富豪外科医は、モテモテだが結婚しない?

青夜

文字の大きさ
1,210 / 3,215

別荘の日々 Ⅶ: NY「幻想」3

しおりを挟む
 翌日も、聖に引っ張られてブレイカーたちの広場に行った。
 朝食を食べてすぐだ。
 嬉しそうに早く行こうと言う聖に、苦笑しながら一緒にアパートメントを出た。

 まだ朝の10時前で、広場には数人の黒人しか来ていなかった。

 「よう!」

 俺たちは挨拶し、ダンスの練習を始めた。
 昼になり、そこにいた連中を誘って食堂に入った。
 俺たちがダンスを教わった礼だと、全員にご馳走した。
 まあ、安い店だった。

 「お前ら、随分と上達が早いな!」
 「まあ、身体を動かすのは好きだからな」
 「へぇー、何やってんのよ?」
 「「Mercenary(マーセナリー:傭兵)」」
 「!」

 黒人たちは驚いていたが、俺たちの動きに納得したようだ。

 「昨日のバトルは凄かったもんな!」
 「「ワハハハハハハ!」」

 


 ゆっくり食事をし、ビールを飲んで、また広場に戻った。
 昨日の黒人たちが集まっており、俺たちはまたダンスをした。
 俺は踊っている間、何も考えない自分に気付いた。
 次の動き、次の次の動き、それを考え追っている俺は、一つの機械になれた。
 知らない間に夢中で踊っている俺を見ている聖に気付いた。
 聖が優しく笑っていた。

 何度か休憩を挟み、俺たちはその度にみんなにビールを配った。
 俺たちは急速に仲良くなっていった。

 悪ガキたちなのだろうが、仲間には気のいい連中だった。
 夕暮れまで無心に踊り、俺は疲れ果てて気分が良かった。

 またナンシーが来た。
 俺に駆け寄って来る。

 「よう!」
 「今日もトラに会えた!」
 「ナッチャンは昼間何やってんだ?」
 「ハイスクールに通ってるの」
 「そうか」
 「お兄ちゃんが夜に働いて、学費を出してくれてるんだ」
 「あのゴリラが?」
 「酷いよ!」

 二人で笑った。
 ジェスが離れて笑って見ていた。
 ナンシーがずっと俺のダンスを見ていた。
  
 俺の中で、何かが壊れて行った。
 俺を苦しめる何かが。
 クタクタになるまで身体を動かし、その疲労が何かを和らげた。

 「トラ、おぶってやろうか?」
 「あ?」

 聖が心配そうに俺を見ていた。
 俺は相当疲れた歩き方をしていたらしい。

 「ばかやろう!」

 俺が聖にハイキックをかますと、聖が笑顔になって左手で受けた。
 二人で軽くやり合う。
 人が集まり、警官が来たので肩を組んで走って逃げた。




 その翌日も聖と出掛けた。
 昨日よりも大勢が集まっている。
 ダンスはしておらず、顔を突き合わせていた。

 「どうしたんだ?」
 「トラ、セイント、実はな」

 ジェスがガンで撃たれ、ナンシーが攫われたらしい。

 「ジェスはバーで働いてるんだ。そこに「Bクロウ」の連中が来て暴れた。止めようとしたジェスの腹を撃って、手伝いに来てたナンシーを連れてった」
 「なんだと!」
 「まずいぜ。あいつら武装してやがんだ。警察も俺らのトラブルは手を出さない」
 「場所は分かってるのか?」
 「あ、ああ。大体はな」
 「教えろ」
 「おい、お前ら! いくら……」

