ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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獣人国編~御前試合の代表決め~

3人目

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シャリシャリ…

「へぇ~これが″夏季氷(カキゴオリ)″言うんやねぇ、あっちの方では食べた事あらんから食べてみるん楽しみっちゃが。あむ。」シャリ…


続いて一行は″夏季氷(カキゴオリ)屋″に来ていた。夏の暑い時期に何か涼を得られるものは無いかという事で考案されたモノらしい。

これもノアの事を何故か知っている貴族のバルディック・ロスト伯爵によって考案されたらしく、王都、アルバラストに続いて3店舗目の出店だという。


クロラは苺シロップ、ポーラはレモンシロップ、ミダレはバナナナナナナを裏漉しした滑らかなソースで頂いていた。

のだが


「うーん、美味しいっちゃねー!
む?あ、んむむむっ!?あ、頭が痛いっちゃが!?(ミダレ)」


ミダレは″夏季氷(カキゴオリ)″を口一杯に頬張ったからか、急激な頭痛に襲われた。
思わず持っていた器を離し、しゃがみこみそうになるが


ヒョイ。ガシッ。

『っと。
大丈夫ですかミダレさん?』

「へぁ、ノ、ノアく『ピトッ。』ひゃんっ!?…(ミダレ)」


寸での所で器を拾い上げ、しゃがみこむミダレの肩を掴んで抱き上げるノア。
そのままノアは器をミダレのおでこに当てる。


「あ、あれ?頭の痛みが引いたっちゃ…(ミダレ)」

『頭がキーンとなったらおでこを冷やすと良いですよ。』

「へ、へぇ…そうなんやなぁ…(ミダレ)」

『後はゆっくり食べると良いですよ。
『ぷにっ。』ふふ、案外ミダレさんってせっかちさんなんですね。』

ボワッ。

「は、はゃぁ…(ミダレ)」


無邪気な笑みと共に頬をつつかれたミダレは、顔を赤くして言葉にならない声を上げていた。





『そう言えばミダレさん、僕に何か話があるとか言ってませんでしたっけ?』

「ほや?(ミダレ)」

『ほら、滅びの森から帰って来たら話す、って言ってたじゃないですか。』


※タイトル『力を制御した事による弊害』の事。


ボッ!

「へぁっ!?
あ、あぁ!そ、そんな話そぃやぁしちょぅたねぇ…(ミダレ)」


てっきり数日後に帰ってくると思っていたノアがまさかその日の内に帰って来ると思いもせず、覚悟が決まりきっていなかったミダレ。

そんなミダレの想いを既に知っているクロラとポーラは背中を押して応援し出す。


「そーそー、大切な話なのよねぇミダレちゃん?(ねっとりポーラ)」

「はゎわ、ほわぁあ…(ミダレ)」

「大丈夫だよミダレちゃん、ノア君ならしっかり受け止めてくれるって。(クロラ)」

「う、うん…そ、そぉやょね…(ミダレ)」

『?』

(『あ。(察)』)


顔を赤らめてあぅあぅ言うミダレ。応援する2人。そんな独特な雰囲気が漂ってはいるが、まだ分かっていないノア。
流石に中に居る鬼神だけはこの後の展開を察していた。





~少し時間が遡ったヒュマノ聖王国~


「さてそこの3人、どうやらこの国に観光で来たって訳じゃないだろう?
『極大射程』とか言うクランのリーダー、確かレドリックとか言ったか?(ツェド)」

「おや、俺をご存知とは光栄だな。(レドリック)」

「森の番人討伐で駆り出されたのを2度程見ておる。確か10年程前にも依頼されておらんかったか?(ツェド)」

「あぁ。
俺がアンタを最後に見たのは、外遊に出発する時の馬車の中だった。
3日後に森の番人を討伐し終えた後で″色々と奇妙な事″があった。
その数日後に″ヒュマノ聖王国″と国名を変えたのを今でも覚えているぜ。(レドリック)」


ヒュマノ聖王国の前身であるスパルティア国王ツェド・ガーランドとレドリックには交流等は一切無い。

だがツェドはクランとして活動していたレドリックを。
レドリックは国王としての政務活動を行っているツェドを端から見ていた為、全くの無知と言う事でもなかった。


「ほぅ、″あの時の事″を知っとるのか。
もしや後ろで待機しておる得体の知れない2人もその件絡みでこの場に集ったのかのぅ?(ツェド)」

「待ってくれ、″あの時″ツェドさんはこの国に戻ってきていたのか?(レドリック)」

「あぁ、外遊の日程が思った以上に早く終わったので馬車を走らせて早々に舞い戻って来たのだ。
確かヌシらは外で酒盛りとかしていなかったか?(ツェド)」

「丁度森の番人討伐直後だったんで小さいながら祝賀会を開いてたんだ。
…そうかあの時に…(レドリック)」


と、ツェドとレドリック間で何やら思わせ振りな会話が続く。
どうやらヒュマノ聖王国の成り立ちにも深く関わっていそうな内容であったが、ここでツェドが一旦話を区切る。


「ふむ。
ここだと何だ、城の中で話を整理しよう。
ナサケとやら。それとそこの2人(バラスとアルキラー)も中に来てくれ。(ツェド)」


ツェドは顎を振り、一行を城の中へと誘う。
レドリックとナサケ、バラスとアルキラーは、促されるまま入城、エントランスを抜け、2階へと続く階段の方まで足を進めた。





~王城・大階段~

ドカッ。

「っと…悪いが適当に座ってくれ。
茶の一杯も出せんがな。(ツェド)」

「「お構い無く。(バラスとアルキラー)」」


大階段にドカリと座り込んだツェドに続き、レドリック、バラスも瓦礫の少ない床に座る。

アルキラーとナサケは柱に凭れ掛かる様にして動きを止めた。


「さて、話の前に1つ聞きたい事がある。
お前ら、″さっきの反応に感付いて″ここにやって来たな?(ツェド)」

『『『『コク。』』』』


ツェドからの質問に4人全員が同時に頷いた。
直後ツェドからもう一言飛んで来た。


「″あの反応″について知っている事を話してくれ。出来るだけ詳細にな。(ツェド)」


ツェドが何か知っているのは間違いなく、4人としても知りたい情報であった為、全員知っている事を話す事にした。



・レドリックからは、10年前謎の人物の侵入の後に同様の魔力反応を感知。
当時はその反応が何なのかは不明であった事。
その魔力反応の後に″スパルティア″から″ヒュマノ聖王国″へと名前が変わり、色々とおかしくなった事。

・ナサケは謎の魔力反応について皆目見当が付かないが、明らかに異質な魔力反応である事は分かる事。

・バラス、アルキラーからは、今回の魔力反応が微弱ではあったモノの、近々に討伐した偽【魔王】軍のモノと酷似していた事。



「…って所かな。(レドリック)」

「なる程…
おヌシが言っていた″侵入者″と言うのは儂は遭遇しとらんが、恐らく内通者又は協力者なのだろうな…
で、″あの異質な魔力反応は【魔王】″のモノ…か…
それなら合点が行く、″あの時の奴″は確かに異質じゃったしな…(ツェド)」

「…なぁツェドさん、話してくれないかな?
出来るだけ詳細に。
勿論分かる範囲で良い。(レドリック)」

「そうさなぁ。
さっさと話して″この城の地下で蠢く存在″を確認に行きたいしのぅ。
儂の家族達が安心して寝れんからな。(ツェド)」


そうしてツェドは顎に手を当てながら話し始めたのだった。
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