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第61話
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街道へ戻るころには、朝の光がはっきりと差し始めていた。森の縁を抜けると、空気が変わる。湿り気が薄れ、人の匂いが混じる。遠くで荷車の軋む音がし、行商人の声が重なった。
ライトは歩調を落とさない。剣は鞘に収まっているが、意識は前へ向いたままだ。アリアは少し先を歩き、左右を確認する。リオナは後ろで足並みを揃え、フィーナは一歩下がって森の気配を断ち切った。ミリュウは肩で静かにしている。
「追撃はないな」
アリアが短く言った。
「ああ。ここから先は向こうも無茶はしない」
ライトは街門を見据えた。守備兵が増えている。鎧の数がいつもより多く、巡回の間隔も短い。
門をくぐると、視線が集まった。ミリュウに向けられるものもあるが、それだけじゃない。昨夜から今朝にかけての動きは、すでに噂になっている。
ギルドへ向かう途中、路地の角で足を止める。
気配。
人混みの中に、紛れ込む視線。敵意は薄いが、目的を持っている。
ライトは何も言わずに進む。反応しないこと自体が牽制になる。
ギルドの扉を押し開けると、朝にもかかわらず人が多かった。依頼板の前に集まる冒険者、報告を待つ一団、騒がしい声。だがライトたちの姿を見て、空気がわずかに変わる。
「ライトさん」
ミィナがすぐに気づき、カウンター越しに声をかけた。
「お帰りなさい。無事で……」
「報告があります。川沿いで交戦しました」
簡潔に伝えると、ミィナは即座に頷く。
「ギルドマスターは奥です」
通された部屋で、グランは既に地図を広げていた。川筋、集落、街道。赤い印が増えている。
「戻ったか」
「はい。水と風を使う連中です。軽装の斥候と、鎧の前衛」
グランは視線を上げ、短く息を吐いた。
「一致している。昨夜、下流でも被害が出た」
リオナが一歩前に出る。
「魔導具を使ってました。粗製ですが、連携が取れている」
「訓練された動きだ」
グランは地図を指でなぞる。
「川を使って分断し、街道で様子を見る。狙いは一つじゃない」
ライトは頷いた。
「俺たちを測っている」
「その通りだ」
グランは視線を向ける。
「勇者パーティが、今朝動いた」
空気が引き締まる。
「北の街道だ。異変の調査名目だが、実際は……」
「重なってる」
ライトが言った。
「向こうも、同じ線を追っている」
グランは否定しない。
「だから急ぐ。今夜、正式な討伐依頼を出す。川沿いの拠点を叩く」
アリアが口を開く。
「数は?」
「多くはない。だが質が悪い」
フィーナが静かに言った。
「森が、嫌がっています。長く置く存在ではありません」
グランは一瞬だけ眉を動かし、頷いた。
「準備を整えろ。昼まで時間はある」
部屋を出ると、廊下で数人の冒険者とすれ違う。視線が絡む。探る目、羨む目、警戒の目。
外に出ると、街は完全に目を覚ましていた。
「少し体を動かす」
ライトが言うと、アリアが笑う。
「訓練場か」
「軽くな」
訓練場では、木剣の音が響いていた。だがライトたちが入ると、自然と間が空く。
ライトは深く構えず、足を運ぶ。
「《身体強化Lv1》」
踏み込みが安定する。剣を振る。
「《斬撃強化(中)》」
刃の軌道が揃い、木剣が正確に標的を打つ。無駄が削げ落ちていく。
リオナは離れた位置から杖を振る。
「フレイムボール」
的が焼け落ちる。
続けて、
「アイスカッター」
別の標的が切り裂かれた。
フィーナは土に手を触れ、地面を整える。足場が均され、動きやすくなる。
アリアが前に出る。
「合わせるぞ」
二人で踏み込む。刃と刃が交差し、間合いが詰まる。
ライトは流れを変える。
「《ウィンドLv2》」
足運びが軽くなり、距離がずれる。アリアの刃が空を切り、次の瞬間、逆側から入る。
短い攻防。
終わると、アリアが息を吐いた。
「確実に速くなってる」
「感覚が合ってきた」
ライトは木剣を下ろす。
昼前、ギルドからの使いが来た。
「準備が整いました」
集まった依頼書には、川沿いの廃倉庫群が記されている。拠点候補。
門を出る前、遠くから視線を感じた。
鎧姿の一団。
先頭に立つ青年が、こちらを見る。
カイルだ。
