ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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取り敢えず南へ編

憑依?

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ウワァアアア…ヒィイイイ…(遠くで聞こえる教会関係者の悲鳴。)


「どうどう。どうやら始まった様ですな。(クリストフ)」

ヒヒン。(沼馬)

「皆霊が見える様になると良いですねぇ。
どうどう。(ヴァンディット)」

ブルルルッ。(沼馬) 

「済みませぬな、思ったよりも沼馬の数が多く手伝わせてしまって。
どうどう。(クリストフ)」

「いーえー、この沼馬さん達お利口さんですから誘導が簡単で良かったです。どうどう。(ヴァンディット)」

ヒヒン。(沼馬)


ノアと教会関係者達が戦闘している場所から少し離れた沼地エリアの奥では、沼馬達を巻き込まない様にクリストフの方で誘導を行っていた。

だが思ったよりも沼馬が生息していた為(約60頭)、ヴァンディットも協力し、軽石橋の上から誘導していた。


モシャモシャモシャモシャ。(水草を食む音)

「食欲旺盛ですなぁ、水草がみるみる無くなっていきますぞ。(クリストフ)」

「その食欲があるからこれ程すくすく育つのでしょう。
見て下さい、脚の筋肉がかなり発達していますよ。(ヴァンディット)」



沼馬…アンテイカーの沼地に生息するモンスターではあるが、見た目は普通の馬と差程変わりない。
だが、沼地で鍛えられた強靭な脚力のお陰でどんな泥濘でも走破出来る筋肉を搭載しているので、荷馬車で商いをしている旅商人の間で近年人気を博している。



沼馬を誘導しつつ肢体を観察して時間を潰す2人であったが


ヒヒン。グイグイ…

「待った待った。
あちらは今危ないので、この辺りで辛抱して下されよ。(クリストフ)」

ブルルルッ!

「どうしたのでしょう…
皆さんここから奥へ行こうとしませんね。
さっきまであんなに素直に進んでくれてましたのに…(ヴァンディット)」


沼馬を奥に誘導していたのだが、ある一定の所まで行くと皆脚を止め、寧ろクリストフとヴァンディットを押して街の方まで戻ろうとしていた。


「どうやらここから奥へは行きたがらない様ですな。
えーっと、この奥には何が…ん?洞窟ですかな…?(クリストフ)」


『          』


「え?…あ、本当ですね。
よーく見てみるとぽっかりと口の空いた洞窟が見えますね。
もしかして何かモンスターが棲み付いているのでしょうか。(ヴァンディット)」


『………タ…』


「かもしれませぬな。
後で街に戻ったら伺ってみましょう。(クリストフ)」


『…ヒタ…ヒタ…』


「そうですね。
…あれ?″ボク、どうしたのそんな所で″?(ヴァンディット)」


『ヒタヒタ…ピタッ.』


「…え?″ボク″?
こんな所に子供が居たのですか?(クリストフ)」


『…ア″ー…』


「…え?『ゾゾゾ…』エ…?え、エェ…(ヴァンディット?)』

「ん?ヴァンディッ『『ドゴォッ!』』


ヴァンディットからの返答が無かったので再度聞き返したクリストフだったが、彼の左半身に強烈な衝撃が襲い、10メル以上も吹き飛ばされてしまった。


ヒヒィインッ!
ヒィンッ!
ブルルルッ!?
ヒヒィンッ!

ドガァッ!バギバギッ!(大木に激突)

「ぬぅ…、何だ今のは…
ヴァンディット殿何……何だあれは…?(クリストフ)」


沼馬達が逃げ惑う中、木に激突するも、むくりと起き上がったクリストフがヴァンディットの方を見る。

するとそこには得体の知れない光景が広がっていた。


『『『ズズズ…』』』

『アア、ア″アアア″ア…(ヴァンディット?)』


ヴァンディットの足下には真っ黒い影が一面に広がり、影の中から血管の様な筋が足を伝ってヴァンディットの左半身を包んでいた。

血管の様な筋は顔にまで達し、左目は真っ黒に染まり、体の自由が利かないのか苦しそうな声を上げていた。

そしてヴァンディットの背後から真っ黒な靄が立ち昇り、全身を包んでいた。


「…霊とやらが見えない私ではありますが、これだけはハッキリ言える…
これは″悪霊″というヤツですな!(クリストフ)」

ズォッ…

ヴォンッ!ヴォンッ!グルルルルッ!ズダッ!

