ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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獣人国編~森の番人~

樹冠

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ドォオオオオオオオオオオオオオオオオッ!
ゾリッ!ゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾッ!

『ふははははっ!すげぇ威力だ!散髪に持って来いだな!』

「風の刃は防具が吸収してくれるけど…風圧が凄まじくってそんな事言ってられる余裕無いっての!!」

ギャギギッ!
ギィイイッ!!ズバッ!
キギャギャッ!ズババッ!


風刃ブレスを楽しむ鬼神と、余裕皆無なノア。
その前方では、広範囲に渡って凄まじい風圧と風の刃で斬殺されたレント分体・蜘蛛型が次々と落下していく。


ブァッ!「あっ!?うわっと!?」


遂に風圧にやられたノアが幹から足が離れて落下。


[ギャーッ!言わんこっちゃ無い!
ごめんなさい!今すぐ助けに『ガシッ!』やめなさい!殺すわよ!》

[どっちにしろ殺されそうなんですがっ!?]


ノアを助けても助けなくても殺されそうな状況に、プロスペリダージは既にパニックになっていた。
だがグリードが落ち着いた声音で


《安心なさい。
私の主様はこの程度の事ならどうとでもなるわ。
上を見てみなさい。》


そう言われてグリードの視線の先を見ると、魔装鉄甲のスラスターとブースター機能を駆使して再び幹の元まで辿り着くノアの姿があった。


《主様はどういう訳かあの年頃の子供には似つかわしくない戦闘力を持ってるの。
まだあの子と共に暮らして1ヶ月と少しだけど、この短い期間で十分過ぎる程思い知らされたわ。
あなたは私に比べれば大分常識的な様だけど、今この時だけはその常識を頭の片隅にでも追いやって欲しいの。お願い出来るかしら?》

[は、はい…いや、善処します…]


生息圏が人里と近いのもあってか、比較的人と接する機会の多いプロスペリダージは、ノアの様な年齢の子供に対してこういった行いをする事が無かった為、随所に躊躇いがあった。

プロスペリダージは納得した風に言ったが、まだ躊躇いが残っている。

別にそれが悪いと言う訳では無いが、ノアが居る戦場と言う場では不要と言える。
直ぐには無理だろうが、徐々に慣らしていって欲しいものだ。




「プロスペリダージさん!その調子です!
回避はこっちで行いますからガンガン撃っちゃって下さーい!」


幹の表面に掴まり、眼下に立つ2龍に見える様手で合図を送るノア。
それを見たプロスペリダージは苦笑いを溢す。


[龍種のブレスを受けて喜色満面とは…
いやはや彼とは敵対したくないものですな…]

《ならこの戦いを無事に完遂しなくちゃね。
ホラ、主様から催促が来てるのだし、撃った撃った。》

ゴバァアアアアアッ!
バシュゥウウウウッ!

2龍は再び遥か頭上に居る2人目掛けて攻撃を開始した。







ドッ!ドドッ!ドッ!

「ほぅれ!半死半生の分体様のご到着じゃい!さっさと仕留めっぞぉっ!」

ブォンッ!「おぅよっ!」

「坊も相変わらず凄いのぅ!よぅあの龍の暴風を耐えられるもんじゃ!フリアダビアん時よりも明らかに強くなっちょるの!」

パンッ!パパンッ!

「でぇーぃっ!口より手を動かせ爺共!
ありったけ状矢作って来たハズだけど、そろそろ尽きそうなのよ!?」

ザンッ!ゾゾッ!

