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第五章:「真の敵」
第73話:リアの誓い
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世界が静まり返っていた。
聖都ルミナを覆っていた光の幕は完全に消え、
かつて神の都と呼ばれた場所には、灰色の空と冷たい風だけが残っている。
瓦礫の間を歩く足音。
篠原蓮は、まだ立ち上がれずにいる兵士たちに声をかけながら、ひとつひとつの命を確かめていた。
「……大丈夫か?」
「は、はい……スキルがなくなって、動きが鈍いだけです。」
「もうスキルは戻らない。それでも、生きる術はある。――立て。」
兵士は頷き、剣を拾い上げた。
刃にはもう光は宿らない。だが、それでも剣は確かに“武器”として存在している。
蓮はそんな姿を見て、小さく笑った。
「人は、案外強いもんだな。」
⸻
「蓮!」
声がして振り向くと、リアが瓦礫の上から飛び降りてきた。
肩には血の跡が残っているが、その目はいつも通り鋭く、そして真っ直ぐだった。
「……生きてたか。」
「当たり前だろ! こんなとこでくたばるかよ。」
リアは息を荒げながら、周囲を見渡す。
「聖都の兵はほとんど撤退した。けど……生き残りがまだ地下にいる。」
「分かった。救出しよう。」
リアは頷きながら、ふと蓮の顔を見た。
その表情は、どこか迷いを含んでいる。
「なぁ、蓮……。」
「どうした?」
「アリアを倒したあと、あたしたち……これからどうすんの?」
蓮は少しだけ空を仰いだ。
神の光が消えた空は、灰色で、どこまでも広がっている。
「まだ“再生”は終わってない。
世界は生き残ったけど、神の支配が消えた今、国も秩序も崩壊する。」
リアは拳を握る。
「つまり、また戦いか。」
「そうなるだろうな。」
「……なぁ、蓮。」リアが前に出る。
「戦うのはもう嫌だ。でも、もしお前がこの世界を守るために戦うなら、あたしは――」
言葉を止める。
代わりに、その瞳が蓮をまっすぐ見据えていた。
⸻
しばしの沈黙。
蓮は少し笑って、リアの頭を軽く叩いた。
「お前はいつもそうやって突っ走るな。」
「悪いかよ。」
「悪くない。ただ……その“守る”って気持ちは、きっと一番強い力だ。」
リアは俯き、小さく息を吐いた。
「蓮。あたし……誓うよ。」
「誓い?」
「もう、誰も捨てねぇ。
仲間も、敵も、命も、全部。
この世界で生きる奴らは、あたしが守る。」
蓮はその言葉に目を細めた。
「それが、お前の――“誓い”か。」
リアは頷いた。
「うん。あたしが見た世界は、ずっと汚くて、醜くて、だけど……
蓮に出会って、少しだけ綺麗だって思えたんだ。」
「リア……。」
「だから、蓮が再生する世界を、あたしが護る。
それが、獣人の誇りだ。」
⸻
セリナがその場に現れた。
「感動的な誓いですね。……けれど、悠長な時間はありません。」
玲奈も合流し、険しい顔をして言った。
「残存データの解析を進めてたけど、女神アリアの“演算体”の一部がまだ活動してる。」
蓮が目を細めた。
「……場所は?」
「北の空域。旧大陸の境界、《断層地帯ルシエラ》。
そこに“虚数演算塔”が残ってる。アリアの補助AIが動いてるの。」
リアが剣を握りしめた。
「放っといたら、また神が生まれるかもってことか。」
セリナが頷く。
「そうです。人々が“救い”を求めれば、あの残骸は再び起動するでしょう。」
玲奈が悲しげに呟く。
「神がいなくなっても、人は神を求め続ける……皮肉だね。」
蓮は静かに立ち上がる。
「……行こう。終わらせるために。」
リアが笑った。
「終わらせる? 違うだろ。」
「……?」
「また“再生”するんだよ。
壊れたもんを壊れたままで放っとくのは、あたしたちらしくねぇ。」
蓮は思わず苦笑した。
「そうだったな。お前の方がよっぽど分かってる。」
セリナが微笑んだ。
「行き先は決まりましたね。」
玲奈が杖を構える。
「準備でき次第、出発しよう。次の目的地は――」
リアが一歩前に出て、堂々と叫んだ。
「《ルシエラ断層地帯》! 次は、あたしたちの手で世界を護る!」
⸻
その声は、風に乗って聖都全体に響いた。
誰もがその背中を見つめ、失われた神の代わりに、
“生きる者の意志”を見出していた。
蓮はリアを見つめながら、静かに呟く。
「リア……その誓い、俺も預かるよ。」
リアが笑う。
「当たり前だろ。あたしの相棒なんだから。」
⸻
灰の風が吹く。
神の時代が終わり、人の時代が始まった。
だが、その先に待つのは、再び“創造”と“破壊”の循環。
それでも、彼らは歩き出す。
誰も捨てず、誰も神に委ねず、自分の足で未来を掴むために。
聖都ルミナを覆っていた光の幕は完全に消え、
