最弱スキル《リサイクル》で世界を覆す ~クラス追放された俺は仲間と共に成り上がる~

KABU.

文字の大きさ
3 / 75
第一章:「召喚と追放」

第3話:朽ちた剣の再生

しおりを挟む
 朝の霧が、森の地面を這うように流れていた。
 木々の隙間から薄い光が差し込み、草の露がきらりと光る。
 篠原蓮は、リアの後ろ姿を追いながら歩いていた。
 彼女の灰銀の髪が、湿った風に揺れている。

「……足、遅い」
「悪い、まだ慣れてなくて」

 リアは呆れたようにため息をつき、尻尾を軽く振った。
 その仕草がどこか可愛くて、蓮は思わず目を逸らす。

「森の外れに、村の跡がある。近づく人間は少ない。……臭いがするからな」
「臭い?」
「焼けた木と、血の臭い。もう何年も前のことだけど、風が吹くとまだ残ってる」

 リアの声には感情の起伏がほとんどなかった。
 それが逆に、彼女が何を見てきたのかを雄弁に語っていた。



 森を抜けた先に、広がるのは灰色の廃墟だった。
 焦げた家々、崩れた石壁、黒ずんだ井戸。
 わずかに立っている木の柱が、過去の生活の名残を告げている。

「……これが、リアの村……?」
「そう。フェンリル族の集落《ルグナ》。もう、誰もいない」

 リアはしゃがみ込み、土を手ですくった。
 灰と血が混じったような色をしている。
 その指先が、震えていた。

「人間の兵が来た。『加護を持たない獣人は、存在する価値がない』って」
「そんな……」
「戦った。でも、勝てなかった。――あの時、私は逃げたんだ」

 小さく、乾いた笑い。
 蓮は何も言えなかった。ただ、風の音が瓦礫の隙間を抜ける。

「……リア」
「なに」
「俺に、この村を“直させてくれないか”」

 リアの耳がぴくりと動いた。
 驚いたように彼を見つめ、眉をひそめる。

「直す? 焼けた家を? ……ふざけてるの?」
「違う。俺のスキル、《リサイクル》。壊れたものを“再利用”できる。
 ……でも、それだけじゃない。再構築――つまり、“再生”だ」

