1,088 / 1,117
ヴァリエンテ領・大規模氾濫掃討戦編~万死一生~
巻き戻し
しおりを挟む
~現在の状況~
ノア:ミダレと食事の約束があるのでさっさと終わらせたいが骸鏖峰獄蟲が帰ってくれなくて困っている。
骸鏖峰獄蟲:″あの御方″からの『親交を深めろ=剣を交えて戦う』と誇大解釈した挙げ句、引き際を誤り困っている。
″あの御方″:骸鏖峰獄蟲に言伝てを伝えた後、日出ノ国で3日間観光していたら自分の意図していない状況になり困っている。
上司に怒られるの覚悟で4日分の時間巻き戻し申請出願中。
海上都市『マリ』のエンデバー王:観光特化の若き王。配下に内緒で戦争の準備を始めてた困ったちゃん。
一月後、地図から国が消える。
配下の皆さん:観光業の手腕は認めるが【魔王】殲滅には誰一人認めておらず困っている。
3週間後、後戻り出来ない状況になり国外逃亡を図る。
【魔王】アクロス・アリス:思い描いたシナリオ通りに話が進んでいるので正直困っている。
~再び海上都市『マリ』・王城の居室~
「思うに私は【鬼神】に野心を感じるのだ。
数々の戦地に赴き、絶大な戦果を叩き出す彼は常に闘争を欲している。
私が打ち立てたこの【魔王】殲滅(興業)にも快く参加してくれる事だろう!(エンデバー)」
「「「「はぁ…」」」」
~再び『フロンテイラ』~
〝むっふっふっふ、良い動きと度胸じゃ!
儂の太刀筋を悉く避けるとは!
小僧が日出ノ国に来れば直ぐにでも天下を取れるぞ!〟
【いや、天下とか別に良いです…】
~『マリ』~
「冒険者と言う生き物は、力を手にしていれば、それを披露する場を欲するもの!
私がその場を提供し、彼はそのステージで力を誇示する為に舞い踊る!(エンデバー)」
~『フロンテイラ』~
〝卓越した技術と力を持ち合わせておると言うのに。
世に知らしめたら一躍天下人ぞ?〟
【正直な話、大っぴらに見せびらかすのとか好きじゃないからね…
技術と力を身に付けたのは、のんびり生活出来る様にする為。】
~『マリ』~
「【鬼神】の参加は絶対条件!
必ずや私が良い結果を残してやろう!(エンデバー)」
~『フロンテイラ』~
【仲間に常日頃心配掛けてるからね、これからは厄介事を全力で回避しようと思ってるよ。】
〝終止欲が無いのぅ…その時分でその心持ち。
この先長い人生、ずうっとそのままで生きていくつもりか?〟
【…長い人生…ね…】
〝どうした小僧、覇気の無い…む?まさかお主…〟
″長い人生″という発言に反応し、露骨に気分が落ち込むノア。
その変わり様に骸鏖峰獄蟲は直ぐに気付き、改めてノアに問い質そう、とした所で
『『『『ズゥウウウン…』』』』(時間の流れが遅くなる)
〝何か勘付かれた様ですね、″峰獄(フガク)″。
こちらの少年ノア殿は、過去に大病を患った結果健常者程先が長く無いのです。(暦)〟
【おわっ!?″暦″さん…だよね?】
〝おお、暦殿、相変わらず突然現れますな!
