富豪外科医は、モテモテだが結婚しない?

青夜

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連城十五

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 日米安全保障条約。
 これにより日本は米軍の駐留を認める傍らで、他国からの侵略に於いて米軍の援助を受けることとなった。
 意見は多々あるが、主権国家である日本が戦争を放棄できたのは、偏にこの条約の批准による。
 しかし、北方領土や竹島問題等、実際に日本固有の領土が侵犯されても、米軍が動いたことはない。
 日本もまた、米軍に出動を要請した過去も無かった。

 日本は戦後に自衛隊を組織し、専守防衛を旨とする軍事力を有するに至った。
 しかしその出動には幾重にも制限が掛けられ、国際世論による海外出兵にも大きな制約が課された。

 自衛隊の優秀さを語る人間もいるが、実戦を経験しない組織には実力は伴わない。
 そう考える人間たちがいた。
 彼らは少数であっても実戦を経験する軍人を育てようと画策し、自衛隊の中で密かに非正規戦闘をこなす部隊を設立した。

 《裏鬼》と名付けられた僅か20人の男たちは、輸送機の事故を装い戸籍を抹消され、厳しい訓練の上で、海外での非正規戦闘に派遣された。
 アメリカの有名な傭兵組織と繋がり、各地の戦闘を経験した。
 各国の特殊部隊にも対抗できる、精鋭の部隊が築かれて行った。




 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■




 6月の初旬。
 俺は早乙女を呼んで、うちの地下で話し合った。
 左門とリーも同席している。

 「話は、羽入と紅が秋田の山中で遭遇したライカンスロープ(人間が妖魔化した化け物を、俺たちはそう称することにしていた)のことだ」

 みんな分かっている。

 「最初の蛇型の個体も、何故あんな場所でうろついていたのか分からない。そしてその討伐直後に現われた人狼(ウェアウルフ)型の奴だ。「太陽界」や外道会の流したデミウルゴスが原因とは思えん」
 「トラ兄さんは、あの近辺に何かあると考えてるんですね?」
 「そうだ、左門。蛇型はこれまで滅多に出て来ないライカンスロープ(人外生物)だ。そして人狼型のものは自分でも言っていたようだが、唯一の成功例と話していたらしい」
 「じゃあ、あの近辺で誰かが実験していると!」
 「そう考えるのが普通だろう。どのような規模や目的を持っているのかは、今の時点では分からない。しかし少なくとも、運用実験が出来るまでには進んでいる」

 全員が黙って俺の話を聞いている。

 「石神、それは放置しておけないな」
 「そうだ、早乙女。そこで、地元の警察の協力を仰いで、研究施設かそれが可能な規模のものを当たって欲しいんだ」
 「分かった」
 「市街地はまずは外してもいいと思う。そういう場所から離れた建築物だ。あの山中で運用実験をしているのならば、運搬は難しい。隣接している可能性が高いと思う」
 「そうだな、任せてくれ」
 「まずはリストアップでいい。詳細は「アドヴェロス」が踏み込んで調べるしかない。うちの子どもたちも、その時には同行させる」
 「頼むよ」

 左門が言った。

 「トラ兄さん、僕たちはどうすればいい?」
 「「アドヴェロス」に同行してくれ。お前たちは実戦を知らない。ここで経験を積んで行くのもいいだろう」
 「分かったよ! 任せて下さい!」
 「ああ、頼むぞ」

 俺たちは更に詳細を詰めて行った。
 「業」は日本での拠点を築こうとしているのかもしれない。
 そうであれば、早期に叩いて置かなければならない。




 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■




 久し振りに、左門の部隊「対特殊生物防衛隊」の訓練を見に行った。
 双子を連れて行く。
 また富士の演習場だ。

 全員が長さ2メートルのスタンガン棒を手に訓練している。
 威力は抑えているが、もちろん当たれば酷く痛い。
 「カサンドラ」を模した訓練だ。
 ガンモードは別途実銃でやっている。
 妖魔化した化け物を想定している部隊なので、組み手もやるが、蓮花研究所で開発された特殊な「デュール・ゲリエ」を相手にしていることが多い。
 多彩な攻撃手段を持ち、実際の確認されている妖魔に似せて幾つかのタイプがある。
 今回、羽入と紅が遭遇した高速移動のタイプも、今、蓮花研究所で開発中だ。
 その前に、双子の高速機動での訓練を実施した。
 全然相手にならない。

