ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

.

文字の大きさ
968 / 1,124
ヴァリエンテ領・大規模氾濫掃討戦編~街(前哨基地)建設~

閑話:【魔王】に関する出来事 その13

しおりを挟む
~南獄大陸・縦穴~


「…ハッ…!
ここは何処…くそっ…そうだ、【魔王】を名乗る奴に拐われて…あ、あああ…」

『ガギガギガギ…』(『女鏖蟻・テンタクルイーリス』の鳴き声)


先日、【魔王】アクロスによってなす術もなく捕らえられた【勇者】軍の1人の女性が目を覚ます。

以前目覚めた時は魔力枯渇状態であった為、意識も朦朧としていたが、現在は魔力も十分で体調的には問題無い。

だが自身が磔にされている縦穴の壁面はちょっとやそっと力を込めた位ではビクともせず脱出は難しい。

例え抜け出せたとしても、遥か頭上には巨大なモンスター『女鏖蟻・テンタクルイーリス』が目を光らせている為、その姿を見た女性は絶望と嗚咽混じりの悲鳴を上げた。


『ガギガギガギ…』

「チッ、クショウ…高い所から見下しやがって糞虫がぁ…!
相手は高々デカいだけの″虫″!
私の業火で焼き付くして『キィイイン…』」


感情が読み取れない鳴き声を上げながら見下ろす『女鏖蟻・テンタクルイーリス』に苛立ちを見せた女性は、焼き殺してやろうとばかりに自身の魔力を練って炎魔法を放とうとした。




【馬鹿が。】

『『『ドグンッ!』』』(胎動)

「ぅべぇっ…!?」


体内の魔力を練った瞬間、自身の腹部全体が蠢く様な感覚が発生。それと共に練っていた魔力が消失し、強烈な脱力感が襲う。

女性はそれまで気にも留めていなかった自身の腹部に注視してみると、そこには恐ろしい光景が広がっていた。


『『『ボゴボゴボゴッ!』』』(体内で″何か″が蠢く)

『ァァ…あぁ…』『ぇへぇへぇへ!』(蠢く″何か″の鳴き声)

「いやぁああああっ!『『ミチミチミチッ!』』痛い痛いい″だい″ぃ″ぃ″ぃ″っ!」


【そりゃ″魔力を流して『出産』を早めた″んだから痛いに決まっている。
急に高濃度の魔力が流し込まれたから″中の子″は元気一杯だぞ。】


自身の数倍も膨れ上がった腹部の薄皮一枚下に、薄黒く″絶対に人間ではない何か″が蠢いていた。

しかも今正に腹を破って産まれてこようとしている。


「あああああ『ブシュッ!』ああっ!ぃやあ『ドシュッ!』あああああ『ブスッ!』ああっ!!!!」


【自然分娩なら″幾分マシ″に″苗床″として機能したものの…
まぁ2/3は無事なだけまだ良いか。】


女性の悲鳴と同調するかの様に、腹部からは″中″に居る″何か″の触腕が断続的に突き出し、外に飛び出そうとしていた。


【″産まれ落ちた者″は回収し、俺の所に連れてこい。
死んだ苗床は…まぁ好きにしろ。】

『『『ガギギ!(兵隊蟻)』』』


アクロスは女性の行く末を見る事無く兵隊蟻に指示を出してその場を後にした。


「死″ぃ″い″『ザクザクッ!』死″に″ぃ″だぐなぁっ『『バヂュンッ!』』

『『ヴォオ″オ″オ″オ″オ″オ″オオ″ ッ!』』


縦穴全体に響き渡りそうな絶叫を上げながら抵抗する女性であったが、その絶叫を掻き消さんばかりの咆哮を上げながら腹部を突き破る″何か″。

これと同じ出来事が今日だけで数十件発生。
元【勇者】軍は【魔王】と『女鏖蟻・テンタクルイーリス』によって人知れず立派に苗床として天寿を全うするのであった。





~『南獄大陸』から5キロメル離れた場所にあるドワーフの国『フェレイロ』・海岸~


ザフッ!(着地)

「むぉっ!?ま、【魔王】いつの間に!?」
「遂に攻めて来よったか!」
「者共!出会え!出会えぃ!」

【待った待った、俺はこの間の″返事″を聞きに来ただけだ。】

「「「む!?」」」

【″【勇者】軍をどうにかする。
その代わり私と貴国との関係を前向きに考えてくれ″。
的な事をこの間ドワーフ国国王のシトルベって方に伝えたハズだが。】


ドワーフ国の【諜報】達の前に忽然と現れた【魔王】アクロス。
数日前に地下で交わした話を進めようとやって来た様子。

ドワーフ国からしても目の上のたん瘤であった【勇者】軍を″処理″する代わりに、友好関係を築きたいというもの。




「…国王シトルベ様より話は窺っておる。
秘密の通路を通り王城へと向かう。着いてくるが良い。」

【お?国交を結べるのか…?】


前回前々回同様、門前払いを食らうものと思われたが、唐突な王城への誘いに【魔王】アクロスは驚きを隠せなかった。


「逸るで無いぞ?
あくまで王城へと向かうというだけで友好関係を築けるかどうかは話は別じゃ。」

「世相を鑑みてお主との付き合い方をどうするかはシトルベ様が決める。
さ、行くぞ。」

(【世相、ねぇ…】)


今現在、【魔王】に対する世相は東西で二分されていた。

単純に【勇者】軍により直接的な被害を受けたかどうかで決まってくるのだが、被害をモロに受けた地域や国からは、半ば英雄視している所もあり、被害を受けていない東側諸国(獣人国を除く)からは排除・早期に討伐せよ、等の声が上がっている。

だが声高々に言いつつも、東側諸国は何処も挙兵しようとはしない。
皆イグレージャ・オシデンタルの二の舞にはなりたくないからである。

古来より絶対悪として忌避されている【魔王】ではあるが、言い付けさえ守れば力を振るわない絶対悪と、数百億規模の被害を出し続けた【勇者】軍とでは世相がどっちに傾くかは想像に難くない。

この状況で【魔王】討伐に向けて挙兵しようものなら批判の集中砲火を食らう事は確実と言えるだろう。


(【…まぁ友好関係を築ける事は無いだろうが、少なくとも国交については一歩前進と見てまず間違い無いだろう…】)


【諜報】達に促された【魔王】アクロスは、この日ドワーフ国国王シトルベの待つ王城で謁見する事となる。

シトルベは後に世間に向けて【魔王】とは″中立″の位置を取る事にした。
つまりは【魔王】に対して事を荒立てる事はしないと誓った事になる。

友好関係とは程遠く思えるかもしれないが、これによって交流の機会が増える事になるので、【魔王】アクロスとしては満足の行く結果になった事だけは確かである。





~旧イグレージャ・オシデンタル・【勇者】アークの生家跡地~


『『ガラガラ…』』『ガシャッ…』『『ガゴゴ…』』(瓦礫を掘り進める音)

「お、おーいっ!また生存者を見付けたぞっ!(王都の隊員)」

「おおっ!でかした!
こっちに人を集めろ!急げ!(ベルドラッド)」

「「「「「おおおっ!」」」」」


同時刻旧イグレージャ・オシデンタルでは瓦礫の山と化した旧市街地を、王都から派遣された隊員達が休まずに生存者の捜索が進められていた。


「対象は老齢の男性!衰弱しているが息はあるぞ!(王都の隊員)」


この日別の場所で冒険者数名の発見に加え、此度の男性の発見に現場は湧く事になったのだが


「う…ぅ…(ゲッシュバルド)」
しおりを挟む
感想 1,255

あなたにおすすめの小説

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

元公爵令嬢は年下騎士たちに「用済みのおばさん」と捨てられる 〜今更戻ってこいと泣きつかれても献身的な美少年に溺愛されているのでもう遅いです〜

日々埋没。
ファンタジー
​「新しい従者を雇うことにした。おばさんはもう用済みだ。今すぐ消えてくれ」  ​かつて婚約破棄され、実家を追放された元公爵令嬢のレアーヌ。  その身分を隠し、年下の冒険者たちの身の回りを世話する『メイド』として献身的に尽くしてきた彼女に突きつけられたのは、あまりに非情な追放宣告だった。  ​レアーヌがこれまで教育し、支えてきた若い男たちは、新しく現れた他人の物を欲しがり子悪魔メイドに骨抜きにされ、彼女を「加齢臭のする汚いおばさん」と蔑み、笑いながら追い出したのだ。 ​ 地位も、居場所も、信じていた絆も……すべてを失い、絶望する彼女の前に現れたのは、一人の美少年だった。 ​「僕とパーティーを組んでくれませんか? 貴方が必要なんです」  ​新米ながら将来の可能性を感じさせる彼は、レアーヌを「おばさん」ではなく「一人の女性」として、甘く狂おしく溺愛し始める。  一方でレアーヌという『真の支柱』を失った元パーティーは、自分たちがどれほど愚かな選択をしたかを知る由もなかった。  ​やがて彼らが地獄の淵で「戻ってきてくれ」と泣きついてきても、もう遅い。  レアーヌの隣には、彼女を離さないと誓った執着愛の化身が微笑んでいるのだから。

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

妹が聖女の再来と呼ばれているようです

田尾風香
ファンタジー
ダンジョンのある辺境の地で回復術士として働いていたけど、父に呼び戻されてモンテリーノ学校に入学した。そこには、私の婚約者であるファルター殿下と、腹違いの妹であるピーアがいたんだけど。 「マレン・メクレンブルク! 貴様とは婚約破棄する!」  どうやらファルター殿下は、"低能"と呼ばれている私じゃなく、"聖女の再来"とまで呼ばれるくらいに成績の良い妹と婚約したいらしい。 それは別に構わない。国王陛下の裁定で無事に婚約破棄が成った直後、私に婚約を申し込んできたのは、辺境の地で一緒だったハインリヒ様だった。 戸惑う日々を送る私を余所に、事件が起こる。――学校に、ダンジョンが出現したのだった。 更新は不定期です。

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない

あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」 孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。 だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。 1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。 スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。 それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。 それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。 増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。 一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。 これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

処理中です...