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岡庭くん、結婚します! Ⅳ
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翌朝。
俺と御堂、栞と三人で朝食をとっていると、岡庭、奥さん、そして岡庭のご両親が来た。
女子プロ団体も一緒だ。
「夕べは本当に申し訳ない」
岡庭の父親が頭を下げる。
何と返していいのか、俺も困る。
父親が、説明してくれた。
岡庭が、ゲイで、子どもの頃から女装が好きだったこと。
俺に惚れていたこと。
しかし、家の跡継ぎが必要で結婚を決めたこと。
見合い相手のコング・マコトを気に入ったこと。
岡庭がバイだとわかってみんなで喜んだこと。
俺がどうでもいいと思ったこと。
「しかし、嫁は石神さんを勘違いし、昔の男のように思ってしまい、今回のことに」
「俺は岡庭と付き合ったことも、関係を持ったこともありませんよ」
「もちろん、承知しています。息子が勝手に入れ揚げていただけで」
「まったくよく分かりませんが、今回のことはこれで仕舞い、ということでよろしいでしょうか?」
いい加減、終わりたかった。
「石神さんへはこのままでは済まないと思っています。何かお詫びを形で」
律儀な人らしい。
「じゃあ、岡庭。今後も干物を送ってくれるかな。うちの子どもたちが大好きなんだよ」
「え、石神くんは結婚してたの?」
「まあ、そんな感じかな。4人も子どもがいるんだぜ」
「そうか。そうか。分かった! 僕もきちんとまことちゃんに向き合うよ。幸せになってね」
「ああ、岡庭もな」
いい感じに終わったか。
岡庭と父親が帰ったが、奥さんと女子プロ団体は残っている。
「すいませんっした!」
全員が頭を下げる。
「もういいですよ。奥さん、怪我は大丈夫ですか?」
「はい! 身体は鍛えているので、すぐに治ります!」
「あの、石神さんはどういう方なんですか?」
女子プロの一人が聞いてくる。
「どういうって、別に」
「だって、私ら結構強いっすよ。コングだってうちじゃ強い方なのに」
「まあ、喧嘩は好きでしたからね」
「へぇー!」
次々に俺に質問し、褒め称えてくる。
「まあ、どうかこの辺で。久しぶりに旧友たちと話したいんで」
「あ、失礼しました! 今度うちらの「饗宴」に来てください!」
「機会があれば、ぜひ」
やっと去って行った。
御堂が大笑いした。
栞は呆れていた。
「ねえ、花岡さん。石神ってまだこんななの?」
「そうよ。最近じゃ、大阪の愚連隊を気に入らないってぶっ飛ばして来るんだから」
「へぇー」
「それとね。一緒に子どもたちと遊園地に行ったら、知らないところでマーシャルアーツの演舞とかやって。人だかりになってたのよ」
栞はスマホで画像を見せる。
「あ、石神だ!」
御堂が喜んで見ていた。
「これ、柳たちにも見せるね」
「ヤメテクダサイ」
「それから御堂君、これも見てよ」
栞は次々に俺の画像や動画を御堂に見せた。
親しげに笑っている二人を見て、俺も嬉しかった。
俺たちは旧友たちと挨拶し、帰る支度をした。
俺のタキシードは、すっかり綺麗になって戻った。
コングの血が膝にこびりついたから、急ぎのクリーニングを頼んだのだ。
「じゃあ、石神。また」
「ああ、またな」
俺と御堂は握手を交わした。
「花岡さんも、また」
「うん、また是非」
握手を交わす。
俺は栞を乗せ、東京へ向かった。
「また石神くんのせいで、散々だったよね」
「俺のせいですか!」
雪がちらついている。
俺は多少スピードを落として、注意しながら走らせた。
「だって、前代未聞よ。披露宴の直後に新婦を血まみれにする新郎の友人って」
「それはだって」
「ウフフフ、アハハハハ!」
栞が大笑いした。
「でも面白かった。石神くんのことは全然心配してなかったけど、相手もタフだったよねぇ」
「そうですね」
栞は、来たときとは別のタートルネックを着ていた。
「花岡の技は使わなかったのね」
「……だって、俺に使えるわけが」
「うそ。でもいいわ。石神くんの好きなようにやって」
「ねえ、石神くん」
「なんですか」
「ちょっと疲れたな」
「ええ、そうですね」
「どこかでちょっと休もうか」
「ヤメテクダサイ」
俺たちは笑った。
どこまでも、雪景色は綺麗だった。
「きれいな景色」
「花岡さんも綺麗ですよ」