 リアの視線が鋭くなる。
「それができるなら、もう誰も苦しまない。――でも、信じられる?」
「信じてくれとは言わない。やって見せる」

 蓮は焼け落ちた家の跡に歩み寄る。
 黒く焦げた木材を拾い上げ、その手に力を込めた。

《スキル発動――リサイクル対象:炭化木材》
《再構築プロセス開始》

 青白い光が蓮の掌を包む。
 炭のように崩れていた木が、ゆっくりと形を取り戻す。
 黒から茶、茶から淡い木肌の色へ。
 焦げ跡が消え、一本の丈夫な柱として蘇った。

「……っ!」
 リアが息を呑む。
 蓮はそのまま、次の瓦礫を拾う。
 壊れた石壁、砕けた食器、焦げた布――次々に再構築されていく。

 やがて、瓦礫の山がひとつの形を取り戻した。
 焼けた家は、簡素ながらも確かな“家”として立っていた。

「見たか、リア。……俺の《リサイクル》は、ゴミ拾いなんかじゃない」

 風が吹き抜け、屋根に積もった灰をさらう。
 リアはしばらく何も言わなかった。
 ただ、立ち上がり、家の前に歩み寄る。
 手のひらで壁をなぞり、静かに呟く。

「……この木の感触、昔の家と同じ」

 頬を伝うのは涙だった。
 けれど、それを見せまいと、すぐに袖で拭う。
 蓮はその背中を見つめながら、胸の奥が熱くなるのを感じた。



 夕暮れ。
 日が沈み、再生された家の中で二人は焚き火を囲んでいた。
 蓮は修復した器にスープを注ぎ、リアに手渡す。

「……美味しい」
 短い言葉。それだけで、報われるような気がした。

「ありがとう、蓮。あんた、変な人間だな」
「変、か」
「うん。普通の人間は、獣人なんて助けない。……それに、あんなスキルでここまでできるなんて」

「“あんな”って言うなよ」
「ふふっ。ごめん」

 リアが少しだけ笑った。
 その笑顔は、不思議と暖かかった。
 焚き火の光が彼女の瞳に映り、金色が柔らかく揺れる。

「なあ、リア。君は、これからどうしたい?」
「どう……したい?」
「この村を、もう一度再建したいとか、誰かを助けたいとか。俺は、君の力になりたい」

 リアは少し考えてから、真っ直ぐ蓮を見た。
「……そうだな。いつか、獣人が人間に怯えずに生きられる世界を見てみたい」
「だったら、作ろう。俺たちで」

 その言葉に、リアの耳が小さく動いた。
 真っ赤になった頬を隠すように視線を逸らし、
「……勝手に決めるな。でも、悪くない」と呟いた。

 焚き火の音が、二人の間に静かに響いた。



 夜。
 村の外れ、風に揺れる一本の朽ちた剣があった。
 錆びつき、柄は折れ、誰かの墓標代わりに突き刺さっている。
 リアが言った。
「それ、族長の剣だ。最後まで戦った。……でも、もう使えない」

 蓮はその剣に手を伸ばした。
 ひんやりと冷たい金属が、掌に馴染む。

《スキル発動――リサイクル対象:古剣(フェンリル族族長の遺品)》
《再構築プロセス開始》

 青い光が夜に広がる。
 錆が剥がれ落ち、折れた刃が滑らかに繋がっていく。
 刻まれた古い紋章が再び浮かび上がり、微かな獣の咆哮が響いた。

「……族長の剣が、蘇った……!」
 リアが声を震わせる。
 蓮は剣を地面に立て、静かに呟いた。

「もう“捨てられたもの”じゃない。――俺たちも、だ」

 風が吹き、森がざわめく。
 夜空には新しい月が昇っていた。
 リアはその光を見上げ、ぽつりと呟く。

「……蓮。明日、私の仲間たちを探しに行こう」
「ああ。今度は、俺たちが“拾う番”だ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

チートスキル【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得&スローライフ!?

桜井正宗
ファンタジー
「アウルム・キルクルスお前は勇者ではない、追放だ!!」  その後、第二勇者・セクンドスが召喚され、彼が魔王を倒した。俺はその日に聖女フルクと出会い、レベル0ながらも【レベル投げ】を習得した。レベル0だから投げても魔力(MP)が減らないし、無限なのだ。  影響するステータスは『運』。  聖女フルクさえいれば運が向上され、俺は幸運に恵まれ、スキルの威力も倍増した。  第二勇者が魔王を倒すとエンディングと共に『EXダンジョン』が出現する。その隙を狙い、フルクと共にダンジョンの所有権をゲット、独占する。ダンジョンのレアアイテムを入手しまくり売却、やがて莫大な富を手に入れ、最強にもなる。  すると、第二勇者がEXダンジョンを返せとやって来る。しかし、先に侵入した者が所有権を持つため譲渡は不可能。第二勇者を拒絶する。  より強くなった俺は元ギルドメンバーや世界の国中から戻ってこいとせがまれるが、もう遅い!!  真の仲間と共にダンジョン攻略スローライフを送る。 【簡単な流れ】 勇者がボコボコにされます→元勇者として活動→聖女と出会います→レベル投げを習得→EXダンジョンゲット→レア装備ゲットしまくり→元パーティざまぁ 【原題】 『お前は勇者ではないとギルドを追放され、第二勇者が魔王を倒しエンディングの最中レベル0の俺は出現したEXダンジョンを独占~【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得~戻って来いと言われても、もう遅いんだが』

魔力ゼロで出来損ないと追放された俺、前世の物理学知識を魔法代わりに使ったら、天才ドワーフや魔王に懐かれて最強になっていた

黒崎隼人
ファンタジー
「お前は我が家の恥だ」――。 名門貴族の三男アレンは、魔力を持たずに生まれたというだけで家族に虐げられ、18歳の誕生日にすべてを奪われ追放された。 絶望の中、彼が死の淵で思い出したのは、物理学者として生きた前世の記憶。そして覚醒したのは、魔法とは全く異なる、世界の理そのものを操る力――【概念置換(コンセプト・シフト)】。 運動エネルギーの法則【E = 1/2mv²】で、小石は音速の弾丸と化す。 熱力学第二法則で、敵軍は絶対零度の世界に沈む。 そして、相対性理論【E = mc²】は、神をも打ち砕く一撃となる。 これは、魔力ゼロの少年が、科学という名の「本当の魔法」で理不尽な運命を覆し、心優しき仲間たちと共に、偽りの正義に支配された世界の真実を解き明かす物語。 「君の信じる常識は、本当に正しいのか?」 知的好奇心が、あなたの胸を熱くする。新時代のサイエンス・ファンタジーが、今、幕を開ける。