「物量的に厳しいだろうが、耐え抜け!
これは誰も樹上に近付けさせない為の時間稼ぎに過ぎん!」
    

ドワーフ3人組やエスメラルダ、マドリック達は、グリードとプロスペリダージが放つブレスによって蹴散らされ、地上に落下した分体の残党狩りを行っていた。

分体1体1体は大した事ないが、皆レントの因子を持っている為、1体でも逃せば長い期間を経てレント同様に変異する。


「時間稼ぎ!?何の!?」

「次代の子を成す為のだ!
<魔力感知>でこのデカブツを見てみろ!
周辺地域から手当たり次第に集めた魔力が上方に向かって集束していってるハズだ!」

「!…本当だわ…」


マドリックにそう言われ、<魔力感知>を発動して巨大な大木と化したレントを見てみると、蔓を伝って周辺の森からかき集められた魔力が幹を通り、樹上に昇っていく。

膨大な魔力量の為か、陽光と見間違う様な光量に、目を眩ませるエスメラルダ。


「"森の番人レント・レアナ"の悲願は"莫大な魔力を用いて子を成す事"だ!
だが今の奴は"不完全な状態"!
子を産み出すのにも時間が掛かり、身動き出来ん!仕留めるなら今しか無い!」

「それじゃあ貴方も上に行った方が良いんじゃないの!?」

「そうしたいのはやまやまだが、単純な火力で言えばノア達のが上だし、【適正】上2人の邪魔は出来ん。
なので2人からは"詰め"を任されている、"アレ"は2人でもどうにもならんからな。」

「…そういう事なら任せるわ!」


マドリックの言う"詰め"の内容が分からないが、事前にそう言った取り決めをしていたのならこちらから口出す事では無い、とエスメラルダは続々と落下して来る分体の処理に励む事にした。





ガッ!

「っし!漸く着い『ゴォッ!』うわっ!危ねっ!?」

〔全く…これから子を成す大事な儀式があると言うのに息吐く暇も無いな…〕


幹を登り、樹冠の根本に到達したノア目掛け高速で蔓が飛ぶ。
寸での所で首を傾けて回避し、勢いそのままに開けた場所に降り立つ。

ズンッ!

『それを阻止しに来たんだろうが。
ったく、数で攻め立てりゃどうにかなるとでも思ったか?』

〔足止め程度にはなるかと思ったんだがね…
やはり君達はこの程度じゃ止められない様だ。〕


ヒュォオオオオオッ…


「?」
『お?』


樹冠の根本中央に位置する開けた場所にレントが待ち構えていたのだが、レントの背後で突如膨大な魔力の奔流が発生した。

すると中心部分にキラリと光る魔石の様な物が生成されだした。


〔おお…美しい煌めきだ…
見よ、これが我が子の核となる物だ。
この分なら10分程で2人に挨拶『ガギュッ!』ふふん、油断も隙も無いな。〕

「チッ!」


レントが背後の奔流を眺めだした隙に、<忍び足>を発動して音も無く近付き、核となる物体に攻撃を仕掛けたノアだが、足元から木で形作られた拳が飛び出し、巨腕を掴まれたのである。


ギュゥウウウッ!ボコボコッ!

「ちょ、お『ガゴォッ!』…ぐぅっ!!」


レントは自身の拳を握り締めると、まるでハンマーの様に巨大化させ、間髪入れずに魔装鉄甲ごとぶん殴る。

ゴォッ!

かなりの威力だったのか、ノア自身にダメージはあまり無いものの、大きく吹き飛ばされ樹冠から弾き出されてしまった。

バッ!バシュッ!ズザザッ!

スラスターとブースターを駆使して何とか舞い戻る事に成功。


『大丈夫か?』

「あぁ。くそっ、やはりここは奴にとってはテリトリーみたいな物だからか、感知能力が上がっている。」

〔ふふ、姑息な手は通じないと思った方が良いよ?〕


ノア達に向き直ったレントがそう伝える。
すると鬼神はニヤリと笑い


『じゃあやる事は簡単だ。
正々堂々真っ正面からぶつかって屠るまでた。』

「だね。」

〔良いだろう。
我が子誕生までの600秒、私の全霊を命を賭してでも君達の凶行を阻止してやろう。〕
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