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ヴァリエンテ領・大規模氾濫掃討戦編~万死一生~
あっちゃこっちゃ
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~旧イグレージャ・オシデンタル、現【魔王】占領地・巢内部~
ウワァアアア…
ブヂュルル…
【兵隊蟻の繁殖状況はどうだアリス?】
「捕獲した【勇者】軍の苗床によって週1のペースで産み出されていますので順調に数を増やしておられますよ【魔王】様。
ただ、その内の1/10程の苗床は出産時の苦痛と発狂により、産まれて直ぐの子に食い殺されておられますが…(アリス)」
【ほぉ、そんなにか。】
「大半は生涯子を産む機能を持つハズの無い男で、目の前で起こる状況を受け入れる事が出来ない様子。
女の方はその辺耐性がございますが、気を狂わせて人の子だと思い込む様にして何とか意識を繋ぎ止めております。
が、持って2ヶ月といった所でしょう。(アリス)」
キャァアア『ブシャ』
【ふむ。一月持てば良いと考えていたが、それは嬉しい報告だな。】
所変わってここは旧イグレージャ・オシデンタル現【魔王】占領地。
その地に幾本か屹立する巨大な巣の内部。
先月【勇者】軍の敵対行動を受け、報復としてイグレージャ・オシデンタルを壊滅させ、瓦礫の山と化した占領地を、元【勇者】軍と共に有効活用している所である。
南獄大陸だけでは手狭であった為、【勇者】軍の何割かを移動させ、壁面に磔て苗床としている。
時折苗床の悲鳴と水っぽい音がセットとなって巢内部に響き渡るが、【魔王】アクロスと配下のアリスにとっては日常である為環境音としか認識されていない。
「そういえば【魔王】様、各地に探りを入れていた兵隊蟻から報告が上がりまして、東側の各国で不穏な動きが出ているそうです。(アリス)」
【ほぅ?】
「この地より西側にあるヴァリエンテ領で過去最大規模の大氾濫が発生していると言うのはもう御存知かと思いますが…(アリス)」
【そのヴァリエンテ領での大氾濫との共通点が″虫″である事からコチラの関与を疑っているのだろう?
大方その方面で揚げ足を取って挙兵でも企てているとかか?】
「その通りに御座います。
『こちら(【魔王】)からは手を出す事は無い、と言っておきながら、ヴァリエンテ領を実験場としている!』と根も葉も無い妄言で各国で兵を集めている様です。(アリス)」
【ふむ、来る者拒まず。また苗床と領地が増える事になるな。
ちなみにその国は何処にあるのだ?】
「旧ヒュマノ聖王国とは海を挟んで対岸に位置する海上都市『マリ』と言う国です。(アリス)」
【海上都市か。
元の世界では開戦時と決戦前夜しか海の幸を食べた記憶は無かったな…
アリス、引き続き兵隊蟻には探りを入れる様指示だ、頼んだぞ。】
「御意に御座いますわ。(アリス)」
配下のアリスから東方諸国での不穏な動きを報告された【魔王】アクロスは、またかと嘆息しつつアリスに継続の指示を出す。
【それにしてもアリス、蟻と意志疎通が取れる様になったのだな。】
「いえいえ、兵隊蟻が見聞きした情報をモールスに変換して貰っているだけですわ。(アリス)」
【なる程な。】
~海上都市『マリ』・王城~
ダンッ!
「皆の者良く聞いてくれ!遂に【魔王】が本性を表しおった!
全世界に不可侵を表明しておきながら【勇者】の祖国イグレージャ・オシデンタルを壊滅させ、近隣領であるヴァリエンテ領を大氾濫に託つけて怪モンスターの実験場としているのだ!
