富豪外科医は、モテモテだが結婚しない?

青夜

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《オペレーション・ラストソング》 Ⅸ

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 《青い剣士》は虎蘭と虎白さんたちが次々に撃破していった。
 「紅六花」の六花や同行している亜紀ちゃんも何体か斃している。
 油断できる相手では無かったが、まだ数体相手であれば、俺たちが勝てる。
 だから、今後はもっと多くの数で圧して来るだろう。
 今それをしない理由は分からない。
 「業」が俺たちの戦力を測っているのか、そもそもが数体ずつが限界なのか。
 分からないことを考えても仕方がないが、俺の勘が応えていた。
 あらゆる可能性を受け止めながら、今は全力で立ち向かうしかねぇ。

 俺には予感があった。
 「業」の持つ強力な妖魔は、単体では俺たちの最大戦力には劣っている。
 「業」の優勢はその「数」にあるのだ。
 《刃》は桁違いであったが、「魔法陣」によって俺たちは優位に立つことが出来た。
 「神」は俺が対応出来る。
 だから「業」は数で圧して来る。
 《青い剣士》についても、そういうことなのではないか。
 その時の俺はそう思っていた。
 今の段階では、《青い剣士》が数百も出れば俺たちの中で対抗出来る者は僅かだ。
 恐らくは俺と聖、そして怒貪虎さんだけだろう。
 「業」はこの戦闘の中で、どれほどの数を揃えれば良いかを推し量っているのかもしれない。

 「紅六花」は救助者のいる場所へ次々と到達し、任務を遂行していた。
 徐々に西方向へ移動している。
 既に今はロシア中部のアリンスコエに向かっていた。
 平野部の生存者は少なかったのだが、石神家の剣聖が出張って来たので、六花たちは予想以上のスピードで進んでくれている。
 それでも戦闘をこなしながらなので、どれほど頑張っていることか俺には分かっていた。

 その「紅六花」から通信が入った。


 

 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■



 
 「総長! 柏木さんから通信です!」
 「すぐに寄越せ!」

 アリンスコエが近付いた時点で、柏木さんが何かを感じたようだった。
 タケが通信機を私に持って来る。

 「柏木さん!」
 「六花さん! 何か感じます! 大きな拠点がある! でもそこに何かを感じます!」
 「分かりました! 注意して接近します。柏木さんは後方で待機していて下さい!」

 「ブレイド・ハート」の情報では、この近辺に敵の拠点は発見されていない。
 巧妙に隠されたものなのだろうか。
 柏木さんの霊能は非常に高い。
 どんな優秀な観測機でも発見できないものでも、柏木さんであるならばあり得る。
 それに柏木さんはただ拠点の場所を言っているのではないようだ。
 「何かを感じる」と言っていた、
 それは、そこに重要な何かがあるということだ。
 それが何なのかは分からないが、とにかく進むしかない。
 私は全員に注意するように命じた。

 20分後、突然大規模な攻勢が始まった。
 北京の大空洞のように、巧妙に隠された空洞から膨大な妖魔が噴出した。
 私はタケにトラを呼ぶように命じ、《クリムゾン・ヘル》を連射した。
 《レイ》が妖魔の数が2垓以上と解析した。
 どうやらロシア国内の中でも有数の拠点であったようだ。
 しかも巧妙に隠されていた。
 本来は《オペレーション・ゴルディアス》での攻撃対象になるべきであったが、ここで会敵してしまったからには後には退けない。
 この数が地上に噴出すれば、大変な事態になる。
 「ゲート」による最大級の《百鬼夜行》が世界中で同時多発的に発生してしまう。
 20京の《百鬼夜行》が500か所だ。
 甚大な被害になる。
 だから、何としてもここで食い止めるしかない。
 トラが来てくれれば何とかなる。
 それまでに私たちで少しでも噴出を止めるしかない。

 「タイガー! 2分後に来ます!」
 「分かった!」

 やはりトラは間髪入れずに来てくれるようだった。
 事態を確実に把握してくれている。

 「マンロウ! 柏木さんを退避!」

 まだ柏木さんは「バビロン」に残っていた。
 マンロウと御坂は何をしているのか!