かつて神の都と呼ばれた場所には、灰色の空と冷たい風だけが残っている。
瓦礫の間を歩く足音。
篠原蓮は、まだ立ち上がれずにいる兵士たちに声をかけながら、ひとつひとつの命を確かめていた。
「……大丈夫か?」
「は、はい……スキルがなくなって、動きが鈍いだけです。」
「もうスキルは戻らない。それでも、生きる術はある。――立て。」
兵士は頷き、剣を拾い上げた。
刃にはもう光は宿らない。だが、それでも剣は確かに“武器”として存在している。
蓮はそんな姿を見て、小さく笑った。
「人は、案外強いもんだな。」
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「蓮!」
声がして振り向くと、リアが瓦礫の上から飛び降りてきた。
肩には血の跡が残っているが、その目はいつも通り鋭く、そして真っ直ぐだった。
「……生きてたか。」
「当たり前だろ! こんなとこでくたばるかよ。」
リアは息を荒げながら、周囲を見渡す。
「聖都の兵はほとんど撤退した。けど……生き残りがまだ地下にいる。」
「分かった。救出しよう。」
リアは頷きながら、ふと蓮の顔を見た。
その表情は、どこか迷いを含んでいる。
「なぁ、蓮……。」
「どうした?」
「アリアを倒したあと、あたしたち……これからどうすんの?」
蓮は少しだけ空を仰いだ。
神の光が消えた空は、灰色で、どこまでも広がっている。
「まだ“再生”は終わってない。
世界は生き残ったけど、神の支配が消えた今、国も秩序も崩壊する。」
リアは拳を握る。
「つまり、また戦いか。」
「そうなるだろうな。」
「……なぁ、蓮。」リアが前に出る。
「戦うのはもう嫌だ。でも、もしお前がこの世界を守るために戦うなら、あたしは――」
言葉を止める。
代わりに、その瞳が蓮をまっすぐ見据えていた。
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しばしの沈黙。
蓮は少し笑って、リアの頭を軽く叩いた。
「お前はいつもそうやって突っ走るな。」
「悪いかよ。」
「悪くない。ただ……その“守る”って気持ちは、きっと一番強い力だ。」
リアは俯き、小さく息を吐いた。
「蓮。あたし……誓うよ。」
「誓い?」
「もう、誰も捨てねぇ。
仲間も、敵も、命も、全部。
この世界で生きる奴らは、あたしが守る。」
蓮はその言葉に目を細めた。
「それが、お前の――“誓い”か。」
リアは頷いた。
「うん。あたしが見た世界は、ずっと汚くて、醜くて、だけど……
蓮に出会って、少しだけ綺麗だって思えたんだ。」
「リア……。」
「だから、蓮が再生する世界を、あたしが護る。
それが、獣人の誇りだ。」
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セリナがその場に現れた。
「感動的な誓いですね。……けれど、悠長な時間はありません。」
玲奈も合流し、険しい顔をして言った。
「残存データの解析を進めてたけど、女神アリアの“演算体”の一部がまだ活動してる。」
蓮が目を細めた。
「……場所は?」
「北の空域。旧大陸の境界、《断層地帯ルシエラ》。
そこに“虚数演算塔”が残ってる。アリアの補助AIが動いてるの。」
リアが剣を握りしめた。
「放っといたら、また神が生まれるかもってことか。」
セリナが頷く。
「そうです。人々が“救い”を求めれば、あの残骸は再び起動するでしょう。」
玲奈が悲しげに呟く。
「神がいなくなっても、人は神を求め続ける……皮肉だね。」
蓮は静かに立ち上がる。
「……行こう。終わらせるために。」
リアが笑った。
「終わらせる? 違うだろ。」
「……?」
「また“再生”するんだよ。
壊れたもんを壊れたままで放っとくのは、あたしたちらしくねぇ。」
蓮は思わず苦笑した。
「そうだったな。お前の方がよっぽど分かってる。」
セリナが微笑んだ。
「行き先は決まりましたね。」
玲奈が杖を構える。
「準備でき次第、出発しよう。次の目的地は――」
リアが一歩前に出て、堂々と叫んだ。
「《ルシエラ断層地帯》! 次は、あたしたちの手で世界を護る!」
⸻
その声は、風に乗って聖都全体に響いた。
誰もがその背中を見つめ、失われた神の代わりに、
“生きる者の意志”を見出していた。
蓮はリアを見つめながら、静かに呟く。
「リア……その誓い、俺も預かるよ。」
リアが笑う。
「当たり前だろ。あたしの相棒なんだから。」
⸻
灰の風が吹く。
神の時代が終わり、人の時代が始まった。
だが、その先に待つのは、再び“創造”と“破壊”の循環。
それでも、彼らは歩き出す。
誰も捨てず、誰も神に委ねず、自分の足で未来を掴むために。
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