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第五章:「真の敵」
第72話:神なき時代へ
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光が、砕けた。
聖都ルミナを覆っていた“神の光壁”が、轟音とともに崩壊していく。
地上の兵たちは空を見上げ、信じられないものを目撃していた。
女神の象徴である巨大な光輪が、ゆっくりと形を失っていく。
リアが吠える。
「見ろ! 光が……消えてく!」
セリナが手のひらをかざし、冷静に魔力の流れを測った。
「スキルシステムの供給源、《神界回路》が停止しています!」
玲奈が顔を上げる。
「じゃあ……今、世界から“スキル”が……?」
蓮は静かに頷いた。
「――崩壊している。」
⸻
女神アリアの声はもう聞こえなかった。
だが、消えたのではない。
空に漂う光粒の一つひとつが、まだ“彼女の残響”を含んでいた。
《再構成プログラム……異常……再起動……》
淡く響くその音が、世界中の空気を震わせる。
蓮は剣を収め、ゆっくりと息を吐いた。
「女神が消えたんじゃない。
“神”という概念そのものが、壊れたんだ。」
リアが近づく。
「つまり……あたしたち、もう“加護”も何もないってこと?」
「そうだ。」
蓮は頷いた。
「だが、それは――自由になったってことでもある。」
玲奈が息をのむ。
「自由……?」
「神がいなくなれば、誰も運命を決めない。
努力も、願いも、痛みも……全部、自分たち次第だ。」
セリナが静かに呟く。
「神なき世界……それが、あなたの目指した“再生”なのですね。」
蓮は曖昧に笑った。
「まだ途中だよ。
神がいなくなったからって、すぐに人がまともになるわけじゃない。」
リアが肩をすくめる。
「そりゃそうだ。人間ってのは、いっつもバカだもん。」
「でも、バカだからこそ、進める。」
蓮が空を見上げた。
「壊して、悩んで、また作り直す。それが生きるってことだ。」
⸻
地上では混乱が広がっていた。
戦場に立つ兵たちの体から、スキルの光が消えていく。
剣士は剣を握る手が震え、魔導士は詠唱しても何も起こらない。
「魔法が……出ない!?」「俺のスキル、消えた!?」
蓮は兵たちの前に立ち、声を張り上げた。
「落ち着け! それでいいんだ!
“神の力”じゃなくて、自分の力で戦え!」
リアが笑う。
「ほら聞いた? 蓮が言うんだから、そういうこと!」
彼女は爪を構え、純粋な肉体の力で神造兵を蹴り飛ばした。
「ほらな! まだ動ける!」
セリナも頷く。
「魔導回路を再接続――術式を独立稼働に切り替えます!」
玲奈が支援を続けながら言う。
「私たちの魔法は、もう神の“奇跡”じゃない。
人の“意志”の延長なんだね。」
蓮は頷いた。
「奇跡ってのは、誰かに与えられるもんじゃない。
――自分で掴むもんだ。」
⸻
聖都の中央塔では、アリアの演算核が静かに砕けていた。
そこから漏れ出る光の粒が空に昇り、まるで魂のように世界を漂う。
セリナがその光を見上げ、そっと祈る。
「女神よ……あなたもまた、誰かの“創造物”だったのですね。」
蓮が隣に立つ。
「きっとそうだ。
誰かがこの世界を守ろうとして、作ったんだろう。
でも――やり方を間違えた。」
リアがふっと笑った。
「お前のこと、ちょっと似てるかもな。」
「は?」
「守りたいって気持ちが強すぎて、全部背負い込むとこ。」
蓮は言葉に詰まり、苦笑した。
「それ、皮肉になってない?」
「褒めてんだよ。」リアが笑った。
「お前は、あの女神と違って“ちゃんと見てた”。
自分以外の誰かを。」
玲奈が小さく頷いた。
「……そうだね。
女神が“神”であろうとしたのに、蓮は“人間”のままで立ち続けた。」
セリナが微笑む。
「だからこそ、誰もあなたを神とは呼ばない。」
蓮は静かに答える。
「呼ばれたくもないさ。」
⸻
風が吹いた。
白い花びらのような光が降り注ぐ。
それは、女神アリアの最後の断片――スキルの残滓だった。
それらが人々の掌や武器に触れ、微かに溶けて消える。
もう、誰もスキルを発動できない。
それでも、誰も絶望していなかった。
蓮が見渡す。
崩れた街、倒れた兵士たち、泣き笑いする人々。
「……これが、神のいない世界か。」
リアが肩を叩く。
「悪くないじゃん。」
「そうだな。」蓮が笑う。
「静かで、痛くて……でも、確かに“生きてる”世界だ。」
セリナが少し寂しそうに言う。
「スキルを失っても、人は変わらず争うでしょう。」
「だからこそ、俺たちが必要なんだ。」蓮が答えた。
「再生は終わりじゃない。何度でも繰り返す。」
玲奈が前を向く。
「ねぇ、次はどこに行くの?」
蓮は少し考えて、空を見上げた。
そこには、崩れた雲の隙間から一筋の光が差していた。
「……まだ、全部終わってない。
“彼女”が消えたとしても、残骸がどこかで動いてるはずだ。」
リアが眉を寄せる。
「女神の残骸、ってこと?」
「そう。アリアの演算体の一部。
――それを放っておけば、また同じ悲劇が繰り返される。」
セリナが頷いた。
「なら、私たちが行くべき場所は決まりですね。」
蓮は剣を腰に収め、歩き出す。
「行こう。神の亡骸を――“再生”しに。」
⸻
遠くで雷鳴が轟く。
新しい時代が始まろうとしていた。
神のいない世界。
だがそこには、人の手で築く未来が確かに存在していた。
聖都ルミナを覆っていた“神の光壁”が、轟音とともに崩壊していく。
