余命僅かの悪役令息に転生したけど、攻略対象者達が何やら離してくれない

上総啓

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【聖者の薔薇園-プロローグ】

178.パパのお説教

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 レオのぎゅーから回収され、名残惜しそうに見送るレオを宥めて部屋を出たのが数分前のこと。
 皇宮の廊下をパパに手を引かれて歩いている途中、ふと長い溜め息を吐いたパパが立ち止まって振り返った。
 僕と目線を合わせるように膝をつくなり、言い聞かせるような真剣な…けれど何処か呆れを含んだ声音のお説教が始まった。


「いいかフェリアル。お前には危機感が足りねぇ。普通に考えて他所のガキを抱こうとする奴は全員変態だ。下心しか無いから無防備に受け入れるんじゃねぇ」

「でも…おともだち…」

「百歩譲ってうちの愚息と抱き合うなら構わねぇ。だが皇太子、アイツはもう駄目だ。表立ってお前を口説いたアイツはもうただのダチじゃねぇんだよ」


 しょぼん…と肩を落とす。
 容赦の無い言い方だけれど、反論の言葉が浮かばないからぐっと口を噤んだ。

 パパの言葉は正論だ。友情を抱く友達と、恋愛感情を抱く友達は一括りには纏められない。
 今までは、レオは仲良しなただの友達だったから。だからぎゅーも友達のじゃれ合いみたいなもので、深く考える必要なんてなかった。けど…これからは違う。
 これからは、レオにぎゅーをされる度におかしなことを考えてしまいそうだ。何も考えずにぽかぽかすることは出来ない。きっと何かしら考えて、真っ赤になって、レオの甘い笑みを見る度固まってしまう。


「……フェリアル。覚えとけ、お前の優しさは毒にも薬にもなり得る。大抵は薬だけどな、こういう色恋沙汰が絡む泥沼な案件は例外が多い」


 沈んだ表情で黙り込む僕を見て、何か思うことがあったのだろうか。パパはふと目を細めると、忠告するみたいな硬い声音で語り始めた。
 優しさは毒にも薬にもなり得る。それはレオの件にどう関係するのだろう。


「気遣いだとか今後の関係だとかマジでクソどうでもいいから考えんな。答える時は若干辛辣なくらいが丁度良い。メンヘラやらヤンデレやらが相手の時は特にだ」

「レオ、傷ついちゃうよ…?」


 ただでさえレオのプロポーズへの答え方に悩んでいるのに、それに加えて辛辣さも必要だなんて。
 ごめんなさい、だけじゃだめなのかな…ごめんなさいだけでも傷付けてしまいそうで怖いのに、それ以上を考えなきゃいけないの…?

 辛辣な言葉をレオに浴びせる姿を想像しただけで胸が痛む。
 眉を顰めた僕を見下ろすと、パパはよしよしと頭を撫でながら小さく語った。さっきよりは幾分穏やかな色の滲んだ声音だ。


「傷付けんのも優しさって時が稀にあんだよ。まぁ、お前はちっこいガキだからまだ分かんねぇだろうけどな。その時になりゃ嫌でも理解するから心配すんな」

「……うむ」

「なんだ不満か?ほっぺ膨らましやがって、撫で回すぞコラ」


 むにゅむにゅと頬をふにられる。ちょっとした仏頂面をふんすと浮かべるけれど、全く効いていない様子でしゅんとした。


「つーかお前、もう答え決まってんだな。無駄に悩んで時間潰すよりマシだが」

「……?」


 答え?首を傾げると返ってくる丸い瞳。
 ふにふにを止めて固まるパパは、やがてみるみる目を見開いて僕の両肩をガシッと鷲掴んだ。何だか威圧的なオーラがびしばし刺さって、ほんの少しだけぷるぷる震えてしまう。


「お前…あの変態皇太子に告られたんだろ?」

「うむ」

「お前はアイツをただのダチだと思ってんだろ?」

「うむ…」

「それ、ちゃんと伝えたんだよな?」

「……む?」


 沈黙が数秒しーんと流れた。
 やがてハッと飛び跳ねた僕を見て、パパは『何やってんだ貴様ァ!!』とばかりに顔の色んな部位を吊り上げた。例えるなら、般若の形相といった感じ。
 両肩をぐわんぐわん揺らされ、あわわと目を回した状態で問い質される。


「拗らせメンヘラとは付き合えねぇよバーカってちゃんと言ったのかって聞いてんだ!」

「ぴゃっ!そ…そんなこと、いえない…!」


 若干辛辣にとは言っていたけれど、ここまで辛辣だとは思わなかった…。
 言うとしてももっと穏やかだよ、と思いながらふるふる首を横に振ると、パパはふと愕然と硬直した。かと思えばまたまた般若の形相を復活させ、何度目かのお説教の前触れに入る。

 それを機敏に察して、高速で巡った思考が言い訳…弁解を思い付いた。
 あわあわと手をぴょこぴょこ振りながら懸命に反論してみる。


「ちがうの。僕、結婚してないから、いっしょにねるのだめって言った」

「ほう…で?」

「レオ。お昼寝はおともだちでもいっしょにするのよーって」

「ふぅん…で?」

「たしかに。なるほど。そっかそっかぁ、っておもいました」

「このポンコツ!!」


 ほっぺむにゅむにゅの刑に処されてしまった…むぐむぐ…むぐ…。

 パパが僕のほっぺをむにゅむにゅふくふくしながら怒りの形相を浮かべる。その両手は全力でほっぺを捏ねまわしているだけだから、正直あんまり怖くない。
 強くむにゅむにゅされたせいで、やがて気が済んだパパが手を離す時にはぷるるんっとするくらいになってしまった。こうしたのはパパなのに、そんなパパ自身は「やべぇ落ちる」と下からむぐっとほっぺを持ち上げている。パパがやったんだからね、ふんす。


「パパごめんなさい。結婚はできないのです」

「俺に言ってどうする。何で俺がフラれたみたいになってんだレナードに言え」


 呆れ顔で言うパパが直後に「いや待て、やっぱ今日は無しだ」と発言を覆した。
 きょとんとする僕をひょいっと抱き上げ、皇宮の出口に向かってスタスタと歩き出す。レオにごめんなさいしに行かないの?と問うと、パパはうんざりしたような表情で答えた。


「これは経験則だが…全部吐き出して無敵になった状態の奴はマジで危険だ。今のアイツならノリと勢いでガチで既成事実作りそうだから面会禁止」


 問答無用とばかりに「いいな?」と威圧され、思わずこくこくと深く頷いた。

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