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《轟霊号》初出撃 XⅧ
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茜と葵がいなくなったので、俺が「トラキリー」を集めて説明した。
全員が自分たちにも責任があると訴えたが、俺が否定した。
「お前たちは非常によくやった。指揮官が無能だったのだ」
俺の言葉にまた反発した。
「タイガー、アカネとアオイは私たちに戦場で救助する技術を学ばせてくれました。今回大勢の人間を救えたのは、二人の成果です!」
「そうではない。成果は確かにある。だが、絶対にやってはいけないことをした。もしもあの子どもたちが全員「ライカンスロープ」になっていれば、とんでもない被害になっていた可能性もある。医療チームは壊滅し、他のソルジャーや仲間たちがもっと殺されていたかもしれない」
「!」
全員が理解した。
敵を内部に引き入れることの恐ろしさを悟った。
「今後は《ニルヴァーナ》が使われることになるだろう。その時には、一つのミスで俺たち全体が負けることもあり得るんだ。気を引き締めろ!」
『はい!』
俺は解散し、尚続いている都市部への侵攻部隊のために配置を戻した。
恐らくはもう反撃は無いが、油断は出来ない。
それにこれから更に大勢の負傷者や救助者が来る。
その検疫だけでも相当忙しくなる。
もちろん「トラキリー」だけではなく、大勢のソルジャーやデュールゲリエが協力するが。
柏木さんが俺の所へ来た。
「石神さん、どうか茜さんと葵さんに厳しい罰を与えないで下さい」
「ああ、大丈夫ですよ。もう処罰は降しました」
俺は柏木さんに二人の処罰内容を伝えた。
「なるほど、そうですか」
柏木さんも納得してくれた。
柏木さんは、万一にも「トラキリー」から二人を外すことを心配していたようだ。
柏木さんにも、茜と葵がこの部隊に必要な人間であることを感じてくれていた。
今回のことは処罰というよりも、今後「トラキリー」に必要になる訓練をほどこす意味がある。
柏木さんは俺に礼を言い、俺は入れ替わりに山岸を呼んだ。
緊張した面持ちで山岸が入って来る。
「おい、初めての戦場はどうだ?」
「はい、何とかやってます!」
俺は笑った。
もちろん俺はカワイイ山岸の活動の全てを把握しており、頑張っていることを知っている。
俺は山岸の緊張や精神状態を知りたかったのだが、山岸はやはり自分のことなど棚に上げ、部隊員としての状況を語った。
「お前、「朧」を着て戦場に出たそうだな」
「御存知たったんですか!」
「まあな。お前のことは心配だったから、一江に動きを把握してもらってた」
「そうなんですか! 副部長まで!」
山岸は嬉しそうに古巣での呼び方で言った。
作戦行動中は俺のことは「タイガー」、一江はコードネームの「プロトン」と呼ぶように命じている。
初めての戦場で興奮している山岸は、そのことをすっかり忘れていた。
もちろん俺も何も言わなかった。
こいつにとってはいつまでも俺は「部長」なのだ。
自分にとって「最初」のままでいる。
あの日から俺を追い掛けてここまで来た男なのだ。
「ちょっとの間、救出チームの手が足りないということで。それにナンバー11の《ハイヴ》で負傷者が多く。専門の人間が行って指示した方が良いかと」
「誰かに言われたのか?」
「いいえ、自分で志願しました。医療チームはみんなベテランですし、手は足りていましたので」
「それでお前かよ」
「すいません、力不足でしたが」
俺はまた笑った。
山岸のことは全て報告に上がっている。
「そんなことはねぇ。お前のトリアージのお陰で混乱なく負傷者を判別出来た。よくやってくれた」
「部長!」
実際に山岸は役立った。
負傷の程度を即座に判別し、治療の優先順位が混乱なく捗ったのだ。
「部長にトリアージのことは散々鍛えられましたからね」
「そうだったっけか?」
「そうですよ! 僕はあの当時は、いつこんなことが役立つのかって思ってましたけど」
「このやろう」
俺は東京での災害、特に大地震で混乱する場面を想定して、部下たちにトリアージを鍛え上げた。
俺たちが最も必要になる最悪の状態に備えてのことだ。
「お前、ちょっと前まで「朧」で飛ぶとゲロ吐いてたじゃん」
