富豪外科医は、モテモテだが結婚しない?

青夜

文字の大きさ
859 / 3,215

御堂家、大騒動 Ⅲ

しおりを挟む
 まずはロボだ。
 ロボは亜紀ちゃんと一緒にいた。

 「おーい、ロボ」

 俺の姿を見てトコトコと駆け寄って来る。
 カワイイ。
 俺は畳に座ってロボを抱いた。

 「お前なぁ。御堂の家に来ていきなり撃つなよなぁ」

 ロボは俺の顔をペロペロ舐めている。

 「誤魔化そうったってダメだ。もうやるなよな」

 ロボは俺の顔をじっと見ている。

 「やーるーなー!」
 「ニャ」

 分かったらしい。
 まあ、一応は被害が出ないように上空へ撃った。
 こいつなりに気遣いはあるのだろう。
 
 「タカさん、どうしてロボは……」

 亜紀ちゃんが言う。

 「俺に聞かれてもなぁ」
 「オロチを攻撃したんですかね?」
 「それはないな。そうだったら、まっすぐオロチにぶっ放したはずだ」
 「じゃあ、一体」
 「あいさつ、うーん、まあ示威行為かな」
 「それって?」
 「要は、舐められないように、かな?」
 「へぇー」

 よくは分からん。
 でも、ロボもオロチが途轍もない奴だと一瞬で分かったのだろう。
 もしも攻撃するのならば、ただじゃ済まさん、と。
 もしかしたら、俺たちを守るつもりだったのかもしれん。
 だったら、俺が仲良しだと分かって、もう大丈夫だろう。
 分らんが。


 「もう帰ろうかなー」
 「やめて下さいよ!」

 


 俺は麗星に電話した。

 「石神様!」

 麗星は嬉しそうに言ってくれた。

 「大変申し訳ないのですが」
 「いいえ! 何でも仰って下さいませ!」

 俺は麗星にこれまでの経緯を話した。
 オロチが5月に床下を叩き、俺が呼ばれて御堂の家に来たこと。
 不思議な夢と、その時の状況。
 今日、また御堂の家に来たら、オロチが出迎え、虹色の小さなヘビを見たこと。

 「「羅天遠呂智」は稀に「大虹龍破魔王」を地上に顕現させると、古文書に記述があります」
 「ダイコウリュウハマオウ?」

 麗星は字を教えてくれた。

 「数千年に一度。この世の危機に現われる究極の一体です。世界でただ一体の救世の存在です」
 「あの、五匹いたんですが?」
 
 「……」

 「あの、麗星さんへの信頼度が40パーセント減りました」
 「そんなに!」

 麗星はちょっとだけ待って欲しいと言った。
 10秒ほど保留になる。

 「あの、古文書には最大5体だとありました」
 「絶対、今作りましたよね!」

 「とにかく大変な事態でございます」
 「それでね、麗星さんに一度見て頂きたいのですが」
 「もちろんです」

 俺は御堂家の住所を告げた。

 「すぐに向かいます。今日の夕方には必ず」
 「お手数をお掛けします」

 出発してから、具体的な時間などをすり合わせることにした。




 俺は御堂と一緒に正巳さんの部屋へ行った。

 「申し訳ありませんでした!」

 畳に頭を擦り付けた。
 本当に申し訳ない。
 折角呼んで下さったのに、とんでもないことをしてしまった。

 「石神さん、お顔を挙げて下さい」

 正巳さんが笑って言った。
 美味そうに、俺の土産のコイーバをふかしている。
 菊子さんがコーヒーを運んで来た。

 「石神さんがコーヒー好きなんで、自分たちもすっかり。いや、美味いものですな」
 
 俺はロボはもう暴れないことを約束した。
 そしてオロチの子について話す。
 正巳さんも初めて聞いたようで、驚いていた。
 俺は麗星から聞いた話をした。

 「正嗣!」
 「うん」
 「すぐに祝いの準備を!」
 「分かった」

 「絶対やめてー!」

 俺は必死で止めた。

 「まだ秘密にして下さい。あれは今は幼体です。他に知れては不味い」
 
 正巳さんは考えていた。
 尤もらしいことを言ったが、俺は以前の大宴会に辟易としていた。

 「静かに見守る時期です。他の人間にはまだ話さないで下さいね」
 「分かった。石神さんの言う通りだ。いや、早まったことを考えてしまった」
 「いいえ。でも、流石は御堂家ですね。とんでもない守り神が、今度は世界を守るものを生み出したんですから」
 
 俺が言うと、正巳さんが嬉しそうだった。

 「それで、一度ああいうものの専門の家の人間に相談したいんです」

 俺は道間家のことを簡単に話し、今その当主がこちらへ向かっていることを話した。

 「それは是非そうして欲しい。ああ、大きな祝いはできんが、せめて今晩はみんなで祝おう。その方も一緒に」
 「ありがとうございます」

 麗星の了承を得た。
 これで一通りのことはやった。
 俺は御堂と食事の座敷へ行った。





 子どもたちと柳は、昼食の準備を手伝っている。
 食事のためだけであれば、家を6時に出ることはない。
 準備を手伝うためだ。
 俺はルーに言って、茶を頼んだ。
 澪さんが持って来た。