「ブラッツ殿!何を!?(クリストフ)」


ヴァンディット?自身の影から眷属の狼ブラッツが勢い良く飛び出してきた。

2、3度吠え、唸り声を上げた後にヴァンディット?へと飛び掛かる。


ガルルルルッ!『『バフォッ!』』『『バフッ!』』(黒い靄が僅かに霧散。)

「おおっ!僅ではありますが靄が剥がれてますな!(クリストフ)」


黒い靄に飛び掛かったブラッツが大口を開けて靄に囓り付くと、僅ながら靄が霧散。
どうやら物理的に靄を剥がす事は出来る様だ。




『ア″ア″アアアアアッ!(ヴァンディット?)』

『『『『バシャァアッ!』』』』

「っ!?″血″!?(クリストフ)」

『『『『『ヒュドドドドドッ!』』』』』


黒い靄に包まれたヴァンディットが悲鳴じみた声を上げると、血管の様な筋に包まれた左手から鮮血が噴き出し、細く鋭い槍状になってブラッツとクリストフに迫る。


『『『ドドドドドドドッ!』』』グルルルルッ!

バッ!バババッ!(身のこなしと足捌きで回避)

『『『ドカカカカカカッ!』』』(血の槍が地面に次々と突き立つ。)

「ヴァンディット殿!ヴァンディット殿!
聞こえておりますか!?
くっ…何か得体の知れないモノに憑かれているとはいえ、相手はヴァンディット殿だ…
迂闊に手出しが出来ん…(クリストフ)」


眷属であるブラッツは血液で体が構成されているので槍状の血液に次々体を貫かれるのも構わず、靄を剥がすのを止めなかった。

対して自前の能力で全て回避したクリストフだが、相手がヴァンディットである事から次の一手をどうするか決められずにいた。




「いや、待てよ…
あの″影″が悪さしているのであれば…『ゴソゴソ』
ブラッツ殿!少し眩しくなりますぞ!『明々テング(アカアカテング)』!(クリストフ)」

ヒュッ!『『『バシュゥウッ!』』』

『『『ジュワッ!』』』(靄が大きく霧散。)


ヴァンディットの足下に広がる一面の黒い影が悪さしていると思い、『明々テング(アカアカテング)』というキノコをヴァンディットの頭上に放り投げ、天頂から煌々とした光が降り注ぐと、足下の黒い影が大きく霧散した。




『『『『『ズズズズズズ…』』』』』

『アアア″アア″アアッ!』

「くそっ!霧散させても直ぐに元の大きさに戻ってしまう!他に何か手は…(クリストフ)」


光が収まればヴァンディット?の足下の影は元通りの大きさに戻ってしまう。
ブラッツとクリストフで靄を霧散させたものの、回復力の方が明らかに凌駕していた。


ヴォンッ!

「っ!?何ですかブラッツど…
…お早いお着きで…心待にしておりましたぞ!(クリストフ)」


突然ブラッツが一鳴きし、クリストフが何事かと周囲を確認すると、こういった事態の時に駆け付けると非常に頼もしい人物が文字通り飛んできた。


「離脱しろブラッツ!」

ヴォンッ!ズダッ!

『『バフォッ!』』『ガシッ!』


ブラッツがヴァンディット?から離脱した直後、ヴァンディット?の周りに纏わり付いている靄を払うかの様に荒鬼神ノ化身を振るったノアが斬り込んで来た。


「ノア殿!(クリストフ)」

「あぁ任せろ!」
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