「ま、まあ。今でもちょっと吐きましたけど」
「そうなのかよ!」
こいつはそんな状態でも飛んだのか。
「でも、戦場に出たら平気になりましたよ! そんな場合じゃなかったですからね!」
「そうか」
俺は山岸の肩を叩いた。
「お前はここでも俺の最高の部下だな」
「部長!」
「お前はいつでも必死で真面目で、何があっても乗り越えてくれる。お前は本当に信頼に足る人間だ。俺はありがたいよ」
「部長!」
山岸が泣きやがった。
まあ、そういう男だ。
「これからもどうか頼む」
「はい!」
「まあ、でもよ。なるべく危険な真似はしないでくれ。お前には死んでほしくねぇ」
「部長!」
「な、よろしくな!」
「はい!」
この男は、それでも時々無茶をするのだろう。
その瞬間に自分が必要だと思ったことは躊躇しない奴だ。
そんな男を俺は戦場に連れ出してしまった。
山岸が声を殺しながら頭を下げ、部屋を出て行った。
俺のちょっとした褒め言葉をやけに嬉しそうに受け取る。
昔からずっとそうだ。
自分のことを全然ダメだと思い込んでいる。
だから上を目指す男なのだ。
マカクたちのように攫われて兵士にされた子どもたちは多かった。
また「業」が支配した中で親を喪い路頭に迷って死に掛けていた子どもも大勢いた。
俺は全てのそうした子どもを集め、帰る場所のある子どもはそこへ送った。
ほとんどいなかった。
都市以外の農村部ではまだ大人たちは何とか自給自足が出来る場所もあった。
だが都市部は壊滅的で、半数の農村部でも飢饉が始まっていた。
アラスカから余剰分の食糧を運び、また世界各国から援助を募った。
物資や人員を派遣してもらった。
御堂は逸早く海外ボランティアを募り。大勢の人間を送ってくれた。
畑には「ロボウンチ」の希釈液を散布し、次の収穫にはまともな実りがあるだろう。
当座の食糧は何とか援助で足りそうだ。
都市部の衰弱した大人たちと親を喪った子どもたちは全員アラスカへ運び、保護した。
大人たちは体調が戻ればソーメリアに戻ずつもりだ。
柏木さんが見出した400名ほどの人間は別途確保して、これからアラスカで特別な職業訓練を受けさせる。
いずれソーメリアで中心となる人間たちになるだろう。
柏木さんの能力が本当に助かる。
保護した約1万人の子どもたちは、アラスカで集団生活をさせるつもりだ。
きちんと教育を施し、将来はソーメリアで好きな道に進んで欲しい。
もちろんそのままアラスカで定住してもいい。
俺は子どもを守ってやる社会を作りたい。
それが人間としての最低条件だと考えている。
だから「トラキリー」には子どもたちを救うことを優先させたのだ。
攫って来て少年兵にするなど、最悪のことだと。
茜たちには石神家で鍛錬することを命じたが、その前に「トラキリー」が助けた子どもたちを見せた。
アラスカで専用の宿舎を与え、それぞれデュールゲリエたちが世話をしながら、近いうちに学校へ通わせる。
言葉の問題もあり、しばらくは専用の学校へ通わせることになる。
子どもたちが十分な食事を喜び、安全に暮らせる家を与えられ喜んでいる様子を茜が見た。
「お前たちがこの子たちの幸せを確保したんだ」
「はい!」
茜と葵が嬉しそうに笑った。
「可哀そうだが、俺たちに親は用意出来ない。でも、見てみろ。みんな幸せそうじゃねぇか」
「そうですね。みんな笑ってますよ」
「お前たちは今後も救助しろ。そうしたら俺が必ずその人たちの居場所を作る。だからガンガン助けろ」
「「はい!」」
茜と葵も笑った。
「じゃあ、行って来い。期待して待っているからな。お前たちは必ずやる奴だと信じている」
「「はい!」」
二人は抱き合って別れた。
あいつらならば、そう時間を掛けずに俺の命令を実行するだろう。
ソーメリアの苦難の時代は終わった。
俺の目の前で明るく笑っている子どもたちが、きっと良い国を創ってくれるだろう。
政府の崩壊したソーメリアは、「虎」の軍が占領し、当座は俺たちが統治する。
主にアフリカ諸国から幾つか反発もあったが、「業」の軍に君臨されていたソーメリアの実態が伝わると、「虎」の軍への称賛に変わって行った。
しばらくは占領状態で様々な整備が必要になるが、そう長い事でもない。
欧米からも使節団が組織され、国の整備を手伝ってくれる。
国境を越え、人類が一丸となる時代が到来するのだ。
子どもを守る世界。
そういう世界が来て欲しい。
全員が自分たちにも責任があると訴えたが、俺が否定した。
「お前たちは非常によくやった。指揮官が無能だったのだ」
俺の言葉にまた反発した。
「タイガー、アカネとアオイは私たちに戦場で救助する技術を学ばせてくれました。今回大勢の人間を救えたのは、二人の成果です!」
「そうではない。成果は確かにある。だが、絶対にやってはいけないことをした。もしもあの子どもたちが全員「ライカンスロープ」になっていれば、とんでもない被害になっていた可能性もある。医療チームは壊滅し、他のソルジャーや仲間たちがもっと殺されていたかもしれない」
「!」
全員が理解した。
敵を内部に引き入れることの恐ろしさを悟った。
「今後は《ニルヴァーナ》が使われることになるだろう。その時には、一つのミスで俺たち全体が負けることもあり得るんだ。気を引き締めろ!」
『はい!』
俺は解散し、尚続いている都市部への侵攻部隊のために配置を戻した。
恐らくはもう反撃は無いが、油断は出来ない。
それにこれから更に大勢の負傷者や救助者が来る。
その検疫だけでも相当忙しくなる。
もちろん「トラキリー」だけではなく、大勢のソルジャーやデュールゲリエが協力するが。
柏木さんが俺の所へ来た。
「石神さん、どうか茜さんと葵さんに厳しい罰を与えないで下さい」
「ああ、大丈夫ですよ。もう処罰は降しました」
俺は柏木さんに二人の処罰内容を伝えた。
「なるほど、そうですか」
柏木さんも納得してくれた。
柏木さんは、万一にも「トラキリー」から二人を外すことを心配していたようだ。
柏木さんにも、茜と葵がこの部隊に必要な人間であることを感じてくれていた。
今回のことは処罰というよりも、今後「トラキリー」に必要になる訓練をほどこす意味がある。
柏木さんは俺に礼を言い、俺は入れ替わりに山岸を呼んだ。
緊張した面持ちで山岸が入って来る。
「おい、初めての戦場はどうだ?」
「はい、何とかやってます!」
俺は笑った。
もちろん俺はカワイイ山岸の活動の全てを把握しており、頑張っていることを知っている。
俺は山岸の緊張や精神状態を知りたかったのだが、山岸はやはり自分のことなど棚に上げ、部隊員としての状況を語った。
「お前、「朧」を着て戦場に出たそうだな」
「御存知たったんですか!」
「まあな。お前のことは心配だったから、一江に動きを把握してもらってた」
「そうなんですか! 副部長まで!」
山岸は嬉しそうに古巣での呼び方で言った。
作戦行動中は俺のことは「タイガー」、一江はコードネームの「プロトン」と呼ぶように命じている。
初めての戦場で興奮している山岸は、そのことをすっかり忘れていた。
もちろん俺も何も言わなかった。
こいつにとってはいつまでも俺は「部長」なのだ。
自分にとって「最初」のままでいる。
あの日から俺を追い掛けてここまで来た男なのだ。
「ちょっとの間、救出チームの手が足りないということで。それにナンバー11の《ハイヴ》で負傷者が多く。専門の人間が行って指示した方が良いかと」
「誰かに言われたのか?」
「いいえ、自分で志願しました。医療チームはみんなベテランですし、手は足りていましたので」
「それでお前かよ」
「すいません、力不足でしたが」
俺はまた笑った。
山岸のことは全て報告に上がっている。
「そんなことはねぇ。お前のトリアージのお陰で混乱なく負傷者を判別出来た。よくやってくれた」
「部長!」
実際に山岸は役立った。
負傷の程度を即座に判別し、治療の優先順位が混乱なく捗ったのだ。
「部長にトリアージのことは散々鍛えられましたからね」
「そうだったっけか?」
「そうですよ! 僕はあの当時は、いつこんなことが役立つのかって思ってましたけど」
「このやろう」
俺は東京での災害、特に大地震で混乱する場面を想定して、部下たちにトリアージを鍛え上げた。
俺たちが最も必要になる最悪の状態に備えてのことだ。
「お前、ちょっと前まで「朧」で飛ぶとゲロ吐いてたじゃん」
「ま、まあ。今でもちょっと吐きましたけど」
「そうなのかよ!」
こいつはそんな状態でも飛んだのか。
「でも、戦場に出たら平気になりましたよ! そんな場合じゃなかったですからね!」