「あ、やっぱり休みたいんだ!」
「そういうことじゃ!」
岡庭、幸せにな。
俺と御堂、栞と三人で朝食をとっていると、岡庭、奥さん、そして岡庭のご両親が来た。
女子プロ団体も一緒だ。
「夕べは本当に申し訳ない」
岡庭の父親が頭を下げる。
何と返していいのか、俺も困る。
父親が、説明してくれた。
岡庭が、ゲイで、子どもの頃から女装が好きだったこと。
俺に惚れていたこと。
しかし、家の跡継ぎが必要で結婚を決めたこと。
見合い相手のコング・マコトを気に入ったこと。
岡庭がバイだとわかってみんなで喜んだこと。
俺がどうでもいいと思ったこと。
「しかし、嫁は石神さんを勘違いし、昔の男のように思ってしまい、今回のことに」
「俺は岡庭と付き合ったことも、関係を持ったこともありませんよ」
「もちろん、承知しています。息子が勝手に入れ揚げていただけで」
「まったくよく分かりませんが、今回のことはこれで仕舞い、ということでよろしいでしょうか?」
いい加減、終わりたかった。
「石神さんへはこのままでは済まないと思っています。何かお詫びを形で」
律儀な人らしい。
「じゃあ、岡庭。今後も干物を送ってくれるかな。うちの子どもたちが大好きなんだよ」
「え、石神くんは結婚してたの?」
「まあ、そんな感じかな。4人も子どもがいるんだぜ」
「そうか。そうか。分かった! 僕もきちんとまことちゃんに向き合うよ。幸せになってね」
「ああ、岡庭もな」
いい感じに終わったか。
岡庭と父親が帰ったが、奥さんと女子プロ団体は残っている。
「すいませんっした!」
全員が頭を下げる。
「もういいですよ。奥さん、怪我は大丈夫ですか?」
「はい! 身体は鍛えているので、すぐに治ります!」
「あの、石神さんはどういう方なんですか?」
女子プロの一人が聞いてくる。
「どういうって、別に」
「だって、私ら結構強いっすよ。コングだってうちじゃ強い方なのに」
「まあ、喧嘩は好きでしたからね」
「へぇー!」
次々に俺に質問し、褒め称えてくる。
「まあ、どうかこの辺で。久しぶりに旧友たちと話したいんで」
「あ、失礼しました! 今度うちらの「饗宴」に来てください!」
「機会があれば、ぜひ」
やっと去って行った。
御堂が大笑いした。
栞は呆れていた。
「ねえ、花岡さん。石神ってまだこんななの?」
「そうよ。最近じゃ、大阪の愚連隊を気に入らないってぶっ飛ばして来るんだから」
「へぇー」
「それとね。一緒に子どもたちと遊園地に行ったら、知らないところでマーシャルアーツの演舞とかやって。人だかりになってたのよ」
栞はスマホで画像を見せる。
「あ、石神だ!」
御堂が喜んで見ていた。
「これ、柳たちにも見せるね」
「ヤメテクダサイ」
「それから御堂君、これも見てよ」
栞は次々に俺の画像や動画を御堂に見せた。
親しげに笑っている二人を見て、俺も嬉しかった。
俺たちは旧友たちと挨拶し、帰る支度をした。
俺のタキシードは、すっかり綺麗になって戻った。
コングの血が膝にこびりついたから、急ぎのクリーニングを頼んだのだ。
「じゃあ、石神。また」
「ああ、またな」
俺と御堂は握手を交わした。
「花岡さんも、また」
「うん、また是非」
握手を交わす。
俺は栞を乗せ、東京へ向かった。
「また石神くんのせいで、散々だったよね」
「俺のせいですか!」
雪がちらついている。
俺は多少スピードを落として、注意しながら走らせた。
「だって、前代未聞よ。披露宴の直後に新婦を血まみれにする新郎の友人って」
「それはだって」
「ウフフフ、アハハハハ!」
栞が大笑いした。
「でも面白かった。石神くんのことは全然心配してなかったけど、相手もタフだったよねぇ」
「そうですね」
栞は、来たときとは別のタートルネックを着ていた。
「花岡の技は使わなかったのね」
「……だって、俺に使えるわけが」
「うそ。でもいいわ。石神くんの好きなようにやって」
「ねえ、石神くん」
「なんですか」
「ちょっと疲れたな」
「ええ、そうですね」
「どこかでちょっと休もうか」
「ヤメテクダサイ」
俺たちは笑った。
どこまでも、雪景色は綺麗だった。
「きれいな景色」
「花岡さんも綺麗ですよ」
「あ、やっぱり休みたいんだ!」
「そういうことじゃ!」
岡庭、幸せにな。
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