富豪外科医は、モテモテだが結婚しない?

青夜

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《轟霊号》初出撃 Ⅱ

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 《轟霊号》の各種演習も大体仕上がり、俺は最初の作戦行動を指示した。

 〈オペレーション・9999(フォーナイン)〉。

 「業」に国土をほぼ占領された東アフリカのソーメリアを奪還し、そのまま「虎」の軍が接収する作戦だった。
 ソーメリアは20世紀半ばの植民地からの独立以降、ほぼ無政府状態が続き、どの政権もソーメリア全土を掌握したことは無かった。
 そこに付け込んで「業」がソーメリアに乗り込み征服したのだ。
 表向きは傀儡政権が続き、多くの国民の生活もそのままであったが、徐々に浸食は拡がり、全土に12カ所もの《ハイヴ》が建造されていた。
 もちろんロシア軍基地も幾つかある。
 地下資源を根こそぎ奪われたロシアが、アフリカでの拠点を築くためだ。
 実際には「虎」の軍が各地で目を光らせているので、ソーメリア以外の土地へ侵攻は出来ないのだが。
 亜紀ちゃんと柳がアフリカ全土を制圧していったが、ソーメリアと幾つかの国家は「業」の浸食が激しく、また《ハイヴ》も多かったために手出し出来なかった。
 ソーメリアもここ数年での動きであり、ほぼ完全に「業」の軍の制圧下にあることが分かった。
 恐らく近いうちに国民は全員「業」によって改造されるか、生贄にされるか、実験材料にされるだろうことが予測出来た。
 またソーメリアの海賊は以前から有名であり、各国から非難が集中していた国だ。
 それがもっと恐ろしい場所になることは、まだ多くの国は知らない。
 それに1年前から国交を閉じており、具体的な国内の状況も分からない。
 いくつかあった各国の大使館も強制的に退去させられている。
 更に、最近では海賊の中にライカンスロープらしき存在情報ももたらされていた。
 つまり、ソーメリアは危機的状況なのだ。
 ライカンスロープのことはソーメリア近くを航行する護衛艦からの報告であり、護衛艦が最後にその連絡を発信した後に行方が分からなくなっている。
 EUとアメリカから「虎」の軍への要請があり、俺たちは出撃を決めた。
 これまでの各国での局地的な戦闘とは違い、完全に一国を相手に侵略戦争を仕掛ける。
 俺は「業」に占領された国として、ソーメリア全土を叩きのめす作戦を命じた。
 それが《轟霊号》の初出撃だ。

 大規模な作戦になり、主軸は12カ所の《ハイヴ》の同時攻撃だ。
 平行して全土の侵攻作戦が進行し、ロシアやソーメリアの軍事基地はもちろん、都市を中心に制圧していく。
 その後に他の土地も全て進軍し、奪還していく。
 《ハイヴ》は石神家の剣聖8名と亜紀ちゃん、ルー、ハーがソルジャー各1000名を率い、そして桜大隊と「虎酔会」の混成軍1000名がそれぞれ攻撃する。
 各隊にはデュールゲリエ500名ずつが伴う。
 基本戦略は爆撃機「ヨルムンガンド」による《シャンゴ》投下の後の戦闘だ。
 俺と聖も同行し、万一の事態に出撃する。
 控えの予備軍として5万のソルジャー。
 そして斬も同行させた。
 「ハイドラ」も出撃し、「桜大隊」と「虎酔会」の支援に回る。
 竹流は「ハイドラ」の支援として待機する。
 「トラキリー」も戦場に出る。
 「トラキリー」には特に子どもたちの救出を命じている。
 ソーメリアでは少年兵が数多くおり、戦場の中で真っ先に消耗されると俺は考えていた。
 アフリカ全土で子どもが兵士に駆り立てられている現状を茜と葵に話した。
 ソーメリアではそれが特にひどい。
 茜がショックを受けていた。

 「茜、葵。お前たちはまず戦場に出ている子どもたちを救ってくれ」
 「はい、必ず!」

 首都モガンデシュ沖に《轟霊号》は停泊し、ほかの主要都市ハルケイサ、バルベラ、キスマス、マルゴらに各1万名のソルジャーと同じく1万のデュールゲリエを派兵し、制圧後にそれぞれが作戦目標の土地へ侵攻していく。
 それらの指揮は一江と補佐の大森が担う。
 二人にとっても初の戦場だ。
 40機の超戦闘機「ニーズヘッグ」と13体の「マルドゥック」が支援で《轟霊号》でスクランブル待機、それに8機の偵察機「ウラール」。
 更に「ブレイドハート」が各戦場を偵察し、情報解析を行なう。
 彼らはまだ部隊としては小規模なので、実戦経験の意味が大きい。
 ソルジャーは基本的に「Ωコンバットスーツ」と最新の「カサンドラ」で、一部の指揮官は黒笛」他の特殊装備もある。
 都市部攻略の部隊は「タイガーファング」で降下後、「ファブニール」「レッドオーガ」で移動する。
 ソーメリア軍は脆弱で、俺たちの敵ではない。
 それに、ソーメリア全土に進行するが、目的は「業」の軍の排除だ。
 民衆の犠牲はなるべく避けたいと考えている。

 3月3日、《オペレーション・9999》を発動した。
 国土の全てを奪還するという作戦だ。
 「虎」の軍の最大の侵攻作戦となる。


 

 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■




 1年前に「エイルスターズ」に白人の男たちが来た。
 頭領のガイルたちが面会し、その後に毎週白い錠剤が配られるようになった。
 白人たちは結構なお金を持って来たようで、僕たちもいい食事を出されるようになった。
 武器も大量に手に入れ、ロケットランチャーや重機関銃も揃った。
 「エイルスターズ」はそれまで以上にタンカーを中心に資源運搬の貨物船を襲うようになった。
 白い錠剤を呑んでから大人たちの何人かは力が強くなり、どういうわけかは分からないが銃で撃たれても平気な人間も出て来た。
 あの白い錠剤は危険だと僕は思った。
 以前にも麻薬は時々配られ、戦闘前に使うように言われたこともある。
 僕は気分が悪くなるので断っていた。
 だから白い錠剤も飲まないでいた。
 他の子どもたちにも飲まないように勧めた。
 麻薬でおかしくなった子どもを何人も見ているので、みんな僕と同じように飲まずに捨てるようになった。

 半年前から、また白人たちが毎月来るようになった。
 頭領のガイルと話し、何人かの男たちが別な部屋で調べられていた。
 みんな、凶暴になってきた連中だった。
 時々僕たちも声を掛けられたが、「調子が少し良い」ということを伝えると何もされなかった。

 そして先月、タンカーを襲った一人の男が怪物になった。
 ガイルが命じてロケットランチャーで吹き飛ばして殺した。

 「あいつら……」

 偶然その時傍にいた僕は、ガイルが険しい顔で呟くのが聴こえた。
 その日から白い錠剤は配られなくなった。 
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