 「六花さん! 穴の底だ!」

 柏木さんが通信に割り込んで来た。
 なんだ!
 その時、トラが到着してくれた。
 すぐに大技を撃つはずだった。

 「待って、トラ! 柏木さんが穴の底に何かがあると言っている!」

 トラが私の隣に降りた。

 「どういうことだ!」
 「分からない! でも、ここに来る前にも何かがあると言ってた!」
 「ちくしょう!」

 トラは私たちに戦闘を任せ、一旦「バビロン」に飛んだ。

 「お前らぁ! 気合を入れろ! 紅を見せろ!」
 『オォォォォーーーーウ!!』


 

 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■




 石神たちが「業」様の領土を好き勝手に移動していた。
 以前から上空を幾度も飛び回っていたのは知っていたが、何をしてももう無駄なので放置していた。
 何しろ超高速で逃げる連中なので、何度か地上に降りた時には攻撃もしたが、いつも逃げられた。
 それほど強い連中には見えなかったが、逃げ足は速い。
 こちらの情報を得ようとしているのは分かっていたが、あの程度で何が分かるわけではないと「業」様も考えておられた。
 《リェーズヴィエ(青い剣士)》の次元を離す技で重要なものは隠すことが出来たし、大体にして、もう「業」様のなさることはほぼ終えていたのだ。
 妖魔を蓄えた場所は幾つも出来、《ニルヴァーナ》の生産拠点も複数出来ている。
 ミハイルの方は幾分遅れてはいるが、もう十分な準備は終えたと言っても良い。
 それに今回石神たちがやっているのは、ロシアに生き残った人間の救出らしい。
 あやつらしい、無駄なことをしている。
 
 「宇羅、あの女だけの軍団が来ているようだな」
 「はい、目障りではあります」
 「そうだ、この機会に潰しておけ。《リェーズヴィエ》を送り込む。お前も妖魔の手配をしろ」
 「かしこまりました!」

 《リェーズヴィエ》はまだ発展途上ではあったが、十分に石神の兵士を虐殺できる。
 前《リェーズヴィエ》とほぼ同等の力を持ち、石神と何人かの強い連中には通じないかもしれないが、あの女だけの軍団ならば一蹴だろう。

 「念のため3体を出す」
 「え、一度にですか!」
 「宇羅、石神を甘く見るな。あいつは常に我々の予想外のことをする。あの女たちにも何かがあるかもしれん」
 「はい、申し訳ありません!」

 「業」様の背後から、若干の黒い霧が噴出していた。
 「業」様には決して逆らってはいけない。
 自分の迂闊さを反省した。




 「業」様の予想通り、女だけの軍団の指揮官は《リェーズヴィエ》を撃破した。
 私は自分の甘さを更に反省した。
 石神家の女も来て、簡単に《リェーズヴィエ》を潰した。
 あり得ない。
 《リェーズヴィエ》はもっと石神たちを苦しめるはずだった。

 「宇羅、見よ。石神はやはり強い」
 「いいえ、《リェーズヴィエ》は今後も発展していく素体です。このままのはずもありません」
 「まあ、その通りだがな。でも今の時点では石神はおろか、その部下たちにも通じない」
 「はい……」
 
 「業」様は今回はあまり気にしてはいないようだった。
 私は密かに安心した。
 「業」様はどこまでもお強くなられる。
 《リェーズヴィエ》もそうだ。
 その時、「タイニー・タイド」から連絡が入った。
 敵が「タイニー・タイド」のいるアリンスコエに向かっているとのことだった。
 まだ離れた場所で生存者を探しているが、必ず来ると言う。
 「タイニー・タイド」の《予言》だ。

 「分かった。それでは罠を張ろう」
 「はい!」

 「業」様は以前から「タイニー・タイド」や私たちの拠点の近くに、妖魔を蓄積した空洞をご用意して下さっていた。
 万一襲われた際にはその空洞へ通じた通路へ逃げ、「業」様が「ゲート」を開いて逃がして下さる。
 「タイニー・タイド」も移動を始めているはずだった。
 そして「業」様は「ゲート」から《リェーズヴィエ》を200体も送られる準備をされた。
 今揃っている数の半分にもあたるが、必ずや石神たちを撃退するだろう。
 まだ未完成とはいえ、《リェーズヴィエ》は強靭だ。
 監視の妖魔たちから女の軍団がアリンスコエに進路を取ったことを報せて来た。
 女の軍団は全員が引き裂かれて死ぬだろう。
 「業」様も嬉しそうに笑っておられた。
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