えぇっと、確か3日振りですな!〟
〝あ、ちょ、″峰獄(フガク)″は少し口を閉ざしてて戴けませんか…?(暦)〟
周囲の時間の流れがゆっくりと変化し、次第に停止したかと思えば、いつの間にかノアと骸鏖峰獄蟲との間に暦(時)の神様である″暦″が立っていた。
だがいつもの″暦″とは少し違う出で立ちであった為、思わず本人であるか聞き返してしまった。
何せいつもの″暦″(というか大体の神様)は眩しく光輝き、薄ら輪郭が分かる程度しか情報量が無いのだが、目の前に佇む″暦″は
『和装(着物)姿』『絵柄の入った唐傘』『歯車装飾の簪(カンザシ) 』『お饅頭のお土産(5包み)』
を身に付けての登場であった。
これでは流石に初見で″暦″であると断言出来なかった。
〝あ、はい、勿論″暦″ですよ~。(暦)〟
(ん?何か臭う…)
(『これは″硫黄″だな。
何だ?火山にでも行ってたのか?』)
″暦″をいぶかしんだノアに本人である事を伝えると、その動作で着物が靡き、ほわっと硫黄の臭いが漂う。
【…あの、何でここに″暦″さんが…
…って、あれ?何で骸鏖峰獄蟲も動けてんの?】
〝そりゃ当たり前だぞ小僧、何せ儂ゃ…〟
〝あー!待って待って!
話が更にややこしくなるからちょっと待って!(暦)〟
″暦″がここに現れた経緯を話そうとするも、話し始めた骸鏖峰獄蟲は止まらなかった。
〝″神域″に近い″富獄(フガク)″に棲んどる故、神とは昔からの顔馴染みよ!
して″暦″殿よ、指示の通り親交を深める為この小僧と剣を交えておったのじゃが、引き際を見誤ってしまった!
3日間日出ノ国での観光の後でしょうが、如何されようかのぅ?〟
〝ちょ!あーっ!(暦)〟
【へ?指示…?】
″暦″の叫び空しく骸鏖峰獄蟲の暴露(独自解釈)はノアに伝わってしまい、思わず固まってしまった。
″暦″→何処かからの観光帰り
今日の戦闘→親交を深める為
中々帰らない骸鏖峰獄蟲→″暦″の指示
ポクポクポクポクポクポク…
『″暦″の指示』
テテーン!
〝あ、あのあのあの、違うんです、私そんな指示出した訳じゃ…
と、取り敢えず話を
『『『ズシャンッ!』』』(馬鹿デカい斧出現)
ひぇっ!?(暦)〟
【人に殺し合いさせといて自分はのんびり観光ってか!ふざけんじゃねぇぞ!
自分で喚び出したとはいえ街にも戻れず3日間ここで過ごす羽目になったんだぞっ!】
〝ぎゃーっ!ごめんなさい!お願いだから話を聞いてぇっ!(暦)〟
〝おいおい小僧よ、神殺しなぞ図るものでは無いぞ?〟
観光地からそのままやって来た″暦″に不満を垂れ流しながらぶち切れたノアは、馬鹿デカい斧を手に″暦″に斬り掛かる。
その後ノアだけ時間を止め、骸鏖峰獄蟲が摘まんでノアを捕獲。
″暦″が事情を説明して漸く殺意を抑えてくれたのだった。
「か…勘違い…
え?じゃあこの3日間は何だったの…」
〝済まんなぁ小僧よ、お主にとっては貴重な3日間を無駄に過ごさせてしまってな。
儂の居る国では親交を深めるには剣を交えるのが手っ取り早いのでな。〟
〝ごめんなさい…
お詫びとして記憶も肉体の時間も全て3日前に戻しますから…(暦)〟
「さらっと怖い事言ってるし…」
″暦″の想いを独自解釈(勘違い)した骸鏖峰獄蟲の暴走である事を知ったノアは、思わずその場に座り込んだ。
「そもそも僕と骸鏖峰獄蟲が親交を深める必要があるの?
