 ついに理不尽な追放宣告を受けるレイン。 だが、彼と魔物たちがパーティを去った瞬間、最強だったはずの勇者の聖剣はただの鉄クズに成り果てた。祝福を失った彼らは、格下のモンスターに惨敗を喫する。 ――彼らはまだ、自分たちが捨てたものが、どれほど偉大な宝だったのかを知らない。 一方、レインは愛する魔物たち(スライム、ゴブリン、コカトリス、マンドラゴラ)との穏やかな生活を求め、人里離れた辺境の地で新たな暮らしを始める。 生活のためにギルドへ持ち込んだ素材は、実は大陸の歴史を塗り替えるほどの「神話級」のアイテムばかりだった!? 彼の元にはエルフやドワーフが集い、静かな湖畔の廃屋は、いつしか世界が注目する「聖域」へと姿を変えていく。 そして、レインはまだ知らない。 夜な夜な、彼が寝静まった後、愛らしい魔物たちが【美少女】の姿となり、 「れーんは、きょーも優しかったの! だからぽるん、いーっぱいきらきらジェル、あげたんだよー!」 「わ、私、今日もちゃんと硬い石、置けました…! レイン様、これがあれば、きっともう危ない目に遭いませんよね…?」 と、彼を巡って秘密のお茶会を繰り広げていることを。 そして、彼が築く穏やかな理想郷が、やがて大国の巨大な陰謀に巻き込まれていく運命にあることを――。 理不尽に全てを奪われた心優しいテイマーが、健気な“家族”と共に、やがて世界を動かす主となる。 王道追放ざまぁ × 成り上がりスローライフ × 人外ハーモニー! HOT男性49位(2025年9月3日0時47分) →37位(2025年9月3日5時59分)→18位(2025年9月5日10時16分)

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜

霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……? 生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。 これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。 (小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

処理中です...