富豪外科医は、モテモテだが結婚しない?

青夜

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戦神舞 Ⅴ

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 前鬼が戦車「グスタフ」を駆り、私と後鬼が同乗して道を開いた。
 妖魔の密集した塊の中で、私たちの攻撃で前方に一筋の道を貫く。
 「グスタフ」が全砲門を開き、前方の妖魔を破壊していく。
 《デモノイド》がロケットランチャーを撃って来たが、全て「グスタフ」の砲塔で四散していく。
 後ろから熾天、智天、座天、力天、権天が大きな箱を抱えながら突っ込んでいく。
 つい先ほどまで寝た切りのように弱っていた五名だった。
 それが石神様から頂いた薬品のお陰で見事に走って行く。
 五人が嬉しそうに笑っていた。
 最前の私たちの「グスタフ」を超えて行く。
 すれ違いざまに鮮やかな笑顔を我々に向けて去って行った。
 私たちは熾天たちの周囲の敵を撃破していく。
 五人は「ゲート」の中まで入り、そのまま妖魔に覆われつつ、《シャンゴ》を爆発させた。
 一気に「ゲート」の中の妖魔がいなくなる。
 我々は「ゲート」からの超高熱を「轟閃花」で押し返し、内部へ流した。

 《お見事! お見事なり熾天、智天、座天、力天、権天! 見事な散華、御照覧あれ戦神!》
 
 虎蘭様が今死んで行った者たちの名を叫んでいた。
 私たちの胸の中に熱いものが込み上げて来る。
 虎蘭様の舞が激しくなる。
 シャラランというあの澄み切った音色が一層に響き渡り聴こえて来る。

 「ゲート」から更に膨大な妖魔が噴出して来る。
 我々を覆い尽くすかのような量に、アナイアレーターたちが前面に出て、「グスタフ」の周りを囲んで行く。

 「羅刹! ミユキたちの道を拓け!」
 「おう!」

 帝釈の号令に、羅刹が10振りの「黒笛」を操りながら突入していく。
 後鬼と同じ「アスラ・スレッド」を操っての戦技だった。
 10振りの「黒笛」が爆発したように黒い閃光を周囲に伸ばし、膨大な妖魔を斬り裂いて行く。
 凄まじい戦技で前方の妖魔の密集が割れて行く。
 そして帝釈たちは尚も覆い尽くそうとする妖魔たちを押し返しながら特攻していく。
 各々が妖魔の塊に突入しながら四散して行った。
 
 《お見事なり! 弁財、大黒、吉祥、韋駄、摩利支、迦楼羅、持国、増長、広目、多聞、帝釈! 御照覧あれ、戦神! 奴共見事に散華せし! 骨肉破(や)れ果てるとも、その魂光(たまひかり)、幾永遠(とこしえ)に消えざらん!》

 アナイアレイターたちの名が虎蘭様によって呼ばれた。
 激しい戦闘の中で、虎蘭様のお声はしっかりと耳に届く。
 我々の中で最高の戦闘力を誇る羅刹が、幾億もの妖魔を斬り刻んだ。
 羅刹の周囲には妖魔との間に激しい戦闘空間が生じていた。
 しかしやがて妖魔の数が羅刹を呑み込んで、「黒笛」の剣は動かなくなった。

 《誠! 見事な戦技なり! 羅刹、天晴! 血肉の最後も敵を斬り、輝く魂は燃え盛り! お見事! 誠、お見事な最期! この眼(まなこ)に刻み付けん! もはやその魂、どこまでも! 幾久しく飛びつ流れん!》

 残る朱雀、白虎、玄武、青龍は「グスタフ」の我々を護りながら崩れて行った。
 拠点防衛能力に優れた四名だったが、膨大な妖魔を相手に散って行った。
 
 「ミユキ、行け! ブランの輝きを!」
 「朱雀! すぐに行くぞ!」

 朱雀は胴に大穴を開けられながらも、笑って絶命した。
 他の三人も身体をもぎ取られながら私たちに「行け」と言って死んだ。

 《お見事なり! 朱雀、白虎、玄武、青龍! 御照覧あれ戦神! 四士の輝き焼き付けん! 四肢は折れども魂は破(や)れず! 清き兵ここにあり! 御照覧あれ! 御照覧あれ!》

