富豪外科医は、モテモテだが結婚しない?

青夜

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みんなで冬の別荘 Ⅸ

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 12月31日。
 朝食を食べて、御堂と柳は帰ることになった。

 「もう帰っちゃうのかよ」
 「うん、楽しかったよ、石神」
 「そうか」

 「石神さん! またね!」
 「お前はどうでもいいや」
 「なんですかぁー!」

 御堂が大笑いし、俺も笑って柳を抱き締めた。

 「冗談だよ、寂しくなるぜ」
 「ほんとですか」
 「ああ」

 まあ、そんな気がしないでもない。
 俺はノーマルタイヤで来た柳のアルファードを運転し、後ろを亜紀ちゃんにハマーで追って来させた。
 途中でやはりスリップする。
 俺は丁寧に逆ハンを切りながら車体を安定させた。
 
 「やっぱり石神は上手いね」
 「いや、柳が無茶苦茶なだけだ」
 「すいませーん!」

 後ろで柳が叫んだ。

 無事に雪の無い幹線道路まで出る。

 「お前の家の周りは雪は大丈夫か?」
 「ああ、積もってはいないよ」
 「家まで送ろうか?」
 
 御堂が笑ってここでいいと言った。
 俺は亜紀ちゃんと見送り、ハマーに乗り込んだ。
 出発前に鷹に電話をした。
 食材に足りないものは無いか確認する。
 鷹が冷蔵庫や貯蔵庫を覗いて行く。

 「大丈夫だと思いますよ。ある材料でどうにでもしますし」
 「今晩は鍋だよな?」
 「はい」
 「おでんのちくわぶはちゃんとあるか!」
 「ああ! もうちょっと欲しいですかね」
 「分かった!」
 「じゃあ、折角ですから」

 鷹が幾つかの食材を言った。
 俺が復唱し、亜紀ちゃんがメモしていく。

 スーパーに寄って買い物をして帰った。
 店長さんがまた感激して一緒に回ってくれた。




 昼食はかつ丼を作った。
 うちのかつ丼はヒレカツだ。
 響子はちょっと重いので、俺がオムライスを作る。
 ヒレカツも一切れ食べた。
 士王もオムライスを食べた。

 「響子、今晩は遅くまで起きるからたっぷり寝ておけよな」
 「うん!」

 「幻想空間」で年越しそばを食べる予定だった。

 昼食後、俺は六花と「訓練」に出掛けた。
 ハマーに乗り込む。

 「アレ? 今日は歩いて行かないんですか?」
 「雪道でお前を背負って帰るのは嫌だよ」
 「トラはとことんやりますからねー」
 「お前もだ!」

 いつもの訓練用の林に入り、ブルーシートを敷いた。
 毛布も数枚敷く。
 それでも寒かったが、一生懸命に訓練したので温かくなった。
 六花は気を喪っている。
 毛布にくるんでハマーの中へ入れた。
 暖房を入れていたので温かい。

 別荘に戻って一緒に風呂に入った。
 六花はそのまま響子と寝かせる。

 午後はゆったり過ごし、ゲームをしたり3時のお茶でみんなでパンプキンプリンを食べた。
 桜花たちはずっとテレビを観ていた。
 日本でしか観られない。
 三人で楽しそうに話している。
 
 「紅白を録画しておこうか?」
 「本当ですか!」

 生で見せてもやりたいが、多分「幻想空間」で飲んでいる時間だ。
 桜花たちは地の果に送り込んでろくな娯楽もない。
 それでも文句一つ口にしない。
 しかし、こうやって日本を懐かしんでいる。
 俺は心中で頭を下げた。

 5時になり、夕飯の鍋の準備を始めた。
 響子や六花も起きて来る。
 鍋はおでん、すき焼き(主に獣用)、カニ鍋(うちは頂き物でカニが多い)、そして秋田のきりたんぽ鍋を鷹が用意した。
 響子がきりたんぽ鍋に嵌った。

 「こんな美味しいもの無いよ!」
 「秋田に住むか?」
 「うん!」

 みんなで笑った。
 響子は鷹にまた作ってくれと言い、鷹が喜んだ。

 「出汁の取り方に時間が掛かるの。今日は圧力鍋を使ったけど、それからも1時間は鶏ガラを煮込むのね」
 「すごいね!」
 
 みんなで遊びながら、鷹は時々キッチンに入っていた。
 俺たちのために仕込んでいてくれていたのだ。

 獣たちが寄って来たので、響子が拳を構えた。
 六花も隣で迎撃の用意をする。
 子どもたちが笑って引っ込んだ。
 鷹が一杯ずつよそって配ってくれた。
 まあ、まだまだある。

 俺と士王はちくわぶを食べ、栞に笑われた。
 
 「親子だね」
 「ワハハハハハハハ!」

 士王もニコニコしている。
 皇紀が食べている途中で時々写真を撮って行く。
 アラスカで栞や桜花たちに楽しんで貰うためだ。
 防衛システムの録画もあるので、そちらは編集して送ってやろう。
 桜花たちもきりたんぽ鍋を気に入ったので、俺は遠慮した。
 士王とカニを食べる。
 
 「美味いか?」
 「うん!」

 吹雪は少しきりたんぽ鍋のスープを飲んだ。
 喜んでいる。

 「吹雪が笑ってるー!」

 六花が嬉しそうだった。
 みんなで楽しく食べた。




 子どもたちが後片付けをし、他の人間は風呂に入った。
 鷹が鶏の味噌煮込み鍋を作った。
 酒のつまみだ。
 あとは子どもたちが余った食材で適当に焼き物や揚げ物を作った。
 みんなで屋上に上がる。

 雪が降って来ていた。
 暫く照明を暗くしてみんなで雪景色を眺めた。
 屋上の床に設置したライトが降りゆく雪を照らしている。
 一層幻想的な情景になった。

 「院長先生にも見せたかったな」

 栞が呟いた。

 「いつかな。まだまだ生きるから大丈夫だよ」
 「うん」

 栞が笑って俺を見た。

 「あなたは院長先生に随分と鍛えられたよね?」
 「無茶苦茶だったよ! 俺が体力バカじゃなかったら死んでるって!」
 「アハハハハハ!」
 「休みが全然ねぇんだ。月に1日も怪しいってなぁ」
 「凄かったよね」
 「病院にずっといたんですか?」
 
 亜紀ちゃんが言う。

 「まあ、昔は働き方改革なんて無かったしな。ついでにブラック企業という言葉も無かった」

 みんなが笑った。

 「病院でも毎日のように夜勤だしな。一応寝ててもいいんだけど、急患が来たら対処しなきゃいけない」
 「でも規定で一応は明けは日勤はないよね?」
 「それも誤魔化されてたけどな。それと、明けで他の病院に手伝いに行かされたりしたよ」
 「そうだったんだ!」
 「あれで体力を喪って無かったら、栞や鷹とももっと早く結ばれてたろうな!」
 「「アハハハハハハハハ!」」

 栞と鷹が笑い、全員が笑った。

 「随分と遠くまでも行かされたよ」
 「え、どこまで?」
 「九州とかなぁ。九州大学だ。今でも一応個人的には交流もあるんだけどな」
 「あ! 頂き物とか九州の方から多いですよね!」

 亜紀ちゃんが言う。

 「まあ、うちに来た患者さんもいるけど、九州大学でお世話になったり知り合った方々からな」
 「そうだったんですね!」
 
 俺はちょっと喰わせろと言い、鷹の鍋を食べた。

 「戦後に日本人の外科医は世界的に有名になった人が多い。物凄く優秀だったんだ」
 「あ! 文学ちゃん!」
 「院長はちょっと別だけどな。インチキ能力を持ってるから」
 「インチキじゃないよ」

 双子が抗議する。
 院長が大好きなのだ。

 「まあ、そうだな。あの力で俺も随分と助けられたからな」

 双子がニコニコする。

 「日本人の外科医が優秀だったのは、野戦病院なんだ」

 みんなが驚く。

 「特に南洋にいた人たちだ。物資の補給が絶えて、薬も包帯すらねぇ。それでも怪我人や病人が続々と運ばれてくる。助けたくても何も出来ん。そういう中でも必死で何とかしようとした。僅かな薬で何とかし、麻酔無しでオペをした。どんどん死んだ。その地獄を乗り越えて来た人たちだ。一般の外科医の一生分のオペを短期間でこなし、しかも細心の注意を必要とされた。それが物凄い外科医を生んだんだ」

 俺は九州大学のある教授から聞いた忘れられない話をした。
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