未熟な蕾ですが

黒蝶

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第3項

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「…ちょっと下がってなさい」
「どうして、」
あまりに突然の攻撃に、私はその場でふせることしかできなかった。
《キシシシ!》
いつもより数が多い。群れだろうか。
「この子に手を出したら消すわよ」
結月は大きな爪で相手を引き裂く。
それでも全然怯んでいる様子はない。
「まったく、これだから無感情の相手は…」
放送室に入り切らないと助けを呼べないけれど、ここを離れている間に結月が致命傷を負ってしまったら打つ手がない。
「私のことはいいから中に入りなさい」
「……」
「桜良!」
覚悟を決めてその場に立つ。
呪いのようなこの力を見せても、みんなは私をただの人として扱ってくれた。
あまり戦闘向きではないとはいえ、大切な仲間ひとり護れないでどうする。
「来ないで」
詩乃先輩から分けてもらったお札と、室星先生からもしものときにと渡されていた細い糸。
炎を出したりはできないけれど、加護の力なら穂乃さんにも負けない。
《キシ、シ…?》
相手が怯んだすきに結月の体を引っ張って、入ってこられないように結界をはる。
「ちょっと、何して、」
「あなたを置いていくなんてできない」
「あんたねえ……。まあ、でも、助かったわ。ありがと」
破られないだろうと思っていたけど、思ったより相手が強くなっているらしい。
噂の広がりが早いからか、第2形態のようなものがちらちら見え隠れしている。
「……あ」
結界が崩れると同時に、何かが私の前に立ち塞がった。
その瞬間目にうつったのは、大切な人の笑顔と舞い散る血しぶき。
「なん、で、」
「いやあ、ピンチっぽい、なって…間に合った、よかっ、た」
毎回陽向が痛い思いをするのが嫌で使えるようになりたかったのに、また護れなかった。
「【消えて。こちらに戦う意思はない。お願いだから、みんな消えて】」
視界が滲む。目の前がどうなっているかも把握できていない。
「おねが、」
「桜良」
「……死なないでって言ったのに」
「ごめん」
血を吐きながら私の頬に触れた手はとても温かくて、後悔の波が押し寄せてくる。
「謝るのは私の方。ごめんなさい」
「いいって。俺が、好きでやったこ、とだし…」
ゆっくり瞼がおりるのが見えて、泣きそうになってしまう。
「私の声じゃ届いてなかったから、ちゃら男に頼んだの」
「…ごめんなさい」
「ああ、もう!そんな辛気くさくなる必要ないの!布団で寝かせないといけないでしょ?運ぶわよ」
「…そうね」
できるだけ陽向の体を傷つけないように気をつけながら、放送室に運びいれる。
どうして陽向はこんなにぼろぼろになるまで戦ってしまうんだろう。
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