261 / 3,215
岡庭くん、結婚します! Ⅲ
しおりを挟む
広い披露宴会場だった。
既に岡庭と新婦の親族が大勢席に着いている。
8人掛けの丸テーブルが、数え切れないほど用意されていた。
「石神! こっちだ」
ひな壇の目の前の席だった。
俺は御堂と栞に挟まれ、丁度ひな壇を正面に見る席だった。
「まいったな、これは」
通常は主賓が座るべき配置だ。
岡庭の家は地方の有力者だから、国会議員レベルで出席者がいるはずだった。
それらしい人物が、近くの席にいる。
「なんかスゴイ席だよな。こんなんじゃ酔っ払ってられないよなぁ」
同期の連中が口々に言う。
俺たちは始まるまでの間、懐かしく話した。
いよいよ式典が始まり、新郎新婦が入場した。
司会は俺もテレビで知っている人間。
名前は知らねぇ。
「まーこーとー!」
「こんぐー!」
新婦側の席からでかい声で女性たちが叫ぶ。
見ると、みんな身体が大きい。
新婦が笑って手を振った。
岡庭も手を振っている。
俺は後ろを振り返った。
誰に手を振ったんだろう?
新郎と新婦の身長差は30センチというところか。
体重差は50キロくらい。
でかい新婦だった。
新郎の紹介、新婦の紹介。
新婦は女子プロレスラーだった。
「あ、コングまこと!」
栞が言った。
「あのね、一時有名になったレスラーなの。ヒール(悪役)だったけど、結構強かったのよ」
説明してくれる。
そーなんだ。
岡庭はともかく、新婦の紹介が凄かった。
「新婦は成績優秀で、気立てがよく学校でも友人が多かったそうです」
写真は新婦が真ん中でロングのスカートで大股を開いて座り、周囲は茶髪の連中だった。
バットを担いでる奴もいれば、明らかに高校生でタバコをくわえてる奴もいる。
「卒業後、女子プロ団体○○に所属し、一世を風靡するスター選手となりました」
写真はドレッドヘアーにした新婦がフォークで相手選手の額を抉り、激しく流血させている。
「しかしその後、新郎と運命の出会いをし、ここにめでたく夫婦として……」
会場で拍手が沸いた。
先ほどの女子プロの仲間らしい連中が絶叫している。
「なんか、すごいな」
「うん」
「そうだね」
来賓の長い長い挨拶の数々が終わり、豪華な食事が配られ、乾杯。
俺たちは楽しく話しながら、食事を楽しんだ。
俺は御堂やテーブルの仲間を連れて、早目にひな壇へ行く。
「岡庭おめでとう! グアム以来だけど、元気そうだな」
「いしがみくーん!」
「お前、何泣いてんだよ。しっかりしろよ」
新婦が俺をすごい目で睨んでいる。
「あ、奥さん。石神といいます。岡庭とは同級生で」
「よく知ってる」
ドスの効いた声で言われた。
俺は他の人間に挨拶を譲り、退散した。
何度もお色直しが入り、最後は岡庭がウェディングドレスを着て、新婦がタキシードという趣向だった。
初めて見た。
岡庭が嬉しそうに俺を見た。
4時間にも及ぶ披露宴が終わり、俺たちは岡庭が用意してくれた二次会の会場へ移る。
最初に食事をした1階のレストランだった。
新郎新婦の親しい友人たちだけの、気楽な会だった。
岡庭はスーツに着替え、新婦は真っ赤なドレスで現われた。
通例のビンゴ大会があり、俺は新巻鮭を手に入れた。
「子どもたちが喜ぶぜ!」
「もうすっかりお父さんね」
栞に皮肉を言われたが、気分がいい。
楽しく飲み食いしていると、新婦とその仲間たちが近づいて来る。
「おい、石神」
「なんだ?」
「ちょっと面貸せ」
「あ?」
岡庭が、女子プロの仲間に羽交い絞めにされている。
ふざけているのかと、俺たち以外は気付いていない。
俺は騒ぎを起こしたくないので、一緒に付いて行った。
栞と御堂もついてくる。
ホテルの裏庭に行く。
「お前、俺の旦那が惚れてる男らしいな」
「はい?」
「許せねぇ! 俺がボコボコにして旦那の前に引きずってってやる!」
何のことか分からない。
しかし、百キロ近い巨漢が迫ってくる。
しょうがねぇ。
タックル狙いだ。
プロレスラーらしい。
俺はタイミングを合わせ、後ろに飛びのきながら膝を顔面に入れる。
しかし新婦はそのまま俺の腰に手を回そうとした。
すごいタフさだ。
俺は膝を伸ばし、絡めて新婦の背に乗った。
延髄に拳。
新婦は地面に突っ込んだ。
起き上がる。
俺は驚いた。
女たちが怒号をあげ、喝を入れる。
女がパンチを放ってくる。
遅い。
俺は肝臓に蹴りを入れた。
身を折ったところで、もう一度顔面に膝。
俺の腕を掴んでくるので、もう一度膝。
右脚を刈り込んで正座させ、俺は新婦の頬を平手で殴り続けた。
意識が無い。
俺は髪を掴み、地面に寝かせた。
女たちは呆気に取られている。
「つ、つえぇー!」
岡庭が駆け寄ってきた。
「石神くん! 無事?」
「ああ。だけど悪かったな。いきなり奥さんが突っかかってきたもんだから」
「うん、いいんだ。ごめんね」
「まことちゃん!」
岡庭が新婦を呼ぶと、起き上がってきた。
タフだな。
二人は泣きながら抱き合った。
なんかよく分からんけど、いい話?
