ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

.

文字の大きさ
589 / 1,124
獣人国編~中級冒険者試験~

パルディック・ロスト

しおりを挟む
「それじゃあ昼頃に獣人国に戻りましょうか。」

「え?良いの?
少し休んだ方が良いんじゃない…?(クロラ)」

「大丈夫!
何てったって僕の『VIT 体力』は最上級冒険者並みだからね。」

「…″そう言う事″じゃなくて…(小声のクロラ)」


″そう言う事″は勿論ノア自身の体力の事であるが、クロラが心配しているのはノアの寿命の事だ。

今すぐにどうこうなる訳では無い、と伝えはしたが、分かってはいても心配なものは心配になってしまうらしい。


″自分の事ですから自分が一番よく知ってます。
僕の場合適度に動いてた方が丁度良いんですって。″パクパク…

「…もぅ…(クロラ)」


<読唇術>を持つクロラとポーラにだけ分かるよう口パクで伝えるノア。
まだ思う所はあるが、一先ず納得してくれた様だ。





その後ノア以外の一同は帰る準備の為に宿に戻り、ノアは遅めの朝食を摂ろうと街を彷徨く事に。

すると


「あ、ノア君!(ミダレ)」

「んぉ?」


朝別れたハズのミダレに声を掛けられた。
その胸元にはラインハードが作ってくれた装飾品がキラリと輝く。
早速使用してくれている様で作成者冥利に尽きる事だろう。

そのミダレの隣には40代位の男性が立っていた。
指には幾つか宝石が填められていた事からそれなりに地位の高い人物なのだろう。


「何かなぁ、このブローチ造ってくれた人を紹介してくれっちゃ言われて…(ミダレ)」

「あぁ、それで僕の所に…」

「おぉ、君がこの素晴らしいブローチの製作者かね!
…あぁ、済まない、名乗るのが先であったな。
私、は……っ!?(40代位の男性)」

「ん?」


と、40代位の男性はノアの方を見るなり目を見開き、口をポカンと開いたまま固まってしまった。


「…は…っ…あぁ…(40代位の男性)」

「???」


すると40代位の男性は徐々に目を潤ませ、声にならない声を上げる。

ミダレからは「知り合い?」と問い掛けてきそうな表情をされるが、ノアは首を振って否定した。

ノアはこの40代位の男性に見覚えが一切無い。

1度見た顔であればある程度は覚えているハズなのだが全くである。


(『俺も…無ぇな…誰だこのおっさん…』)


鬼神も覚えが無いらしい。
と、ここで漸く40代位の男性に動きがあった。


「…いや…すまない…
突然こんな事になって…驚かせてしまったね。
君は確か…ノア「あ、はいそう」ール君だったね。「ぬぅうっ!惜しいっ!」


生まれてこの方ノアは″ノアール″などと名乗った覚えは無い。
どうやらこの40代位の男性はノアの名前を間違って覚えていたらしい。

と、ここで

    
ズズズ…

「お久し振りです″ロスト様″。
まさかこの様な場所でお会いするとは思ってもみませんでした。(ヴァンディット)」

「え?″ロスト様″ってさっき話してた人の事?」

「…お、おぉ、ヴァンディットさん。
…という事はこの子が君の…?(パルディック・ロスト)」

「はい、主様でございますわ。(ヴァンディット)」


ノアの影の中から日除けの帽子を被ったドレス姿のヴァンディットが姿を現し、40代位の男性(パルディック・ロスト(以下ロストと呼称))に挨拶をした。


「ははは、商会に居た時より実に晴れやかな表情をしているじゃないか。
実に楽しい日々を送っているようですな。(ロスト)」

「えぇ、毎日大忙しですが、楽しく日々を過ごさせて頂いております。(ヴァンディット)」


ヴァンディットの明るい表情を見て感慨深そうな様子で頷くロスト。


「…そうか…そうか。
もう2人は主従になって長いのかな?(ロスト)」

「いえ、まだ2ヶ月程でございます。(ヴァンディット)」

「ふむ…(ロスト)」


ヴァンディットと他愛の無い話をしていたロストだが、突然顎に手をやってぶつぶつと呟く。


<…2ヶ月…か…あれは…
…半年…つまり彼……やはり………考え……ないか…>


<聞き耳> でもあまり聞き取れない位の声量の為、呟きの内容は定かではない。

が、流石に初対面の相手の呟きに<聞き耳>立てるのは如何なものかと思い、ノアは<聞き耳>を解除した。


「それではロスト様、改めまして私の主様を紹介させて頂きます。
こちらが私の今のご主人様、名をノアと申します。
本日より中級冒険者と成られましたが、それ以上の強者であられます。(ヴァンディット)」

「あ、あはは…先程は済まなかったな。
知人の名と間違えてしまった様だ。
それでは私も改めて…
私はパルディック・ロスト。
一応南にある辺境の地で伯爵の地位に就いておる。
が、政務等の難しい事は頭の良い者達に任せて日夜珍妙な物を探し、放浪の旅に出とるのだよ。(ロスト)」

