ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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獣人国編~全ての始まり~

10年前、全ての始まり。~奴隷の国~

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スパルティア…現ヒュマノ聖王国は、元々300年以上前に何処かから流れて来た者が、先住民であった獣人達を奴隷化して、各地の村々を襲いながら領土を広げていった大国であった。

スパルティアの民1人に対して奴隷10人と言う数を保有していたが、圧倒的武力と、奴隷と言う区分ではあったモノのスパルティアの民同様の暮らしや扱い、教育を施されていた為、非常に良好な関係を築いていた。



~スパルティア王城~ 


「奴隷のイールよ、スパルティアの民セシエラを娶る事に対して1つ言っておくぞ?(ツェド)」

「は!」

「幼少より仕えてきた故、彼女の繊細さの割に抜けてる所が非常に多い事を知っておるな?(ツェド)」

「勿論です!
セシエラは一生を賭して支えていきます!」

「ったりまえじゃ!
妙に暑苦しい癖に緊張すると儂ん所に来る癖をさっさと治せぃ!
嫁が式場で待っとるぞ!(ツェド)」

「は、はい!」ダタタタタタ!


イールと言う奴隷獣人に檄を飛ばし、慌てて駆け出して行くイールの後ろ姿を見るツェド。
勢いよく扉を開け放ち、外に飛び出した彼は、奴隷仲間の獣人達に担がれて式場へと連行されていった。

外では花吹雪が舞い。1組の結びの儀を国総出でお祝いしていた。


「全く、世話の掛かる息子じゃったわい。
これから色々と要り用になる事じゃろう、祝い金としていつも通り100万ガルを出しといてくれ。(ツェド)」

「は、はい…」

「ん?(ツェド)」


ツェドの近くで待機していた従者に声を掛けたモノの、どうも反応が悪い。
だがツェドはその反応の理由を知っていた。


「マグダナル、前から言っておるが儂のやり方が気に入らないのであれば別にこの国を離れても良いのだぞ?
王都やフリアダビアの方ならここより獣人は少ない。
何で獣人を嫌っておるかは知らんが、そこなら伸び伸びと過ごせるであろう?(ツェド)」

「い、いえ、何でもございません…
直ぐに手配します…」


従者はツェドの言葉を否定すると、足早にその場から去っていった。


(まぁ伸び伸び暮らせるだろうが、この国より保証制度等が整っておらん故、生活レベルは多少落とさんとならんだろうがな。(ツェド))


獣人の事をあまり快く思わない人間は多い。
何ならここ最近増加傾向にあるとすら思えてきた。

たった今この場を去っていった従者も小さい頃は奴隷の子供達と仲良く遊んでいたし、家族ぐるみの付き合いもあった。

何が、誰が原因かなんて明確な原因は無いが、いつの間にかそういった考えの者が増えていた。

恐らくは、ある種の劣等感を抱いていたのだろう、と今なら思える。

王と民、親と子、師と教え子、主人と奴隷、多少の上下関係はあれど、皆平等になる様努めてきたハズだ。

だが平等に保とうとするとどうしても突出する者が出てくるのは仕方の無い事。
今回もそんな風に考えていた。

勿論全員が全員そんな考えの者ばかりで無く


ガチャッ!

「ガーランド様!
西方で大規模な遠征がある様で、傭兵部隊の要請がありました。
王都からは【採掘】と【彫金加工】の職人を数名南方のテスタから【教師】の派遣要請が掛かりました。」