既に岡庭と新婦の親族が大勢席に着いている。
8人掛けの丸テーブルが、数え切れないほど用意されていた。
「石神! こっちだ」
ひな壇の目の前の席だった。
俺は御堂と栞に挟まれ、丁度ひな壇を正面に見る席だった。
「まいったな、これは」
通常は主賓が座るべき配置だ。
岡庭の家は地方の有力者だから、国会議員レベルで出席者がいるはずだった。
それらしい人物が、近くの席にいる。
「なんかスゴイ席だよな。こんなんじゃ酔っ払ってられないよなぁ」
同期の連中が口々に言う。
俺たちは始まるまでの間、懐かしく話した。
いよいよ式典が始まり、新郎新婦が入場した。
司会は俺もテレビで知っている人間。
名前は知らねぇ。
「まーこーとー!」
「こんぐー!」
新婦側の席からでかい声で女性たちが叫ぶ。
見ると、みんな身体が大きい。
新婦が笑って手を振った。
岡庭も手を振っている。
俺は後ろを振り返った。
誰に手を振ったんだろう?
新郎と新婦の身長差は30センチというところか。
体重差は50キロくらい。
でかい新婦だった。
新郎の紹介、新婦の紹介。
新婦は女子プロレスラーだった。
「あ、コングまこと!」
栞が言った。
「あのね、一時有名になったレスラーなの。ヒール(悪役)だったけど、結構強かったのよ」
説明してくれる。
そーなんだ。
岡庭はともかく、新婦の紹介が凄かった。
「新婦は成績優秀で、気立てがよく学校でも友人が多かったそうです」
写真は新婦が真ん中でロングのスカートで大股を開いて座り、周囲は茶髪の連中だった。
バットを担いでる奴もいれば、明らかに高校生でタバコをくわえてる奴もいる。
「卒業後、女子プロ団体○○に所属し、一世を風靡するスター選手となりました」
写真はドレッドヘアーにした新婦がフォークで相手選手の額を抉り、激しく流血させている。
「しかしその後、新郎と運命の出会いをし、ここにめでたく夫婦として……」
会場で拍手が沸いた。
先ほどの女子プロの仲間らしい連中が絶叫している。
「なんか、すごいな」
「うん」
「そうだね」
来賓の長い長い挨拶の数々が終わり、豪華な食事が配られ、乾杯。
俺たちは楽しく話しながら、食事を楽しんだ。
俺は御堂やテーブルの仲間を連れて、早目にひな壇へ行く。
「岡庭おめでとう! グアム以来だけど、元気そうだな」
「いしがみくーん!」
「お前、何泣いてんだよ。しっかりしろよ」
新婦が俺をすごい目で睨んでいる。
「あ、奥さん。石神といいます。岡庭とは同級生で」
「よく知ってる」
ドスの効いた声で言われた。
俺は他の人間に挨拶を譲り、退散した。
何度もお色直しが入り、最後は岡庭がウェディングドレスを着て、新婦がタキシードという趣向だった。
初めて見た。
岡庭が嬉しそうに俺を見た。
4時間にも及ぶ披露宴が終わり、俺たちは岡庭が用意してくれた二次会の会場へ移る。
最初に食事をした1階のレストランだった。
新郎新婦の親しい友人たちだけの、気楽な会だった。
岡庭はスーツに着替え、新婦は真っ赤なドレスで現われた。
通例のビンゴ大会があり、俺は新巻鮭を手に入れた。
「子どもたちが喜ぶぜ!」
「もうすっかりお父さんね」
栞に皮肉を言われたが、気分がいい。
楽しく飲み食いしていると、新婦とその仲間たちが近づいて来る。
「おい、石神」
「なんだ?」
「ちょっと面貸せ」
「あ?」
岡庭が、女子プロの仲間に羽交い絞めにされている。
ふざけているのかと、俺たち以外は気付いていない。
俺は騒ぎを起こしたくないので、一緒に付いて行った。
栞と御堂もついてくる。
ホテルの裏庭に行く。
「お前、俺の旦那が惚れてる男らしいな」
「はい?」
「許せねぇ! 俺がボコボコにして旦那の前に引きずってってやる!」
何のことか分からない。
しかし、百キロ近い巨漢が迫ってくる。
しょうがねぇ。
タックル狙いだ。
プロレスラーらしい。
俺はタイミングを合わせ、後ろに飛びのきながら膝を顔面に入れる。
しかし新婦はそのまま俺の腰に手を回そうとした。
