富豪外科医は、モテモテだが結婚しない?

青夜

文字の大きさ
2,795 / 3,215

寮歌祭 準備 Ⅱ

しおりを挟む
 亀さんのお店を出た。

 「ちょっとお昼まで時間がありますね」
 「そうだね。タカさんに、高島屋に行くんなら「グラマシーニューヨーク」の杏仁豆腐を頼まれてるんだけど、帰りに寄ろうと思ってたから。ちょっと服でも見てく?」
 「そうですね!」

 話しながら高島屋に向かって歩いていた。

 「亜紀さん、「大宝飾展」ですって!」

 真昼が建物の上から下がっている大きな垂れ幕に気付いた。
 さっきは駐車場から地下道を通って亀さんのお店に行ったので見ていなかった。
 「大宝飾展」と書かれているので、催事場で何かやっているのだろう。
 いい時間つぶしになりそうだ。

 「じゃあちょっと見てみようか」
 「はい!」
 「気にいるのがあるといいね」
 「いやあの、そういうのじゃないと思いますけど」
 「ワハハハハハハハ!」

 高島屋の方へ歩いて行くと、派手なスーツの4人組に声を掛けられた。
 声を掛けて来たのは身長170センチちょっと。
 痩せていて髪が長い。
 20代前半のようだけど、手入れしている綺麗な肌に下品な顔。
 問題は服装で、テカテカの銀色の化繊の生地に、銀色の薔薇のコサージュみたいのが縫い付けられている!
 薔薇が二人、トライバルの刺繍が一人、ネコ一人。
 
 どこのカッペ!

 「ねえ、お姉さんたち!」

 薔薇一号が声を掛けて来る。
 他の三人もニコニコしている。
 安っぽい笑顔だ。
 それにしても、私らってよくナンパされるなー。

 「ねえ、俺らと遊ばない?」
 「あ?」
 「三人ともカワイイじゃん! ね、一緒に遊ぼうよ」
 「なに、ナンパ?」
 「違うよ、運命だよ!」

 「「「……」」」

 無視して歩き出した。
 当然、付きまとってくる。
 ナンパとは、ぐいぐい押すことだと思い込んでいる連中が多い。
 はぁー。

 「ねえ、いいじゃん。ヒマでしょ?」
 「ねぇったら!」

 薔薇一号が追いかけて来る。
 真夜の肩に手を掛けようとした。
 真夜が咄嗟に撥ねのける。

 「いってぇ!」
 「おい、声かけてんだろう!」
 
 トライバルが怒鳴った。
 なに、その理屈?

 「なんですか?」
 「だからよ! 話し掛けてんだから無視すんなよ!」
 「なんで?」
 
 薔薇一号が

 「まあ落ち着けよ。ねえ、ちょっとお話ししようよ、ね?」
 「やだ」
 「なんでさ。暑いから冷たい物でも飲みながらさ」
 「親からダサい奴とは口きくなって言われてるんで」
 「なんだと!」

 トライバルがまた怒鳴る。

 「あんたらさ、どこでそんなスーツ買ったのよ?」
 「ああ、これ? 知り合いの店でさ、特注なんだぜ? 一着15万円もすんだ」
 「俺らお店の人と親しいんでさ、大分割引してその値段なんだよ?」

 私たちは三人で大笑いした。
 絶対に店にカモにされている。
 キラキラの既成のスーツにダサいコサージュを縫い付けただけじゃん。
 こんなものに金を払おうとする奴がいるとは。

 「私さ、100万円以下のスーツって初めて見た」
 「そうですね」
 「私、100万もらってもソレ着るの嫌です」
 「そうだよねー!」

 四人が私たちを囲む。
 今度は真昼の肩に手を掛けようとしたので、私が払いのけた。

 「イテ!」
 「おい、お前何すんだよ!」

 言った男の顔面に拳をぶち込んだ。
 軽くだったので、鼻血が出ただけだ。
 いきなり殺さないよ、亜紀ちゃんイイコだもん!
 もう「タカさん教」もやってないし!
 でも、「悪人」は狩るぜぇー!