これは由々しき事態だ!一刻も早い【魔王】の殲滅を行うべきだ!(エンデバー)」
獣人国の近隣国であった旧ヒュマノ聖王国と、海を挟んで対岸に位置する、乳白色の砂岩で造られた塔の様に聳える王城が目を引く。
ここは海上都市『マリ』。
いくら魔法が発達しているとはいえ、金属工学がそれ程世間一般に浸透していないこの世界で海上に国を興す事は容易では無い。
それを可能としているのは土台となる化石化した広大で強靭な珊瑚礁である。
それがあったお陰で、しっかりした地盤の上に統一された色合いの街を建てる事に成功している。
碧い海に乳白色の街並みが相まって景観重視の観光都市として栄えていた。
そんな観光都市の若き国王エンデバー・クライシスは居室に配下を集めて【魔王】討伐を熱弁していた。
「お言葉ですが王よ、【魔王】を相手にするのは早計かと。
数が少ないとはいえ、不確定な要素が多いかと。(配下1)」
「その大氾濫も【魔王】とは全くの無関係だと暗部の者も申しておられますが?
となればこちらから一方的に攻めてきた侵略行為とみなされ、イグレージャ・オシデンタルの二の舞となりますぞ。(配下2)」
「エンデバー王。
海上都市に先んじて獣人国・王都に海洋種と言う、特大の話題性をかっ浚われた気持ちは分かりますが、もう少し落ち着いて物事を」
「そ、そんな事で【魔王】軍との戦争を企てたのではない!
世の平和と安寧の為に…!(エンデバー)」
(((((図星か…)))))
躍起になっている王と違い、落ち着いた様子で淡々と説く配下達。
少数ながら【魔王】の名に恥じぬ脅威度は獣人国とイグレージャ・オシデンタルの2つで既に分かり切っている。
が、一部の者達はそこまで重く見ていない。
実際に見た訳では無いので、脅威度を知らしめる為に誇張しているのだろう、程度にしか思っていない。
西側諸国で猛威を振るった【勇者】軍を残らず全て消失させ、【勇者】に成り代わり平和と安寧をもたらした【魔王】に対する見解は東西で明らかに二分していた。
それ故西側諸国で【魔王】討伐にと軽々しく企てたる者は割と後を絶たない。
エンデバー王の様に若く、勢いのある者は特に、である。
彼は海上都市『マリ』を観光業に特化した国にするにあたり、思い切った政策を数々打ち出してきて、それが悉く当たり、主要産業が無いにも関わらず、毎年黒字を上げていた。
その成功体験により、彼は勢い付いているのだが、こと戦争に関しては全くの素人で、冒険者として活動していたのも僅か3ヶ月程であった。(ホームシック)
話しがそれだが、その成功体験により″【魔王】討伐に向けての挙兵″も漠然とした自信に満たされていた。
それに彼が【魔王】討伐を推し進めるのには訳があった。
それが先程配下が言っていた″海洋種″である。
海洋都市と謳っておきながら内陸にある獣人国が先々月、王都が2日程前に海洋種と国交を結び、周辺諸国の話題を全てかっ浚っていった。
話題性や意外性、更には新種族ともなれば暫くの間そちらに興味を向かれるのは仕方の無い事だろう。
その影響か、現状で前年比2割5分もの観光客が減少し、時間の経過と共に更に増加するものだと思われる。
なので話題性を少しでも取り戻し、自国へ目を向けて貰おうと躍起になっている訳である。
「まぁ待て皆の者。
私も無策のまま【魔王】殲滅を掲げた訳ではない。
イグレージャ・オシデンタルの失敗は、ただ単に戦力を増強する為、無法者を手当たり次第に集めた事による制御不能の暴走だ。
私にはしかと策がある。(エンデバー)」
「ほぅ?それは如何なる策で御座いましょうか?(配下4)」
否定的な意見ばかりが目立つ為、エンデバー王は用意していた策を披露する事に。
パンパンッ!
