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37 追憶
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王宮では、こんな時いつもスーリに相談していた。
解決しなくても、聞いてもらえるだけで、いつも心がやんわりと晴れた。
もう、すでにスーリが恋しかった。
今となっては「スーリ」というのはジャナル王子が演じていただけの、ただの幻だったのかもしれないが…。
自分を好きでいてくれた、自分の大切な人は、遠い記憶の中にいる母と、父王以外誰もいなくなってしまったな…と寂しく思った。
母は美しく、優しい人だった…という微かな記憶はある…。
黒い謀略が渦巻く王宮で、父王の寵愛を一身に受けていた母は嫉妬の対象となり、なぶり殺しにされてしまった。
下級貴族の出身で、後ろ盾もないのに父王に請われるまま、正妃になどなったからだ。
守ろうとして、そばに置き、結局それが裏目にでてしまった父の無念は、想像するに余りある…。
その後、父王は残虐な王への道をひた走ったのだから…。
気がつけば、母の子である自分以外の王位継承者は全員殺されていた…。
もし、あの時母が殺されず、父王が狂わなければ、隣国の王子であるスーリとどこかで出会っていたかもしれない。
──きっと自分は恋に落ちて…。
性懲りもなく、手紙を渡すのだろうか…?
そして、振られる…。
シャルリンテは、ふふっ…と笑った。
そして、しゃがんだまま頬杖をつき、ため息をついた。
断崖の先にある、泡立った海の冷たさを想像してみる…。
数歩踏み出せば、父王に再び会えるのだろうか…。
いっそのこと、あの時焼き殺されていたほうが、ずっとよかったのかもしれない。
そんな事に思いを馳せていたシャルリンテは、後ろからぐいっと首に腕を回されて、思わず、尻もちをついた…。
首を、腕で押さえつけられながらも、何とかシャルリンテは後ろを振り返り、相手の顔を見た。
数時間前に、嘔吐してしまった自分を追い出した男だった…。
船員ではなく、傭兵だ…と言って、腕の入れ墨を見せてくれた…。
スキンヘッドに筋骨隆々、細い目の…。
カリストでの仕事が終わったところだ…とも言っていた。
それを聞いて、革命の時王宮で派手に暴れていた、どこの国の者か分からない人間達がいた事を、ふと思い出した。
あの者達は、金で雇われた傭兵だったのか…。
そして、この男はその時の一人かもしれない…。
男に、それを聞かされた時、複雑な気持ちになった。
「さっきは、吐かれて怯んじまったけど…。吐き気止めの魔術をかければ、いけるだろ?売春代は払ってねーけど、宿代は払ったんだし…元を取らせろよ…」
そう言ってシャルリンテの喉を強く押して、石がごろごろしている地面に押し倒した…。
男は、魔術が使えるようでシャルリンテの顔面に手を広げると、吐き気止めの魔術をボワンとかけた。
「肉穴として、大人しくしてりゃ、2分で終わる…。外でやった事なんかないだろう?興奮するか?お嬢さんよ…」
「…2分?」
魔術をかけられて、ぼんやりとした頭で、森でスーリとした時の事を思い出す…。
──落ち葉のベッドを作ってくれて…シールドの中は暖かくて……。
「……しかし…すげーキスマークだな…。どんだけ独占欲が強い男に、抱かれたんだよ。こんな売春婦相手に…。暇な男がいるもんだな…」
ドレスの胸元を、乱暴に開きながら男は言った。
シャルリンテは、スーリが首に何度も甘いキスをしてくれた事を思い出し、目に涙が滲む。
「──シャルリ?」
聞き覚えがある男の声が聞こえ、そちらに顔を向けると、そこにはダートがいた。
解決しなくても、聞いてもらえるだけで、いつも心がやんわりと晴れた。
もう、すでにスーリが恋しかった。
今となっては「スーリ」というのはジャナル王子が演じていただけの、ただの幻だったのかもしれないが…。
自分を好きでいてくれた、自分の大切な人は、遠い記憶の中にいる母と、父王以外誰もいなくなってしまったな…と寂しく思った。
母は美しく、優しい人だった…という微かな記憶はある…。
黒い謀略が渦巻く王宮で、父王の寵愛を一身に受けていた母は嫉妬の対象となり、なぶり殺しにされてしまった。
下級貴族の出身で、後ろ盾もないのに父王に請われるまま、正妃になどなったからだ。
守ろうとして、そばに置き、結局それが裏目にでてしまった父の無念は、想像するに余りある…。
その後、父王は残虐な王への道をひた走ったのだから…。
気がつけば、母の子である自分以外の王位継承者は全員殺されていた…。
もし、あの時母が殺されず、父王が狂わなければ、隣国の王子であるスーリとどこかで出会っていたかもしれない。
──きっと自分は恋に落ちて…。
性懲りもなく、手紙を渡すのだろうか…?
そして、振られる…。
シャルリンテは、ふふっ…と笑った。
そして、しゃがんだまま頬杖をつき、ため息をついた。
断崖の先にある、泡立った海の冷たさを想像してみる…。
数歩踏み出せば、父王に再び会えるのだろうか…。
いっそのこと、あの時焼き殺されていたほうが、ずっとよかったのかもしれない。
そんな事に思いを馳せていたシャルリンテは、後ろからぐいっと首に腕を回されて、思わず、尻もちをついた…。
首を、腕で押さえつけられながらも、何とかシャルリンテは後ろを振り返り、相手の顔を見た。
数時間前に、嘔吐してしまった自分を追い出した男だった…。
船員ではなく、傭兵だ…と言って、腕の入れ墨を見せてくれた…。
スキンヘッドに筋骨隆々、細い目の…。
カリストでの仕事が終わったところだ…とも言っていた。
それを聞いて、革命の時王宮で派手に暴れていた、どこの国の者か分からない人間達がいた事を、ふと思い出した。
あの者達は、金で雇われた傭兵だったのか…。
そして、この男はその時の一人かもしれない…。
男に、それを聞かされた時、複雑な気持ちになった。
「さっきは、吐かれて怯んじまったけど…。吐き気止めの魔術をかければ、いけるだろ?売春代は払ってねーけど、宿代は払ったんだし…元を取らせろよ…」
そう言ってシャルリンテの喉を強く押して、石がごろごろしている地面に押し倒した…。
男は、魔術が使えるようでシャルリンテの顔面に手を広げると、吐き気止めの魔術をボワンとかけた。
「肉穴として、大人しくしてりゃ、2分で終わる…。外でやった事なんかないだろう?興奮するか?お嬢さんよ…」
「…2分?」
魔術をかけられて、ぼんやりとした頭で、森でスーリとした時の事を思い出す…。
──落ち葉のベッドを作ってくれて…シールドの中は暖かくて……。
「……しかし…すげーキスマークだな…。どんだけ独占欲が強い男に、抱かれたんだよ。こんな売春婦相手に…。暇な男がいるもんだな…」
ドレスの胸元を、乱暴に開きながら男は言った。
シャルリンテは、スーリが首に何度も甘いキスをしてくれた事を思い出し、目に涙が滲む。
「──シャルリ?」
聞き覚えがある男の声が聞こえ、そちらに顔を向けると、そこにはダートがいた。
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