今回アイツを無力化させる為にたまたま喚び出しただけ。謂わば今回限りの関係なのに…」
〝はい、とても重要な事です。
暦の上での事なので詳しくは話せませんが、大いにノア君の力となってくれる事でしょう。(暦)〟
「そう…なんだ…」
〝のぅ暦殿よ、この小僧とは一体どういった縁で仲を持たれたので?〟
〝彼は短期間で多くの者達の暦を変えていった者です。勿論良い意味で、ですがね。
今回の大氾濫で言えば、街に根を張った者達の多くが【勇者】軍の影響で奴隷堕ちしてしまった経緯があり、彼の介入が無ければ今後の余生は悲惨極まりないモノだったでしょう。(暦)〟
〝なる程のぅ、確かにこれ程の武を持っていれば他者の運命を変える事は容易であろうな。〟
骸鏖峰獄蟲は、徐に″暦″とノアの関係について聞き出す。
〝のぅ小僧、暦殿と仲を持っているのであれば少なからず″恩恵″を得られるモノであろう?
先程の反応から寿命は残り少ないのだろう、暦殿に相談してみれば良いだろう?〟
〝そそ、それそれ!良い事言うじゃないですか峰獄(フガク)!
どうですノア君?以前話しましたが、″寿命延長″の件はその後どうですか?
今の段階ですと20年位は寿命を延ばす事は容易ですよ?(暦)〟
包みを抱えた″暦″は思わず指を弾いて笑みを浮かべる。
ノアには以前から″寿命延長″の打診はしていたものの、ノアから了承を受けていないので神様といえども行使出来ずにいたのである。
なので今再びの打診を試みる″暦″であったのだが
「…その話はまだちょっと…」
〝ん?何を渋っておるのだ?
小僧の余命が如何程かは知らんが、無条件で寿命の延長が行えるなら願っても無い事だと思うぞ?〟
〝そうですよノア君、貢献してくれてるのに恩恵を授けさせてくれないと上から怒られちゃうんですよ…(暦)〟
「分かっ…てはいるんだけど…」
″暦″からの再三に渡る打診を受けても、ノアは″恩恵(寿命延長)″を渋っていた。
「と、というか話が変わってるじゃん!
″暦″さんは僕達の仲裁に来たんでしよ!?
まずそっちから進めるのが先決じゃないの?」
〝逸らした。(暦)〟
〝逸らしたのぅ。〟
「良いからっ!」
寿命延長を渋るノアは、″暦″がここに来た本来の目的で話を逸らす。
(〝まぁでもノア君は紆余曲折を経て最終的には長生きする様ですから、何れ″恩恵(寿命延長)″を授かってくれるのでしょう。
なのでこれ以上強要するのは止める事にしましょう…。(暦)〟)
暦(時)の神様である″暦″は、現在と少し先の未来は見る事は出来るが、最期(天寿)を見る事は出来ず、ボンヤリとしたイメージは感知出来るという。
そのイメージを読み解いた感じ、ノアは当初予定されていた寿命以上は生きる事が出来るらしい。
なので″暦″は多少気掛かりではあるが、これ以上の追及は止める事にする方針であった。
それよりも気になる事があった。
(〝……それよりも、私ですら見る事の出来ない″未来″がもう間も無く近付いてきている…
まるで解されて絡み合った毛糸の様に暦(時)が絡まりあっている、一体何が起こるというのでしょう…(暦)〟)
暦(時)の神様と言えども人生の全貌を知る事は出来ず、それを可能とするのは″主神″だけである。
「″暦″さん?」
〝え?あぁ、何でも御座いませんよ。
それでは御迷惑を掛けたお詫びとして、″記憶はそのままに、4日前の骸鏖峰獄蟲の召喚権行使″直後に巻き戻させて頂きます。
それで如何でしょうか?(暦)〟
「えぇ、それでお願いします。
…骸鏖峰獄蟲さんもそれで良いですか?」
〝まぁ経緯はどうあれ、結果的には親交を深める事は成されたな。
今回限りの縁では無い様じゃし、次会えるのを楽しみにしておるぞ、その時は剣を交える事無いと良いがな。〟
「…経験上、何の気無しに話した事が伏線になったりするんだよなぁ…」
〝儂は歓迎するぞ?〟
「僕がしないんだよ。」
記憶はそのままに、4日前の時間軸に巻き戻す事を両者が了承。
骸鏖峰獄蟲は次回の出会いを楽しみにしている様であった。
〝それではノア君、君の場合は治り掛かっていた大怪我が4日前の状態に戻るので、2分程掛けて時間を巻き戻します、それではいきますよ。(暦)〟
『『『ギュゥウウウウン…』』』(時間の巻き戻し開始)
″暦″が説明を終えると共に周囲の景色が逆再生されていく。
戦闘で出来た陥没痕が復元していき空を羽ばたく鳥が後ろ向きに飛行していく。
何とも不可思議な光景だが、それによって時間が巻き戻されていく事を実感していた。
それに伴って
『『『プチュプチュプチュ…』』』(癒えていた傷が増え、皮膚に血が滲む)
「……。」
〝…あの、ノア君?
