ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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取り敢えず南へ編

<浄化>

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『ォアアアア…ゥヴァアアア…』ボダボダボダ…


黒い靄から斬り離したヴァンディットを抱き支えるノアの目の前には、″タールの様にどす黒く粘っこい液体を身に纏った巨大な人型″が液体を振り撒きながら地面に這いつくばっていた。

巨大な人型に目や耳は無く、呻き声を上げるだけの口だけがあり、どす黒い腕で匍匐前進をするかの様な姿勢で蠢く。

どす黒い腕からは噴水の様に黒い液体が噴き出し、辺り一面に黒い雨が降っていた。

これは先程ヴァンディットを黒い靄から斬り離す際に断ち斬った為である。

視えない者からはヴァンディットの周りに黒い靄が纏わり付いている様にしか見えないだろうが、本当は巨大な人型のどす黒い手で掴まれていたのである。

ノアはその手首を斬り落としてヴァンディットを解放したのである。

が、ヴァンディットの体には巨大な人型の返り血が付着しており、それによってヴァンディットは未だに苦しげな声を上げていた。


「くそっ!やっぱり″アイツ″をどうにかしないとヴァンディットは戻らないか!」

「ノア殿!あの靄と影には気を付けなされ!
物理攻撃は効かない様ですので!(クリストフ)」

ズザッ!ヴォンッ!

「っ!″靄と影″…?
そうか、2人にはそう見えてるんだな?」

「え?(クリストフ)」

ヴォ?


″視えない″クリストフとブラッツには黒い靄と黒い影の塊にしか見えないが、人間と同様の部位があった為、一応斬り離す事は可能であった。

だがこのどす黒い巨大な人型を排除しなければヴァンディットが正気に戻る事はないだろう。


『『『ズズズッ!』』』(力の制御解除・背中から赤黒い腕を生成。)

ガッ!ガシッ!(ヴァンディットの体を赤黒い腕で抱き支え、固定。)

「ノア殿何を!?
ヴァンディット殿は私の方で預りますぞ!(クリストフ)」

『まだヴァンディットは″ヤツ″に精神を掌握されている!また操られて串刺しにされるだろうから″ヤツ″を排除するまでは俺が預かっておく!』


力の制御を解除し、赤黒いオーラを立ち昇らせた後赤黒い腕を生成し、しっかりとヴァンディットを抱き抱えるノア。

と、そこに


バシャシャッ!

「な、何だあのどす黒い巨人は!?(シンプソン)」
「え!?黒い靄にしか見えないが…?(ヒューガ)」
「とにもかくにもあんなモノは今まで見た事無いぞ!?どこに潜んでいたんだ…?(ヒューマ)」


ノアの後を追ってきた教会関係者が続々と到着。シンプソンはノア同様に黒い靄の本来の姿が視えている様だが他の者達は視えていない様子。


バシャバシャ…

「ちょ、待って下さいよぉ…
ひっ!?な、何あれ…?(ソシエール)」


『っ!しまった!』

『『ぞぁああっ!』』(どす黒い腕がソシエールに向かって延びる。)


遅れてやってきたソシエールは、どす黒い巨大な人型を見て一気に恐怖の色を浮かべる。

それを感知したのか、巨大な人型は高速で腕を延ばしてソシエールを掴みに掛かる。


『【一神同体】発動!鬼神!彼らを遠ざけろ!』

ズズズ…

『あいよ。』ドシュッ!





「ひっ…!?(ソシエール)」

ズザンッ!

『お前ら邪魔だ。』

パパパパンッ!(超高速の掌底。)

「ふぐっ!?(シンプソン)」
「がっ!?(ヒューガ)」
「っあっ!?(ソシエール)」
「「ふべっ??(ヒューマ、ヒュージャ)」」


ノアから分離した鬼神は、どす黒い腕よりも速く教会関係者の下に到達し、手前に居る数人に超高速の掌底を放つ。

と言っても超高速で圧縮された空気の塊が命中しただけなので、大した怪我は無いだろう。


『霊が視えねぇ奴は下がってろ。
それに視えてても精神的な面で未熟なヤツも同様だ。
″アレ″に取り込まれてヤツの手駒が増えるだけだからな。』

『『『ズォオオ…』』』

「「「「「「…っ…」」」」」」


それだけ言うと鬼神の姿は霧散。

確かに鬼神の言う様に教会関係者を取り込むつもりだったのだろう″黒い靄″は、鬼神が間に入った事で延びていた黒い影が動きを止め、下がっていった。

″黒い靄・どす黒い人型″に恐れ戦き、何も対処出来なかった教会関係者はノアの動向を見守る事しか出来ずにいた。





バッ!バヒュッ!ゾフッ!(″どす黒い人型″が延ばす腕を次々に斬り落とす。)

(『おぅ主、人払いは済んだぜ。』)

『上出来っ!
これなら思う存分動けるなっ!』

パァンッ!(水面を駆ける音。)


ノアの中に鬼神が戻った直後、<水面渡り>を連続発動したノアは、沼地の水面上を高速で移動し、″どす黒い人型″を翻弄し出した。

先程からヴァンディットを取り返そうと腕を延ばす人型の腕を斬り落とし続けた事で分かってきた事がある。

それは、″本体から離れた部分は霧散していく″という事だ。

なのでノアは先程から闇雲に刀を振るっている訳では無く、徐々に徐々に人型を削ぎ、霧散させているのである。

だが


『ゥヴ…あぐっ!…ァ″ア″…(ヴァンディット?)』


ノアが高速で動く度に抱き抱えているヴァンディットが苦しそうにしている。
時折普通の声音が漏れている事から、人型からの精神掌握は解放に向かっているのだろうが、ヴァンディット自身の体が高速戦闘に耐えられないのだと思われる。


『アア″アア″ア″アアッ!』ズォオオッ!

『ァ″ア″ッ!ア″ァア″ッ!』『『ドドドッ!』』

ドッ!ドスッ!ブスッ!ザクッ!(血針が腕や肩に刺さる。)


どす黒い人型からの攻撃が激化し、精神掌握しているヴァンディットを介しての攻撃も頻度を増している。

この事から″どす黒い人型″は中々仕留められないノアに焦りを感じている様子。

だが、継続的な戦闘はヴァンディットに負担を掛けるだろうし、早く正気に戻さなければ精神的にも宜しくない。

それに


ガクッ!ザプンッ!

『っと…血を流し過ぎたか…!』


いくら赤黒いオーラを体に纏わせているとは言え、ヴァンディットを介した物理攻撃によってノアの上半身の至る所が傷付き、流血している。

それによって<水面渡り>が上手くいかずに沼地に足を取られてしまった。


『…あまり時間は掛けられないな…
何か良い手は…あ。』


と、ここでノアが何かを思い出す。


(そう言えば昨日エミさんから″<浄化>″ってスキルを教えて貰ったよね?)

(『そういやそうだな。
確か″悪霊やアンデットの類い″に効果があるとか言ってたな。』)

(貰ってからまだ1度も試してないけど、使ってみようと思うんだけど…?)

(『良いんじゃねぇか?
この状況を打破出来る1番の近道になりそうだしな。』)


前日、今は亡きザラットの妻、エミから<浄化>と言うスキルを貰った事を思い出す。

ノアは昔から1度どこかで試してから実戦で使用していたので、その癖ですっかり忘れていたのだった。


『…それじゃあエミさん、有り難く使わせて貰いますよ。″<浄化>″!』


鬼神と協議し、ぶっつけ本番で伝授されたスキル″<浄化>″を、″どす黒い人型″と精神掌握されたヴァンディットへ向けて発動するのであった。
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