「そうか」
俺は山岸の肩を叩いた。
「お前はここでも俺の最高の部下だな」
「部長!」
「お前はいつでも必死で真面目で、何があっても乗り越えてくれる。お前は本当に信頼に足る人間だ。俺はありがたいよ」
「部長!」
山岸が泣きやがった。
まあ、そういう男だ。
「これからもどうか頼む」
「はい!」
「まあ、でもよ。なるべく危険な真似はしないでくれ。お前には死んでほしくねぇ」
「部長!」
「な、よろしくな!」
「はい!」
この男は、それでも時々無茶をするのだろう。
その瞬間に自分が必要だと思ったことは躊躇しない奴だ。
そんな男を俺は戦場に連れ出してしまった。
山岸が声を殺しながら頭を下げ、部屋を出て行った。
俺のちょっとした褒め言葉をやけに嬉しそうに受け取る。
昔からずっとそうだ。
自分のことを全然ダメだと思い込んでいる。
だから上を目指す男なのだ。
マカクたちのように攫われて兵士にされた子どもたちは多かった。
また「業」が支配した中で親を喪い路頭に迷って死に掛けていた子どもも大勢いた。
俺は全てのそうした子どもを集め、帰る場所のある子どもはそこへ送った。
ほとんどいなかった。
都市以外の農村部ではまだ大人たちは何とか自給自足が出来る場所もあった。
だが都市部は壊滅的で、半数の農村部でも飢饉が始まっていた。
アラスカから余剰分の食糧を運び、また世界各国から援助を募った。
物資や人員を派遣してもらった。
御堂は逸早く海外ボランティアを募り。大勢の人間を送ってくれた。
畑には「ロボウンチ」の希釈液を散布し、次の収穫にはまともな実りがあるだろう。
当座の食糧は何とか援助で足りそうだ。
都市部の衰弱した大人たちと親を喪った子どもたちは全員アラスカへ運び、保護した。
大人たちは体調が戻ればソーメリアに戻ずつもりだ。
柏木さんが見出した400名ほどの人間は別途確保して、これからアラスカで特別な職業訓練を受けさせる。
いずれソーメリアで中心となる人間たちになるだろう。
柏木さんの能力が本当に助かる。
保護した約1万人の子どもたちは、アラスカで集団生活をさせるつもりだ。
きちんと教育を施し、将来はソーメリアで好きな道に進んで欲しい。
もちろんそのままアラスカで定住してもいい。
俺は子どもを守ってやる社会を作りたい。
それが人間としての最低条件だと考えている。
だから「トラキリー」には子どもたちを救うことを優先させたのだ。
攫って来て少年兵にするなど、最悪のことだと。
茜たちには石神家で鍛錬することを命じたが、その前に「トラキリー」が助けた子どもたちを見せた。
アラスカで専用の宿舎を与え、それぞれデュールゲリエたちが世話をしながら、近いうちに学校へ通わせる。
言葉の問題もあり、しばらくは専用の学校へ通わせることになる。
子どもたちが十分な食事を喜び、安全に暮らせる家を与えられ喜んでいる様子を茜が見た。
「お前たちがこの子たちの幸せを確保したんだ」
「はい!」
茜と葵が嬉しそうに笑った。
「可哀そうだが、俺たちに親は用意出来ない。でも、見てみろ。みんな幸せそうじゃねぇか」
「そうですね。みんな笑ってますよ」
「お前たちは今後も救助しろ。そうしたら俺が必ずその人たちの居場所を作る。だからガンガン助けろ」
「「はい!」」
茜と葵も笑った。
「じゃあ、行って来い。期待して待っているからな。お前たちは必ずやる奴だと信じている」
「「はい!」」
二人は抱き合って別れた。
あいつらならば、そう時間を掛けずに俺の命令を実行するだろう。
ソーメリアの苦難の時代は終わった。
俺の目の前で明るく笑っている子どもたちが、きっと良い国を創ってくれるだろう。
政府の崩壊したソーメリアは、「虎」の軍が占領し、当座は俺たちが統治する。
主にアフリカ諸国から幾つか反発もあったが、「業」の軍に君臨されていたソーメリアの実態が伝わると、「虎」の軍への称賛に変わって行った。
しばらくは占領状態で様々な整備が必要になるが、そう長い事でもない。
欧米からも使節団が組織され、国の整備を手伝ってくれる。
国境を越え、人類が一丸となる時代が到来するのだ。
子どもを守る世界。
そういう世界が来て欲しい。
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