癒えた傷が元に戻る光景は中々に凄惨なモノなので、目を瞑ってた方が良いですよ?(暦)〟
「…病気を患っていた時の事を思い出してたよ…
あの時は何もしてなくても皮膚が裂けて血をよく流してたよ…
激痛で寝れなくて、何度も父さんと母さんを心配にさせてたな…」
時間の巻き戻しと共に、皮膚が再生されていた右腕の筋繊維が剥き出しとなり血が滲む。
左鎖骨辺りの大きな火傷に水ぶくれが再形成され、ジワジワとした痛みが戻っていく。
それをただ座って眺めているだけなのに体がズシリと重くなっていくのを感じる。
何せ4日前と言えば寝る前なので、疲労感まで戻ってきているのである。
「ねぇ″暦″さん?
例の″恩恵″の話なんだけど…」
〝え!?どうしました?まさか承諾してくれる感じで…(暦)〟
「あ、いや…というよりか、その″恩恵″使って″僕が病気になる前″に戻れたりとかって出来たりするのかな、って…
ほら、今も4日前に時間を巻き戻してるじゃないですか…?」
ふとノアは″暦″がゴリ押ししていた″恩恵″についての話に触れる。
″暦″は寿命延長だと思っていたが、ノアから問われたのは″人生自体の巻き戻し″であった。
ノア:ミダレと食事の約束があるのでさっさと終わらせたいが骸鏖峰獄蟲が帰ってくれなくて困っている。
骸鏖峰獄蟲:″あの御方″からの『親交を深めろ=剣を交えて戦う』と誇大解釈した挙げ句、引き際を誤り困っている。
″あの御方″:骸鏖峰獄蟲に言伝てを伝えた後、日出ノ国で3日間観光していたら自分の意図していない状況になり困っている。
上司に怒られるの覚悟で4日分の時間巻き戻し申請出願中。
海上都市『マリ』のエンデバー王:観光特化の若き王。配下に内緒で戦争の準備を始めてた困ったちゃん。
一月後、地図から国が消える。
配下の皆さん:観光業の手腕は認めるが【魔王】殲滅には誰一人認めておらず困っている。
3週間後、後戻り出来ない状況になり国外逃亡を図る。
【魔王】アクロス・アリス:思い描いたシナリオ通りに話が進んでいるので正直困っている。
~再び海上都市『マリ』・王城の居室~
「思うに私は【鬼神】に野心を感じるのだ。
数々の戦地に赴き、絶大な戦果を叩き出す彼は常に闘争を欲している。
私が打ち立てたこの【魔王】殲滅(興業)にも快く参加してくれる事だろう!(エンデバー)」
「「「「はぁ…」」」」
~再び『フロンテイラ』~
〝むっふっふっふ、良い動きと度胸じゃ!
儂の太刀筋を悉く避けるとは!
小僧が日出ノ国に来れば直ぐにでも天下を取れるぞ!〟
【いや、天下とか別に良いです…】
~『マリ』~
「冒険者と言う生き物は、力を手にしていれば、それを披露する場を欲するもの!
