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第一部
23 エレナと魔法少女
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……つっ……疲れた……疲れたよ!
コーデリア様とのレベル差をまざまざと見せつけられただけの対面を終えて、殿下の執務室から講堂に戻る。
講堂は午後の授業を待つ大勢の生徒たちでガヤガヤしていて騒々しい。
出遅れてしまったみたい。
どこか空いてる席はあるかしら。
教壇の近くにストロベリーブロンドの頭が見える。
疲れ果ててしまったわたしは、スピカさんを見つけてホッとする。
よかった、隣の席が空いている。
「スピカさん、お隣いいかしら?」
「もっ……もちろんです!」
驚いた顔のスピカさんに少し戸惑いながら、席に着く。
座ると、変な沈黙が訪れる。
あ、そうか。多分身分的な問題で、わたしが話しかけないとスピカさんは話せないのか。
「席が埋まるのは早いのね。お昼に殿下にお会いしてたものだからギリギリになってしまったわ」
「そっそうなんですね。王太子殿下とお会いに……」
なんだか遅れた言い訳みたいになってしまった。
違う、もっと盛り上がる話したいのに。
コミュ症な自分がつらい。
スピカさんの戸惑う視線を感じながら、授業を受ける準備を始める。
「……あっあの……エレナ様……」
「なっ何かしら?」
話しかけてもらえたことが嬉しくなって、うわずった声になってしまった。
すました顔を繕ってスピカさんに向き直る。
「エレナ様の髪の毛が……乱れてらっしゃいます……」
こそっとスピカさんに耳打ちされる。
やだ! きっとオーウェン様を囲むご令嬢の人垣に揉まれたときだわ……
ってことは、殿下やコーデリア様にボサボサの頭でお会いしてたってこと⁈
殿下にみっともないって思われたかな。
うぅ……お兄様は気がついてたのかしら?
もし気づいていたなら、指摘してほしかった。
「ボサボサかしら?」
髪の毛を撫で付けながらスピカさんに尋ねる。
「あ、いえ、少し髪飾りが曲がってらっしゃるのと、髪の毛が絡まっていらっしゃるくらいでボサボサって程じゃ……」
「そっそう。それならよかったわ。わたしの髪の毛は絡まりやすいから侍女によくとかしてもらっていたの。これからは自分でやらないとね」
王立学園は、お坊っちゃまとお嬢様で育った貴族の子女達を王国のために働く意識を持たせるために、使用人を連れ込むのは禁止されている。
まぁ、でもそんなの結局は絵空事で、高位貴族の子女の従者達は下位貴族の出だったりするので、一緒に通って世話をさせたりしているらしい。
殿下とランス様もそうだもんね。なんなら、執務室内だけという事にはなってるけれど、侍従まで連れ込んでるし。
我が家はと言えば、お兄様の従者候補はわたしよりも一つ下だし、わたしの侍女のメリーはお母様とほぼ歳が変わらないから一緒に通いようがない。
王立学園内では自分のことは自分でする事になっている。
「あの……よければわたしがしましょうか? わたし、小さい子の髪の毛を結んであげてたから得意なんです」
わたしがカバンの中から手鏡と櫛を探してるとスピカさんはそう言って、わたしの後ろに回る。
「お願いしていいかしら」
「もちろんです」
にっこり笑ったスピカさんに櫛を渡す。
スピカさんに髪の毛をとかしてもらっていると、なにやら視線を感じる。
講堂中の生徒達にみられていた。
お兄様が、わたしが殿下の婚約者だって事で王立学園内で注目されてるって言ってたけど……
なんだか、いろんな行動を監視されてるみたいで居心地が悪い。
何を言っているかは聞こえないけど、ヒソヒソと陰口を言ってるだろうことは表情を見ればわかる。
「出来上がりましたよ」
スピカさんは得意だと言った通りに手際よく髪の毛を仕上げてくれた。