スキルで最強神を召喚して、無双してしまうんだが〜パーティーを追放された勇者は、召喚した神達と共に無双する。神達が強すぎて困ってます〜

東雲ハヤブサ
ファンタジー
勇者に選ばれたライ・サーベルズは、他にも選ばれた五人の勇者とパーティーを組んでいた。 ところが、勇者達の実略は凄まじく、ライでは到底敵う相手ではなかった。 「おい雑魚、これを持っていけ」 ライがそう言われるのは日常茶飯事であり、荷物持ちや雑用などをさせられる始末だ。 ある日、洞窟に六人でいると、ライがきっかけで他の勇者の怒りを買ってしまう。  怒りが頂点に達した他の勇者は、胸ぐらを掴まれた後壁に投げつけた。 いつものことだと、流して終わりにしようと思っていた。  だがなんと、邪魔なライを始末してしまおうと話が進んでしまい、次々に攻撃を仕掛けられることとなった。 ハーシュはライを守ろうとするが、他の勇者に気絶させられてしまう。 勇者達は、ただ痛ぶるように攻撃を加えていき、瀕死の状態で洞窟に置いていってしまった。 自分の弱さを呪い、本当に死を覚悟した瞬間、視界に突如文字が現れてスキル《神族召喚》と書かれていた。 今頃そんなスキル手を入れてどうするんだと、心の中でつぶやくライ。 だが、死ぬ記念に使ってやろうじゃないかと考え、スキルを発動した。 その時だった。 目の前が眩く光り出し、気付けば一人の女が立っていた。 その女は、瀕死状態のライを最も簡単に回復させ、ライの命を救って。 ライはそのあと、その女が神達を統一する三大神の一人であることを知った。 そして、このスキルを発動すれば神を自由に召喚出来るらしく、他の三大神も召喚するがうまく進むわけもなく......。 これは、雑魚と呼ばれ続けた勇者が、強き勇者へとなる物語である。 ※小説家になろうにて掲載中

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

スキル【土いじり】でパーティを追放された俺、開墾した畑からダンジョンが生えてきた。

夏見ナイ
ファンタジー
「役立たず」の烙印を押され、パーティを追放されたアルフォンス。彼のスキルは戦闘に不向きな【土いじり】。失意の彼は都会を離れ、辺境の地で静かに農業を営むことを決意する。 しかし、彼が畑を耕すと、そこから不思議なダンジョンが生えてきた! ダンジョン内では、高級ポーションになる薬草や伝説の金属『オリハルコン』が野菜のように収穫できる。地味だと思われた【土いじり】は、実はこの『農園ダンジョン』を育てる唯一無二のチートスキルだったのだ。 噂を聞きつけ集まる仲間たち。エルフの美少女、ドワーフの天才鍛冶師……。気づけば彼の農園は豊かな村へ、そして難攻不落の要塞国家へと発展していく。 一方、彼を追放したパーティは没落の一途を辿り……。 これは、追放された男が最強の生産職として仲間と共に理想郷を築き上げる、農業スローライフ&建国ファンタジー!

防御力ゼロと追放された盾使い、実は受けたダメージを100倍で反射する最強スキルを持ってました

黒崎隼人
ファンタジー
どんな攻撃も防げない【盾使い】のアッシュは、仲間から「歩く的」と罵られ、理不尽の限りを尽くされてパーティーを追放される。長年想いを寄せた少女にも裏切られ、全てを失った彼が死の淵で目覚めたのは、受けたダメージを百倍にして反射する攻防一体の最強スキルだった! これは、無能と蔑まれた心優しき盾使いが、真の力に目覚め、最高の仲間と出会い、自分を虐げた者たちに鮮やかな鉄槌を下す、痛快な成り上がり英雄譚! 「もうお前たちの壁にはならない」――絶望の底から這い上がった男の、爽快な逆転劇が今、始まる。

ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。 しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。 彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。 一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

処理中です...