 「おまえらー! ちょっとは根性をみせろー!」

 500人の隊員を全員ぶっ飛ばして、ルーが叫んでいる。

 「へんじはどーしたー!」
 『はい!』

 多くが返事するが、何人かは気を喪っている。
 無理矢理立たせて、また双子が襲い掛かって行く。

 「トラ兄さん、もうこの辺で」
 「お前ら、いつまでも弱ぇなぁ」
 「すいません」

 俺は左門とリーにも訓練に加わるように言った。
 リーは数秒でぶっ斃されたが、左門は意外と粘った。
 両手にスタンガン棒を手にし、致命傷にはならないが、何度か双子に斬り付けた。

 「ほう」

 自ら厳しい訓練を課しているのだろうが、実戦の経験者のように、勘が働いているのが分かった。
 それでも、ぶっ飛ばされたが。

 「左門ちゃん! なかなかだね!」
 「ありがとうございます!」

 訓練を終え、みんなで食事を食べた。
 もたもたしていると双子に全部喰われることを知っている部隊員たちは、必死に呑み込んで行った。
 もちろん、肉は石神家提供だ。
 自衛隊は予算がある。

 俺は双子を野放しにし、左門とリーとで一緒に食べた。

 「左門、お前の動きはなかなか良かったな」
 「ありがとうございます!」
 「何か特別にやってたのか?」
 「うん、前に連城十五という特殊作戦群のトップに鍛えられたんだ」
 「へぇー」
 「第一空挺団からそのまま特殊作戦群のエースでね。凄い人だったよ」
 「なるほど」

 特殊作戦群とは、自衛隊の中で設立された特殊部隊だ。
 その内容は機密であり、訓練内容でさえ守秘義務が課せられている。
 俺は興味を持って、その連城十五という男について聞いてみた。
 身長190センチを超える大柄でありながら、身体を覆う筋肉が物凄かったそうだ。
 格闘技に優れ、更に射撃能力も高かった。
 
 「IQは160もあってね。古今東西の戦史に通じていたよ」
 
 作戦立案能力と情報分析能力も優秀だったようだ。

 「その人は今、どうしているんだ?」
 
 俺は是非とも「虎」の軍に欲しかった。
 しかし、左門とリーが顔を見合わせていた。

 「どうした?」
 「うん。トラ兄さんだから話すけどね。自衛隊の中で「裏鬼」と呼ばれる極秘部隊があったんだ。もちろん正式名称じゃないよ」
 「「裏鬼」?」
 「うん。特殊作戦群や他の部隊から集められた超エリート部隊だよ。戸籍を抹消して、海外での戦闘を経験する部隊だったんだ。自衛隊でも、ほんの一部の人間しか知らない」
 「ほう。今はもうないのか?」
 「そうなんだ。僕も詳しいことは分からない。でも、ある作戦行動中に全滅したらしい」
 「そうか」
 
 それならば仕方がない。
 生きていればまだ40代後半。
 鍛え抜かれた人間だったので、まだまだ現役だったはずだった。

 「連城さんはその部隊長だったはずなんだ。あの人が負ける戦場なんて想像もつかないんだけど」
 「そんなに優秀だったのか」
 「うん。トラ兄さんみたいな人だった。闘神だったよ。まったく底が見えなかった。特殊作戦群での訓練でね、連城さん一人に対して、500人の隊員がこの演習場の森で戦闘訓練をしたんだ。全員が1時間以内に戦闘不能になった。次元が違うんだよ」
 「ほう。「裏鬼」の戦闘記録は手に入るか?」
 「トラ兄さんであれば、多分」
 「そうか、見せてくれ」
 「分かった、手配するよ」

 もう死んでいる人間ではあっても、俺は知りたかった。
 



 後日、防衛省内での閲覧が許可され、連城十五が率いた「裏鬼」の資料を読んだ。
 凄まじい記録だった。
 作戦成功はおろか、生還不能と思われる激戦で、彼らは生き延びて撃破していた。
 その記録から、聖に匹敵するような戦闘力を感じた。
 記録は連城自身が残したようで、その記載からも高い知性を感じることが出来た。
 後の作戦の立案や実施に於いて役立つことが満載だ。
 高い戦闘力はもちろんだが、物凄い発想で作戦を立案して実行する。
 



 最後の作戦の記録は無い。
 帰還しなかったためだ。

 「20××年4月18日 ロシアでの作戦行動中に消息不明」

 2年前だった。
 俺の中で、理由は分からなかったが、激しい警鐘が鳴っていた。
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