王城の扉が開け放たれ、白銀鎧の男性が駆け込んできた。
どうやら奴隷獣人の派遣要請の様だ。

スパルティアの主要な事業は『奴隷』である。

奴隷だからといって虐げる事はなく、【適正】に合った手厚い教育と生活を施している為か、奴隷の輸出国としては世界最高と言われていた。


「報告ご苦労。西方の遠征には傭兵部隊『ジオール』を「いえ、『バスタード』に向かわせました。」…む?(ツェド)」

「『ジオール』のリーダー、セムスの妻が子供を産んだそうです。
なので今回は要請から外しました。」

「お、漸くか。
はは、嬉しい事じゃ。祝い金を「これから渡しに行く所です。それと酒も。」
うむうむ、頼んだぞルベル。(ツェド)」


ルベルと言う男性はツェドに報告を終えた後に足取り軽く王城を後にした。
彼は奴隷だった妻がおり、今年で結婚20年になるおしどり夫婦である。

スパルティアでは奴隷同士は勿論、民とも結婚が可能で、この頃は獣人を嫌っている者は少数だったのでツェドとしても喜ばしい事でもあった。




「ガーランド様、近々外遊が入っておられますが、予定通り決行で宜しいですか?」

「うむ。
今回は南にある『テスタ』へ途中寄ろう。
教え子達のその後が気になるしの。(ツェド)」

「ご安心下さい、現在人気の講師であるとの事です。ガーランド様が熱心に教鞭を取っていた賜物ですな。」

「アホ、教え子達の飲み込みが良かっただけじゃわい。(ツェド)」

「はは、そうでしたな。
それと南方に最近流行りの屋台が出来た様で、序でに寄ってみませんか?
″バルデ″と言う店なのですが。」

「ふむ、そこまで言うなら寄ってみようかの。(ツェド)」


従者と他愛の無い話を混ぜ込みつつ、近々に迫っていた外遊について打ち合わせをするのであった。





~ツェド達が居たエントランスを望める場所~

「けっ、外遊だとさ。
この間はフリアダビア、王都、ドラガオ…どんだけ飛び回りゃ気が済むんだ?」
「どうせまた″奴隷の為″とか抜かして諸外国にバカンスに行ってんだぜ。」
「んな金あんなら俺らに回せっつーの。」


ツェドと従者が去った後、螺旋階段の上で聞き耳を立てていた者達が口々に愚痴を言い合っていた。
内容としては文字通り遊んでいるだの、金回りの事等であった。

ちなみにスパルティアの方針として『奴隷第一』を掲げており、冒頭にもあったが奴隷に対して手厚い保証が成されており、人間以上の厚遇であるとも言える。

この国は『奴隷』で成り立っていると言っても差し支え無いので、当然と言えば当然の事である。

が、奴隷を毛嫌いしている者達はこういった所が気に食わない様だ。

ツェドや良好な関係を築く者達は奴隷を『家族』として扱い、それ以外の者はあくまで『奴隷』として見ている。

冒頭でもツェドが従者に対して言ったが、″やり方が気に食わないのならこの国を離れて良い″とこの国の全員に言っており、実際出ていった者も多数居る。

だが半年も掛からない内に戻ってくる者が大体である。

奴隷以下の処遇と思って国を出たハズが、外の世界ではそれが相当な厚待遇であったと気付かされたのである。



とは言え、一度国の方針に納得出来ずに出て行った者を再び温かく迎え入れる程ツェドは優しくは無い。

流民としてこの地に訪れたスパルティア人の末裔であり、圧倒的武力と勘の鋭さ、強力な【適正】である″【支配】″を備えているツェドだが、最も彼の強みとなっていたのは″見切りの速さ″であった。


スタッ。

「そうかい、自らの仕事に就かずに駄弁っておるお前達には十分過ぎる額を与えてたつもりじゃったがの。(ツェド)」

「「「っ!?」」」


先程まで話をしていた場所から階数にして3階上った螺旋階段の欄干にツェドが降り立った。
突然の事に、愚痴を言い合っていた3人は驚きに身を固めてしまった。


「あ…あ、ツェド殿、これは「お前達3人には【錬金術】の授業でハイマナポーション作製の講師を頼んでいたハズだが?(ツェド)」

「え、えぇ、もう指示しなくとも良い過程に入りましたので奴隷に「ミハエルじゃろ?」…え?」


ツェドはこの時間に行われている授業の内容を把握していた様で、彼らが口を開く度に割って入ってくる。


「彼女は良い【錬金術】になれる。
貴様ら3人分の仕事を一挙にこなし、他の生徒の面倒を見ているのだからな。(ツェド)」

「は、はは!
我々としても喜ばしいこ「つまり貴様らが居なくとも何ら支障は無いと言う事だな。(ツェド)」

「「「え?」」」

「何でも貴様ら、儂への報告書もミハエルにやらせている様じゃないか。
授業、採点、報告云々何もかもをこなせられた事で晴れて貴様らは後腐れ無くこの国を去れるのぅ。(ツェド)」

「ま、待て!幾らなんでも横暴「何じゃ?では″授業で作製した錬金薬を違法に横流ししている犯罪者″としてこの国から去って貰った方が良いか?(ツェド)」…な!?」

パラパラ…


ツェドは懐から羊皮紙を何枚か取り出して彼らの前に突き出した。
そこには丁寧な文字で綴られた後ろ暗い行いの数々が記されていた。



ちょっと長くなるのでここで区切ります。
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