「あ、ご丁寧にどうも…」

(何か今まで会ってきた貴族とは雰囲気からして違うなぁ…)

(『威圧的な態度じゃないし、特に隠している様子も無ぇ。
この感じは素なんだろうな。』)


今まで出会った貴族は、矜持をやたらと重んじ、高圧的な態度だったり我が儘な態度な者が大半であったが、このパルディック・ロストはそこらに居る一般人と変わり無い物腰柔らかな人物であった。(ちょっと変わってるけど。)


「この方は凄いお方なのですよノア様。
今現在広く世間一般に流通している″ケバブ、ラーメン、そば、もつ煮込み、ハンバーグ″等の食品の産みの親で御座います。(ヴァンディット)」

「え!?そうなんですか!?」

「いや、産みの親は言い過ぎだ。
昔とある人物がくれた味が忘れられなくてそれをそのまま真似て作ってみただけだよ。(ロスト)」



パルディック・ロスト…元々貴族の出では無かったのだが、10年程前に斬新な食品を開発し、売り出した所莫大な利益を産み出し、一般人ではあったが貴族の仲間入りを果たす。
奇妙、奇天烈な物を求め、日々放浪の旅に出ているが、現在でも3ヶ月に1品の割合で新商品を開発し、悉く売り上げを伸ばしている為、誰も文句を言わない。

ちなみに商品名は、この世界に来た異世界人が「これケバブじゃん!」と言った為、それをそのまま使用している。

ついでに言うとパルディック・ロストは異世界人では無い。



「あ、そうだ、ここへ来たのは彼女のブローチを作成した者と話がしたく連れてきて貰ったのだった。(ロスト)」

「ミダレさんのブローチですか?」

「あぁ、彼女のブローチは素晴らしい。
一見ただのブローチに見えなくも無いが、魔力の流れに違和感を感じて確認してみたら魔力を魔石に変換させる機構を備えているではないか。
恐らくブローチ型にしたのは、魔石を形成した後装飾の一部として普段使いも兼ねる様にしたのではないか、と思ってな。
無自覚で申し訳なかったが、彼女の体臭を香ってしまい、彼女がサキュバスと知ってしまった。
つまり彼女の放つ誘惑香を抑えつつ、香り成分を魔力から魔石に変換しただけでは無く、彼女を彩る装飾としての機能を兼ね備えた一石二鳥、いや三鳥もある素晴らしい品なのだよ!(ロスト)」

ズズズ…

「ふぉおおっ!分かってくれましたか、この機能美をっ!(ラインハード)」

「ぬおぉっ!?(ロスト)」


ラインハードが盛り込んだ機構を初見で見抜いたロスト。
そこに気付いてくれたのが嬉しかったのか、ノアの影の中から勢い良くラインハードが飛び出してきた。


「うわぁ、凄…ラインハードさんの思惑を全部見抜いてる…」

(『味の再現に、魔力の流れ、体臭を嗅いだだけで種族を当てる鼻の良さと知識量…
教養もそうだが、恐らく五感がかなり研ぎ澄まされているんだろうな。』)


とか何とか考えている間にもラインハードとロスト間では既に値段交渉にまで話が進んでいる。

ロストは「1つ最低でも50万ガル払う。」と言ってきていて、ラインハードは無言で親指を立てている。
無償で貰ったミダレは、明確な額が飛び出してきて露骨にガクガクと震えていた。

と、そんな時であった。


コッコッコッ…

「困りますなぁロスト殿。
警護の為に我々が居る事をお忘れですかな?
こんなどこの馬の骨とも取れんガキ共と戯れていてはパルディック家の名が廃れますぞ…
…おや、久しい御方が居られますなぁ。
ヴァンディット嬢、元気でおいでですかな?」

「…ゴーマン様…(ヴァンディット)」


通りから屈強そうな輩5人程を連れた50代位の白髪の男性(どうやらゴーマンと言うらしい。)が一行の下にやって来る。

腰には無駄に装飾の施された剣を帯刀し、指には剣を振るう時に邪魔じゃない?と思われそうな程の宝石類を付けていた。
しおりを挟む
感想 1,255

あなたにおすすめの小説

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

ボンクラ王子の側近を任されました

里見知美
ファンタジー
「任されてくれるな?」  王宮にある宰相の執務室で、俺は頭を下げたまま脂汗を流していた。  人の良い弟である現国王を煽てあげ国の頂点へと導き出し、王国騎士団も魔術師団も視線一つで操ると噂の恐ろしい影の実力者。  そんな人に呼び出され開口一番、シンファエル殿下の側近になれと言われた。  義妹が婚約破棄を叩きつけた相手である。  王子16歳、俺26歳。側近てのは、年の近い家格のしっかりしたヤツがなるんじゃねえの?

