ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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取り敢えず南へ編

閑話:【魔王】に関する出来事 その4

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~『南獄大陸』から5キロメル離れた場所にあるドワーフの国『フェレイロ』・海岸~


ザザァ…

「どうじゃ?何か動きはあるか?」

チキチキチキ…(×8の望遠鏡操作。)

「無い。やはり閉鎖した縦坑の中に居るようじゃな。
じゃが、長らく手付かず故地上には僅かに木々が生えとる位で、坑内の鉄資源は掘り尽くしたハズじゃが、拠点としての利用価値しか無いハズ…」

「銅はそこそこ残っとるじゃろうが、像か数世代前の刀剣を造る訳も無いじゃろ。」

「飯とかどうしとんじゃろか。」

「さぁな。
取り敢えず王から言われた通り監視を続け、″武力を行使してきた場合応戦″を守っぞ。
イグレージャうんたらかんたらみたいなアホな真似はせんでおけ。」

「「「「「ったり前じゃ。」」」」」


ドワーフの国『フェレイロ』の海岸線には、連日国民やら見物人に混じり、『フェレイロ』の【諜報】が『南獄大陸』に目を光らせていた。

それは勿論【魔王】の件であるのだが、恐ろしい程何も起きていない。

侵略行為所か姿すら見せない。
大方閉鎖された坑山内に潜んでいると思われているが、僅かな植生と少ない鉄資源位しか無い為、″実は既に死んでいるのでは?″等と言った噂が立っている程である。


パシャ…

「しかしどうする?
連日何の変化も無い。そろそろ『南獄大陸』へと渡り、調査に向かうが?」

パシャ…

「だなぁ…報告無しが続いているからか、王ももどかしくしちょるしの。」

パシャ…

「国民も不安がっちょる。
あまりの情報の無さに、陰謀論を唱える輩まで…」


と、そこまで話していた【諜報】のドワーフ達が『南獄大陸』の方へと視線を移すと、見た事の無い装甲を身に纏った人物が海面を歩き、ドワーフ達の下に迫っていた。


「ば…抜剣っ!!」

「「「「ぉ、おぅさ!」」」」

「野次馬は退けぃ!誰ぞ兵を呼んでこい!」


思わず護身用として帯刀していた剣を抜き、直ぐ様臨戦態勢に。
見物に来ていた野次馬は直ぐに後退していった。


パシャ、パシャ、ザフッザフッ…

『……。』


ドワーフ達が抜剣したにも関わらず、謎の人物は悠々と海岸に到着。
何故か足元の砂浜を確認していた。


「そ、そこな者よ!言葉は通じっか!?
主が【魔王】か!?」

「その兜(?)を取り、面を見せぃっ!」

『……。』


【諜報】のドワーフが意を決して謎の人物へと声を掛ける。
装甲で表情が窺えない為、装備解除を求めると


カチッ!ガシュッ!ガショガショッ!(首下のボタンを押し、フルフェイスヘルメットを解除。
首裏に収納されていく。)

「「「「「おおぉ…」」」」」


ドワーフ達の指示を受けた謎の人物(【魔王】アクロス)は素直にフルフェイスヘルメットを解除して素顔を晒した。


【名乗りもせずに失礼した。
あなた達が言った様に私は確かに【魔王】だ、【魔王】アクロスと言う。
″【魔王】″とでも″アクロス″でも好きな様に呼んでくれ。】

「ほ、本物か…?」
「だが情報にあった通りの特徴だぞ…?」


素顔を晒し、名を告げるとその場に緊張が走る。
対する【魔王】は無表情ではあるものの、声音は落ち着き、相手を不安がらせない様に努めている。


「人相はまるで″人間″と同じだなぁ…」

ピクッ。


ふと【諜報】の1人が発した何て事無い発言に、【魔王】アクロスは反応を示した。


【…申し訳無いが、見た目は殆ど同じとは言え、私の事を″人間″と言うのは止めて頂きたい。
詳しい事は言えないが、″人間″は私達にとって″怨敵″なのだ。】

「む…分かった、そうしよう…」


【魔王】側からの初接触で相手の機嫌を損ねる様な事はあってはならない。
後で王に伝え、国民にも広く伝える様に努めるだろう。


「…して、此度は何をしにここに来たのじゃ?」

「侵略か?」

【″人間″相手ならいざ知らず、あなた達にそう言った行いをするつもりは無い。】

「…なら、何をしに来たんじゃ?」

【ドワーフ族と″交易″をしたいと思って来たのだ。】

「「「「「こ、″交易″…!?」」」」」


【魔王】アクロスは、侵略行為等ではなくドワーフ国に″交易″を持ち掛けてきたのであった。





【こちらからは″我々に関する情報″を対価とし、そちらからは幾つか物資をお願いしたい。
何分こちらは金も無ければ、一握りの麦すら無い。
あなた方も我々の情報が欲しいハズ。
良い条件だと思うのですが…?】

「「「「「むむむ…」」」」」


確かに【諜報】としては【魔王】に関する情報は喉から手が出る程欲しい。
何せ今の今まで何の情報も得られなかったと言うのに、【魔王】の方からこちらに歩み寄ってきたのだ。

だからと言って【諜報】だけで判断できるモノでは無い。

王を通し、熟考したい所ではあるが、日を改めては機会を失う事に繋がってしまうかも知れず、即時決断する必要があった。




『『『ズズンッ!』』』

「【魔王】から接触があったとな!?
思わず″飛んで″来たわい!」

「お、王…!?」
「ちょ、護衛も付けずに…」

「じゃかぁしぃ!
相手も1人で来たんじゃろ!ならば儂も1人で行くんが良かろう!?
どうせ護衛は後から勝手に来るし、何ぞあれば斧でどうとでもなるわい!」


突然空から馬鹿デカい斧を担いだ、3メルもある馬鹿デカい髭もじゃなドワーフが降ってきた。

周りから″王″と呼ばれている事から、ドワーフ国国王であるのは間違い無いだろう。


「見た事無い造りの鎧を身に付けとるのぅ【魔王】とやら!
何ぞ″交易″したいと聞こえたが、叶えられんかったらどうするつもりじゃ?」
  
【何も。】

「ぬ?」

【得体の知れない相手においそれと関係を結ぶ事等不可能に近い。
それに初対面、初遭遇且つ相手は【魔王】だ。
トントン拍子に話が進まない事等ハナから分かっている事さ。
それに断られたからと言って実力行使に打って出る事もしないから安心して欲しい。】

「…断られると分かっていて、武力で以て奪いに来た訳でも無しに何故ここに来たのだ?」


相手が提示した交渉材料を逆手に取ってこちらのペースに持っていこうとしたドワーフ国国王だが、【魔王】に軽く流されてしまった。


【なに、ただの顔見せさ。
現在は放棄しているとは言え『南獄大陸』を使わせて貰っているのに挨拶周りの1つも無いのは失礼だろ?
出来ればあなた方とは良好な関係を持ちたいと思っている。
拠点としている『南獄大陸』は門扉等も無いから自由に調査して貰って構わない。
来訪を待っているよ。】

「ちょ、待

【″停止″。】


【魔王】アクロスは、踵を返して帰島しそうであった為、ドワーフ国国王が呼び止めようとしたが、気付いた頃には【魔王】の姿は忽然と消え去っていた。
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