富豪外科医は、モテモテだが結婚しない?

青夜

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「紅六花ビル」、再び Ⅲ

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 宴はいつも通りの賑やかなものだった。
 みんなが六花と俺の周りに集まりたがり、響子は褒められ過ぎて我を失いかけていた。

 「エヘ、エヘ、エヘヘヘ」

 気持ち悪く笑っている。
 六花は普段とは全く違う、常にみんなに声を掛け、答え、楽しそうに笑っている。
 子どもたちは何の心配もなく、山盛りのステーキを、それでも争いながら食べている。
 別に奪わなくても幾らでもあるのだが。
 柳は分かっていて、四人とは少し離れた位置でステーキを皿に乗せている。
 それを亜紀ちゃんが引っ張り込んで、数発蹴りを入れて、皿のステーキを奪った。

 「なんでぇー」

 可愛そうになり、俺たちのテーブルに呼んだ。

 「まあ、ちょっと休んでいけよ」
 「ありがとうございます」

 「紅六花」の連中が、柳の美しさを褒める。
 柳にいろいろ聞いて来る。

 「えぇー! じゃあ、柳さんも東大なんですか!」
 「はい」
 「それじゃ、柳さんも寝ててもアイデアを考えてるっていう」
 「はい?」
 「スッゲェー!」

 なんか分からんが、尊敬されたようだ。

 「柳さんも、バイクに乗られるんで?」
 「いえ、私は車だけで」
 「そうなんですか。バイクはお嫌いですか?」
 「乗ってみたいとは思うんですけど」

 六花が悲しそうな顔で柳を見た。

 「でも! 私は四輪で行こうと思います!」
 「そうですかー」

 六花がニコニコした。
 今、アルファードに乗っていると言うと、みんなが羨ましがる。

 「あれ、シャコタンにすっと、カッケぇーんだよなぁ」
 「あ、知ってる! 地面に貼りついて走ってるみてぇだよな!」

 柳が困っている。

 「柳さんは、どんな改造を?」
 「あの、まだちょっとしか」
 「今度見せて下さいよ!」
 「はい、分かりました」

 また俺の出番かー。




 満足したか、亜紀ちゃんたちが来た。

 「おい、ここは人間様の席だ」
 「アハハハハ! タカさんは今日も面白いですね!」

 そろそろ出し物をしようと言って来た。
 ルーが部屋からギターを持って来ている。
 俺はいつものこいつらが好きそうな曲を弾き、歌った。
 
 亜紀ちゃんと双子を呼んで会場をオランダにする。
 可愛そうに小鉄がまた呼ばれてやらされ、酷いヤジを飛ばされた。

 「引っ込んでろ! ポークビッツ!」
 「うちの子より小せぇ!」
 「姉ちゃんの方がでけぇぞ!」
 「テメェ! あたしに恥かかせやがってぇー!」

 タケに蹴られた。

 「おい、今度いい器具とか探してやるよ」
 「いえ、結構です」

 半泣きで小鉄は厨房に戻った。

 ロボが半立ちになって、俺の腿に前足を乗せた。
 キラキラした眼で俺を見ている。

 「なに、お前もなんかやんの?」
 「にゃー」

 ロボを前に連れて行った。
 フヨフヨと空中に上がる。

 「オオー!」
 「スッゲェー! 「飛行」じゃん!」

 みんなが大騒ぎになる。
 「紅六花」の中で、「飛行」が出来るのは六花だけだ。
 先日、「暁園」の竹流がものにしたと聞いているが。
 ロボはみんなから絶賛され、上機嫌で会場を一周した。
 空中で立ち上がって、ジルバを踊った。
 会場が大爆笑になった。