 「柳まで手伝っているんですよ」

 澪さんが嬉しそうに御堂に言った。

 「そうなのか。ありがとう、石神」
 「いや、柳が俺の家でも率先してやってただけだよ」
 「まあ」

 澪さんが微笑んだ。

 「本当は石神さんが、そうして下さったんでしょ?」
 「アハハハハ! まあ、うちの家族にもなったわけですからね」
 「ありがとうございます」

 澪さんはまた厨房へ戻った。


 麗星から電話が来た。
 三時に松本空港に着くらしい。
 俺が迎えに行くと言うと喜んだ。
 片道一時間くらいだ。
 一服して、俺は部屋に行った。
 亜紀ちゃんがロボと一緒にいる。

 俺はロボを連れ、庭に出た。
 もう二度とあんなことはさせてはならない。
 ロボを抱きかかえ、オロチのいる軒下へ行った。

 「おい、ロボ。もうやるんじゃないぞ」

 ロボは俺の顔を見ている。

 「オロチー!」

 呼んだ。
 出て来る。

 「オロチ、こいつは俺の家族のロボだ。大事な奴なんだ」

 オロチは俺を見ている。

 「ロボ、オロチだ。オロチも俺の大事な奴なんだ」

 ロボはオロチを見た。
 俺はロボを降ろした。
 何かあれば、俺が止める。
 ロボに威嚇や警戒の兆候は無い。
 オロチは――――分らん。
 ヘビの威嚇姿勢ってどんなだ?

 二頭が見合っている。
 10分経った。

 オロチが軒下の奥へ戻って行った。
 ロボはそれを見送り、上半身を伸ばし、俺の腰に前足を掛けた。
 抱けという合図だ。
 俺は笑ってロボを抱き上げ、座敷に戻った。




 ロボはずっと、俺の顔を舐めていた。
 ヒリヒリした。
しおりを挟む
感想 61

あなたにおすすめの小説

付喪神狩

やまだごんた
キャラ文芸
古い道具には年月と共に人の情念が蓄積され、それが意思を持ったものが付喪神と呼ばれる。 容姿端麗だが口も性格も女癖も悪い大和御門は日本で唯一の付喪神狩として、付喪神を祓う能力者。 自分に取り憑いた大口真神を引き連れ、同居中の相方・棚橋亨と繰り広げる現代異能バトル

診察室の午後<菜の花の丘編>その1

スピカナ
恋愛
神的イケメン医師・北原春樹と、病弱で天才的なアーティストである妻・莉子。 そして二人を愛してしまったイケメン御曹司・浅田夏輝。 「菜の花クリニック」と「サテライトセンター」を舞台に、三人の愛と日常が描かれます。 時に泣けて、時に笑える――溺愛とBL要素を含む、ほのぼの愛の物語。 多くのスタッフの人生がここで楽しく花開いていきます。 この小説は「医師の兄が溺愛する病弱な義妹を毎日診察する甘~い愛の物語」の1000話以降の続編です。 ※医学描写はすべて架空です。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

とある男の包〇治療体験記

moz34
エッセイ・ノンフィクション
手術の体験記

裏切りの代償

中岡 始
キャラ文芸
かつて夫と共に立ち上げたベンチャー企業「ネクサスラボ」。奏は結婚を機に経営の第一線を退き、専業主婦として家庭を支えてきた。しかし、平穏だった生活は夫・尚紀の裏切りによって一変する。彼の部下であり不倫相手の優美が、会社を混乱に陥れつつあったのだ。 尚紀の冷たい態度と優美の挑発に苦しむ中、奏は再び経営者としての力を取り戻す決意をする。裏切りの証拠を集め、かつての仲間や信頼できる協力者たちと連携しながら、会社を立て直すための計画を進める奏。だが、それは尚紀と優美の野望を徹底的に打ち砕く覚悟でもあった。 取締役会での対決、揺れる社内外の信頼、そして壊れた夫婦の絆の果てに待つのは――。 自分の誇りと未来を取り戻すため、すべてを賭けて挑む奏の闘い。復讐の果てに見える新たな希望と、繊細な人間ドラマが交錯する物語がここに。

『続・聖パラダイス病院』

菊池昭仁
現代文学
『聖パラダイス病院』の続編です。こんな病院なら入院生活も悪くはありません。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

あやかし家族 〜五人の兄と愛され末妹〜

南 鈴紀
キャラ文芸
 妖狩りにより両親を奪われ、囚われの身となった半妖の少女・鈴音は浄化の狐火を利用するだけの道具のように扱われていた。呪いにより成長は止まり、容姿も思考も幼いまま、感情が消え失せてもなおただ生かされるままに生きていた。  しかし妖保護部隊本部第一部隊との出会いにより、鈴音の止まっていた時間が動き出す。  掴みどころはないが頼れる氏神・雅仁、兄には厳しいが弟妹には優しい狼の妖・千里、人間嫌いだが人当たりの良い振りが得意な人間・遥杜、可愛いもの好きで元気いっぱいの猫又・鴇羽、大人しいが思いやりに溢れる猫又・瑠璃。  五人の兄と過ごす時間の中で、無いものだらけだった鈴音にもやがて大切なものが増えていく。  妖×家族の心温まる和風ファンタジー。

処理中です...