「例の者を、中に!(エンデバー)」
『『ガチャッ!』』
「「「「…何者ですかな?その少年は…」」」」
エンデバーが徐に手を叩くと、居室の扉が開き、チグハグな防具を身に纏った少年が猿ぐつわと手枷を付け、兵士2人に連れられて入室した。
フーッ…フーッ…
「この少年は2日程前、現在大氾濫で混乱の極みと化しているヴァリエンテ領近郊で捕らえた冒険者、名を″ハイン″と言う。
暗部の【諜報】が身元を調べた所、我が国出身の者であった事、つい最近まで″【勇者】軍の一味″として活動していた事が発覚し、身柄を拘束して連れ帰ってきたのだ。(エンデバー)」
「「「「何っ!?」」」」
居室内が一時騒然となる。
連れてこられ冒険者の少年ハインは、元【勇者】軍の一味で、チグハグな防具を身に纏っているのも、道中で脅し、盗み、強奪し、または人質を取って殺した上で奪ったりした物で構成されている為サイズが所々合わずにチグハグとなっているのである。
ちなみに″ハイン″と言う冒険者は、1度ノアと接触があり、詳しくは
取り敢えず南へ編:タイトル『野盗が生まれる過程』を参照。
「…それで王よ、まさかその少年が策と言う訳ではありませぬよな?(配下3)」
「ふふふ、まぁ急くな。
策と言うのはこの少年では無く、この少年が″持っていた物″が策なのだ。」
「″持っていた物″…?(配下1)」
「あぁそうだ。
兵士よ、″例の物″を。(エンデバー)」
「「ハッ!」」
話の流れと元【勇者】軍の一味であった少年とが繋がらない為配下達はエンデバーの話に耳を傾けるしかなかった。
『『『ゴトッ…』』』
「「「「こ、これは…?」」」」
「この少年が飢えを凌ぐ為、金目の物を見繕って売りに出す為に戦地となっていたヴァリエンテ領奥地にある前哨基地外縁部に落ちていた″一式装備[弾丸戦車(タンク・ディバラ)]″だ。(エンデバー)」
兵士が2人掛かりで持って来たのは、前哨基地でデオとガーラによって造り出された一式装備″[弾丸戦車(タンク・ディバラ)]″であった。
基本的にノアに焦点を当てている為、戦果の程はあまり明言されていないが、防衛の要&雑魚モンスターの殲滅に大いに役立ったのは言うまでも無い。
ただ度重なる戦闘によって所々破損しているものの、数百体単位でモンスターと戦闘したにしてはまだまだ美品であった。
そんな一式装備を、この元【勇者】軍一味の冒険者ハインは金目になればと盗み出し、何処かの街で売ろうとしていたと言う。
ハインは、ノアによって【勇者】軍を潰された後、一月もの間街道を避けて山を逃げ回った挙げ句ヴァリエンテ領周辺に辿り着き事に及んだと言う。
その後北上を試みたものの、その前に『マリ』の【諜報】に捕まり、連行されたのだと言う。
「暗部の話ではこの一式装備は戦場で猛威を振るい、大氾濫に大いに役立ったと言う。
隠された能力もあり市場にも出回ってはいない、謂わば最新鋭の装備だ。
これが私の手元にやって来たのは天啓と捉えても差し支えない事だと思わんかね?(エンデバー)」
「いや、それは話が飛躍しすぎでは…(配下2)」
エンデバー王の取って付けた様な話に、配下達は納得いくハズも無い。
だがこのエンデバー王、既に恐ろしい計画を進め始めていた様で
「この素晴らしき一式装備、隣領の工房主に言って500人分の生産要請を掛け、増産中である。更に周辺領に働き掛け、水面下で参加の意を表明している所が4つある。(エンデバー)」
『『ガタンッ!』』
「「「な、何ですと!?」」」
「エンデバー王!何故議会を通さずに勝手な事を!?(配下4)」
何とこの一式装備を独断で製造開始しており、既に増産に入っていると言う。
更に暗部を通じて密書を周辺の領に送り、参戦の意を表明している領主も居るとか。
配下達にも初出しの情報であった為、場が再び騒然となる中、エンデバーは悪びれる様子もなく
「良いか?
興業でも戦闘でも何でも同じだが、こういう事は″速度が大事なのだ″。
この″速度″があったから、私がこの海上都市をここまでの規模にまで押し上げてきたのだぞ?
全て上手くやって来た私が言うのだから間違いない!(エンデバー)」
「「「「………(呆)」」」」
エンデバーは拳を握り、配下達に捲し立てるかの様に力を込めて演説するが、誰一人響いている様子は無い。
「それにもう1つの策だが、【勇者】が消息不明な今、次に【魔王】の首を狙えるであろう【鬼神】を招待する。これは決定事項だ!(エンデバー)」
~その頃のノア・夕方~
【ぶぇっくしょい!】
『『『ズドムッ!』』』(骸鏖峰獄蟲の大刀着弾)
〝む?〟
【あ…】
『『『『『『ズガァンッ!』』』』』』(大爆散)
『バキュ』『キュ』『『キュキュン』』『ギュ』『キュン』『ギュン』『キュン』『キュ』『キュンッ!』(飛び散る瓦礫の上を連続短距離転移)
『ギュンッ!』(骸鏖峰獄蟲の眼前に転移)
〝ぬんっ!〟
『『『ゴォッ!』』』(大刀の斬り上げ)
【ッラァッ!】
『『『バチィンッ!』』』(手首に龍尾を巻き付け斬り上げを封じる)
『『『ギュンッ!』』』(馬鹿デカい斬馬刀で首を狙う)
『『『ガチィインッ!』』』(歯で斬馬刀を受け止める)
【チッ!】
〝むっふっふっふ、ほひふぁっふぁなほほう。ふひゃみはきほふふめるふぁふか?(むっふっふっふ、惜しかったな小僧。
くしゃみは気を緩める策か?)〟
【そんなんじゃないよ。】
(『何処かで誰かが噂してんな?』)
朝から骸鏖峰獄蟲と戦い続け、お互い決定打も無いまま戦闘を続けそろそろ夕暮れ時。
骸鏖峰獄蟲は明らかに手を抜き、だらだらと戦闘しているのをノアは気付いていた。
そりゃそうだ。
当の骸鏖峰獄蟲も″あの御方″とやらに言われた事を変に解釈した為、終え時をどうするかふわっふわしていたからだ。
ウワァアアア…
ブヂュルル…
【兵隊蟻の繁殖状況はどうだアリス?】
「捕獲した【勇者】軍の苗床によって週1のペースで産み出されていますので順調に数を増やしておられますよ【魔王】様。
ただ、その内の1/10程の苗床は出産時の苦痛と発狂により、産まれて直ぐの子に食い殺されておられますが…(アリス)」
【ほぉ、そんなにか。】
「大半は生涯子を産む機能を持つハズの無い男で、目の前で起こる状況を受け入れる事が出来ない様子。
女の方はその辺耐性がございますが、気を狂わせて人の子だと思い込む様にして何とか意識を繋ぎ止めております。
が、持って2ヶ月といった所でしょう。(アリス)」
キャァアア『ブシャ』
【ふむ。一月持てば良いと考えていたが、それは嬉しい報告だな。】
所変わってここは旧イグレージャ・オシデンタル現【魔王】占領地。
その地に幾本か屹立する巨大な巣の内部。
先月【勇者】軍の敵対行動を受け、報復としてイグレージャ・オシデンタルを壊滅させ、瓦礫の山と化した占領地を、元【勇者】軍と共に有効活用している所である。
南獄大陸だけでは手狭であった為、【勇者】軍の何割かを移動させ、壁面に磔て苗床としている。
時折苗床の悲鳴と水っぽい音がセットとなって巢内部に響き渡るが、【魔王】アクロスと配下のアリスにとっては日常である為環境音としか認識されていない。
「そういえば【魔王】様、各地に探りを入れていた兵隊蟻から報告が上がりまして、東側の各国で不穏な動きが出ているそうです。(アリス)」
【ほぅ?】
「この地より西側にあるヴァリエンテ領で過去最大規模の大氾濫が発生していると言うのはもう御存知かと思いますが…(アリス)」
【そのヴァリエンテ領での大氾濫との共通点が″虫″である事からコチラの関与を疑っているのだろう?
