22 / 50
第22話:公認ペア、社内インタビュー
しおりを挟む
翌週の朝。
オフィスの掲示板に、ひときわ目立つポスターが貼られていた。
【社内広報特集】
『理想の上司と部下が語る――信頼のカタチ』
出演:広報部 柊 誠 × 営業部 藤原 真由
(……出た。タイトルがもう“誤解してください”って言ってる)
「真由~、ついに公認ペアデビューか~!」
「ち、違います! 勝手に広報が決めただけで!」
「いやいや、社長コメントまで載ってたぞ。“理想の連携”って」
「うわぁ……終わった……!」
柊が通りかかる。
「……終わってない。むしろ始まりだ」
「課長っ!」
「この特集、俺が許可した」
「なんでですか!?」
「逃げるより、正面から話した方が早い」
「……ほんとに真っ直ぐすぎます!」
(また反則みたいなこと言う……!)
⸻
昼。
会議室。
取材チームが準備を整えていた。
テーブル中央にマイクとカメラ。
二人並んで座る。
「本日は“理想の上司と部下”特集ということで、
お二人に“信頼関係の築き方”についてお話を伺います!」
美咲(記者役)「お似合いですね~、本当に!」
「ちょ、ちょっと美咲さん!」
「はいはい、リラックスして~!」
柊は微笑んで軽く頭を下げた。
「よろしくお願いします」
「……よろしくお願いします」
⸻
インタビュー開始。
美咲「まず、お互いの第一印象を教えてください」
柊「真面目で、でも目がよく動く人だと思いました」
「め、目が!?」
「はい。常に周囲を見て、誰かのために動こうとしてる。
それが印象的でした」
(なんか……ずるい褒め方……)
美咲「藤原さんは?」
「えっと……最初は“ちょっと怖い人”だと思いました」
「ほう?」
「でも、実際は……一番人の話をちゃんと聞いてくれる人でした」
柊「それは評価してるということでいいか?」
「はい。……多分、誰よりも」
一瞬、沈黙。
けれど、その沈黙が妙にあたたかかった。
⸻
美咲「では、“信頼”って、どんな瞬間に感じますか?」
柊「……難しいですね。
でも、“言葉を交わさなくても伝わる”と思えた時です」
美咲「たとえば?」
柊「会議中、目が合っただけで“あ、理解してくれてるな”と感じた時とか」
真由「(え、そんなの気づいてたんだ……)」
美咲「お二人、目が合う頻度多いですよね?」
「そ、そんなことないですっ!」
「……多いな」
「課長ーーー!」
成田(後方でニヤニヤ)「これは編集で使われるやつ」
美咲「絶対使う」
⸻
質問は続く。
「SNSでの発信が話題になりましたが、
お互いの“発言”をどう受け止めていましたか?」
柊「彼女の投稿には、“素直な現実”がある。
言葉を飾らず、まっすぐ届く」
「そ、そんな……」
「俺が何度も救われた」
(……またそんな真顔で)
美咲「では、藤原さんは?」
「柊さんの言葉は……怖いくらい正直です。
でも、だからこそ信じられる。
“偽りがない人”って、すごく強いと思います」
カメラの赤ランプが光る。
一瞬だけ、二人の視線がぶつかる。
空気が変わった。
美咲「……これ、リアルに恋バナ記事にできるんじゃ?」
「美咲さん!?」
柊「仕事の話です」
「そ、そうです!」
美咲「はいはい、“仕事”ね(にやり)」
⸻
取材終了後。
外に出ると、もう夕方だった。
「……本音、多かったな」
「ですね……」
「でも、ああして言葉にできるのは悪くない」
「私も、ちょっとスッキリしました」
柊が立ち止まる。
「――真由」
「はい?」
「“仕事の信頼”と“個人の気持ち”、どこまで分けられると思う?」
「え……」
一瞬、返事が詰まる。
「……正直、もう分けられません」
「俺もだ」
(……っ)
「……反則です」
「また言われた」
二人の影が、夕焼けに溶けてひとつになった。
⸻
夜。
社内広報の速報が届く。
【次号予告】
特集:理想の上司と部下が語る“信頼”と“想い”
――“言葉の距離”を超えて――
スマホを見つめながら、真由はつぶやいた。
「……もう隠せないな、これは」
すぐに通知が届く。
《@WORK_LIFE_BALANCE》
「“信頼”の先にあるのは、“好き”という感情だと思う。」
《@mayu_worklife》
「じゃあ、もうその先まで行ってますね。」
コメント欄が静かに燃え上がる。
そして誰もが思った。
――この二人の物語は、まだ終わらない。
オフィスの掲示板に、ひときわ目立つポスターが貼られていた。
【社内広報特集】
『理想の上司と部下が語る――信頼のカタチ』
出演:広報部 柊 誠 × 営業部 藤原 真由
(……出た。タイトルがもう“誤解してください”って言ってる)
「真由~、ついに公認ペアデビューか~!」
「ち、違います! 勝手に広報が決めただけで!」
「いやいや、社長コメントまで載ってたぞ。“理想の連携”って」
「うわぁ……終わった……!」
柊が通りかかる。
「……終わってない。むしろ始まりだ」
「課長っ!」
「この特集、俺が許可した」
「なんでですか!?」
「逃げるより、正面から話した方が早い」
「……ほんとに真っ直ぐすぎます!」
(また反則みたいなこと言う……!)
