富豪外科医は、モテモテだが結婚しない?

青夜

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《ラヴァーズ》

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 《オペレーション・チャイナドール》が終了し、中国全土に「虎」の軍の基地建設が始まる。
 西安基地にいた俺と紅は、その防衛任務に就くことになった。
 
 「紅、「西安基地」は結構長かったな」
 「そうだな。羽入も随分とここに慣れていたものな」
 「ああ」

 「西安基地」はロシアとの最前線の基地だ。
 石神さんも重要視して堅固な防衛設備と人員を配置している。
 その中に俺と紅も入っていた。
 俺たちは攻撃・強襲の作戦行動が多く、防衛任務に回されたのは珍しかった。
 防衛任務であっても、攻撃が予測されている場合がほとんどだ。
 そのため、予想外の展開になることが多く、紅と何度も死地を脱して来た。
 死を覚悟したことは何度もあり、その度に紅との絆が深まったような気がする。
 西安基地は最前線であり、「業」としても是非潰しておきたい基地であることが予想された。
 だから俺と紅も配置されたのだろう。
 《オペレーション・チャイナドール》では相当危機的な戦闘になったが、この「西安基地」からは誰も応援には駆り出されなかった。
 それだけ重視されている拠点なのだ。

 500万平米の広大な基地であり、「ヘッジホッグ」も5基ある。
 石神家の剣聖の方々も常に8人もいて、「業」の襲撃に備えている。
 実際大規模な襲撃が幾度もあったが、全て撃退してきた。
 旧蓮花研究所とアラスカに次いで、「マルドゥック」が配備されたのもここだった。
 ソルジャー7万人、デュールゲリエ10万体もいる。
 基地内には兵士たちと技術者たちのために、商業施設や遊戯施設もある。
 都市にいるような快適さだった。
 親しくなった人間も多い。

 「そういえば、ブランたちが逝ったそうだな」
 「ああ、勇敢な戦いだったようだ。虎蘭様が見送られた」
 「あいつらとももう会えないんだな」
 「……」

 紅が不意に俺の背中を抱いた。

 「素晴らしい人たちは先に行く。でも、お前には私がいるぞ」
 「そうだな」

 その通りだ。
 俺には紅がいる。
 最期まで一緒にいる愛する女。
 俺は紅と一緒に次の転地「重慶要塞」へ向かう準備を始めた。
 「西安基地」の親しくなった連中が、俺たちのために送別会を開いてくれた。

 「《ラヴァーズ》ともしばらく会えないか」
 「まあ、でもこんな時代だ。どっかの戦場でまた会うだろうよ」
 「そうだな、お前ら、死ぬんじゃないぞ」
 「出来ればな」

 俺と紅は石神さんから正式なコードネームを頂いた。
 だがそれが《ラヴァーズ》だなんて、ちょっと恥ずかしい。
 石神さんはノリノリだったが。
 蓮花さんまで大喜びで、俺と紅は全軍にそのコードネームを登録された。
 「ほんとの虎の穴」で就任式まで開かれた。
 蓮花さんが半泣きで俺の手を握って言った。

 「羽入さん、紅を宜しくお願いします」
 「こちらこそですよ。最高の相棒です」
 「わたくしも頑張ってますのよ?」
 「ありがとうございます」
 「性感周りは常に最新のものを整えていますから」
 「エェ!」
 
 石神さんが話を聞きつけて傍に来られた。

 「そのうちによ、スカトロも出来るようにしてやんな」
 「石神さん!」
 「お前は問題ねぇんだけどなぁ。紅は難しいからよ。でもちゃんとやるから」
 「いりませんよ!」
 「そう?」
 「はい!」

 蓮花さんが大笑いし、その後で石神さんの耳元で何かを囁いていた。

 「お前、天才かぁ!」
 「彼氏がとんでもない方でして!」
 「ワハハハハハハハハハ!」

 なんか楽しそうだ。
 紅も笑っていた。

 「羽入はああいうものも好きだったのか?」
 「冗談じゃねぇ!」

 紅は俺のためには何でもしようとしてくれる。
 多分石神さんの影響なのだろうが、時々常識的なことが取っ払われる。
 特に性的な分野では変態的なことに忌避感はない.
 俺が驚かされることもある。
 趣味趣向の許容範囲が恐ろしく広い。
 普通のことでもそうだ。
 俺は時々酒を飲むが、紅は率先してそれを楽しませる。
 俺の好みの酒を用意し、カクテルなんかも勧めて来る。
 酒に合ったつまみも作ってくれる。
 酔った俺を嫌うことは無い。
 俺は吸わないが煙草を好んでいれば、紅はそれを楽しませてくれるだろう。
 趣味があれば、紅は必ずそれを認め、楽しませてくれるだろう。
 俺も紅を楽しませたいが、紅は俺が楽しいことを楽しむ。
 一緒にドライブをし、会話を楽しむ。
 愛が純粋なのだ。
 だから俺も紅を純粋に愛している。
 以前に蓮花さんに紅の好みを聞いてみた。

 「そういうものはないんですよ。羽入さんが本当に喜ぶことを考えているだけなんです」
 「でもそれじゃ……」
 「羽入さん、愛するってそういうことじゃありませんの?」
 「え?」
 「愛する人のために何かをする。それが本当の喜びなのだと思います」
 「紅は俺を甘やかし続けるんですか?」
 「そんなことはありません。羽入さんご自身のためにならないと思えば必ずお止めします。これまでもそういうことだったんじゃないでしょうか?」
 「ああ、確かに」

 俺が酒を飲み過ぎれば紅が止めてくれた。
 鍛錬だって欠かさず俺にやらせる。
 俺の判断が間違っていれば、紅は指摘する。
 「相棒」として、紅ほど頼りになる奴はいない。

 「でも蓮花さん、俺は紅が独りでも楽しむことをやらせたいんですが」
 
 俺がそう言うと、蓮花さんが大層喜んだ。

 「まあ、それは素敵なことです。是非そうなさって下さい」
 「そうですか」
 「でもそれは超量子コンピューターを上回るということです」
 「はい?」
 「羽入さん、愛の勝利を!」
 「は、はい!」

 なんかよく分からない話になった。
 でも俺は紅を楽しませることを諦める気は無かった。
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