大方その方面で揚げ足を取って挙兵でも企てているとかか?】
「その通りに御座います。
『こちら(【魔王】)からは手を出す事は無い、と言っておきながら、ヴァリエンテ領を実験場としている!』と根も葉も無い妄言で各国で兵を集めている様です。(アリス)」
【ふむ、来る者拒まず。また苗床と領地が増える事になるな。
ちなみにその国は何処にあるのだ?】
「旧ヒュマノ聖王国とは海を挟んで対岸に位置する海上都市『マリ』と言う国です。(アリス)」
【海上都市か。
元の世界では開戦時と決戦前夜しか海の幸を食べた記憶は無かったな…
アリス、引き続き兵隊蟻には探りを入れる様指示だ、頼んだぞ。】
「御意に御座いますわ。(アリス)」
配下のアリスから東方諸国での不穏な動きを報告された【魔王】アクロスは、またかと嘆息しつつアリスに継続の指示を出す。
【それにしてもアリス、蟻と意志疎通が取れる様になったのだな。】
「いえいえ、兵隊蟻が見聞きした情報をモールスに変換して貰っているだけですわ。(アリス)」
【なる程な。】
~海上都市『マリ』・王城~
ダンッ!
「皆の者良く聞いてくれ!遂に【魔王】が本性を表しおった!
全世界に不可侵を表明しておきながら【勇者】の祖国イグレージャ・オシデンタルを壊滅させ、近隣領であるヴァリエンテ領を大氾濫に託つけて怪モンスターの実験場としているのだ!
これは由々しき事態だ!一刻も早い【魔王】の殲滅を行うべきだ!(エンデバー)」
獣人国の近隣国であった旧ヒュマノ聖王国と、海を挟んで対岸に位置する、乳白色の砂岩で造られた塔の様に聳える王城が目を引く。
ここは海上都市『マリ』。
いくら魔法が発達しているとはいえ、金属工学がそれ程世間一般に浸透していないこの世界で海上に国を興す事は容易では無い。
それを可能としているのは土台となる化石化した広大で強靭な珊瑚礁である。
それがあったお陰で、しっかりした地盤の上に統一された色合いの街を建てる事に成功している。
碧い海に乳白色の街並みが相まって景観重視の観光都市として栄えていた。
そんな観光都市の若き国王エンデバー・クライシスは居室に配下を集めて【魔王】討伐を熱弁していた。
「お言葉ですが王よ、【魔王】を相手にするのは早計かと。
数が少ないとはいえ、不確定な要素が多いかと。(配下1)」
「その大氾濫も【魔王】とは全くの無関係だと暗部の者も申しておられますが?
となればこちらから一方的に攻めてきた侵略行為とみなされ、イグレージャ・オシデンタルの二の舞となりますぞ。(配下2)」
「エンデバー王。
海上都市に先んじて獣人国・王都に海洋種と言う、特大の話題性をかっ浚われた気持ちは分かりますが、もう少し落ち着いて物事を」
「そ、そんな事で【魔王】軍との戦争を企てたのではない!
世の平和と安寧の為に…!(エンデバー)」
(((((図星か…)))))
躍起になっている王と違い、落ち着いた様子で淡々と説く配下達。
少数ながら【魔王】の名に恥じぬ脅威度は獣人国とイグレージャ・オシデンタルの2つで既に分かり切っている。
が、一部の者達はそこまで重く見ていない。
実際に見た訳では無いので、脅威度を知らしめる為に誇張しているのだろう、程度にしか思っていない。
西側諸国で猛威を振るった【勇者】軍を残らず全て消失させ、【勇者】に成り代わり平和と安寧をもたらした【魔王】に対する見解は東西で明らかに二分していた。
それ故西側諸国で【魔王】討伐にと軽々しく企てたる者は割と後を絶たない。
エンデバー王の様に若く、勢いのある者は特に、である。
彼は海上都市『マリ』を観光業に特化した国にするにあたり、思い切った政策を数々打ち出してきて、それが悉く当たり、主要産業が無いにも関わらず、毎年黒字を上げていた。
その成功体験により、彼は勢い付いているのだが、こと戦争に関しては全くの素人で、冒険者として活動していたのも僅か3ヶ月程であった。(ホームシック)
話しがそれだが、その成功体験により″【魔王】討伐に向けての挙兵″も漠然とした自信に満たされていた。
それに彼が【魔王】討伐を推し進めるのには訳があった。
それが先程配下が言っていた″海洋種″である。
海洋都市と謳っておきながら内陸にある獣人国が先々月、王都が2日程前に海洋種と国交を結び、周辺諸国の話題を全てかっ浚っていった。
話題性や意外性、更には新種族ともなれば暫くの間そちらに興味を向かれるのは仕方の無い事だろう。
その影響か、現状で前年比2割5分もの観光客が減少し、時間の経過と共に更に増加するものだと思われる。
なので話題性を少しでも取り戻し、自国へ目を向けて貰おうと躍起になっている訳である。
「まぁ待て皆の者。
私も無策のまま【魔王】殲滅を掲げた訳ではない。
イグレージャ・オシデンタルの失敗は、ただ単に戦力を増強する為、無法者を手当たり次第に集めた事による制御不能の暴走だ。
私にはしかと策がある。(エンデバー)」
「ほぅ?それは如何なる策で御座いましょうか?(配下4)」
否定的な意見ばかりが目立つ為、エンデバー王は用意していた策を披露する事に。
パンパンッ!
