ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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取り敢えず南へ編

閑話:【魔王】に関する出来事 その5

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~『南獄大陸』・縦坑~ 


スタッ!

「あ、お帰りなさい【魔王】様。
交易の方は上手く行きそうですか?(アリス)」

【まぁ最初だからねぇ。】

「ですよねぇ…
如何なされるおつもりですか?(アリス)」

【ドワーフ族が俺の知ってるドワーフなら、彼等と交易を結ぶ事は可能さ。
まぁそれまでは粛々と出来る事を進めていくまでだな。】


ドワーフ国『フェレイロ』に顔見せし、帰島してきた【魔王】アクロス。
交易を結ぶ所まで行かなかったが表情は変わらず、何やら考えがある様だ。


コッコッコッ…

【なんだ、掘り尽くして閉鎖されたと思っていたが、案外各種鉱石が残っているものなのだな。】

「『蟻竜兵スプラドルダート』と他の兵隊蟻が地中奥深くまで潜って探し出してくれたそうです。
かなり深く潜ったら鉄鉱石の鉱脈にも当たったそうですわ。(アリス)」

【それは助かる。
この辺の砂は黒く、鉄が多く含まれていそうだったから最悪砂鉄から鉄を生成しようと思っていた所だからな。】


集積所とは名ばかりの各種鉱石の山を確認した【魔王】アクロスは銅鉱石を手に取る。


【この世界の銅鉱石が我々の世界のモノと同じであれば【ブラックスミス(鍛冶匠)】の力で″簡略加工″が出来るのだが、はてさて…】

″銅鉱石の成分分析を実施中………………完了。
この銅鉱石は我々の世界のモノと何ら変わりありません、<簡略加工>を行使しますか?″


装備から発せられる音声によると、手にしていた銅鉱石は【魔王】アクロスが元々居た世界の物と何ら代わりは無い様であった。

その後<簡略加工>というスキルを行使するかの是非を問われると


【この世界で<スキル>を使う事自体初めてだがどうなるか…
頼むから石器時代同様の工程を踏むのはゴメンだぞ…
<簡略加工>を実行だ!】

″<簡略加工>実行。″

『『『バチィッ!』』』

   
<簡略加工>を実行した瞬間、【魔王】アクロスの手の中で強い光が発生。


『『『バヂヂヂヂッ!』』』

『『『ガラガラガラ…』』』

『『『ボロボロボロ…』』』


【魔王】アクロスを中心として、周囲に無造作に置かれていた他の銅鉱石が次々とアクロスの手の中に集まっていき、その後手の中からクズ石がボロボロと溢れ落ちていく。


『『『バヂヂヂヂッ!』』』

【…良いぞ…
こちらの世界でも<スキル>は問題無く発動出来る様だ。】


上手く<スキル>が発動するか半信半疑だった様子の【魔王】アクロスから笑みが溢れる。


『『『バヂヂヂヂッ!』』』

【…マフティー、お前が託してくれた<スキル>の数々、こちらの世界で使わせて貰うぞ。】

『『『バチィッ!』』』


一際激しく発光した直後、アクロスの手の中にあった銅鉱石は、銅インゴットへと変化していたのだった。





″銅インゴット生成。
不純物は殆ど無く、品質レベルは8の高品質となります。″

「上手くいきましたね、【魔王】様。(アリス)」

【あぁ本当にな。
これで<スキル>が発動しなかったら、銅インゴットを精錬する為の資材調達から手を付けなければならなかったからな。
だが喜んでいられないぞ?
まだ銅インゴットを1つ完成させただけだ、これと同じ事を鉄でも行い、<成形>、<組立>色々行わなければならない。
魔力消費が少ないとは言え、半自動化するまでが大変だぞ?】

「勿論尽力致しますわ。(アリス)」


<スキル>による銅インゴットの大幅な時間短縮生成に喜ぶアリスに苦笑いを浮かべるアクロス。

その後も『蟻竜兵スプラドルダート』とその兵隊蟻が運んでくる各種鉱石を次々にインゴットへと変えていくのであった。





『『『バチィッ!』』』

「そう言えば【魔王】様、先程呟いておられた″マフティー″とは何方でらっしゃいますか?(アリス)」

【近所に暮らしていた【ブラックスミス(鍛冶匠)】の女性だ。
俺が【魔王】となるべく、身体を改造する際、軍上層部は手当たり次第に戦闘系スキルを俺の身体に刻み込んでくるのに対し、彼女は生産系スキルを入れる様に願い出てきたんだ。】

「…それは何故です…?(アリス)」

【軍上層部には、″敵(人類軍)の戦略兵器によって石器時代レベルまで技術力を落とされた場合、槍や斧を作ってでも戦いに赴ける様に。″
なんて言ってたが…】

「本音は違ったのですか?(アリス)」

【俺には″今の状況でも辺り一面焼け野原なんだ、戦争が終結したら本当に石器時代になってるかも知れないし、生き残ってる人もそんなに居ないかも知れないでしょ?
滅ぼすだけじゃなくて、再建へと導いてあげるのも【魔王】ってもんじゃない?″って言ってたよ。】

「戦争後の事を考えておられたのですね。(アリス)」

【あぁ。】

「あの…その方は…(アリス)」

【……。】

「…申し訳ありません…(アリス)」

【いや、良いさ。気にしていない。】


無言。
言い換えれば、″言わなくても分かるだろう?″と言っているのと同義である。


【【魔王】と言うのはそれだけ、幾千人、幾万人の想いを背負っているという事だ。
例え異世界に飛ばされ、状況が一変したからといって、それらの想いを捨て去って余生を生きる事等出来んし、許されん。
故に元の世界で成せなかった事を成す事で初めて、背負った想いを降ろす事が出来るという事だ。】

「【魔王】様…(アリス)」


口調、表情は普段と変わり無いものの、その目には確固たる意志が宿っている。
本人の想いもあるのだろうが、ある意味これは【魔王】となった時に掛けられた″呪い″と言えるだろう。


【″【勇者】軍″か…クックック…
亜人(ドワーフや獣人)と違って俺の警告を無視して挙兵するとは良い度胸ではないか。
自分達がどれ程無力か、そして誰に向かって宣戦布告したのか身の程を分からせてやる必要があるなぁ…】


滅びの森から発つ際に放った警告を速攻で無視し、宣戦布告したイグレージャ・オシデンタルと【勇者】軍に対し、先程思い出話を語っていた時とは打って変わった様な邪悪な笑みを浮かべる【魔王】アクロス。


「それでは尚の事戦力を整えねば…
といきたい所なのですが、この銅インゴット大量生産は一体何の意図で行っているのでしょうか…?(アリス)」

【あぁ済まない、その説明をしていなかったな。俺達の装備はかなりの電力を食う。
通常は魔力を電力に変換して補っているが、その魔力も無限ではない。】

「そうですね。(アリス)」

【ドワーフ国と交易出来て″鉄″を得られたら、″コイル″→″電磁石″→″発電機″と段階的に作製して電力を賄おうと思ったんだが、現状は難しいのと、得られたとしても微々たる発電量しか賄えんのが目に見えている。
それで″代替案″を用意した。】

「″代替案″ですか?(アリス)」

【あぁ″アレ″を使い、無尽蔵に電力を生産してやろうと思っている。】

「″アレ″…?
えぇ…″アレ″でどうやって…(アリス)」


アクロスが指差した″アレ″を見たアリスであったが、その時はまだ理解が及ばなかったのだった。
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