ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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取り敢えず南へ編

要約:【鬼神】が居なくなったら襲えば良い

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~『ウォルタメ』から500メル程離れた川沿い~ 

バキッ!

「テメェ!
あそこの村は食料拠点に良い、っつって息巻いて奪取してくるハズだったろう!」

「だから手勢100人渡して任せたってのに、何故帰ってきたっ!?ふざけてんじゃねぇよ!」

「ま、待て、聞いてくれ!
あの村には今【鬼神】が逗留していやがったんだ!
あの″野盗200人殺し″の【鬼神】がな!」

「「「「「「な、何っ!?」」」」」」


新人冒険者のハインと装備の整った傭兵、その後ろを歩く″【勇者】軍″の集団は、村から離れたとある川にやって来た。

そこには、他の″【勇者】軍″と思しき2つの集団が待機していた。

それらの集団にはこれまた装備の違う面子が居り、何ともチグハグなパーティの集まりに見えた。 

傭兵が難しい顔で戻ってくるなり、2つの集団から1人ずつやって来て、傭兵をぶん殴った。
その光景にハインは怯えて固まり、口を閉ざしてしまった。

そんな中、口から血を出しながら傭兵が反論し、傭兵の口から″【鬼神】″と言う二つ名が飛び出すと、その場が一気に静まり返った。


「い、1時間以内に後退しないなら潰すって言ってきやがった!
剣を噛み砕いちまうし、ア、アイツは人間じゃねぇ!言う事聞いた方が良いって!」

「…何かの間違いじゃねぇのか?」

「見間違いじゃねぇ!前にアルバラストで見たガキに間違いねぇ!」
「あぁ、俺も見たぜ!」
「俺もだ!」
「話が違ぇぜ、楽な仕事のハズだろう!?」


どうやら″【勇者】軍″の中に当時アルバラストの街襲撃に参加していた者が居たらしく、その者達が間違いないと証言し出した。

するとそれが集団に伝播し、ドンドンと色めき立っていく。


「チッ、何たって【鬼神】が居やがるんだ!」

「喚いたって仕方無ぇだろ。
しゃーねぇ、俺が直に【鬼神】所行って休戦協定でも結びに行ってやるよ。」

「あ?ヘコヘコ頭下げて素直に言う事聞くってのか?」

「バーカ、あくまで一時的な措置だ。
流石に【鬼神】とぶつかるのはマズイからな。
【鬼神】がその村を去ってほとぼりが冷めたら襲えば良い。
それまでは穏便にしときゃ良いんだよ。」

「なーる程、流石【暗殺】クラン【死徒】のリーダー、″ヒュブラスカ″だな。
頭の回転が早ぇな。」

「うるせぇ、お前は逆に頭の回転が遅いんだよ【拳士】クラン【ノーキング】のノーキン。(ヒュブラスカ)」

「はっは!俺は計算は苦手だからなぁ。(ノーキン)」

(…【鬼神】と言えば、【暗殺】業界でその名を知らぬ程の存在である″バラス″、″アルキラー″と懇意にしてると言う…
そんな奴と事を荒立ててしまったら、この業界で生きていけない…
何がなんでも穏便に済まさなきゃならない…(ヒュブラスカ))


飄々とした様子だが、内心かなり焦っている様子のヒュブラスカ。
彼は″【勇者】軍″の第5次部隊を率いていた。

楽な仕事を、と軽い気持ちで参加する事になったのだが、彼は後々語り継がれる事になる″野盗200人殺し″改め″【勇者】軍500人潰し″の最初の1人となるのであった。





「ノーキン。
一応、一応『ウォルタメ』からこちらを見渡せる場所に位置して待機しておけ。(ヒュブラスカ)」

「あ?何でだ?(ノーキン)」

「俺が合図を送るから一斉に退く素振りを見せてくれりゃ良い。
それを【鬼神】が目撃すれば安心して村を離れてくれるだろう?(ヒュブラスカ)」

「なーる程、流石はヒュブラスカだ。頭の回転が違うぜ。(ノーキン)」

「うるせぇ、お前は逆に頭の回転が遅いんだよ。
…ってか、これ今日何度目だ?(ヒュブラスカ)」


一先ずのプランを立てた【暗殺】のヒュブラスカは、約束の1時間を迎える間際に、手勢を連れて『ウォルタメ』へと向かうのだった。





~『ウォルタメ』~ 


「…村人の総意は″村を明け渡すつもりは無い″だそうですぞ、ノア殿。(クリストフ)」

「まぁそうだろうね。」

「…分かっておられたのですね?(クリストフ)」

「そりゃね。
人ってのはさ、自分の村が水害でダメになろうが、不作で食い物に困ろうが、中々村を離れようとしないものなのさ。
今回みたく、″【勇者】軍″にこの村が襲われると分かっててもね。」

