富豪外科医は、モテモテだが結婚しない?

青夜

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笑顔の見送り

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 俺は昼食までミユキたちの訓練を見た。
 様々な組み合わせで対戦し、また状況も設定しながら行なっている。
 多彩な戦闘を学んでいるようだった。

 俺はみんなを集めて、ジェイたちの丹沢での訓練を話した。

 「人数は10名。旧型だが、デュール・ゲリエが3体。最後の1体になるとバーサーカーモード。武器は超高度ナイフとM16を10丁とM82が1丁。グレネードが20という所か。それにワイヤーロプが20メートルと言っていたな。双子に連れられて戦場に来た。林の盆地だ」

 全員が真剣に聞いている。

 「さて、どういう戦略を立てる、大黒?」
 「M16ではデュール・ゲリエの装甲は突破出来ません。M82でも厳しいかと」
 「そうだな」
 「申し訳ありません。腕力が普通の人間では、どうにもならないかと」

 俺はジェイたちが取った戦略を話した。

 「最初にな、一番強い奴が一人で行ってデュール・ゲリエをおびき出した。次に一番力のある二人が双子を抱えてデュール・ゲリエの前に投げた」
 「!」
 「双子が戦わざるを得ない状況にした。それで2体を撃破した」
 「はい!」

 「次に二人がロープを持って突進。他の連中はM16で集中砲火。ロープを持った二人がデュール・ゲリエを木に縛り付けて、あとは全員でフルボッコよ。どうだ?」

 全員が笑っていた。
 見事な作戦だと褒めた。

 「戦場は多彩だ。何かを思いついたらすぐに提案しろ。それが真に強い軍だ」
 「はい!」





 ジェシカが呼びに来る。

 「蓮花さんが、今朝のリベンジだって大変なんですよ」
 「そうかよ」

 俺は笑った。
 まあ、元気でいい。

 食堂に入ると蓮花が待っていた。
 既に料理がテーブルに並んでいる。

 「さあ、お座り下さい」
 「お前なー」

 豪華過ぎる食事だった。

 伊勢海老の刺身。
 鯛、マグロ、スズキの御造り。
 アワビのバターソテー、キャビア乗せ。
 シャトーブリアンのステーキ。
 豆腐とブイヨンゼリーの市松組。
 その他にホワイトアスパラの焼き物や海老真丈などの手の込んだ器。
 ハマグリの椀物と栗ご飯。

 「やり過ぎだぞ」
 「女に恥を掻かせる方が悪いのでございます」
 「そんな奴がいるのかよ」
 「はい」

 三人で笑って食べた。

 「刺身とか、もう無かったんじゃないのか?」
 「昨日のうちに注文しておりました。ロボさんに申し訳なく」
 「そっか」

 ロボがアワビやマグロの山盛りに狂喜している。
 ジェシカも、作った本人の蓮花も食べきれなかった。
 俺は笑って、全部引き受けた。
 こんなに美味いものは残してはいけない。

 流石に栗ご飯は余り、蓮花がおにぎりにしてくれた。





 風呂に入ってから帰ろうとした。
 蓮花がまた一緒に入って来る。

 「石神様、ありがとうございました」
 
 俺の身体を洗いながら蓮花が言った。

 「俺じゃなく、ロボだろう」
 「確かにロボさんに助けて頂きました。でも、石神様は、わたくしの代わりにブランを殺す御積りでいらっしゃいました」
 「俺の責任だからな」
 「ありがとうございました」

 俺は蓮花を抱き寄せてキスをした。

 「誰かがやらなければならない。辛いことだったら、全部俺がやるさ」
 「はい」
 「お前は嫌なことは全部俺に放り投げろ。お前はその代わりに、いつでも笑っていてくれ」
 「はい」

 俺は亜紀ちゃんが別荘で見たという夢を話した。

 「俺と二人で逃げて、どこかの港町に行ったらしいよ」
 「……」

 「そこで幸せに暮らすんだとさ」
 「素敵ですね」

 「そうだよな。まあ、俺は逃げ出すわけには行かん。でも、お前たちはいつでも離れていいんだ。俺に言う必要もない」
 「はい」
 
 俺は蓮花を抱き締めた。

 「でも蓮花、お前は行かないでくれ」
 「石神様!」

 「他の奴らだってそうだ。行かないで欲しい」
 「はい、絶対に」

 俺たちはまた唇を重ねた。





 俺は荷物をまとめて帰ることにした。

 「あの、今晩はブランたちを集めてお祝いをしようと思うのですが」
 「おう、盛大にやれよ!」
 「それで、石神様にも是非」
 「俺はいいよ。俺がいると気詰まりだろう」
 「そんなことは! ミユキたちも楽しみにしております!」
 「そうか、悪いな。でもお前たちで楽しんでくれ」
 「はい、かしこまりました」

 蓮花が残念そうだ。
 俺はあいつらを殺そうとしていた。
 そんな俺が祝いの席にいるわけには行かない。


 「ああ! そうだ!」
 「どうなさいました?」
 「ほら、あのお前が用意してくれた浴衣!」
 「はい」

 蓮花が不思議そうな顔をしている。

 「なんで「ニャンコ柄」なんだよ!」
 「はい、亜紀様が」
 「え、亜紀ちゃん?」
 「前に電話で教えて下さいまして。石神様は「ニャンコ柄」の寝間着が大層お気に入りだと」
 「あのやろう!」

 「違うのですか?」
 「大好きだけどよ! いつも着てるけどよ! でも、この俺が毎晩「ニャンコ柄」なんて、沽券に関わるだろう!」
 「!」

 蓮花とジェシカが笑っていた。

 「「業」に知られないようにしろよ! 決戦の時に「おい、「ニャンコ柄」」なんて言われたら、俺多分負けるぞ!」
 「それは大変でございます」

 ジェシカが大笑いしている。

 「こないだ突然うちの庭にペガサスが来てよ。「これから一緒に来てくれ」なんて言うもんだから。最初は動揺して思わず「ニャンコ柄」のパジャマのまま出て行こうとしたんだよ! 途中で気付いたけど、まあヤバかったな!」

 二人が大笑いした。

 「「ニャンコ柄」は大好きなんだけどな!」

 蓮花とジェシカが爆笑した。
 玄関に集まっていたブランたちや職員たちが、三人で大笑いしながら出て来るので驚いていた。
 でも、何に笑っているのかは知らずとも、全員が笑顔になった。




 俺も笑いながら、アヴェンタドールを発進させた。
 バックミラーでみんなが笑いながら手を振っていた。 
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