 虎蘭様の舞は一層激しくなり、その周囲には淡い白い光の珠さえ見えた。

 「ミユキ、行くぞ! 後鬼、最後までミユキを護れ!」
 「おう!」

 「グスタフ」が最高速で前進し、前鬼が「シャルア」で前方の妖魔を破壊していく。
 後鬼は「アスラ・スレッド」を駆使して群がってくる妖魔を斃していた。
 しかし妖魔の数は多く、我々の肉体も破壊されていった。
 右腕と左足を喪った前鬼が私に振り返った。

 「降りろ、俺は先に行く」
 「「おう!」」

 前鬼が笑っていた。
 
 「ミユキ、お前は美しい」
 「なに?」
 「長い付き合いになったな。ずっとそう思っていたぞ」
 「前鬼!」
 「さらばだ! またお前と共に戦いたい!」
 「私もだ、前鬼! 待っていろ、必ず行く!」
 「おう!」

 「グスタフ」が先に走り、「ゲート」の前で爆発した。
 そこへ群がる妖魔へ向かって、走った。

 《見事! 前鬼、見事なり! 御照覧あれ戦神! 清き兵は見事なり! 魂は燃ゆる、果てまでも! 永遠(とこしえ)の響き、聴きあれかし!》

 私も既に左腕が無い。
 後鬼の声が後ろで聞こえた。

 「ミユキ、行け! そのまま進め!」

 後鬼は両足を喪い、残った両腕で「アスラスレッド」を操っていた。
 だが胴体の疵も深く、すぐに妖魔に押し包まれた。

 「後鬼、さらば!」

 《見事、後鬼! お見事なり! 御照覧あれ戦神! 血肉燃え立ち身は崩れとも! 兵の戦は轟かん! 命燃え尽き魂も尽き、尚も暴れる戦魂(いくさだま)! お見事なり乎!》

 私は前鬼の躯に群がる妖魔の塊に迫った。
 両腿が折れ、膝を付いて進んだ。

 「そこをどけぇ!」

 右腕の「フーファイト」を放ちながら、全力で「轟閃花」を放った。
 眼前に紫色の光が満ち、私の意識も消えた。

 《お見事なり、ミユキ! お見事! お見事なり! 御照覧あれ、戦神! 清き兵共、最後の一兵までが見事な散り際! 御照覧あれ!》




 

 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■




 ブランたちは全て壮絶に散って行った。
 私は尚も《戦神舞》を続けた。
 最初から詞は自然に口を衝いて出た。
 戦闘が始まり舞を始めると、意識が白く輝いて戦場の全てを戦神に捧げることが出来た。

 《お見事なり! 御照覧あれ、お見事なり! 我はしっかと眼(まなこ)に刻みたり! 幾千年もこの見事、語り継ぐを約したり! お見事なり! お見事なり! 白き兵見事なり! 御照覧あれ、戦神! その腕(かいな)に白き魂を抱き給え! 白き兵、しばし安息に休まれよ! 語りし我もいつの日か 白き兵に相見えん! 楽しき盃酌み交わさん! その時までは彼岸にて、我らの戦も御照覧あれ!》

 妖魔は「ゲート」から溢れ、周囲を覆って行った。
 私の所へも群がって来るが、「常世渡理」の舞には近づけなかった。

 《石神高虎様! あなた様の清き兵はお見事に散りましたぞ! 敵は全てかたづき申す! 御照覧あれ、戦神!》

 私は「魔法陣」で「虚空」を放ち、「ゲート」から出て来た妖魔を一掃した。
 
 《石神高虎様ぁ! 万歳!》

 舞いながら、涙が止まらなかった。
 本当に勇敢に戦い散って行ったブランたち。
 全員が笑いながら逝った。

 《まっこと! お見事なり!》

 空中に飛んで舞を終え、地面に「常世渡理」を突き立てた。
 大地が白く輝き、同時に太陽が昇って来た。




 陽光が涙で滲み。世界が光で満ち溢れた。
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