一瞬、視線が交わる。
言葉はない。
だが、互いに理解した。
同じ場所へ向かう。
ライトは歩き出す。
もう、後ろは見ない。
進む先に、答えがある。
ライトは歩調を落とさない。剣は鞘に収まっているが、意識は前へ向いたままだ。アリアは少し先を歩き、左右を確認する。リオナは後ろで足並みを揃え、フィーナは一歩下がって森の気配を断ち切った。ミリュウは肩で静かにしている。
「追撃はないな」
アリアが短く言った。
「ああ。ここから先は向こうも無茶はしない」
ライトは街門を見据えた。守備兵が増えている。鎧の数がいつもより多く、巡回の間隔も短い。
門をくぐると、視線が集まった。ミリュウに向けられるものもあるが、それだけじゃない。昨夜から今朝にかけての動きは、すでに噂になっている。
ギルドへ向かう途中、路地の角で足を止める。
気配。
人混みの中に、紛れ込む視線。敵意は薄いが、目的を持っている。
ライトは何も言わずに進む。反応しないこと自体が牽制になる。
ギルドの扉を押し開けると、朝にもかかわらず人が多かった。依頼板の前に集まる冒険者、報告を待つ一団、騒がしい声。だがライトたちの姿を見て、空気がわずかに変わる。
「ライトさん」
ミィナがすぐに気づき、カウンター越しに声をかけた。
「お帰りなさい。無事で……」
「報告があります。川沿いで交戦しました」
簡潔に伝えると、ミィナは即座に頷く。
「ギルドマスターは奥です」
通された部屋で、グランは既に地図を広げていた。川筋、集落、街道。赤い印が増えている。
「戻ったか」
「はい。水と風を使う連中です。軽装の斥候と、鎧の前衛」
グランは視線を上げ、短く息を吐いた。
「一致している。昨夜、下流でも被害が出た」
リオナが一歩前に出る。
「魔導具を使ってました。粗製ですが、連携が取れている」
「訓練された動きだ」
グランは地図を指でなぞる。
「川を使って分断し、街道で様子を見る。狙いは一つじゃない」
ライトは頷いた。
「俺たちを測っている」
「その通りだ」
グランは視線を向ける。
「勇者パーティが、今朝動いた」
空気が引き締まる。
「北の街道だ。異変の調査名目だが、実際は……」
「重なってる」
ライトが言った。
「向こうも、同じ線を追っている」
グランは否定しない。
「だから急ぐ。今夜、正式な討伐依頼を出す。川沿いの拠点を叩く」
アリアが口を開く。
「数は?」
「多くはない。だが質が悪い」
フィーナが静かに言った。
「森が、嫌がっています。長く置く存在ではありません」
グランは一瞬だけ眉を動かし、頷いた。
「準備を整えろ。昼まで時間はある」
部屋を出ると、廊下で数人の冒険者とすれ違う。視線が絡む。探る目、羨む目、警戒の目。
外に出ると、街は完全に目を覚ましていた。
「少し体を動かす」
ライトが言うと、アリアが笑う。
「訓練場か」
「軽くな」
訓練場では、木剣の音が響いていた。だがライトたちが入ると、自然と間が空く。
ライトは深く構えず、足を運ぶ。
「《身体強化Lv1》」
踏み込みが安定する。剣を振る。
「《斬撃強化(中)》」
刃の軌道が揃い、木剣が正確に標的を打つ。無駄が削げ落ちていく。
リオナは離れた位置から杖を振る。
「フレイムボール」
的が焼け落ちる。
続けて、
「アイスカッター」
別の標的が切り裂かれた。
フィーナは土に手を触れ、地面を整える。足場が均され、動きやすくなる。
アリアが前に出る。
「合わせるぞ」
二人で踏み込む。刃と刃が交差し、間合いが詰まる。
ライトは流れを変える。
「《ウィンドLv2》」
足運びが軽くなり、距離がずれる。アリアの刃が空を切り、次の瞬間、逆側から入る。
短い攻防。
終わると、アリアが息を吐いた。
「確実に速くなってる」
「感覚が合ってきた」
ライトは木剣を下ろす。
昼前、ギルドからの使いが来た。
「準備が整いました」
集まった依頼書には、川沿いの廃倉庫群が記されている。拠点候補。
門を出る前、遠くから視線を感じた。
鎧姿の一団。
先頭に立つ青年が、こちらを見る。
カイルだ。
一瞬、視線が交わる。
言葉はない。
だが、互いに理解した。
同じ場所へ向かう。
ライトは歩き出す。
もう、後ろは見ない。
進む先に、答えがある。
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