すごいタフさだ。
俺は膝を伸ばし、絡めて新婦の背に乗った。
延髄に拳。
新婦は地面に突っ込んだ。
起き上がる。
俺は驚いた。
女たちが怒号をあげ、喝を入れる。
女がパンチを放ってくる。
遅い。
俺は肝臓に蹴りを入れた。
身を折ったところで、もう一度顔面に膝。
俺の腕を掴んでくるので、もう一度膝。
右脚を刈り込んで正座させ、俺は新婦の頬を平手で殴り続けた。
意識が無い。
俺は髪を掴み、地面に寝かせた。
女たちは呆気に取られている。
「つ、つえぇー!」
岡庭が駆け寄ってきた。
「石神くん! 無事?」
「ああ。だけど悪かったな。いきなり奥さんが突っかかってきたもんだから」
「うん、いいんだ。ごめんね」
「まことちゃん!」
岡庭が新婦を呼ぶと、起き上がってきた。
タフだな。
二人は泣きながら抱き合った。
なんかよく分からんけど、いい話?
3
あなたにおすすめの小説
付喪神狩
やまだごんた
キャラ文芸
古い道具には年月と共に人の情念が蓄積され、それが意思を持ったものが付喪神と呼ばれる。
容姿端麗だが口も性格も女癖も悪い大和御門は日本で唯一の付喪神狩として、付喪神を祓う能力者。
自分に取り憑いた大口真神を引き連れ、同居中の相方・棚橋亨と繰り広げる現代異能バトル
診察室の午後<菜の花の丘編>その1
スピカナ
恋愛
神的イケメン医師・北原春樹と、病弱で天才的なアーティストである妻・莉子。
そして二人を愛してしまったイケメン御曹司・浅田夏輝。
「菜の花クリニック」と「サテライトセンター」を舞台に、三人の愛と日常が描かれます。
時に泣けて、時に笑える――溺愛とBL要素を含む、ほのぼの愛の物語。
多くのスタッフの人生がここで楽しく花開いていきます。
この小説は「医師の兄が溺愛する病弱な義妹を毎日診察する甘~い愛の物語」の1000話以降の続編です。
※医学描写はすべて架空です。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
裏切りの代償
中岡 始
キャラ文芸
かつて夫と共に立ち上げたベンチャー企業「ネクサスラボ」。奏は結婚を機に経営の第一線を退き、専業主婦として家庭を支えてきた。しかし、平穏だった生活は夫・尚紀の裏切りによって一変する。彼の部下であり不倫相手の優美が、会社を混乱に陥れつつあったのだ。
尚紀の冷たい態度と優美の挑発に苦しむ中、奏は再び経営者としての力を取り戻す決意をする。裏切りの証拠を集め、かつての仲間や信頼できる協力者たちと連携しながら、会社を立て直すための計画を進める奏。だが、それは尚紀と優美の野望を徹底的に打ち砕く覚悟でもあった。
取締役会での対決、揺れる社内外の信頼、そして壊れた夫婦の絆の果てに待つのは――。
自分の誇りと未来を取り戻すため、すべてを賭けて挑む奏の闘い。復讐の果てに見える新たな希望と、繊細な人間ドラマが交錯する物語がここに。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
あやかし家族 〜五人の兄と愛され末妹〜
南 鈴紀
キャラ文芸
妖狩りにより両親を奪われ、囚われの身となった半妖の少女・鈴音は浄化の狐火を利用するだけの道具のように扱われていた。呪いにより成長は止まり、容姿も思考も幼いまま、感情が消え失せてもなおただ生かされるままに生きていた。
しかし妖保護部隊本部第一部隊との出会いにより、鈴音の止まっていた時間が動き出す。
掴みどころはないが頼れる氏神・雅仁、兄には厳しいが弟妹には優しい狼の妖・千里、人間嫌いだが人当たりの良い振りが得意な人間・遥杜、可愛いもの好きで元気いっぱいの猫又・鴇羽、大人しいが思いやりに溢れる猫又・瑠璃。
五人の兄と過ごす時間の中で、無いものだらけだった鈴音にもやがて大切なものが増えていく。
妖×家族の心温まる和風ファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる