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初めてのなにも起きなかった日
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それはまるで、深い深い湖面がひとときも揺れずに澄んだような、静けさだった。
誰かが小さくすすり泣いた。
それが引き金になったかのように、周囲の魔導師たちの目元が次々に潤む。
「魔力、安定……してる……」
「接触後の反応ゼロ」
「ど、どういう……えっ、いや、これ、本当に……?」
誰もが動揺しながら、記録用紙に震える手で書き込んでいた。
そして、室内の隅で立ち尽くしていた年配の侍従が、ハンカチでそっと目頭を押さえた。
「殿下が女性と、普通に手をつなげた。それだけのことが、こんなに……」
涙声の中に、込み上げるような安堵と喜びが滲んでいた。
リュシアはというと、ぽかんと口を開けたまま、状況をまったく理解していない。
「あの……みなさん、どうして泣いて……?」
「……リュシア様」
王子が、そっと手を離した。
けれど、その瞳は今にも涙が零れそうなくらいに潤んでいて、
それでも笑っていた。
「ありがとうございます。……私にとっては、これが初めてだったのです」
「初めて?」
「はい。私が異性と触れても何も起きなかったのは……今日が、人生で初めてです」
その言葉の重みが、ようやくリュシアの胸に届く。
「でも、私は……ただ、草のお世話が得意な田舎者なだけで……」
王子が、微笑んだ。
「私にとっては、あなたの存在そのものが特別です」
思わず、リュシアは頬を赤らめた。
まわりの魔道士たちから、あたたかい拍手が起きた。
堅苦しい報告でもなく、儀礼的な礼でもない。
ただ、純粋な祝福と感動からの拍手。
その輪の中に、嫉妬や羨望は、一切なかった。
「まさか、こんな日が来るなんて……」
「神様は、見ていてくれたんだな……」
ひとり、またひとりと目を拭い、微笑む大人たち。
それを見て、リュシアは胸がじんわりと熱くなるのを感じた。
まるで、何もしてないのに自分が良いことをしたような、そんな不思議な気持ちだった。
ただただ、何も起こらなかったという真実だけが、そこにあった。
誰かが小さくすすり泣いた。
それが引き金になったかのように、周囲の魔導師たちの目元が次々に潤む。
「魔力、安定……してる……」
「接触後の反応ゼロ」
「ど、どういう……えっ、いや、これ、本当に……?」
誰もが動揺しながら、記録用紙に震える手で書き込んでいた。
そして、室内の隅で立ち尽くしていた年配の侍従が、ハンカチでそっと目頭を押さえた。
「殿下が女性と、普通に手をつなげた。それだけのことが、こんなに……」
涙声の中に、込み上げるような安堵と喜びが滲んでいた。
リュシアはというと、ぽかんと口を開けたまま、状況をまったく理解していない。
「あの……みなさん、どうして泣いて……?」
「……リュシア様」
王子が、そっと手を離した。
けれど、その瞳は今にも涙が零れそうなくらいに潤んでいて、
それでも笑っていた。
「ありがとうございます。……私にとっては、これが初めてだったのです」
「初めて?」
「はい。私が異性と触れても何も起きなかったのは……今日が、人生で初めてです」
その言葉の重みが、ようやくリュシアの胸に届く。
「でも、私は……ただ、草のお世話が得意な田舎者なだけで……」
王子が、微笑んだ。
「私にとっては、あなたの存在そのものが特別です」
思わず、リュシアは頬を赤らめた。
まわりの魔道士たちから、あたたかい拍手が起きた。
堅苦しい報告でもなく、儀礼的な礼でもない。
ただ、純粋な祝福と感動からの拍手。
その輪の中に、嫉妬や羨望は、一切なかった。
「まさか、こんな日が来るなんて……」
「神様は、見ていてくれたんだな……」
ひとり、またひとりと目を拭い、微笑む大人たち。
それを見て、リュシアは胸がじんわりと熱くなるのを感じた。
まるで、何もしてないのに自分が良いことをしたような、そんな不思議な気持ちだった。
ただただ、何も起こらなかったという真実だけが、そこにあった。
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