最弱スキル《リサイクル》で世界を覆す ~クラス追放された俺は仲間と共に成り上がる~

KABU.

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第三章:「クラスメイトとの再会」

第37話:闇の会談

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 黒雲が垂れこめ、地平線を覆っていた。
 蓮は、荒れ果てた谷をひとり歩いていた。
 霧が濃く、足元の岩が湿って滑る。
 地図によれば――この先に“黒の王都ヴェルザード”がある。

 (魔王の都、ね……)
 足を止め、蓮は小さく息を吐いた。
 あれから数日。
 メルディナに残したリアとセリナの顔が脳裏に浮かぶ。
 リアのぶっきらぼうな笑み、セリナの静かな眼差し――どちらも「無茶すんなよ」と言っていた。

 「俺の人生、無茶の連続なんだけどな……」
 独りごちた声が、霧に溶ける。

 やがて、黒い尖塔が姿を現した。
 鋼と魔石でできた巨大な門。その上には、禍々しい紋章。
 だが、不思議なことに――門の前には戦士も兵もいない。
 ただ、静かに開かれていた。



 中は意外なほど静寂だった。
 黒曜石の床が光を反射し、青白い魔灯が壁に埋め込まれている。
 まるで古代文明の遺構のようだ、と蓮は思った。
 足音だけが響く広間を抜けると、長い廊下の先にひとつの扉があった。

 その前に、前回の使者――ゼルドが立っていた。
 「よく来たな、再生者。」
 「招かれたからな。」
 ゼルドは軽く笑い、片手で扉を押し開いた。
 「魔王ルディアス陛下が待っている。」



 扉の向こうは、深紅の広間だった。
 壁を覆う黒布、中央に据えられた玉座。
 その上に――黒髪の青年がいた。
 年齢は二十代前半。
 だが、その瞳には千年の闇を思わせる深みがあった。

 「ようこそ、再生の異端者よ。」
 声は低く、穏やかだ。
 しかし一言ごとに、空気が震える。
 「我が名はルディアス。人は“魔王”と呼ぶ。」

 蓮は静かに頭を下げた。
 「篠原蓮。……元はただの人間だ。」
 ルディアスの唇がわずかに歪む。
 「人間、か。
  それは、貴様にとって誇りか? それとも呪いか?」

 「どっちでもない。
  俺は“壊れたものを直す”ために生きてる。それだけだ。」

 その答えに、ルディアスの瞳が細められる。
 「……なるほど。
  我が期待した通りの男だ。」

 魔王は玉座から立ち上がった。
 その瞬間、空気が重くなる。
 まるで重力そのものがねじ曲がるような圧力。
 だが蓮は、わずかも怯まずにその視線を受け止めた。

 「女神の造物である“スキル”に抗う者。
  人も魔も、そのような存在を恐れる。
  だが我は違う。」
 ルディアスの瞳が燃えるように光った。
 「我ら魔族は、かつて女神に造られた。
   戦争を繰り返す“破壊の手”。
   だが、我は拒んだ。
   創造主の呪縛を断ち、己の理で生きると決めた。」

 蓮はその言葉を静かに聞いていた。
 「……だから俺に興味を持ったのか。」
 「そうだ。
  貴様の《リサイクル》は“再利用”ではない。
  壊れた法則そのものを書き換える力――創造に近い。」

 ルディアスは一歩近づき、玉座の影が蓮を包み込む。
 「我は提案する。
  我と手を組め、篠原蓮。
  人間も魔族も、女神の鎖から解き放とうではないか。」



 沈黙。
 広間を満たすのは、静寂と呼吸音だけ。
 蓮は目を閉じ、ゆっくりと答えた。
 「悪いが――俺は誰の下にもつかない。」

 ルディアスの眉がわずかに動く。
 「ほう?」
 「俺は人間でも魔族でもない。
  “壊れた世界そのもの”を直したいんだ。
  だから、どちらにも与しない。」

 次の瞬間、空気が震えた。
 だがそれは怒りではなかった。
 ルディアスは低く笑った。
 「……愚かだが、面白い。
  貴様のような人間を、我は久しく見ていなかった。」

 「それで、これからどうする?」蓮が問う。
 「女神は再び人間界へ干渉を始めている。
   王国も教会も、既にその影に飲まれた。
   おそらく次に狙われるのは――貴様だ。」
 「やっぱりな。」
 ルディアスが微笑む。
 「だが安心しろ。
  我は貴様を敵とは思わぬ。
  ……いずれ、お互いの理が交わる日が来るだろう。」



 会談が終わる頃、ルディアスはひとつの黒い指輪を差し出した。
 「これは“魔王の印”だ。
   これを持つ者は、魔族の地で敵と見なされぬ。」
 蓮は少し迷ったが、受け取った。
 「借りるだけだ。返す時は、世界が少しマシになってるはずだ。」
 「ふ……楽しみにしている。」

 蓮が扉を出ると、ゼルドが軽く肩をすくめた。
 「無事に戻れて何よりだ。」
 「お前も随分律儀だな。」
 「主の命令には忠実なだけだ。……だが、俺個人としては、貴様に興味がある。」
 「なら、いずれまた会うさ。」
 「そうだな。その時は、敵としてかもしれんがな。」

 蓮は笑って背を向けた。
 「どっちでもいい。俺は壊れた方を直すだけだ。」



 ヴェルザードを後にし、再び霧の谷へ戻る途中。
 蓮は指輪を見つめた。
 黒く光るそれは、まるで世界の“影”そのもののようだった。
 「……ルディアス。お前もまた、壊れた世界の一部か。」

 風が吹き抜ける。
 蓮はマントを翻し、歩き出した。
 “再生者”は、再び曇天の下を進む。
 この出会いが、やがて“第三勢力”誕生の引き金になるとも知らずに――。
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