「ありがとう。可愛い髪型だわ」
わたしは周りなんて気にしないフリをして、出来る限り優雅に笑った。
コーデリア様とのレベル差をまざまざと見せつけられただけの対面を終えて、殿下の執務室から講堂に戻る。
講堂は午後の授業を待つ大勢の生徒たちでガヤガヤしていて騒々しい。
出遅れてしまったみたい。
どこか空いてる席はあるかしら。
教壇の近くにストロベリーブロンドの頭が見える。
疲れ果ててしまったわたしは、スピカさんを見つけてホッとする。
よかった、隣の席が空いている。
「スピカさん、お隣いいかしら?」
「もっ……もちろんです!」
驚いた顔のスピカさんに少し戸惑いながら、席に着く。
座ると、変な沈黙が訪れる。
あ、そうか。多分身分的な問題で、わたしが話しかけないとスピカさんは話せないのか。
「席が埋まるのは早いのね。お昼に殿下にお会いしてたものだからギリギリになってしまったわ」
「そっそうなんですね。王太子殿下とお会いに……」
なんだか遅れた言い訳みたいになってしまった。
違う、もっと盛り上がる話したいのに。
コミュ症な自分がつらい。
スピカさんの戸惑う視線を感じながら、授業を受ける準備を始める。
「……あっあの……エレナ様……」
「なっ何かしら?」
話しかけてもらえたことが嬉しくなって、うわずった声になってしまった。
すました顔を繕ってスピカさんに向き直る。
「エレナ様の髪の毛が……乱れてらっしゃいます……」
こそっとスピカさんに耳打ちされる。
やだ! きっとオーウェン様を囲むご令嬢の人垣に揉まれたときだわ……
ってことは、殿下やコーデリア様にボサボサの頭でお会いしてたってこと⁈
殿下にみっともないって思われたかな。
うぅ……お兄様は気がついてたのかしら?
もし気づいていたなら、指摘してほしかった。
「ボサボサかしら?」
髪の毛を撫で付けながらスピカさんに尋ねる。
「あ、いえ、少し髪飾りが曲がってらっしゃるのと、髪の毛が絡まっていらっしゃるくらいでボサボサって程じゃ……」
「そっそう。それならよかったわ。わたしの髪の毛は絡まりやすいから侍女によくとかしてもらっていたの。これからは自分でやらないとね」
王立学園は、お坊っちゃまとお嬢様で育った貴族の子女達を王国のために働く意識を持たせるために、使用人を連れ込むのは禁止されている。
まぁ、でもそんなの結局は絵空事で、高位貴族の子女の従者達は下位貴族の出だったりするので、一緒に通って世話をさせたりしているらしい。
殿下とランス様もそうだもんね。なんなら、執務室内だけという事にはなってるけれど、侍従まで連れ込んでるし。
我が家はと言えば、お兄様の従者候補はわたしよりも一つ下だし、わたしの侍女のメリーはお母様とほぼ歳が変わらないから一緒に通いようがない。
王立学園内では自分のことは自分でする事になっている。
「あの……よければわたしがしましょうか? わたし、小さい子の髪の毛を結んであげてたから得意なんです」
わたしがカバンの中から手鏡と櫛を探してるとスピカさんはそう言って、わたしの後ろに回る。
「お願いしていいかしら」
「もちろんです」
にっこり笑ったスピカさんに櫛を渡す。
スピカさんに髪の毛をとかしてもらっていると、なにやら視線を感じる。
講堂中の生徒達にみられていた。
お兄様が、わたしが殿下の婚約者だって事で王立学園内で注目されてるって言ってたけど……
なんだか、いろんな行動を監視されてるみたいで居心地が悪い。
何を言っているかは聞こえないけど、ヒソヒソと陰口を言ってるだろうことは表情を見ればわかる。
「出来上がりましたよ」
スピカさんは得意だと言った通りに手際よく髪の毛を仕上げてくれた。
「ありがとう。可愛い髪型だわ」
わたしは周りなんて気にしないフリをして、出来る限り優雅に笑った。
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