 俺の顔を見て、黙り込んだ。
 俺はそんな顔をしていた。




 俺と聖は、すぐに向かった。
 サウスブロンクスにあるビルだった。

 「トラ、ガンはどうする?」
 「あいつらが持ってるだろうよ」
 「ああ!」

 ビルの場所はすぐに分かった。
 入り口に黒人の見張りが二人立っていた。
 近づく俺たちに気付き、胸の内側からガンを抜く。

 俺と聖の身体がブレた。
 そう見えただろう。
 次の瞬間に、二人は地面に転がっていた。

 「夕べ、黒人の女を連れ込んだだろう?」
 
 俺が静かに聞いた。

 「知らねぇ」

 俺は躊躇なく眼球に指を入れ、引っ張り出した。
 物凄い悲鳴を声帯を掴んで黙らせた。

 「おい」
 「な、中にいる!」

 俺たちは二人を立たせて案内させた。
 廊下の奥から銃撃される。
 俺たちは見張りを楯にして突っ込んだ。
 何発も男たちに銃弾が食い込むのが分かる。
 すぐに担がなければならなくなった。

 聖が廊下の奴を沈黙させた。
 ワンショットだ。
 二人で階段を駆け上がる。
 
 「ナンシー! 助けに来たぞ!」

 俺は大声で叫んだ。

 「絶対に助けてやるからな!」

 Bクロウの連中が次々に出て来た。
 俺と聖で次々に斃していく。
 誰もがガンを持っていた。
 俺たちは武器を持ち換え、撃ちまくった。

 3階のフロアは壁が取り壊されていた。
 10人の男たちが武器を持って俺たちを撃って来る。
 俺も聖もプレッシャーで銃弾を避けつつ、10秒以内に全員を斃した。

 大きなベッドでナンシーが俺たちを見詰めていた。

 「ナンシー!」
 「トラー!」
 「生きてて良かった!」
 「トラ!」

 ナンシーは全裸だった。
 俺はシーツでナンシーをくるんだ。

 「トラ、声が聞こえた!」
 「そうか」
 「聞こえたよー!」

 ナンシーが泣き出した。

 「ナンシー、ちょっと待っててくれ」
 「え、何をするの?」
 「お前とジェスの仇を取ってやる」
 「!」

 俺と聖は床に転がっている男たちから武器を奪った。
 ウージーとイングラムM10があった。
 俺たちはありったけのマガジンとガンとナイフを拾い、上のフロアへ上がった。

 エレベーターはない。
 階段も一つしかない。
 
 俺たちには簡単な掃討戦だった。

 20分後、ナンシーの待つ部屋へ戻った。
 途中でナンシーが着れそうな服も持って来た。
 Bクロウが溜め込んでいた金も。




 俺たちはキャブを拾い、あの広場へ戻った。
 キャブの運転手が路地に入るのを嫌がったが、1万ドルを握らせ走らせた。

 広場ではみんな集まっていた。
 ナンシーの顔を見てみんなが泣いて喜んだ。

 「トラ!」

 ナンシーが俺を呼んだ。
 俺は振り返らずに手を挙げて、聖と帰った。

 「トラ、あれで良かったのか?」
 「ああ、ナンシーが生きてて良かったよ」
 「そうだな」

 「トラ、明日もあそこへ行こう!」
 「いや、もういいよ。ちょっと深く関わり過ぎた」
 「そっか」
 「遊びで仲良く楽しむだけのつもりだったのにな」
 「ああ」
 「今日は飲もうぜ」
 「おし!」

 聖が悲しそうな顔をしていた。
 こいつはまったく。

 俺が肩を叩くと、聖は小さく笑った。
しおりを挟む
感想 61

あなたにおすすめの小説

付喪神狩

やまだごんた
キャラ文芸
古い道具には年月と共に人の情念が蓄積され、それが意思を持ったものが付喪神と呼ばれる。 容姿端麗だが口も性格も女癖も悪い大和御門は日本で唯一の付喪神狩として、付喪神を祓う能力者。 自分に取り憑いた大口真神を引き連れ、同居中の相方・棚橋亨と繰り広げる現代異能バトル