「例の者を、中に!(エンデバー)」
『『ガチャッ!』』
「「「「…何者ですかな?その少年は…」」」」
エンデバーが徐に手を叩くと、居室の扉が開き、チグハグな防具を身に纏った少年が猿ぐつわと手枷を付け、兵士2人に連れられて入室した。
フーッ…フーッ…
「この少年は2日程前、現在大氾濫で混乱の極みと化しているヴァリエンテ領近郊で捕らえた冒険者、名を″ハイン″と言う。
暗部の【諜報】が身元を調べた所、我が国出身の者であった事、つい最近まで″【勇者】軍の一味″として活動していた事が発覚し、身柄を拘束して連れ帰ってきたのだ。(エンデバー)」
「「「「何っ!?」」」」
居室内が一時騒然となる。
連れてこられ冒険者の少年ハインは、元【勇者】軍の一味で、チグハグな防具を身に纏っているのも、道中で脅し、盗み、強奪し、または人質を取って殺した上で奪ったりした物で構成されている為サイズが所々合わずにチグハグとなっているのである。
ちなみに″ハイン″と言う冒険者は、1度ノアと接触があり、詳しくは
取り敢えず南へ編:タイトル『野盗が生まれる過程』を参照。
「…それで王よ、まさかその少年が策と言う訳ではありませぬよな?(配下3)」
「ふふふ、まぁ急くな。
策と言うのはこの少年では無く、この少年が″持っていた物″が策なのだ。」
「″持っていた物″…?(配下1)」
「あぁそうだ。
兵士よ、″例の物″を。(エンデバー)」
「「ハッ!」」
話の流れと元【勇者】軍の一味であった少年とが繋がらない為配下達はエンデバーの話に耳を傾けるしかなかった。
『『『ゴトッ…』』』
「「「「こ、これは…?」」」」
「この少年が飢えを凌ぐ為、金目の物を見繕って売りに出す為に戦地となっていたヴァリエンテ領奥地にある前哨基地外縁部に落ちていた″一式装備[弾丸戦車(タンク・ディバラ)]″だ。(エンデバー)」
兵士が2人掛かりで持って来たのは、前哨基地でデオとガーラによって造り出された一式装備″[弾丸戦車(タンク・ディバラ)]″であった。
基本的にノアに焦点を当てている為、戦果の程はあまり明言されていないが、防衛の要&雑魚モンスターの殲滅に大いに役立ったのは言うまでも無い。
ただ度重なる戦闘によって所々破損しているものの、数百体単位でモンスターと戦闘したにしてはまだまだ美品であった。
そんな一式装備を、この元【勇者】軍一味の冒険者ハインは金目になればと盗み出し、何処かの街で売ろうとしていたと言う。
ハインは、ノアによって【勇者】軍を潰された後、一月もの間街道を避けて山を逃げ回った挙げ句ヴァリエンテ領周辺に辿り着き事に及んだと言う。
その後北上を試みたものの、その前に『マリ』の【諜報】に捕まり、連行されたのだと言う。
「暗部の話ではこの一式装備は戦場で猛威を振るい、大氾濫に大いに役立ったと言う。
隠された能力もあり市場にも出回ってはいない、謂わば最新鋭の装備だ。
これが私の手元にやって来たのは天啓と捉えても差し支えない事だと思わんかね?(エンデバー)」
「いや、それは話が飛躍しすぎでは…(配下2)」
エンデバー王の取って付けた様な話に、配下達は納得いくハズも無い。
だがこのエンデバー王、既に恐ろしい計画を進め始めていた様で
「この素晴らしき一式装備、隣領の工房主に言って500人分の生産要請を掛け、増産中である。更に周辺領に働き掛け、水面下で参加の意を表明している所が4つある。(エンデバー)」
『『ガタンッ!』』
「「「な、何ですと!?」」」
「エンデバー王!何故議会を通さずに勝手な事を!?(配下4)」
何とこの一式装備を独断で製造開始しており、既に増産に入っていると言う。
更に暗部を通じて密書を周辺の領に送り、参戦の意を表明している領主も居るとか。
配下達にも初出しの情報であった為、場が再び騒然となる中、エンデバーは悪びれる様子もなく
「良いか?
興業でも戦闘でも何でも同じだが、こういう事は″速度が大事なのだ″。
この″速度″があったから、私がこの海上都市をここまでの規模にまで押し上げてきたのだぞ?
全て上手くやって来た私が言うのだから間違いない!(エンデバー)」
「「「「………(呆)」」」」
エンデバーは拳を握り、配下達に捲し立てるかの様に力を込めて演説するが、誰一人響いている様子は無い。
「それにもう1つの策だが、【勇者】が消息不明な今、次に【魔王】の首を狙えるであろう【鬼神】を招待する。これは決定事項だ!(エンデバー)」
~その頃のノア・夕方~
【ぶぇっくしょい!】
『『『ズドムッ!』』』(骸鏖峰獄蟲の大刀着弾)
〝む?〟
【あ…】
『『『『『『ズガァンッ!』』』』』』(大爆散)
『バキュ』『キュ』『『キュキュン』』『ギュ』『キュン』『ギュン』『キュン』『キュ』『キュンッ!』(飛び散る瓦礫の上を連続短距離転移)
『ギュンッ!』(骸鏖峰獄蟲の眼前に転移)
〝ぬんっ!〟
『『『ゴォッ!』』』(大刀の斬り上げ)
【ッラァッ!】
『『『バチィンッ!』』』(手首に龍尾を巻き付け斬り上げを封じる)
『『『ギュンッ!』』』(馬鹿デカい斬馬刀で首を狙う)
『『『ガチィインッ!』』』(歯で斬馬刀を受け止める)
【チッ!】
〝むっふっふっふ、ほひふぁっふぁなほほう。ふひゃみはきほふふめるふぁふか?(むっふっふっふ、惜しかったな小僧。
くしゃみは気を緩める策か?)〟
【そんなんじゃないよ。】
(『何処かで誰かが噂してんな?』)
朝から骸鏖峰獄蟲と戦い続け、お互い決定打も無いまま戦闘を続けそろそろ夕暮れ時。
骸鏖峰獄蟲は明らかに手を抜き、だらだらと戦闘しているのをノアは気付いていた。
そりゃそうだ。
当の骸鏖峰獄蟲も″あの御方″とやらに言われた事を変に解釈した為、終え時をどうするかふわっふわしていたからだ。
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地位も、居場所も、信じていた絆も……すべてを失い、絶望する彼女の前に現れたのは、一人の美少年だった。
「僕とパーティーを組んでくれませんか? 貴方が必要なんです」
新米ながら将来の可能性を感じさせる彼は、レアーヌを「おばさん」ではなく「一人の女性」として、甘く狂おしく溺愛し始める。
一方でレアーヌという『真の支柱』を失った元パーティーは、自分たちがどれほど愚かな選択をしたかを知る由もなかった。
やがて彼らが地獄の淵で「戻ってきてくれ」と泣きついてきても、もう遅い。
レアーヌの隣には、彼女を離さないと誓った執着愛の化身が微笑んでいるのだから。
【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜
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~あらすじ~
世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。
そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。
しかし、その恩恵は平等ではなかった。
富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。
そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。
彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。
あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。
妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。
希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。
英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。
これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。
彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。
テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。
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スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。
良かったら読んでください!
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