私がその場を提供し、彼はそのステージで力を誇示する為に舞い踊る!(エンデバー)」
~『フロンテイラ』~
〝卓越した技術と力を持ち合わせておると言うのに。
世に知らしめたら一躍天下人ぞ?〟
【正直な話、大っぴらに見せびらかすのとか好きじゃないからね…
技術と力を身に付けたのは、のんびり生活出来る様にする為。】
~『マリ』~
「【鬼神】の参加は絶対条件!
必ずや私が良い結果を残してやろう!(エンデバー)」
~『フロンテイラ』~
【仲間に常日頃心配掛けてるからね、これからは厄介事を全力で回避しようと思ってるよ。】
〝終止欲が無いのぅ…その時分でその心持ち。
この先長い人生、ずうっとそのままで生きていくつもりか?〟
【…長い人生…ね…】
〝どうした小僧、覇気の無い…む?まさかお主…〟
″長い人生″という発言に反応し、露骨に気分が落ち込むノア。
その変わり様に骸鏖峰獄蟲は直ぐに気付き、改めてノアに問い質そう、とした所で
『『『『ズゥウウウン…』』』』(時間の流れが遅くなる)
〝何か勘付かれた様ですね、″峰獄(フガク)″。
こちらの少年ノア殿は、過去に大病を患った結果健常者程先が長く無いのです。(暦)〟
【おわっ!?″暦″さん…だよね?】
〝おお、暦殿、相変わらず突然現れますな!
えぇっと、確か3日振りですな!〟
〝あ、ちょ、″峰獄(フガク)″は少し口を閉ざしてて戴けませんか…?(暦)〟
周囲の時間の流れがゆっくりと変化し、次第に停止したかと思えば、いつの間にかノアと骸鏖峰獄蟲との間に暦(時)の神様である″暦″が立っていた。
だがいつもの″暦″とは少し違う出で立ちであった為、思わず本人であるか聞き返してしまった。
何せいつもの″暦″(というか大体の神様)は眩しく光輝き、薄ら輪郭が分かる程度しか情報量が無いのだが、目の前に佇む″暦″は
『和装(着物)姿』『絵柄の入った唐傘』『歯車装飾の簪(カンザシ) 』『お饅頭のお土産(5包み)』
を身に付けての登場であった。
これでは流石に初見で″暦″であると断言出来なかった。
〝あ、はい、勿論″暦″ですよ~。(暦)〟
(ん?何か臭う…)
(『これは″硫黄″だな。
何だ?火山にでも行ってたのか?』)
″暦″をいぶかしんだノアに本人である事を伝えると、その動作で着物が靡き、ほわっと硫黄の臭いが漂う。
【…あの、何でここに″暦″さんが…
…って、あれ?何で骸鏖峰獄蟲も動けてんの?】
〝そりゃ当たり前だぞ小僧、何せ儂ゃ…〟
〝あー!待って待って!
話が更にややこしくなるからちょっと待って!(暦)〟
″暦″がここに現れた経緯を話そうとするも、話し始めた骸鏖峰獄蟲は止まらなかった。
〝″神域″に近い″富獄(フガク)″に棲んどる故、神とは昔からの顔馴染みよ!
して″暦″殿よ、指示の通り親交を深める為この小僧と剣を交えておったのじゃが、引き際を見誤ってしまった!
3日間日出ノ国での観光の後でしょうが、如何されようかのぅ?〟
〝ちょ!あーっ!(暦)〟
【へ?指示…?】
″暦″の叫び空しく骸鏖峰獄蟲の暴露(独自解釈)はノアに伝わってしまい、思わず固まってしまった。
″暦″→何処かからの観光帰り
今日の戦闘→親交を深める為
中々帰らない骸鏖峰獄蟲→″暦″の指示
ポクポクポクポクポクポク…
『″暦″の指示』
テテーン!
〝あ、あのあのあの、違うんです、私そんな指示出した訳じゃ…
と、取り敢えず話を
『『『ズシャンッ!』』』(馬鹿デカい斧出現)
ひぇっ!?(暦)〟
【人に殺し合いさせといて自分はのんびり観光ってか!ふざけんじゃねぇぞ!