⸻
昼。
会議室。
取材チームが準備を整えていた。
テーブル中央にマイクとカメラ。
二人並んで座る。
「本日は“理想の上司と部下”特集ということで、
お二人に“信頼関係の築き方”についてお話を伺います!」
美咲(記者役)「お似合いですね~、本当に!」
「ちょ、ちょっと美咲さん!」
「はいはい、リラックスして~!」
柊は微笑んで軽く頭を下げた。
「よろしくお願いします」
「……よろしくお願いします」
⸻
インタビュー開始。
美咲「まず、お互いの第一印象を教えてください」
柊「真面目で、でも目がよく動く人だと思いました」
「め、目が!?」
「はい。常に周囲を見て、誰かのために動こうとしてる。
それが印象的でした」
(なんか……ずるい褒め方……)
美咲「藤原さんは?」
「えっと……最初は“ちょっと怖い人”だと思いました」
「ほう?」
「でも、実際は……一番人の話をちゃんと聞いてくれる人でした」
柊「それは評価してるということでいいか?」
「はい。……多分、誰よりも」
一瞬、沈黙。
けれど、その沈黙が妙にあたたかかった。
⸻
美咲「では、“信頼”って、どんな瞬間に感じますか?」
柊「……難しいですね。
でも、“言葉を交わさなくても伝わる”と思えた時です」
美咲「たとえば?」
柊「会議中、目が合っただけで“あ、理解してくれてるな”と感じた時とか」
真由「(え、そんなの気づいてたんだ……)」
美咲「お二人、目が合う頻度多いですよね?」
「そ、そんなことないですっ!」
「……多いな」
「課長ーーー!」
成田(後方でニヤニヤ)「これは編集で使われるやつ」
美咲「絶対使う」
⸻
質問は続く。
「SNSでの発信が話題になりましたが、
お互いの“発言”をどう受け止めていましたか?」
柊「彼女の投稿には、“素直な現実”がある。
言葉を飾らず、まっすぐ届く」
「そ、そんな……」
「俺が何度も救われた」
(……またそんな真顔で)
美咲「では、藤原さんは?」
「柊さんの言葉は……怖いくらい正直です。
でも、だからこそ信じられる。
“偽りがない人”って、すごく強いと思います」
カメラの赤ランプが光る。
一瞬だけ、二人の視線がぶつかる。
空気が変わった。
美咲「……これ、リアルに恋バナ記事にできるんじゃ?」
「美咲さん!?」
柊「仕事の話です」
「そ、そうです!」
美咲「はいはい、“仕事”ね(にやり)」
⸻
取材終了後。
外に出ると、もう夕方だった。
「……本音、多かったな」
「ですね……」
「でも、ああして言葉にできるのは悪くない」
「私も、ちょっとスッキリしました」
柊が立ち止まる。
「――真由」
「はい?」
「“仕事の信頼”と“個人の気持ち”、どこまで分けられると思う?」
「え……」
一瞬、返事が詰まる。
「……正直、もう分けられません」
「俺もだ」
(……っ)
「……反則です」
「また言われた」
二人の影が、夕焼けに溶けてひとつになった。
⸻
夜。
社内広報の速報が届く。
【次号予告】
特集:理想の上司と部下が語る“信頼”と“想い”
――“言葉の距離”を超えて――
スマホを見つめながら、真由はつぶやいた。
「……もう隠せないな、これは」
すぐに通知が届く。
《@WORK_LIFE_BALANCE》
「“信頼”の先にあるのは、“好き”という感情だと思う。」
《@mayu_worklife》
「じゃあ、もうその先まで行ってますね。」
コメント欄が静かに燃え上がる。
そして誰もが思った。
――この二人の物語は、まだ終わらない。
12
あなたにおすすめの小説
出逢いがしらに恋をして 〜一目惚れした超イケメンが今日から上司になりました〜
泉南佳那
恋愛
高橋ひよりは25歳の会社員。
ある朝、遅刻寸前で乗った会社のエレベーターで見知らぬ男性とふたりになる。
モデルと見まごうほど超美形のその人は、その日、本社から移動してきた
ひよりの上司だった。
彼、宮沢ジュリアーノは29歳。日伊ハーフの気鋭のプロジェクト・マネージャー。
彼に一目惚れしたひよりだが、彼には本社重役の娘で会社で一番の美人、鈴木亜矢美の花婿候補との噂が……
可愛い女性の作られ方
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
風邪をひいて倒れた日。
起きたらなぜか、七つ年下の部下が家に。
なんだかわからないまま看病され。
「優里。
おやすみなさい」
額に落ちた唇。
いったいどういうコトデスカー!?
