富豪外科医は、モテモテだが結婚しない?

青夜

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Sourire blanc(白き笑顔)

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 ブランたちの状態を観察しながら、三人で深夜の0時まで地下施設にいた。
 
 ロボは空いているベッドに上がってスヤスヤと寝ていた。
 一度目を覚まし、じっと俺を見ていた。
 
 「?」

 ベッドを降りて、俺の足元に来て、俺を見上げた。

 「?」

 俺の足を前足で叩く。

 「ああ!」
 「石神様! どうなさいました!」
 「ロボにご飯をやってねぇ!」
 「それは大変に申し訳ないことを!」

 三人で食事にすることにし、一旦食堂へ戻った。

 「石神様! ロボさんの刺身が残り少なく!」

 蓮花が慌てて言った。

 「いいよ。じゃあ、俺が肉を焼くから」
 「申し訳ありません!」
 「大丈夫だよ。俺が急に連れて来るって言ったんだからな」
 
 「じゃあ、わたくしのお肉を少し!」
 「いらねぇよ!」
 「ああ! では若いジェシカのお肉を!」
 「蓮花さん!」

 蓮花が浮かれていた。
 嬉しくて堪らないのだろう。

 俺は笑ってロボの肉を焼き、俺たちの分も焼いた。
 蓮花にはナスの素揚げと汁物を作らせ、ジェシカにはショートパスタを茹でさせた。
 手間を掛けないで出来るものを作った。
 
 食事が出来て、三人とも腹が減っていたことに気付いて笑った。
 ジェシカは特に旺盛に食べる。
 もしかしたら、空腹を言い出し兼ねていたのかもしれない。
 俺は追加でうどんを茹でてやった。
 天かすと卵を落とした簡単なものだ。
 出汁は蓮花が作り置きしていたものを使った。
 俺がジェシカの前に置くと、嬉しそうに笑った。
 横から蓮花がうどんを一本取って行った。

 「ワハハハハハ!」

 本当に浮かれている。
 俺とジェシカで笑った。

 食事を終え、また地下施設に戻ってブランたちの様子を見た。
 ロボは俺の部屋のベッドで休ませた。
 ドアを少し開け、トイレを廊下に置く。
 部屋の中には水を皿に入れておいた。

 「ありがとうな。ゆっくり休んでくれ」

 まあ、さっきまでも寝ていたが。





 俺も五人の脳の再生を確認した。

 「どのようなことが起きたのでしょうか」
 「分からん。喪われたものが再生したことは確かだ。でも、それは以前のものとは違うかもしれん」
 「はい、そう考えるのが普通ですが」

 蓮花はそうではないことを願っている。
 俺もそう思う。
 あり得ない現象が起きたのだ。
 中途半端なものではない可能性もある。

 「長らく寝ていたんだ。しばらくは安静にしながらだな」
 「はい。筋力はEMS(低周波治療器)を使って刺激を与えて来ましたが、運動機能はどうにも出来ませんでしたから」
 「そうだな」