自分で喚び出したとはいえ街にも戻れず3日間ここで過ごす羽目になったんだぞっ!】
〝ぎゃーっ!ごめんなさい!お願いだから話を聞いてぇっ!(暦)〟
〝おいおい小僧よ、神殺しなぞ図るものでは無いぞ?〟
観光地からそのままやって来た″暦″に不満を垂れ流しながらぶち切れたノアは、馬鹿デカい斧を手に″暦″に斬り掛かる。
その後ノアだけ時間を止め、骸鏖峰獄蟲が摘まんでノアを捕獲。
″暦″が事情を説明して漸く殺意を抑えてくれたのだった。
「か…勘違い…
え?じゃあこの3日間は何だったの…」
〝済まんなぁ小僧よ、お主にとっては貴重な3日間を無駄に過ごさせてしまってな。
儂の居る国では親交を深めるには剣を交えるのが手っ取り早いのでな。〟
〝ごめんなさい…
お詫びとして記憶も肉体の時間も全て3日前に戻しますから…(暦)〟
「さらっと怖い事言ってるし…」
″暦″の想いを独自解釈(勘違い)した骸鏖峰獄蟲の暴走である事を知ったノアは、思わずその場に座り込んだ。
「そもそも僕と骸鏖峰獄蟲が親交を深める必要があるの?
今回アイツを無力化させる為にたまたま喚び出しただけ。謂わば今回限りの関係なのに…」
〝はい、とても重要な事です。
暦の上での事なので詳しくは話せませんが、大いにノア君の力となってくれる事でしょう。(暦)〟
「そう…なんだ…」
〝のぅ暦殿よ、この小僧とは一体どういった縁で仲を持たれたので?〟
〝彼は短期間で多くの者達の暦を変えていった者です。勿論良い意味で、ですがね。
今回の大氾濫で言えば、街に根を張った者達の多くが【勇者】軍の影響で奴隷堕ちしてしまった経緯があり、彼の介入が無ければ今後の余生は悲惨極まりないモノだったでしょう。(暦)〟
〝なる程のぅ、確かにこれ程の武を持っていれば他者の運命を変える事は容易であろうな。〟
骸鏖峰獄蟲は、徐に″暦″とノアの関係について聞き出す。
〝のぅ小僧、暦殿と仲を持っているのであれば少なからず″恩恵″を得られるモノであろう?
先程の反応から寿命は残り少ないのだろう、暦殿に相談してみれば良いだろう?〟
〝そそ、それそれ!良い事言うじゃないですか峰獄(フガク)!
どうですノア君?以前話しましたが、″寿命延長″の件はその後どうですか?
今の段階ですと20年位は寿命を延ばす事は容易ですよ?(暦)〟
包みを抱えた″暦″は思わず指を弾いて笑みを浮かべる。
ノアには以前から″寿命延長″の打診はしていたものの、ノアから了承を受けていないので神様といえども行使出来ずにいたのである。
なので今再びの打診を試みる″暦″であったのだが
「…その話はまだちょっと…」
〝ん?何を渋っておるのだ?
小僧の余命が如何程かは知らんが、無条件で寿命の延長が行えるなら願っても無い事だと思うぞ?〟
〝そうですよノア君、貢献してくれてるのに恩恵を授けさせてくれないと上から怒られちゃうんですよ…(暦)〟
「分かっ…てはいるんだけど…」
″暦″からの再三に渡る打診を受けても、ノアは″恩恵(寿命延長)″を渋っていた。
「と、というか話が変わってるじゃん!
″暦″さんは僕達の仲裁に来たんでしよ!?