裏切りの代償

中岡 始
キャラ文芸
かつて夫と共に立ち上げたベンチャー企業「ネクサスラボ」。奏は結婚を機に経営の第一線を退き、専業主婦として家庭を支えてきた。しかし、平穏だった生活は夫・尚紀の裏切りによって一変する。彼の部下であり不倫相手の優美が、会社を混乱に陥れつつあったのだ。 尚紀の冷たい態度と優美の挑発に苦しむ中、奏は再び経営者としての力を取り戻す決意をする。裏切りの証拠を集め、かつての仲間や信頼できる協力者たちと連携しながら、会社を立て直すための計画を進める奏。だが、それは尚紀と優美の野望を徹底的に打ち砕く覚悟でもあった。 取締役会での対決、揺れる社内外の信頼、そして壊れた夫婦の絆の果てに待つのは――。 自分の誇りと未来を取り戻すため、すべてを賭けて挑む奏の闘い。復讐の果てに見える新たな希望と、繊細な人間ドラマが交錯する物語がここに。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

あやかし家族 〜五人の兄と愛され末妹〜

南 鈴紀
キャラ文芸
 妖狩りにより両親を奪われ、囚われの身となった半妖の少女・鈴音は浄化の狐火を利用するだけの道具のように扱われていた。呪いにより成長は止まり、容姿も思考も幼いまま、感情が消え失せてもなおただ生かされるままに生きていた。  しかし妖保護部隊本部第一部隊との出会いにより、鈴音の止まっていた時間が動き出す。  掴みどころはないが頼れる氏神・雅仁、兄には厳しいが弟妹には優しい狼の妖・千里、人間嫌いだが人当たりの良い振りが得意な人間・遥杜、可愛いもの好きで元気いっぱいの猫又・鴇羽、大人しいが思いやりに溢れる猫又・瑠璃。  五人の兄と過ごす時間の中で、無いものだらけだった鈴音にもやがて大切なものが増えていく。  妖×家族の心温まる和風ファンタジー。

診察室の午後<菜の花の丘編>その1

スピカナ
恋愛
神的イケメン医師・北原春樹と、病弱で天才的なアーティストである妻・莉子。 そして二人を愛してしまったイケメン御曹司・浅田夏輝。 「菜の花クリニック」と「サテライトセンター」を舞台に、三人の愛と日常が描かれます。 時に泣けて、時に笑える――溺愛とBL要素を含む、ほのぼの愛の物語。 多くのスタッフの人生がここで楽しく花開いていきます。 この小説は「医師の兄が溺愛する病弱な義妹を毎日診察する甘~い愛の物語」の1000話以降の続編です。 ※医学描写はすべて架空です。

あまりさんののっぴきならない事情

菱沼あゆ
キャラ文芸
 強引に見合い結婚させられそうになって家出し、憧れのカフェでバイトを始めた、あまり。  充実した日々を送っていた彼女の前に、驚くような美形の客、犬塚海里《いぬづか かいり》が現れた。 「何故、こんなところに居る? 南条あまり」 「……嫌な人と結婚させられそうになって、家を出たからです」 「それ、俺だろ」  そーですね……。  カフェ店員となったお嬢様、あまりと常連客となった元見合い相手、海里の日常。

美味しいコーヒーの愉しみ方 Acidity and Bitterness

碧井夢夏
ライト文芸
<第五回ライト文芸大賞 最終選考・奨励賞> 住宅街とオフィスビルが共存するとある下町にある定食屋「まなべ」。 看板娘の利津(りつ)は毎日忙しくお店を手伝っている。 最近隣にできたコーヒーショップ「The Coffee Stand Natsu」。 どうやら、店長は有名なクリエイティブ・ディレクターで、脱サラして始めたお店らしく……? 神の舌を持つ定食屋の娘×クリエイティブ界の神と呼ばれた男 2人の出会いはやがて下町を変えていく――? 定食屋とコーヒーショップ、時々美容室、を中心に繰り広げられる出会いと挫折の物語。 過激表現はありませんが、重めの過去が出ることがあります。

処理中です...