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第13話:出向先の再会
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三週間後。
柊が出向してから、オフィスの空気は少しだけ変わっていた。
「真由、資料こっち!」
「はい!」
いつも通り仕事をこなしているけど、
ふとした瞬間、彼の声が耳に残る。
『君の投稿、見た。ありがとう。ここからでも、風は届く。』
(……本当に、届いてますか?)
夜遅く、帰り際にスマホを開く。
《@WORK_LIFE_BALANCE》
「“風”の向こうで、君が頑張ってることを知ってる。
焦らなくていい。今日もちゃんと生きてる。」
(……また、泣かせるんだから)
返信を打とうとして、手を止めた。
あの人の“言葉”は、もう会社の外にある。
それでも、見えない糸みたいに心がつながっている気がした。
⸻
数日後。
昼休み、成田が駆け寄ってくる。
「おい真由! 聞いたか?」
「なに?」
「柊課長、じゃなかった、柊さん。
子会社のプロジェクトでイベントやるらしい!」
「イベント……?」
「広報部の合同展示。うちの営業もサポートで行くってよ」
(行ける……? 会える……?)
心臓が跳ねた。
⸻
イベント当日。
都内のビル展示ホール。
来場者のざわめきの中、
真由はパンフレットを手にして深呼吸した。
「落ち着け、私……ただの仕事、ただのサポート」
スタッフリストの片隅に、見慣れた名前。
――柊 誠。
(本当に……いるんだ)
⸻
ステージ横の控えスペース。
スーツ姿で来場者に挨拶している彼の姿が見えた。
以前より少し日焼けして、
笑顔が柔らかくなっていた。
(……変わってない。けど、なんか違う)
「藤原さん?」
背後から声がして振り向くと、美咲がいた。
「久しぶりね。彼、今すごいのよ。
“現場とSNSを繋ぐ新広報”って評価されてる」
「そうなんですか……」
「でもね」
美咲は少しだけ声を落とした。
「“誰か”が見てるから頑張れるって、彼、言ってたわ」
(それ、私のこと……?)
⸻
夕方。
展示終了後。
片付けをしていると、背後から低い声。
「……お疲れ」
手が止まる。
振り向くと、そこに彼がいた。
「か、課長……!」
「課長じゃない。今は広報部のただの社員だ」
「……でも、やっぱり“課長”って呼びたくなります」
少し笑う。
その笑顔が懐かしくて、胸がいっぱいになった。
「変わってないな、君は」
「そっちこそ。前より元気そうです」
「まぁ、外の風は悪くない」
「……風、届きましたよ」
「ん?」
「“風の向こうで頑張ってる君を知ってる”って、
あの投稿、見ました」
彼は一瞬だけ目を見開き、
それから静かに頷いた。
「見られてたか」
「ずっと、見てました」
少し沈黙。
その後、彼がポケットから小さな名札を差し出した。
「……これ、渡そうと思ってた」
「名札……?」
「“共同プロジェクト担当”のバッジだ。
次の案件、俺と一緒にやることになってる」
「えっ……!」
「偶然、らしいけどな」
「偶然じゃないですよね?」
「……さぁな」
ほんの少し照れたように笑う。
「正式に発表されるのは来週。
それまで、内緒だ」
「了解です」
その言葉を交わすだけで、
二人の間の距離が少しだけ近づいた気がした。
⸻
夜。
帰り道、スマホが震える。
《@WORK_LIFE_BALANCE》
「“再会”は奇跡じゃない。
想い続けた結果だ。」
(……もう奇跡なんていらない。
ちゃんと届いてるから)
真由は笑って返信を打った。
《@mayu_worklife》
「“想い”は届きました。次は、隣で見せてください。」
送信。
⸻
翌朝。
会社に行くと、メールが届いていた。
件名:【プロジェクトチーム発足】担当:柊 誠/藤原 真由
(やっぱり……本当に一緒だ)
柊が出向してから、オフィスの空気は少しだけ変わっていた。
「真由、資料こっち!」
「はい!」
いつも通り仕事をこなしているけど、
ふとした瞬間、彼の声が耳に残る。
『君の投稿、見た。ありがとう。ここからでも、風は届く。』
(……本当に、届いてますか?)
夜遅く、帰り際にスマホを開く。
《@WORK_LIFE_BALANCE》
「“風”の向こうで、君が頑張ってることを知ってる。
焦らなくていい。今日もちゃんと生きてる。」
(……また、泣かせるんだから)
返信を打とうとして、手を止めた。
あの人の“言葉”は、もう会社の外にある。
それでも、見えない糸みたいに心がつながっている気がした。
⸻
数日後。
昼休み、成田が駆け寄ってくる。
「おい真由! 聞いたか?」
「なに?」
「柊課長、じゃなかった、柊さん。
子会社のプロジェクトでイベントやるらしい!」
「イベント……?」
「広報部の合同展示。うちの営業もサポートで行くってよ」
(行ける……? 会える……?)
心臓が跳ねた。
⸻
イベント当日。
都内のビル展示ホール。
来場者のざわめきの中、
真由はパンフレットを手にして深呼吸した。
「落ち着け、私……ただの仕事、ただのサポート」
スタッフリストの片隅に、見慣れた名前。
――柊 誠。
(本当に……いるんだ)
⸻
ステージ横の控えスペース。
スーツ姿で来場者に挨拶している彼の姿が見えた。
以前より少し日焼けして、
笑顔が柔らかくなっていた。
(……変わってない。けど、なんか違う)
「藤原さん?」
背後から声がして振り向くと、美咲がいた。
「久しぶりね。彼、今すごいのよ。
“現場とSNSを繋ぐ新広報”って評価されてる」
「そうなんですか……」
「でもね」
美咲は少しだけ声を落とした。
「“誰か”が見てるから頑張れるって、彼、言ってたわ」
(それ、私のこと……?)
⸻
夕方。
展示終了後。
片付けをしていると、背後から低い声。
「……お疲れ」
手が止まる。
振り向くと、そこに彼がいた。
「か、課長……!」
「課長じゃない。今は広報部のただの社員だ」
「……でも、やっぱり“課長”って呼びたくなります」
少し笑う。
その笑顔が懐かしくて、胸がいっぱいになった。
「変わってないな、君は」
「そっちこそ。前より元気そうです」
「まぁ、外の風は悪くない」
「……風、届きましたよ」
「ん?」
「“風の向こうで頑張ってる君を知ってる”って、
あの投稿、見ました」
彼は一瞬だけ目を見開き、
それから静かに頷いた。
「見られてたか」
「ずっと、見てました」
少し沈黙。
その後、彼がポケットから小さな名札を差し出した。
「……これ、渡そうと思ってた」
「名札……?」
「“共同プロジェクト担当”のバッジだ。
次の案件、俺と一緒にやることになってる」
「えっ……!」
「偶然、らしいけどな」
「偶然じゃないですよね?」
「……さぁな」
ほんの少し照れたように笑う。
「正式に発表されるのは来週。
それまで、内緒だ」
「了解です」
その言葉を交わすだけで、
二人の間の距離が少しだけ近づいた気がした。
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夜。
帰り道、スマホが震える。
《@WORK_LIFE_BALANCE》
「“再会”は奇跡じゃない。
想い続けた結果だ。」
(……もう奇跡なんていらない。
ちゃんと届いてるから)
真由は笑って返信を打った。
《@mayu_worklife》
「“想い”は届きました。次は、隣で見せてください。」
送信。
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翌朝。
会社に行くと、メールが届いていた。
件名:【プロジェクトチーム発足】担当:柊 誠/藤原 真由
(やっぱり……本当に一緒だ)
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