 EMSの使用は相当な手間だったはずだ。
 全身に使うために、動けないブランたちの身体の位置を変えながらだ。
 蓮花の深い愛情が分かる。

 0時になり、俺たちは地下施設を出た。
 ジェシカを先に休ませ、俺と蓮花は一緒に風呂に入る。
 蓮花が激しく俺を求めて来た。

 気を喪った蓮花の身体を拭い、俺のベッドに休ませた。
 蓮花の部屋に戻せば、明日の朝に早く起きる。
 ゆっくりと休ませるためだ。

 俺は食堂で生ハムを切り、冷酒を呑んだ。

 「おう、来たか」

 ロボが入って来る。
 俺は笑って、ロボにも冷酒を皿に入れてやった。

 「今日は本当にありがとうな」
 
 ロボは俺を見て小さく鳴いた。
 美味そうに酒を舐める。

 「流石は外科医のネコだな!」
 「にゃ!」
 「ワハハハハハ!」

 ササミを少し焼いてやると、ロボは喜んで食べた。





 翌朝、俺はベッドを抜け出して朝食を作った。
 朝の8時だ。
 蓮花はまだ眠っている。
 やはり疲れていたのだろう。

 俺が蓮花の用意した浴衣を拡げていると、ロボもベッドを降りて来た。
 
 「おう、ちょっと待ってな」

 小声で話し掛ける。

 「ん?」

 浴衣を見た。
 全体にニャンコの顔が染めてあった。

 「……」

 背中には、爪を出したでかいネコの手があった。

 「ま、いっか」

 俺はロボを連れて食堂脇の厨房に入る。
 ロボにステーキを焼き、カットして出してやる。
 米を5合炊き、ニジマスを三枚に下ろして蓮花とジェシカの分、そして俺は一尾を自分の分としてオーブンで焼く。
 ベーコンエッグを作り、野菜サラダに檸檬とオリーブオイルをかけた。
 味噌汁は舞茸とネギを刻んだ。

 俺が食べようとすると、ジェシカが起きて来た。

 「すいません! 石神さんにやらせてしまって」
 「いいよ、俺が腹が減って勝手に作ったんだ」
 「すいません!」
 「ジェシカは和食で良かったか?」
 「はい! 和食大好きです!」

 俺は笑ってジェシカを座らせ、給仕してやった。
 ジェシカはしきりに恐縮した。

 「美味しい!」
 「蓮花には及ばないけどな」
 「いえ! これ美味しいですよ!」
 「そうか。一杯食べてくれ」
 「はい!」

 ジェシカが洗い物をし、俺がゆっくりとコーヒーを飲んでいると、物凄い叫び声が聞こえた。
 9時半だ。
 ジェシカが驚いて入って来ると、蓮花が浴衣を直しながら駈け込んで来た。
 髪は乱れ、化粧もしていない。

 「おい、誰だこの人?」

 俺が言うと、蓮花が真っ赤になった。
 ジェシカが笑っている。

 「石神様!」
 「お、俺の名前を知ってるぞ!」
 「申し訳ございません!」

 俺は笑って、顔を洗って来いと言った。
 ジェシカと厨房に入り、温め直す。
 蓮花はすぐに戻って来た。
 短時間で化粧をし、髪も整えている。
 大した女だ。

 「まあ、座れよ」
 
 蓮花を座らせ、ジェシカが食事を並べた。
 二人で蓮花の顔を見ながら笑った。

 「あの」
 「なんだ」
 「そんなに見詰められると」

 ジェシカと笑った。




 俺は蓮花に地下施設のブランたちを見に行かせ、俺はロボと一緒にミユキたちに会いに行った。
 ティーグフを呼んで移動する。
 ジェシカは他の日常業務に入った。

 「石神様!」

 丁度外で訓練していたミユキたちが俺を見つけた。
 みんなで駆け寄って来る。

 「おう! 悪いな、訓練を中断させて」
 「いいえ! 今回はお忙しいのでこちらには来られないと聞いていましたが」
 
 俺がやることを思って、蓮花がミユキたちにそう伝えていたのだろう。
 ブランたちを殺し、ミユキたちに会うことは俺が辛いだろうと。

 「お前たちに知らせておきたくてな」

 俺が残り五人のブランが甦ったと話すと、全員が泣いて喜んだ。

 「奇跡が起きたんだ。ロボが助けてくれた」
 「ロボさんが!」
 「ああ。こいつは凄い奴だ」

 みんながロボに感謝する。
 ロボは喜んでティーグフを降り、ジルバを踊った。
 全員で笑い、ロボを褒め称えた。

 「まだ起き上がれない。でも意識はあるようだ。これから少しずつお前たちとも訓練できるかもしれない」
 「楽しみに待ってます! あの、私たちも会えますか?」

 俺は少し考えたが、全員を連れて地下施設へ向かった。



 大勢で押し掛けた俺たちを見て、蓮花が驚いた。
 俺がドアを開け、中へ入れた。
 ミユキたちが、五人のブランの周りに集まった。

 「ここにいた全員が甦ったな」

 俺がそう言うと、全員が泣いた。
 ベッドで寝ていた五人も泣いた。


 意識の無かったブランたち。
 今はみんな、魂を取り戻した。
 能面のように無表情だったブランたち。








 みんなが泣き、そして笑っていた。    
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