富豪外科医は、モテモテだが結婚しない?

青夜

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寮歌祭 準備 Ⅲ

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 中でお客さんの避難誘導をしていた警備員たちが私たちが犯人を取り押さえたのを見て高島屋の中から出て来て、すぐにパトカーと警官隊も集まって来た。
 手足がへし折れた5人を見て、通行人が悲鳴を挙げていた。
 もちろん、黒い連中は地面に転がって呻いている。
 私たちが「虎」の軍の身分証を見せると、刑事さんから敬礼された。
 もう「虎」の軍の身分証は、全警察官に周知されている。

 「御苦労様です。あなた方が犯人を!」
 「はい、銃を持っていたので、咄嗟に」
 「はい! 本当に助かりました! あとは我々が確保いたします! 御協力、ありがとうございました!」
 「いいえー」

 まあこいつら、ちょっとは手際の良いやり方だったから、私たちがいなければ逃げられていたかもしれない。
 多分、少し先で別な逃走車両が用意してある。
 量子コンピューターを使えば追えるだろうけど、そこまでは私たちの範囲じゃない。
 今度、早乙女さんに相談すっかー。

 「虎」の軍の身分証なんで、私たちはすぐに解放された。
 後で簡単な確認もされるだろうけど、このまま帰って良さそうだ。
 そういうことなので、さっきから青い顔で突っ立っている薔薇たちに向いて言った。

 「それで、お前ら、どこを斬られたい?」
 「「「!」」」
 「言わなきゃチンコな」
 「「「!」」」

 三人が泣き出した。
 土下座して謝って来る。

 「なんだ、首がいいのか?」
 「「「ヒィッ!」」」

 三人がすぐに立ち上がった。 
 さっき話していた刑事さんが私たちに気付いて走って来た。

 「あの、こいつらも何か?」
 「ああ、私らを拉致しようとしてきまして」
 「なんですって!」

 その時、日産のセレナが急ブレーキで停まった。

 「おい! 早くそいつらを車に押し込め!」

 高島屋の前のパトカーに気付いていないようだ。
 私たちを攫うのに夢中なのだろう。

 「早くしろって! なんだ、そのオッサン?」
 
 刑事さんが身分証を見せた。
 セレナの運転手と私たちの前の三人が身を強張らせた。

 「こいつらなんですか?」
 「さー、「業」の軍なのかなー」
 「なんですって!」
 「ちょっとこいつらも調べてもらえます?」
 「もちろんです!」
 
 三人がうなだれていた。

 「ああ、ちょっと待って」

 私が言うと、三人と刑事さんが私を見た。

 「おい、お前ら、ところでどこを斬っていいんだよ?」
 「「「!」」」

 悪人だからなー。
 すると、車の奴が叫んだ。

 「おい、乗れ! 逃げっぞ!」

 三人が一瞬私を見て、慌ててスライドドアを引いて逃げようとした。
 真昼が前に飛んで、「螺旋花」をフロントにぶち込んだ。
 車体の下が吹っ飛んで、セレナがガコンと落ちた。

 「てぇーめぇーらぁー!」

 全員を車から引きずり出して歩道に放り投げた。
 刑事さんが警官たちを呼んだ。

 「そ、それでは彼らを連行しますので!」
 「そうですか」
 「あ、あの、よろしいですか!」
 「お願い出来ますか」
 「もちろんです。では」

 歩き出した私たちの後ろで、刑事さんが四人に話しているのが聞こえた。

 「お前ら、助かったな」
 「ありがとうございます!」
 「僕の目の前で殺されても不思議は無かったんだぞ?」
 「「「「!」」」」





 いいヒマ潰しが出来たので、丁度いい時間に懐石料理のお店に入った。
 座敷に案内され、私は6人前、真夜と真昼は3人前のコースが出て来た。
 お昼だったけど、特別にディナーメニューを出してもらっている。
 
 「豚シャブも結構美味しいんだよ!」
 「そうなんですか!」

 牛シャブと豚シャブが半々のコースが、私は五人前と懐石料理のコースが一人前。
 真夜と真昼はそれが二人前と一人前にしている。

 「あ、豚シャブも美味しいですね!」
 「ね!」
 「亜紀さんは美味しいお店、一杯知ってますよね?」
 「私じゃないよ、タカさんがね、前に連れて来てくれたの!」
 「なるほど!」
 「でもね、タカさんは全然食通ぶらないの。それに、あんまり外に食べにも行かないのね」
 「不思議ですねぇ」
 「スイーツなんかもね、私たちにどこのお店の何を買って来るように言うの」
 「はい」
 「いっつも、びっくりするぐらい美味しいの!」
 「凄いですね!」

 楽しく話しながら食べて行った。

 「食べ歩きなんかしないのにねぇ。本当に不思議」
 「それに、石神さんのお料理っていつも美味しいですよね?」
 「真昼、いいこと言ったぁー!」
 「アハハハハハハ」

 真昼に豚を一枚あげようとしたら、「コワイからいいです」と遠慮された。
 むしゃむしゃ。

 「本当にそうなのよ! タカさんって、いつも美味しいものを私たちに作ってくれるの!」
 「今は亜紀さんたちが作ってますよね?」
 「でも時々タカさんが作ってくれるんだ! 今じゃルーとハーが料理に興味を持って頑張ってくれてるんだけど、いつもタカさんにアドバイスもらってる。それにやっぱりタカさんが作ると違うんだなぁー」
 「そうなんですか!」
 「亜紀さんはずっと石神さんのお傍にいるんで、死ぬまで食べられますね」
 「真夜、最高のこと言ったぁー!」

 豚シャブの残りを全部あげようとしたら「ものすごいコワイんでいいです」と言われた。
 むしゃむしゃ。
 最後に抹茶のババロアが出て、それも美味しかった。
 支払いは真夜が自分たちに付き合ってもらったお礼だと言った。

 「真夜、私が誘ったんだから私が払うよ!」
 「いいえ、亜紀さん。いつも亜紀さんに御馳走になってばかりですから」
 「何言ってんの、友達でしょ?」
 「はい、だからですよ。あんな素敵なお店を紹介していただいて、今日もわざわざ車を出していただいて。友達だったら、お返しをしないと」
 「真夜!」
 「ね、亜紀さん?」
 「うん、御馳走さまでした!」
 「はい、また出掛けましょうね」
 「うん!」

 三人で高島屋に寄って「グラマシーニューヨーク」の杏仁豆腐を買って帰った。
 真夜たちも一緒に三時のお茶にした。
 タカさんに高島屋で強盗を捕まえた話をし、ついでにナンパして来た連中を締めた話をすると、大笑いしていた。
 ネットのニュースを集め、夕方のニュースをみんなで観た。



 楽しい一日だったぁー!
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