「うーむ…私の場合、繁殖出来れば何処でも、な所がありますからな…(クリストフ)」

「まぁ人によって理由は様々だけど、僕の場合は″思い出″かなぁ…
嫌な思い出も沢山あったけど、良い思い出もその分沢山ある。
恐らくザラットさんも同じ様な理由だと思うよ。」


クリストフと話していたノアが、ふととある民家の中に居るザラットを見る。
丁度ザラットは棚の前に立ち、手を合わせて何やら祈っていた。


「…亡くなったという家族との思い出が一杯詰まった村だから、そもそも″離れる″なんて選択肢は無いんだと思う。」





『『『ガガンガンガンガンッ!』』』

「さぁさぁ!皆急いで家の中に隠れるんだよ!
窓には板を打ち付けて、扉には棚でも何でも立てて外からの侵入を抑えるんだ!
旦那共は鍬や鎌等の農具を持ち込んで武器にしな!
妻や子供を奴等の慰み者にはしたくないだろう!(アレイ)」

「「「「「「「おぅ!」」」」」」」


民家が建ち並ぶ区画では、アレイ指示の下襲撃に備えての準備が進んでいた。
母親が子供を家の屋根裏や物置等に隠し、父親が窓等の開口部に板を打ち付けて補強する。

どの家庭でも同じ様な事が行われ、不安がっている子供が時折ノアの所にやって来るので、元気付けてやると少し安心した様に両親の元へと帰っていった。





「……。(ザラット)」

「…家族に…ですか?」

「あぁ…
″死んでも2人の故郷は守り抜いてやる″とな…(ザラット)」

「そんな…縁起でもない…」

「…今まで家族の姿を追い求めて馬鹿げた依頼や、勝負を申し出たあげく、″死にたがりのザラット″等という通り名が付いてしまった…
あの世に暮らす家族もさぞ呆れ返っているだろうな。(ザラット)」

「そんな事…」

「君に勝負を挑み、死に掛けてまで家族の姿を追う夫の姿等、見たくは無いだろう?(ザラット)」

「…それは…ん?」


死地を予感してか、多少自暴自棄な物言いとなっているザラットに、言葉が返せないノアであったが、ふとザラットが祈っていた棚に目をやる。

そこには、しわくちゃな紙に描かれた精密な絵が飾られていた。

その中では笑顔のザラットと、その隣で″小さな麦わら帽子を被った子供を抱き抱える白のワンピース姿の女性″が描かれていた。


「…この絵か?
俺と妻、息子の3人でフリアダビアに住んでいた時に【画家】に書いて貰った1枚なんだ。
…他にも【記者】に撮って貰った写真なんかもあったんだが、戦火で焼失してしまってな。
残っているのがこれだけなのさ。(ザラット)」

「…そうか…そういう事だったのか…
ザラットさん、ちょっと表に出て貰って良いですか?」

「ん…?構わんが…
作戦会議か何かか…?(ザラット)」


絵を見たノアは、深いため息と共に何かの考えに至り、ザラットに表に出る様に促した。

当のザラットは首を傾げつつも言われた通りノアの後に着いていき、表に出る。


「それでノア殿、一体な「失礼。」…は?(ザラット)」

『『ズズズ…』』

ザッ!『『ゾゾッ!』』ザンッ!(<無刀幻視>による超速の斬撃を見舞う音)

「っ!?…っ!っ!?」


表に出るなり<無刀幻視>を発動させて両手に剣を出現させたノアが、ザラットの直感力が働くよりも速く斬撃を繰り出し、首から上を4度も斬り付けた。

そのどの斬撃もザラットは反応出来ず、地面に膝を付いて崩れ落ちてしまうのだった。





「はぁ、はぁ…
と、唐突に何をするのだノアど…
え?ノア殿?ノア殿!?(ザラット)」


1度でも中々にしんどかった″死の恐怖″を4度纏めて食らい、ノアに食って掛かろうとしたザラットだが、起き上がった頃にはノアの姿は無く、何なら周囲に村人達の姿も無かった。


コッ…

「っ!
ノア殿!これは一体何の真ね…(ザラット)」


背後から足音が聞こえたので、その音の方へと振り向くザラットだが、そこに立っていた人物を見て思わず固まってしまった。


トテテテテ…

「おとーさ!」

「…ユー…なのか…?(ザラット)」

コッコッコッ…

「…あなた。」

「…エミ…(ザラット)」
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