 いつまでも調子にのってるので、俺が足を引っ張って降ろした。

 「ロボさん! 教えて下さい!」
 「私も!」

 何人も集まって来る。

 「にゃー、にゃにゃにゃー」
 「なるほど!」
 「にゃーにゃ」
 「そうだったのかぁー!」

 ノリのいい連中だった。

 亜紀ちゃんと柳が上半身裸になって「貧乳バレー」を披露し、双子が全裸で日本舞踊を舞った。
 俺も初めて見てびっくりした。

 皇紀と小鉄は目隠しをされていた。



 6時から始めて10時にもなると、潰れる人間も出て来た。
 以前と同じく、二階に運ばれ、寝かされる。

 俺は柳を連れ、時々様子を見に行った。
 
 「救急搬送で、酔漢がよく来る。まあ、うちの病院は少ないけどな。でも他の救急病院が手一杯の時には来ることもある」
 「はい」

 俺は処置の方法を柳に教えた。
 医療従事者として、こういう実践の機会は多い方がいい。

 よしこが運ばれて来た。

 「おい、こいつが潰れたのかよ」
 よしこは酒に強い。

 「はい。今日は楽しかったらしく、いつもよりずっと速いペースで飲んでましたので」
 「そうかよ」

 ブルーシートを敷かれた床に寝かされたよしこに近づいた。
 
 「よしこ、大丈夫か?」
 「いしがみさん……」
 「大分飲んだらしいな」

 よしこが身体を起こそうとした。

 「おい、無理するな、ってー! おい!」

 よしこがしゃがんだ俺の腰にしがみ付き、大量に吐いた。

 「……」

 「石神さん!」

 柳と運んで来た二人が叫ぶ。

 「静かにしろ! 濡れたタオルを持って来い」

 一人が駆け出して持って来る。
 よしこの顔を拭き、かかった手も拭いてやる。

 「石神さんを先に!」
 「いいって。汚れたこいつが可哀そうだ」
 「石神さん!」
 「よしこには黙ってろよ!」
 「「はい!」」

 柳にエレベーターのキーを持って来るように言った。

 「騒ぐなよ! 俺がちょっと部屋から持って来るものがあると言っておけ」
 「分かりました!」

 俺は一人で部屋に戻り、シャワーを浴びて着替えた。




 「あれ、着替えたんですか?」
 六花が戻った俺に言った。

 「俺はお洒落ダンディだからな! 4時間以上同じ服は着ねぇ!」
 「アハハハハハ!」
 「スッゲェー!」

 みんなで笑った。

 響子がそろそろ眠そうだった。
 俺は柳にキーを渡し、ロボと一緒に寝かせてくれと頼んだ。

 「お前は戻って来いよな!」
 「分かりました」
 「あー! 亜紀ちゃんのノートパソコンを持って来てくれ」
 「はい」

 しばらくして、柳がPCを抱えて戻った。
 俺はみんなに、早乙女の動画「ザ・オトメン・ポエム」を見せた。
 みんな笑って見た。

 その後で、早乙女の結婚式の動画を見せた。
 俺たちのバンド演奏だ。
 編集して、ワイプでひな壇の早乙女が抜かれている。
 早乙女が絶叫し、気絶するまでがちゃんと映っている。
 大爆笑だった。

 「このためによう。子どもたちを特訓してバンドを組んだんだ」
 「ギャハハハハハハ!」

 「タカさん、パッと作曲しちゃいましたよね!」
 「まあなぁ。あいつのためだと思ったら、何か力が湧いたよな!」
 「ギャハハハハハハハ!」

 早乙女がボッチで、俺しか友達がいないのだと言った。

 「「ひどいよ、親友」ってあいつが言ったんだよ」
 「ギャハハハハハハハハハ!」
 「でもそんだけ。俺がやることは絶対に否定しないのな」
 「みなさんになら、ご祝儀とか話していいですよね」
 「うーん、いいか!」

 「タカさんがですね。「ご祝儀箱」って作ったんですよ」
 「なんすか、それ?」
 「ご祝儀袋なんかじゃ入らないからって。だからわざわざ箱を作って、そこにお金を入れて渡したんです」
 「えー、そんじゃ相当!」
 「10億円な!」
 俺が言うと、全員が驚いた。

 「紙幣だけで100キロよな」
 「箱は総桐の金箔貼ですよね!」
 「ああ、よく間に合ったよなぁ」
 「ルーとハーが特急料金で1000万円渡しましたから」
 「「「「「アハハハハハハ!」」」」」
 子どもたちと笑った。
 みんな呆然としている。

 「お前らも結婚する時は言えよな!」
 「いえ、いいっす」
 「キッチ! 遠慮すんなよ!」
 「とんでもないです」

 「引っ越し祝いでポルシェ贈りましたよね!」
 「おう! ポルシェ911 Carrera Cabrioletな!
 「喜んでましたよね!」
 「泣きながらな!」

 みんなで爆笑した。

 「早乙女も奥さんの雪野さんも、俺たちの仲間になった。いずれお前らとも会う機会もあるだろう。よろしく頼む」
 
 俺は立ち上がって頭を下げた。
 全員が立ち上がって頭を下げる。

 しばらく話していると、六花が俺にぴったり付いて来た。
 身体をモジモジさせている。
 俺をじっと見詰めている。

 「おし! モジモジさんが来たから、一旦解散にしよう!」
 
 みんなが爆笑する。

 「飲みたい奴は飲んでろよ!」

 俺は子どもたちとロボを連れて、上に上がった。





 俺は美しいモジモジさんと愛し合った。
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