篠崎優里
32歳
独身
3人編成の小さな班の班長さん
周囲から中身がおっさん、といわれる人
自分も女を捨てている
×
加久田貴尋
25歳
篠崎さんの部下
有能
仕事、できる
もしかして、ハンター……?
7つも年下のハンターに狙われ、どうなる!?
******
2014年に書いた作品を都合により、ほとんど手をつけずにアップしたものになります。
いろいろあれな部分も多いですが、目をつぶっていただけると嬉しいです。
ワケあり上司とヒミツの共有
咲良緋芽
恋愛
部署も違う、顔見知りでもない。
でも、社内で有名な津田部長。
ハンサム&クールな出で立ちが、
女子社員のハートを鷲掴みにしている。
接点なんて、何もない。
社内の廊下で、2、3度すれ違った位。
だから、
私が津田部長のヒミツを知ったのは、
偶然。
社内の誰も気が付いていないヒミツを
私は知ってしまった。
「どどど、どうしよう……!!」
私、美園江奈は、このヒミツを守れるの…?
10 sweet wedding
國樹田 樹
恋愛
『十年後もお互い独身だったら、結婚しよう』 そんな、どこかのドラマで見た様な約束をした私達。 けれど十年後の今日、私は彼の妻になった。 ……そんな二人の、式後のお話。
甘過ぎるオフィスで塩過ぎる彼と・・・
希花 紀歩
恋愛
24時間二人きりで甘~い💕お仕事!?
『膝の上に座って。』『悪いけど仕事の為だから。』
小さな翻訳会社でアシスタント兼翻訳チェッカーとして働く風永 唯仁子(かざなが ゆにこ)(26)は頼まれると断れない性格。
ある日社長から、急ぎの翻訳案件の為に翻訳者と同じ家に缶詰になり作業を進めるように命令される。気が進まないものの、この案件を無事仕上げることが出来れば憧れていた翻訳コーディネーターになれると言われ、頑張ろうと心を決める。
しかし翻訳者・若泉 透葵(わかいずみ とき)(28)は美青年で優秀な翻訳者であるが何を考えているのかわからない。
彼のベッドが置かれた部屋で二人きりで甘い恋愛シミュレーションゲームの翻訳を進めるが、透葵は翻訳の参考にする為と言って、唯仁子にあれやこれやのスキンシップをしてきて・・・!?
過去の恋愛のトラウマから仕事関係の人と恋愛関係になりたくない唯仁子と、恋愛はくだらないものだと思っている透葵だったが・・・。
*導入部分は説明部分が多く退屈かもしれませんが、この物語に必要な部分なので、こらえて読み進めて頂けると有り難いです。
<表紙イラスト>
男女:わかめサロンパス様
背景:アート宇都宮様
ヤクザの若頭は、年の離れた婚約者が可愛くて仕方がない
絹乃
恋愛
ヤクザの若頭の花隈(はなくま)には、婚約者がいる。十七歳下の少女で組長の一人娘である月葉(つきは)だ。保護者代わりの花隈は月葉のことをとても可愛がっているが、もちろん恋ではない。強面ヤクザと年の離れたお嬢さまの、恋に発展する前の、もどかしくドキドキするお話。
恋は襟を正してから-鬼上司の不器用な愛-
プリオネ
恋愛
せっかくホワイト企業に転職したのに、配属先は「漆黒」と噂される第一営業所だった芦尾梨子。待ち受けていたのは、大勢の前で怒鳴りつけてくるような鬼上司、獄谷衿。だが梨子には、前職で培ったパワハラ耐性と、ある"処世術"があった。2つの武器を手に、梨子は彼の厳しい指導にもたくましく食らいついていった。
ある日、梨子は獄谷に叱責された直後に彼自身のミスに気付く。助け舟を出すも、まさかのダブルミスで恥の上塗りをさせてしまう。責任を感じる梨子だったが、獄谷は意外な反応を見せた。そしてそれを境に、彼の態度が柔らかくなり始める。その不器用すぎるアプローチに、梨子も次第に惹かれていくのであった──。
恋心を隠してるけど全部滲み出ちゃってる系鬼上司と、全部気付いてるけど部下として接する新入社員が織りなす、じれじれオフィスラブ。
包んで、重ねて ~歳の差夫婦の極甘新婚生活~
吉沢 月見
恋愛
ひたすら妻を溺愛する夫は50歳の仕事人間の服飾デザイナー、新妻は23歳元モデル。
結婚をして、毎日一緒にいるから、君を愛して君に愛されることが本当に嬉しい。
何もできない妻に料理を教え、君からは愛を教わる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる