ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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取り敢えず南へ編

虫の知らせ

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~数分前~


バッ!ボボボッ!ボボッ!バォッ!(拳と蹴りによる連撃。)

「ふぉおおおおっ!
全部見切られて避けられてるぅううっ!(ソシエール)」

「いやいや、『スッ。』良いスジしてますよ。
『スッ、スッ…』大振りばっかりなのでもう少しコンパクトに攻撃出来れば『スカッ。』冷や汗位はかくと思いますよ。『スッ。』」

「ぁあああんっ!涼しい顔で回避されつつ冷静に評価してるのが悔しいのに手も足も出ないぃっ!
しかも最終的にナメられてるし!(ソシエール)」


シンプソンの意識を飛ばしたノアは、そのまま<無刀幻視>製の鉈を手にして教会関係者達へ強襲を仕掛ける。

何人かはたじろいでいたが、意外にも即座に反応したのは、修道女のソシエールで、手には十字が彫られたナックルを装備。
足にはこれまた十字が彫られた金属製の装具が装着されていた。

ソシエールは【拳士】の派生適正である【格闘神士(カクトウシンシ)】で、清められた装具で悪霊やアンデットを殴打する事で絶大なダメージを与える事が可能となる。

だが実戦経験が乏しかったからか、大振りな攻撃が多く、予備動作には行った段階でノアに先読みをされて悉く回避されてしまった。


「シッ!(ソシエール)」ボッ!(上段蹴り。)

ガッ!「あっ!?『ガシッ!』『ブォンッ!』(ソシエール)」


それでも諦めずにノアの顔目掛けて上段蹴りを繰り出すが、軸足に足を掛けられ体のバランスが大きく崩れる。

藁をも掴む勢いで伸ばした腕をノアに掴まれ、宙に放り投げられてしまった。


「はい、″覚悟″して下さいね?」

「しまっ…(ソシエール)」バッ!


<無刀幻視>製の鉈を手にしたノアがそう呟くと、ソシエールは無意識的に両腕を交差させて防御をするが


ゾリッ!

「っひぃっ!?(ソシエール)」


防御のつもりで交差させた腕ごと腹部を断ち斬られる感覚に襲われたソシエールは思わず悲鳴を上げてしまった。


タッ、へにゃ…

「ハッ、ハァッ…ハァッ…(ソシエール)」ガクガク…


勿論<無刀幻視>である為本当に斬られた訳ではないのだが、刃紋までくっきり見える程に精巧に現された鉈と、実際に刃物を持っていると思わせるノアの動作、気迫、振りによって生じた風圧で本当に斬られたかの様に演出され、ソシエールは何とか着地したものの、腰が抜けてその場に崩れ落ちてしまった。


「大丈夫です?」

「う、動いたら漏らしそうです…(ソシエール)」

「そうですか。なら及第点ですね。」

「あっす(ありがとうございますの舌足らず版)…(ソシエール)」


座り込むソシエールに及第点を告げたノアは視線を前へと向け、次なる者達へと対峙するのであった。


「ふっ!(ヒューガ)」ヒュッ!
「シッ!(ヒューマ)」ボッ!
「っらっ!(ヒュージャ)」シャッ!

「おおっ。」パパンッ!パシッ!

「ぬおっ!?俺達の三連撃を全ていなすか!(ヒューガ)」


【聖騎士(パラディン)】三兄弟はグラディウスと呼ばれる長剣を手に、3方向からの同時攻撃を仕掛けながらノアへと迫っていたが、それに合わせて切っ先を叩いて軌道を逸らす。


ヒュオッ!ヒュババッ!(三兄弟に向けて鉈を振るう。)

チッ。「ぬぅっ!?(ヒューガ)」
チリッ。「ふっ!(ヒューマ)」
ヂッ。「うぉっ!?(ヒュージャ)」

(お、流石【聖騎士(パラディン)】だけあってちゃんと剣の軌道を見てしっかり避けてるね。)

(『普段から3人で訓練しているんだろうな。』)

グリッ!(肩を捻り拳1つ分リーチを伸ばす。)

ヒュバババッ!(3人に再度剣撃を見舞う。)

ゾッ!「うっ!?(ヒューガ)」
ズッ!「げっ!(ヒュージャ)」
スパッ!「ぅあっ!?(ヒューマ)」


しっかりノアが放った剣筋を読んで回避した3人であったが、僅かにリーチを伸ばしたノアによる再剣撃が3人の太腿を襲う。
回避しきった後だった為、3人は共に回避する事が出来なかった。

勿論<無刀幻視>である為(以下略)


ジャリ…

「お?」ンザッ!