地上の兵たちは空を見上げ、信じられないものを目撃していた。
女神の象徴である巨大な光輪が、ゆっくりと形を失っていく。
リアが吠える。
「見ろ! 光が……消えてく!」
セリナが手のひらをかざし、冷静に魔力の流れを測った。
「スキルシステムの供給源、《神界回路》が停止しています!」
玲奈が顔を上げる。
「じゃあ……今、世界から“スキル”が……?」
蓮は静かに頷いた。
「――崩壊している。」
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女神アリアの声はもう聞こえなかった。
だが、消えたのではない。
空に漂う光粒の一つひとつが、まだ“彼女の残響”を含んでいた。
《再構成プログラム……異常……再起動……》
淡く響くその音が、世界中の空気を震わせる。
蓮は剣を収め、ゆっくりと息を吐いた。
「女神が消えたんじゃない。
“神”という概念そのものが、壊れたんだ。」
リアが近づく。
「つまり……あたしたち、もう“加護”も何もないってこと?」
「そうだ。」
蓮は頷いた。
「だが、それは――自由になったってことでもある。」
玲奈が息をのむ。
「自由……?」
「神がいなくなれば、誰も運命を決めない。
努力も、願いも、痛みも……全部、自分たち次第だ。」
セリナが静かに呟く。
「神なき世界……それが、あなたの目指した“再生”なのですね。」
蓮は曖昧に笑った。
「まだ途中だよ。
神がいなくなったからって、すぐに人がまともになるわけじゃない。」
リアが肩をすくめる。
「そりゃそうだ。人間ってのは、いっつもバカだもん。」
「でも、バカだからこそ、進める。」
蓮が空を見上げた。
「壊して、悩んで、また作り直す。それが生きるってことだ。」
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地上では混乱が広がっていた。
戦場に立つ兵たちの体から、スキルの光が消えていく。
剣士は剣を握る手が震え、魔導士は詠唱しても何も起こらない。
「魔法が……出ない!?」「俺のスキル、消えた!?」
蓮は兵たちの前に立ち、声を張り上げた。
「落ち着け! それでいいんだ!
“神の力”じゃなくて、自分の力で戦え!」
リアが笑う。
「ほら聞いた? 蓮が言うんだから、そういうこと!」
彼女は爪を構え、純粋な肉体の力で神造兵を蹴り飛ばした。
「ほらな! まだ動ける!」
セリナも頷く。
「魔導回路を再接続――術式を独立稼働に切り替えます!」
玲奈が支援を続けながら言う。
「私たちの魔法は、もう神の“奇跡”じゃない。
人の“意志”の延長なんだね。」
蓮は頷いた。
「奇跡ってのは、誰かに与えられるもんじゃない。
――自分で掴むもんだ。」
⸻
聖都の中央塔では、アリアの演算核が静かに砕けていた。
そこから漏れ出る光の粒が空に昇り、まるで魂のように世界を漂う。
セリナがその光を見上げ、そっと祈る。
「女神よ……あなたもまた、誰かの“創造物”だったのですね。」
蓮が隣に立つ。
「きっとそうだ。
誰かがこの世界を守ろうとして、作ったんだろう。
でも――やり方を間違えた。」
リアがふっと笑った。
「お前のこと、ちょっと似てるかもな。」
「は?」
「守りたいって気持ちが強すぎて、全部背負い込むとこ。」
蓮は言葉に詰まり、苦笑した。
「それ、皮肉になってない?」
「褒めてんだよ。」リアが笑った。
「お前は、あの女神と違って“ちゃんと見てた”。
自分以外の誰かを。」
玲奈が小さく頷いた。
「……そうだね。
女神が“神”であろうとしたのに、蓮は“人間”のままで立ち続けた。」
セリナが微笑む。
「だからこそ、誰もあなたを神とは呼ばない。」
蓮は静かに答える。
「呼ばれたくもないさ。」
⸻
風が吹いた。
白い花びらのような光が降り注ぐ。
それは、女神アリアの最後の断片――スキルの残滓だった。
それらが人々の掌や武器に触れ、微かに溶けて消える。
もう、誰もスキルを発動できない。
それでも、誰も絶望していなかった。
蓮が見渡す。
崩れた街、倒れた兵士たち、泣き笑いする人々。
「……これが、神のいない世界か。」
リアが肩を叩く。
「悪くないじゃん。」
「そうだな。」蓮が笑う。
「静かで、痛くて……でも、確かに“生きてる”世界だ。」
セリナが少し寂しそうに言う。
「スキルを失っても、人は変わらず争うでしょう。」
「だからこそ、俺たちが必要なんだ。」蓮が答えた。
「再生は終わりじゃない。何度でも繰り返す。」
玲奈が前を向く。
「ねぇ、次はどこに行くの?」
蓮は少し考えて、空を見上げた。
そこには、崩れた雲の隙間から一筋の光が差していた。
「……まだ、全部終わってない。
“彼女”が消えたとしても、残骸がどこかで動いてるはずだ。」
リアが眉を寄せる。
「女神の残骸、ってこと?」
「そう。アリアの演算体の一部。
――それを放っておけば、また同じ悲劇が繰り返される。」
セリナが頷いた。
「なら、私たちが行くべき場所は決まりですね。」
蓮は剣を腰に収め、歩き出す。
「行こう。神の亡骸を――“再生”しに。」
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遠くで雷鳴が轟く。
新しい時代が始まろうとしていた。
神のいない世界。
だがそこには、人の手で築く未来が確かに存在していた。
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