まずそっちから進めるのが先決じゃないの?」
〝逸らした。(暦)〟
〝逸らしたのぅ。〟
「良いからっ!」
寿命延長を渋るノアは、″暦″がここに来た本来の目的で話を逸らす。
(〝まぁでもノア君は紆余曲折を経て最終的には長生きする様ですから、何れ″恩恵(寿命延長)″を授かってくれるのでしょう。
なのでこれ以上強要するのは止める事にしましょう…。(暦)〟)
暦(時)の神様である″暦″は、現在と少し先の未来は見る事は出来るが、最期(天寿)を見る事は出来ず、ボンヤリとしたイメージは感知出来るという。
そのイメージを読み解いた感じ、ノアは当初予定されていた寿命以上は生きる事が出来るらしい。
なので″暦″は多少気掛かりではあるが、これ以上の追及は止める事にする方針であった。
それよりも気になる事があった。
(〝……それよりも、私ですら見る事の出来ない″未来″がもう間も無く近付いてきている…
まるで解されて絡み合った毛糸の様に暦(時)が絡まりあっている、一体何が起こるというのでしょう…(暦)〟)
暦(時)の神様と言えども人生の全貌を知る事は出来ず、それを可能とするのは″主神″だけである。
「″暦″さん?」
〝え?あぁ、何でも御座いませんよ。
それでは御迷惑を掛けたお詫びとして、″記憶はそのままに、4日前の骸鏖峰獄蟲の召喚権行使″直後に巻き戻させて頂きます。
それで如何でしょうか?(暦)〟
「えぇ、それでお願いします。
…骸鏖峰獄蟲さんもそれで良いですか?」
〝まぁ経緯はどうあれ、結果的には親交を深める事は成されたな。
今回限りの縁では無い様じゃし、次会えるのを楽しみにしておるぞ、その時は剣を交える事無いと良いがな。〟
「…経験上、何の気無しに話した事が伏線になったりするんだよなぁ…」
〝儂は歓迎するぞ?〟
「僕がしないんだよ。」
記憶はそのままに、4日前の時間軸に巻き戻す事を両者が了承。
骸鏖峰獄蟲は次回の出会いを楽しみにしている様であった。
〝それではノア君、君の場合は治り掛かっていた大怪我が4日前の状態に戻るので、2分程掛けて時間を巻き戻します、それではいきますよ。(暦)〟
『『『ギュゥウウウウン…』』』(時間の巻き戻し開始)
″暦″が説明を終えると共に周囲の景色が逆再生されていく。
戦闘で出来た陥没痕が復元していき空を羽ばたく鳥が後ろ向きに飛行していく。
何とも不可思議な光景だが、それによって時間が巻き戻されていく事を実感していた。
それに伴って
『『『プチュプチュプチュ…』』』(癒えていた傷が増え、皮膚に血が滲む)
「……。」
〝…あの、ノア君?
癒えた傷が元に戻る光景は中々に凄惨なモノなので、目を瞑ってた方が良いですよ?(暦)〟
「…病気を患っていた時の事を思い出してたよ…
あの時は何もしてなくても皮膚が裂けて血をよく流してたよ…
激痛で寝れなくて、何度も父さんと母さんを心配にさせてたな…」
時間の巻き戻しと共に、皮膚が再生されていた右腕の筋繊維が剥き出しとなり血が滲む。
左鎖骨辺りの大きな火傷に水ぶくれが再形成され、ジワジワとした痛みが戻っていく。
それをただ座って眺めているだけなのに体がズシリと重くなっていくのを感じる。
何せ4日前と言えば寝る前なので、疲労感まで戻ってきているのである。
「ねぇ″暦″さん?