追撃を行おうとしたノアだが、突然回避行動を取る。
その直後


ドカカカッ!(4本のレイピアが突き刺さる。)

「くっ!避けられたか…!
抜け目が無いな…!(シンプソン)」


数瞬の気絶から復帰したシンプソンも【聖騎士(パラディン)】三兄弟の下に集結。
戦闘に参加するのであった。


「済まない、彼を甘く見過ぎていた。(シンプソン)」

「いや、こっちもだ。(ヒューガ)」
「これが噂通りの【鬼神】ってヤツか。(ヒューマ)」
「同時でダメなら時間差で行くぞ。(ヒュージャ)」

『『『『ダッ!』』』』


合流した後、言葉少なめに戦法を告げて再度斬りかかる4人。


(4人での同時攻撃か…さてどう出

<アア″ア…>

(!)
(『!』)


向かってくる4人にどう対処するかを考えていたノアだが、<聞き耳>に聞き馴染みのある、だが苦しげな声が聞こえてきた。





「おおっ!(シンプソン)」ボッ!


シンプソンはノアの顔面目掛けてレイピアによる突きを放つ。
その後のノアの動作に直ぐに対応出来る様に横薙ぎに移行出来る突きだ。


(迎撃?防御?回避…?
どっちだ、どれで対応してくる?(シンプソン))

「……。」

(…?動かない?
このままでは顔面に直撃だぞ?(シンプソン))

「……。」

(ちょ、全く動かない!?
マズイ!このままでは…!(シンプソン))


突きを放ったがノアは微動だにしない為、シンプソンは剣先を僅かに逸らす事しか出来なかった。


ズバッ!ブシュゥウッ!(レイピアが頬を浅く斬り、出血。)

「「「え…?(三兄弟)」」」

「ちょ…大丈夫…(シンプソン)」


ノアが攻撃を受けた事に驚く【聖騎士(パラディン)】三兄弟と、心配するシンプソンであったが、ノアの表情を見て思わず絶句した。

何せ、シンプソンの放った突きをかわす事無く頬の肉が割れてボタボタと出血しているが、それを気にしていないのか、ノアは微動だにせず全く別の方向を注視していたからだ。

そしてその直後


『『ドォオオ…』』

「!?何の音『『バガァアッ!』』っおおっ!?(シンプソン)」

「「「うぉっ!?(三兄弟)」」」


沼地の奥から轟音が聞こえたかと思うと、今まで微動だにしなかったノアが軽石橋を砕く程の脚力でもって駆け出し、奥へと向かうのだった。

そして現在に至る。





「ノア殿!(クリストフ)」

「あぁ任せろ!
大丈夫かヴァンディット!」

『う、あ…あ″!アア″アア″アアアッ!(ヴァンディット?)』

『『『ドシュシュシュシュッ!』』』(ヴァンディット?の左腕から血で形成された針が幾本も飛び出す。)

ドスッ!ザクッ!ブスッ!ドッ!ドスッ!(防具以外の露出部に次々に突き刺さる。)

「…っ…!」

「ノア殿!?(クリストフ)」


黒い靄からヴァンディットを引き剥がし、左手で支えていたのだが至近距離で血の針が飛び出し手や首、顔に何本も突き刺さる。

が、ヴァンディットから手を離す事はしなかった。

良く見ればまだヴァンディットの体には黒い靄が僅かに纏わり付いていた。

少しの間声音は戻ったが、黒い靄がヴァンディットの体に再び纏わり出すと、苦しげな声を再び上げていた。


ボタボタ…

「くそっ!やっぱり″アイツ″をどうにかしないとヴァンディットは戻らないか!」

「ノア殿!あの靄と影には気を付けなされ!
物理攻撃は効かない様ですので!(クリストフ)」

ズザッ!ヴォンッ!

「っ!″靄と影″…?
そうか、2人にはそう見えてるんだな?」

「え?(クリストフ)」

ヴォ?
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