元公爵令嬢は年下騎士たちに「用済みのおばさん」と捨てられる 〜今更戻ってこいと泣きつかれても献身的な美少年に溺愛されているのでもう遅いです〜

日々埋没。
ファンタジー
​「新しい従者を雇うことにした。おばさんはもう用済みだ。今すぐ消えてくれ」  ​かつて婚約破棄され、実家を追放された元公爵令嬢のレアーヌ。  その身分を隠し、年下の冒険者たちの身の回りを世話する『メイド』として献身的に尽くしてきた彼女に突きつけられたのは、あまりに非情な追放宣告だった。  ​レアーヌがこれまで教育し、支えてきた若い男たちは、新しく現れた他人の物を欲しがり子悪魔メイドに骨抜きにされ、彼女を「加齢臭のする汚いおばさん」と蔑み、笑いながら追い出したのだ。 ​ 地位も、居場所も、信じていた絆も……すべてを失い、絶望する彼女の前に現れたのは、一人の美少年だった。 ​「僕とパーティーを組んでくれませんか? 貴方が必要なんです」  ​新米ながら将来の可能性を感じさせる彼は、レアーヌを「おばさん」ではなく「一人の女性」として、甘く狂おしく溺愛し始める。  一方でレアーヌという『真の支柱』を失った元パーティーは、自分たちがどれほど愚かな選択をしたかを知る由もなかった。  ​やがて彼らが地獄の淵で「戻ってきてくれ」と泣きついてきても、もう遅い。  レアーヌの隣には、彼女を離さないと誓った執着愛の化身が微笑んでいるのだから。

無能と追放された俺、死にかけて覚醒した古代秘術を極めて最強になる

仲山悠仁
ファンタジー
魔力がすべての世界で、“無能”と烙印を押された少年アレックスは、 成人儀式の日に家族と村から追放されてしまう。 守る者も帰る場所もなく、魔物が徘徊する森へ一人放り出された彼は、 そこで――同じように孤独を抱えた少女と出会う。 フレア。 彼女もまた、居場所を失い、ひとりで生きてきた者だった。 二人の出会いは偶然か、それとも運命か。 無能と呼ばれた少年が秘めていた“本当の力”、 そして世界を蝕む“黒い霧”の謎が、静かに動き始める。 孤独だった二人が、共に歩き出す始まりの物語。

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜

霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……? 生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。 これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。 (小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

『山』から降りてきた男に、現代ダンジョンは温すぎる

暁刀魚
ファンタジー
 社会勉強のため、幼い頃から暮らしていた山を降りて現代で生活を始めた男、草埜コウジ。  なんと現代ではダンジョンと呼ばれる場所が当たり前に存在し、多くの人々がそのダンジョンに潜っていた。  食い扶持を稼ぐため、山で鍛えた体を鈍らせないため、ダンジョンに潜ることを決意するコウジ。  そんな彼に、受付のお姉さんは言う。「この加護薬を飲めばダンジョンの中で死にかけても、脱出できるんですよ」  コウジは返す。「命の危険がない戦場は温すぎるから、その薬は飲まない」。  かくして、本来なら飲むはずだった加護薬を飲まずに探索者となったコウジ。  もとよりそんなもの必要ない実力でダンジョンを蹂躙する中、その高すぎる実力でバズりつつ、ダンジョンで起きていた問題に直面していく。  なお、加護薬を飲まずに直接モンスターを倒すと、加護薬を呑んでモンスターを倒すよりパワーアップできることが途中で判明した。  カクヨム様にも投稿しています。

妹が聖女の再来と呼ばれているようです

田尾風香
ファンタジー
ダンジョンのある辺境の地で回復術士として働いていたけど、父に呼び戻されてモンテリーノ学校に入学した。そこには、私の婚約者であるファルター殿下と、腹違いの妹であるピーアがいたんだけど。 「マレン・メクレンブルク! 貴様とは婚約破棄する!」  どうやらファルター殿下は、"低能"と呼ばれている私じゃなく、"聖女の再来"とまで呼ばれるくらいに成績の良い妹と婚約したいらしい。 それは別に構わない。国王陛下の裁定で無事に婚約破棄が成った直後、私に婚約を申し込んできたのは、辺境の地で一緒だったハインリヒ様だった。 戸惑う日々を送る私を余所に、事件が起こる。――学校に、ダンジョンが出現したのだった。 更新は不定期です。

地味スキル「ためて・放つ」が最強すぎた!~出来損ないはいらん!と追い出したくせに英雄に駆け上がってから戻れと言われても手遅れです~

かくろう
ファンタジー
【ためて・放つ】という地味スキルを一生に一度の儀式で授かってしまった主人公セージ。  そのせいで家から追放され、挙げ句に異母弟から殺されかけてしまう。  しかしあらゆるものを【ためる】でパワフルにできるこのスキルは、最高ランクの冒険者すらかすんでしまうほどのぶっ壊れ能力だった!  命からがら魔物の強襲から脱したセージは、この力を駆使して成り上がっていく事を決意する。  そして命の危機に瀕していた少女リンカニアと出会い、絆を深めていくうちに自分のスキルを共有できる事に気が付いた。 ――これは、世界で類を見ない最強に成り上がっていく主人公と、彼の元へ集まってくる仲間達との物語である。

処理中です...