例の″恩恵″の話なんだけど…」
〝え!?どうしました?まさか承諾してくれる感じで…(暦)〟
「あ、いや…というよりか、その″恩恵″使って″僕が病気になる前″に戻れたりとかって出来たりするのかな、って…
ほら、今も4日前に時間を巻き戻してるじゃないですか…?」
ふとノアは″暦″がゴリ押ししていた″恩恵″についての話に触れる。
″暦″は寿命延長だと思っていたが、ノアから問われたのは″人生自体の巻き戻し″であった。
69
あなたにおすすめの小説
ダンジョントランスポーター ~ 現代に現れたダンジョンに潜ったらレベル999の天使に憑依されて運び屋になってしまった
海道一人
ファンタジー
二十年前、地球の各地に突然異世界とつながるダンジョンが出現した。
ダンジョンから持って出られるのは無機物のみだったが、それらは地球上には存在しない人類の科学や技術を数世代進ませるほどのものばかりだった。
そして現在、一獲千金を求めた探索者が世界中でダンジョンに潜るようになっていて、彼らは自らを冒険者と呼称していた。
主人公、天城 翔琉《あまぎ かける》はよんどころない事情からお金を稼ぐためにダンジョンに潜ることを決意する。
ダンジョン探索を続ける中で翔琉は羽の生えた不思議な生き物に出会い、憑依されてしまう。
それはダンジョンの最深部九九九層からやってきたという天使で、憑依された事で翔は新たなジョブ《運び屋》を手に入れる。
ダンジョンで最強の力を持つ天使に憑依された翔琉は様々な事件に巻き込まれていくのだった。
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
ある日、俺の部屋にダンジョンの入り口が!? こうなったら配信者で天下を取ってやろう!
さかいおさむ
ファンタジー
ダンジョンが出現し【冒険者】という職業が出来た日本。
冒険者は探索だけではなく、【配信者】としてダンジョンでの冒険を配信するようになる。
底辺サラリーマンのアキラもダンジョン配信者の大ファンだ。
そんなある日、彼の部屋にダンジョンの入り口が現れた。
部屋にダンジョンの入り口が出来るという奇跡のおかげで、アキラも配信者になる。
ダンジョン配信オタクの美人がプロデューサーになり、アキラのダンジョン配信は人気が出てくる。
『アキラちゃんねる』は配信収益で一攫千金を狙う!
【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』
ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。
全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。
「私と、パーティを組んでくれませんか?」
これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!
ザコ魔法使いの僕がダンジョンで1人ぼっち!魔獣に襲われても石化した僕は無敵状態!経験値が溜まり続けて気づいた時には最強魔導士に!?
さかいおさむ
ファンタジー
戦士は【スキル】と呼ばれる能力を持っている。
僕はスキルレベル1のザコ魔法使いだ。
そんな僕がある日、ダンジョン攻略に向かう戦士団に入ることに……
パーティに置いていかれ僕は1人ダンジョンに取り残される。
全身ケガだらけでもう助からないだろう……
諦めたその時、手に入れた宝を装備すると無敵の石化状態に!?
頑張って攻撃してくる魔獣には申し訳ないがダメージは皆無。経験値だけが溜まっていく。
気づけば全魔法がレベル100!?
そろそろ反撃開始してもいいですか?
内気な最強魔法使いの僕が美女たちと冒険しながら人助け!
ブラック企業で心身ボロボロの社畜だった俺が少年の姿で異世界に転生!? ~鑑定スキルと無限収納を駆使して錬金術師として第二の人生を謳歌します~
楠富 つかさ
ファンタジー
ブラック企業で働いていた小坂直人は、ある日、仕事中の過労で意識を失い、気がつくと異世界の森の中で少年の姿になっていた。しかも、【錬金術】という強力なスキルを持っており、物質を分解・合成・強化できる能力を手にしていた。
そんなナオが出会ったのは、森で冒険者として活動する巨乳の美少女・エルフィーナ(エル)。彼女は魔物討伐の依頼をこなしていたが、強敵との戦闘で深手を負ってしまう。
「やばい……これ、動けない……」
怪我人のエルを目の当たりにしたナオは、錬金術で作成していたポーションを与え彼女を助ける。
「す、すごい……ナオのおかげで助かった……!」
異世界で自由気ままに錬金術を駆使するナオと、彼に惚れた美少女冒険者エルとのスローライフ&冒険ファンタジーが今、始まる!
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる