富豪外科医は、モテモテだが結婚しない?

青夜

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寮歌祭 準備 Ⅱ

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 亀さんのお店を出た。

 「ちょっとお昼まで時間がありますね」
 「そうだね。タカさんに、高島屋に行くんなら「グラマシーニューヨーク」の杏仁豆腐を頼まれてるんだけど、帰りに寄ろうと思ってたから。ちょっと服でも見てく?」
 「そうですね!」

 話しながら高島屋に向かって歩いていた。

 「亜紀さん、「大宝飾展」ですって!」

 真昼が建物の上から下がっている大きな垂れ幕に気付いた。
 さっきは駐車場から地下道を通って亀さんのお店に行ったので見ていなかった。
 「大宝飾展」と書かれているので、催事場で何かやっているのだろう。
 いい時間つぶしになりそうだ。

 「じゃあちょっと見てみようか」
 「はい!」
 「気にいるのがあるといいね」
 「いやあの、そういうのじゃないと思いますけど」
 「ワハハハハハハハ!」

 高島屋の方へ歩いて行くと、派手なスーツの4人組に声を掛けられた。
 声を掛けて来たのは身長170センチちょっと。
 痩せていて髪が長い。
 20代前半のようだけど、手入れしている綺麗な肌に下品な顔。
 問題は服装で、テカテカの銀色の化繊の生地に、銀色の薔薇のコサージュみたいのが縫い付けられている!
 薔薇が二人、トライバルの刺繍が一人、ネコ一人。
 
 どこのカッペ!

 「ねえ、お姉さんたち!」

 薔薇一号が声を掛けて来る。
 他の三人もニコニコしている。
 安っぽい笑顔だ。
 それにしても、私らってよくナンパされるなー。

 「ねえ、俺らと遊ばない?」
 「あ?」
 「三人ともカワイイじゃん! ね、一緒に遊ぼうよ」
 「なに、ナンパ?」
 「違うよ、運命だよ!」

 「「「……」」」

 無視して歩き出した。
 当然、付きまとってくる。
 ナンパとは、ぐいぐい押すことだと思い込んでいる連中が多い。
 はぁー。

 「ねえ、いいじゃん。ヒマでしょ?」
 「ねぇったら!」

 薔薇一号が追いかけて来る。
 真夜の肩に手を掛けようとした。
 真夜が咄嗟に撥ねのける。

 「いってぇ!」
 「おい、声かけてんだろう!」
 
 トライバルが怒鳴った。
 なに、その理屈?

 「なんですか?」
 「だからよ! 話し掛けてんだから無視すんなよ!」
 「なんで?」
 
 薔薇一号が

 「まあ落ち着けよ。ねえ、ちょっとお話ししようよ、ね?」
 「やだ」
 「なんでさ。暑いから冷たい物でも飲みながらさ」
 「親からダサい奴とは口きくなって言われてるんで」
 「なんだと!」

 トライバルがまた怒鳴る。

 「あんたらさ、どこでそんなスーツ買ったのよ?」
 「ああ、これ? 知り合いの店でさ、特注なんだぜ? 一着15万円もすんだ」
 「俺らお店の人と親しいんでさ、大分割引してその値段なんだよ?」

 私たちは三人で大笑いした。
 絶対に店にカモにされている。
 キラキラの既成のスーツにダサいコサージュを縫い付けただけじゃん。
 こんなものに金を払おうとする奴がいるとは。

 「私さ、100万円以下のスーツって初めて見た」
 「そうですね」
 「私、100万もらってもソレ着るの嫌です」
 「そうだよねー!」

 四人が私たちを囲む。
 今度は真昼の肩に手を掛けようとしたので、私が払いのけた。

 「イテ!」
 「おい、お前何すんだよ!」

 言った男の顔面に拳をぶち込んだ。
 軽くだったので、鼻血が出ただけだ。
 いきなり殺さないよ、亜紀ちゃんイイコだもん!
 もう「タカさん教」もやってないし!
 でも、「悪人」は狩るぜぇー!

 「グゥゥ!」
 「おい、お前何すんだよ!」
 「テッメェ!」
 「お前ら、逃がさねぇぞ!」
 
 顔を殴られた奴は鼻を押さえながら顔を怒りで染めている。
 やるかぁー。
 まー、今のは完全に油断して、女の力で殴られたと思ってんだろうなー。

 「お前らよ、私たちをどうすんの?」
 「あぁ? まあな」

 男が下卑た笑いで私たちを見ている。
 決まりだぁ。

 「おい、車回して来い!」
 「おう!」
 「お前ら、逃がさないぜ」

 ネコが走って行った。
 あー、どこまでやっかなぁー。

 その時、高島屋から叫び声が聞こえて来た。
 10人くらいの人が外へ逃げて出て、その後ろから黒い服の集団が走って出て来る。
 手にチャカを握っている。
 多分、トカレフのパチモン。
 5人組で全員がパチ持ってて、そのうちの3人が大きな包みを背負っていた。
 強盗かぁ。
 私はもう一度垂れ幕を見上げた。
 あれかぁー。
 今は「闇バイト」が流行っており、簡単に実行役を集められる。
 でも、トカレフのパチモンまで全員に渡しているのは、結構大きな組織なのかもしれない。
 「闇バイト」の元締めは、大体喰い焙れたヤクザだ、
 新たなシノギの手段として、やっていることが多い。
 まあ、今回は本格的な獲物なので、パチも渡したか。
 デパートの警備員あたりなら、チャカ持ってりゃ抵抗出来ないもんなー。
 自分たちに手が伸びることは殆ど無いので、思い切ったのだろう。
 特殊な通信手段を使うので、なかなか大元まで辿れないのだ。
 多分、事前に準備役が盗むべきものは特定している。

 丁度私たちの脇にトレーラーが停まった。
 運び役だ。
 荷台の横が持ち上がる、ちょっと高級なタイプだ。

 「早く乗れ!」

 五人は開いた荷台に向かった。
 真夜と真昼と目で合図し、真昼がトレーラーの運転席の後ろを「震花」で吹っ飛ばした。
 そのまま助手席に取りついて、ドアを引き千切って運転手を引きずり出す。
 私と真夜は五人に走った。

 「チャカ持ってる! 生きてりゃいいよ!」
 「はい!」

 私が先頭の奴のチャカを持った右手と右足をへし折って行った。
 私たちに銃口を向けるけど、引き金を引く余裕は与えない。
 真夜がそうするのかと悟り、他の奴の右手と左足をへし折る。
 素直な子だぁー。
 二人で利き手と片足を吹っ飛ばしながら、数秒で終わった。
 五人をまとめて地面に転がす。
 真昼も運転手を引きずり出して来て、私たちを見た。
 
 「あ、そうするんですね!」

 真昼が両足をバッキバキにへし折った。
 素直だぞー。

 「「「!」」」

 薔薇たちが呆然と立ち尽くしていた。
 まだいたかぁー。
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