 「グゥゥ!」
 「おい、お前何すんだよ!」
 「テッメェ!」
 「お前ら、逃がさねぇぞ!」
 
 顔を殴られた奴は鼻を押さえながら顔を怒りで染めている。
 やるかぁー。
 まー、今のは完全に油断して、女の力で殴られたと思ってんだろうなー。

 「お前らよ、私たちをどうすんの?」
 「あぁ? まあな」

 男が下卑た笑いで私たちを見ている。
 決まりだぁ。

 「おい、車回して来い!」
 「おう!」
 「お前ら、逃がさないぜ」

 ネコが走って行った。
 あー、どこまでやっかなぁー。

 その時、高島屋から叫び声が聞こえて来た。
 10人くらいの人が外へ逃げて出て、その後ろから黒い服の集団が走って出て来る。
 手にチャカを握っている。
 多分、トカレフのパチモン。
 5人組で全員がパチ持ってて、そのうちの3人が大きな包みを背負っていた。
 強盗かぁ。
 私はもう一度垂れ幕を見上げた。
 あれかぁー。
 今は「闇バイト」が流行っており、簡単に実行役を集められる。
 でも、トカレフのパチモンまで全員に渡しているのは、結構大きな組織なのかもしれない。
 「闇バイト」の元締めは、大体喰い焙れたヤクザだ、
 新たなシノギの手段として、やっていることが多い。
 まあ、今回は本格的な獲物なので、パチも渡したか。
 デパートの警備員あたりなら、チャカ持ってりゃ抵抗出来ないもんなー。
 自分たちに手が伸びることは殆ど無いので、思い切ったのだろう。
 特殊な通信手段を使うので、なかなか大元まで辿れないのだ。
 多分、事前に準備役が盗むべきものは特定している。

 丁度私たちの脇にトレーラーが停まった。
 運び役だ。
 荷台の横が持ち上がる、ちょっと高級なタイプだ。

 「早く乗れ!」

 五人は開いた荷台に向かった。
 真夜と真昼と目で合図し、真昼がトレーラーの運転席の後ろを「震花」で吹っ飛ばした。
 そのまま助手席に取りついて、ドアを引き千切って運転手を引きずり出す。
 私と真夜は五人に走った。

 「チャカ持ってる! 生きてりゃいいよ!」
 「はい!」

 私が先頭の奴のチャカを持った右手と右足をへし折って行った。
 私たちに銃口を向けるけど、引き金を引く余裕は与えない。
 真夜がそうするのかと悟り、他の奴の右手と左足をへし折る。
 素直な子だぁー。
 二人で利き手と片足を吹っ飛ばしながら、数秒で終わった。
 五人をまとめて地面に転がす。
 真昼も運転手を引きずり出して来て、私たちを見た。
 
 「あ、そうするんですね!」

 真昼が両足をバッキバキにへし折った。
 素直だぞー。

 「「「!」」」

 薔薇たちが呆然と立ち尽くしていた。
 まだいたかぁー。
しおりを挟む
感想 61

あなたにおすすめの小説

付喪神狩

やまだごんた
キャラ文芸
古い道具には年月と共に人の情念が蓄積され、それが意思を持ったものが付喪神と呼ばれる。 容姿端麗だが口も性格も女癖も悪い大和御門は日本で唯一の付喪神狩として、付喪神を祓う能力者。 自分に取り憑いた大口真神を引き連れ、同居中の相方・棚橋亨と繰り広げる現代異能バトル

裏切りの代償

中岡 始
キャラ文芸
かつて夫と共に立ち上げたベンチャー企業「ネクサスラボ」。奏は結婚を機に経営の第一線を退き、専業主婦として家庭を支えてきた。しかし、平穏だった生活は夫・尚紀の裏切りによって一変する。彼の部下であり不倫相手の優美が、会社を混乱に陥れつつあったのだ。 尚紀の冷たい態度と優美の挑発に苦しむ中、奏は再び経営者としての力を取り戻す決意をする。裏切りの証拠を集め、かつての仲間や信頼できる協力者たちと連携しながら、会社を立て直すための計画を進める奏。だが、それは尚紀と優美の野望を徹底的に打ち砕く覚悟でもあった。 取締役会での対決、揺れる社内外の信頼、そして壊れた夫婦の絆の果てに待つのは――。 自分の誇りと未来を取り戻すため、すべてを賭けて挑む奏の闘い。復讐の果てに見える新たな希望と、繊細な人間ドラマが交錯する物語がここに。

あやかし家族 〜五人の兄と愛され末妹〜

南 鈴紀
キャラ文芸
 妖狩りにより両親を奪われ、囚われの身となった半妖の少女・鈴音は浄化の狐火を利用するだけの道具のように扱われていた。呪いにより成長は止まり、容姿も思考も幼いまま、感情が消え失せてもなおただ生かされるままに生きていた。  しかし妖保護部隊本部第一部隊との出会いにより、鈴音の止まっていた時間が動き出す。  掴みどころはないが頼れる氏神・雅仁、兄には厳しいが弟妹には優しい狼の妖・千里、人間嫌いだが人当たりの良い振りが得意な人間・遥杜、可愛いもの好きで元気いっぱいの猫又・鴇羽、大人しいが思いやりに溢れる猫又・瑠璃。  五人の兄と過ごす時間の中で、無いものだらけだった鈴音にもやがて大切なものが増えていく。  妖×家族の心温まる和風ファンタジー。

診察室の午後<菜の花の丘編>その1

スピカナ
恋愛
神的イケメン医師・北原春樹と、病弱で天才的なアーティストである妻・莉子。 そして二人を愛してしまったイケメン御曹司・浅田夏輝。 「菜の花クリニック」と「サテライトセンター」を舞台に、三人の愛と日常が描かれます。 時に泣けて、時に笑える――溺愛とBL要素を含む、ほのぼの愛の物語。 多くのスタッフの人生がここで楽しく花開いていきます。 この小説は「医師の兄が溺愛する病弱な義妹を毎日診察する甘~い愛の物語」の1000話以降の続編です。 ※医学描写はすべて架空です。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

Lucia(ルシア)変容者たち

おまつり
恋愛
 人は、ときに自分の中に「もう一人の自分」を抱えて生きている。  それがもし、感情の揺らぎや、誰かとの触れ合いによって、男女の姿を入れ替える存在だったとしたら――。  カフェ『リベラ』を営むリアと、雑誌編集者の蓮。  二人は、特定の感情を抱くと性別が変わる「性別変容者」だった。  誰にも明かせない秘密を抱えながら生きてきた彼らは、互いの存在に出会い、初めて“同類”として心を通わせていく。  愛が深まるほど、境界は曖昧になる。  身体と心の輪郭は揺らぎ、「自分とは何者なのか」という問いが、静かに迫ってくる。  一方、過去に囚われ、自分自身を強く否定し続けてきたウェディングプランナー・景子と、まっすぐすぎるほど不器用な看護学生・ユウ。  彼らもまた、変容者として「変わること」と「失うこと」の狭間で、避けられない選択を迫られていく。  これは、誰の記憶にも残らないかもしれない“もう一人の自分”と共に生きながら、 それでも確かに残る愛を探し続けた人々の、静かなヒューマンドラマ。 ※毎日20時に1章ずつ更新していく予定です。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

『続・聖パラダイス病院』

菊池昭仁
現代文学
『聖パラダイス病院』の続編です。こんな病院なら入院生活も悪くはありません。

処理中です...