ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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獣人国編~事後処理・決意・旅立ち~

閑話:【魔王】に関する出来事 その3(前編)

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~ノアが目覚めた日の夕方・某国~


「……。」

「…い、…ーク…
…目だ、これ…は……の…形ではな…か。
『…属の…輪』を1…外す…だ。」 

「は…。」

ガチャン!


目を開けていても閉じていても、昼であろうが夜であろうが視界は常に靄が掛かり殆ど見えていない状態であった。

背を押されれば前進し、どちらかの肩を押されたらそちらへと進む。
そういう玩具の様な操作でここまでやって来た。

周囲の音はまるで水中に居るかの様にくぐもって聞こえ、目の前で誰かが喋っていても単語でしか聞こえない状態である。

<聞き耳>を立てればもう少し聞こえるのだろうが、スキルを発動しようとしても首や手首、足首に着けられた『隷属の首輪』で色々と制限されてスキル所か腕を上げる事すら出来ないでいた。

そんな中、首に装着されていた『隷属の首輪』がガチャリと音を立てて外されると、今まで掛けられていた制限が幾分緩和された様に感じられたのだった。


「…っあ…こご…は…?(アーク)」


獣人国から数日が経ちその間閉口していた為か、喉が渇き上手く言葉が出てこない。
視界も幾分クリアとなり、周りの状況を確認出来る様になった。

だがそれは許されなかった。


「やぁ、お帰り。
ここはイグレージャ・オシデンタル、私達の故郷だよ【勇者】よ。」

「と、父さん…!?(アーク)」


状況が掴めていないアークの視界一杯に男性の顔、アークの父ゲッシュバルトが笑顔で立っていた。

が、笑顔の種類が違っていた。

アークと父が会うのは数年振りの事で、普通なら破顔し満面の笑みで出迎えるモノだが、ゲッシュバルトの笑顔は明らかに″悪巧み″をし、準備が整った時の様な醜悪な笑みを浮かべていた。


「…父さん…突然使いの者が来て無理矢理ここに連れてこられた…
一体何の用があって…
それよりも仲間達は何処だ!?(アーク)」

「あぁ済まない、抵抗するなら無理矢理にと私が言ってしまったのだ申し訳無い。
だが分かってくれ、今の私にはそれ程【勇者】が必要だったと言う事だ。(ゲッシュバルト)」


怒りの色を滲ませたアークだが父親であるゲッシュバルトはニタニタと笑みを浮かべたまま平謝りしている。


「【聖女】と他の仲間も一緒に連れて来ている。
だが今は別の場所に居るから安心しろ。(ゲッシュバルト)」

「…分かったよ父さん…
それで俺が必要だと言っていたが、一体何をすれば良いんだ?
俺はこれから迷惑を掛けた人達に謝罪「下らん。不要だ。これから【勇者】には″天命″を成して貰わねばならん。
そちらにだけ注力すれば良い。(ゲッシュバルト)」

「なっ!?(アーク)」


【勇者】アークは、仲間である【聖女】ミミシラ、【紅武士】アックスレイ、【死陣操糸】ヴォルフスティの3人が人質として捕えられているかも知れない状況を鑑みて、一先ずゲッシュバルトの要望を聞いてみる事に。

だが全て飲み込んでしまっては選択肢が失くなってしまうので、自分の中の今後の予定も盛り込んで交渉しようとしたが、ゲッシュバルトは聞く耳を持たず、アークの発言を直ぐに切り捨てた。


「どういうこ『ギシッ…』なっ!?体が動かな…(アーク)」


全て良い終える前に切り捨てられた為、食って掛かろうとしたアークだが、自身の体がピクリとも動かない事に違和感を覚え、そこで初めて自分の現状に気が付いた。

何とアークの両手に『隷属の首輪』が装着され、それによって体の自由が利かなくなっていたのであった。


「なる程、報せの通りだな。
『隷属の首輪』2つで体が拘束され、3つで人形も同然となるとは…
老い耄れの爺が5つ装着しても傀儡とならなかったと言うのに【勇者】として不甲斐ない…(ゲッシュバルト)」


ゲッシュバルトは顔を手で覆い項垂れつつ不服そうにしている。


「使いの者達に意図も容易く御されたと言う事は戦力も高々中級冒険者程度…
だが″【勇者】″は今!ここに居る!それだけでやり様は幾らでもある!(ゲッシュバルト)」

ギ、ギギ…

「な、何を言って…(アーク)」

「さっきも言っただろう?
【勇者】としての″天命″!″【魔王】討伐″を開始するのだ!(ゲッシュバルト)」

「は!?はぁっ!?(アーク)」


ほぼ一方的なゲッシュバルトの発言に、理解が追い付かないアーク。


「″大業を成せ″【勇者】よ!(ゲッシュバルト)」

「な…は…?(アーク)」

「低俗な下級貴族共に洗脳されていたのは腹立たしいが、″たかが100にも及ばない女共をマワした程度であろう″?
そんな者共の下へと赴き、謝罪していては時間が勿体無い!
それらはあくまで″過程″。万にも億にも及ぶ″大業と言う結果″を世間に知らしめればそんな過去等帳消しに出来るし、誰も文句は言えない!
洗脳騒動で離れた敬虔と低能紙一重な信者も戻って私の懐も温まるというモノよ!(ゲッシュバルト)」

「な、何を…何を言ってるんだ父さん…(アーク)」


アークの父ゲッシュバルトは、洗脳下にアークが方々で起こした案件を″【魔王】討伐″を成す事で全て無かった事に出来る、と声高々に持論を展開。
勿論アークの意見等聞いちゃいない一方的なモノである。

その後も″【魔王】に勝つ前提″の絵空事を捲し立てる様に言い放ち続けるゲッシュバルト。

当初は″【魔王】討伐″に関する話であったが、徐々に金銭が絡む話になり、″負けを取り戻す″とか″私には先見の明がある″等徐々に脱線していった。




『『『『『『『『『『『『ウォオオオオオオオオオオオオオオッ!』』』』』』』』』』』』

「な、何だ…!?(アーク)」

「…と、先走りおったな…?
おい【勇者】に首輪を着けろ!そして″例の物″を持ってこい、私らも行くぞ!(ゲッシュバルト)」

「は…。」

「ま、待って父『ガチンッ!』…(アーク)」


突如外から地響きと共に大勢の声が聞こえてきた。
相変わらず訳が分からないアークであったが、ゲッシュバルトは再びニンマリと笑みを浮かべ、待機していた者達へと指示を出して歩みを始めた。

アークの首に『隷属の首輪』が装着されると、忽ち体の自由所か声も発せられなくなり、顔は放心した様なモノとなった。


ドンッ!

スタスタ…


アークの背中に衝撃が走る。
これはここに来るまでの間に何度も経験している。

″行け″の合図である。

これに対してアークは何も反応が出来ない。
『隷属の首輪』の効果でその指示に従う事しか出来なかった。









「…ぞ、…せ。」

ガチャン!

ギィイイイ『『『『『『『『『ウォオオオオオオオオオオオオオオッ!』』』』』』』』』


再び誰かの話し声が聞こえ、首に着けられていた『隷属の首輪』が外され、意識が覚醒していく。

目の前には木製の扉があり、丁度見知らぬ男性が扉を開け放った所であった。

再び周囲の状況を確認しようと頭を働かせる間も無く、扉の開放と共に外から大音声が全身に叩き付けられた。

その後視界に入って来た光景に、アークは遂に思考が停止してしまったのだった。
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