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第一部
42 エレナとツンデレ公爵令嬢と溺愛無自覚の騎士
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って! えっ? 口づけした⁈
慌てて殿下とお兄様に目をやる。
セーフ! 殿下の角度からは見えてない。
何故かお兄様は慌ててる。
「あぁもうダスティンのバカ! 僕が言ったのはそう言う事じゃないのに! ダスティンがコーデリア様に平手打ちされちゃったらどうしよう!」
犯人はお兄様らしい。
「……お兄様は何をアドバイスされたの?」
「えっ? コーデリア様の話す勢いに押されないかなってダスティンが心配してたから、そう言う時はロマンティックに口を塞ぐんだよ。って教えたんだけど。そう言われたからって、いくら婚約者だからって口づけしたりする? あんなに毎日突っかかられてたら、嫌われてるかもとか考えない?」
思ったことをそのまま口にするのはお兄様のいいところだけど、思いつきで喋りすぎて、思慮が浅い事があるのは、よくないところだと思う。
今だって考えなしに喋るから殿下にキスのことバレちゃったし、そもそも「ロマンティックに口を塞ぐ」なんて意味が分からない。
わたしはしょっちゅうお兄様に唇を人差し指で抑えられて「お喋りがすぎるよ可愛いレディ」って言われてるから、きっとその事を言いたいんだろうなって分かる。
けど、そんなのダスティン様に伝わるわけがない。
四阿の中を覗き見てもコーデリア様の後ろ姿はパニックになっているのが手にとるように分かる。
「うまくいかなかったらお兄様のせいよ」
お兄様を睨みつけると、何故か隣で殿下が肩を震わせて笑っている。
「大丈夫。うまくいくさ。ダスティンはやる時はやる男だ。ほら、エレナ嬢は二人の恋路を応援するつもりじゃないのかい?」
そう言って殿下はわたしに笑いかけ、コーデリア様達を見守るように勧める。
殿下は想いを募らせてるコーデリア様がダスティン様と口づけしたなんて聞いて嫌じゃないのかしら。
じっと見つめるといつもなら視線を逸らす殿下がわたしを見つめ返して笑う。恥ずかしくなったわたしは目を逸らす。
そうだ。
いまは殿下の整った顔にときめいている場合ではない。
「コーデリア様。私の話をお聞きください」
ダスティン様はコーデリア様から唇を離したと思ったら、今度はおでこを寄せて視線を逸らさないように見つめていた。
「聞いてくださいますか?」
多分声を出せないくらいパニックになっているコーデリア様が、コクコク頷いたのを確認してやっとダスティン様はコーデリア様を解放する。
「この一か月、王都内のシーワード邸と領地の屋敷に何度もお伺いしました。最初のうちは警戒していた使用人達も、通ううちに心を開きいろんな話をしてくれるようになりました。子爵の黒い噂を突き止めるのが私の役割でしたが、その役割を使用人達は皆知ってか知らずか、子爵の悪事を訴えコーデリア様が領地を治める事を願っておりました」
「……皆を不安にさせていたのね」
「不安だから訴えていたのではありません。皆が領地と領民の事を大切にされているコーデリア様を愛し、コーデリア様が家督を継ぐことを熱望しておりました。コーデリア様の愛は皆にしっかりと伝わっております」
ダスティン様はそういうとポケットから小箱を取り出しコーデリア様に開けて見せた。
「私は爵位を欲して貴女と結婚するのではありません。貴女が貴女の愛するシーワード領を治めるのを隣で夫としてお支えしたいのです。私も領地も、貴女のおそばにずっとおります。黒真珠はお好みですか?」
真っ赤になって何も言えないコーデリア様が頷くのを確認すると、ダスティン様は黒真珠のイヤリングをコーデリア様の耳に飾る。
シーワード領特産の黒真珠と自分のイメージカラーを合わせるなんて、そんなロマンチックなことダスティン様が出来るなんて思わなかった。
感心していると、したり顔の殿下と目が合う。
「ほら、ダスティンはやる時はやる男だろ?」
「……殿下が一枚かんでらっしゃるのね?」
「一枚かな?」
どこからどこまで殿下の手のひらで踊らされていたのだろう。
わたしの思いついた「いいこと」が効果を発揮する前に、殿下の作戦だけで丸く収まったみたいだった。
慌てて殿下とお兄様に目をやる。
セーフ! 殿下の角度からは見えてない。
何故かお兄様は慌ててる。
「あぁもうダスティンのバカ! 僕が言ったのはそう言う事じゃないのに! ダスティンがコーデリア様に平手打ちされちゃったらどうしよう!」
犯人はお兄様らしい。
「……お兄様は何をアドバイスされたの?」
「えっ? コーデリア様の話す勢いに押されないかなってダスティンが心配してたから、そう言う時はロマンティックに口を塞ぐんだよ。って教えたんだけど。そう言われたからって、いくら婚約者だからって口づけしたりする? あんなに毎日突っかかられてたら、嫌われてるかもとか考えない?」
思ったことをそのまま口にするのはお兄様のいいところだけど、思いつきで喋りすぎて、思慮が浅い事があるのは、よくないところだと思う。
今だって考えなしに喋るから殿下にキスのことバレちゃったし、そもそも「ロマンティックに口を塞ぐ」なんて意味が分からない。
わたしはしょっちゅうお兄様に唇を人差し指で抑えられて「お喋りがすぎるよ可愛いレディ」って言われてるから、きっとその事を言いたいんだろうなって分かる。
けど、そんなのダスティン様に伝わるわけがない。
四阿の中を覗き見てもコーデリア様の後ろ姿はパニックになっているのが手にとるように分かる。
「うまくいかなかったらお兄様のせいよ」
お兄様を睨みつけると、何故か隣で殿下が肩を震わせて笑っている。
「大丈夫。うまくいくさ。ダスティンはやる時はやる男だ。ほら、エレナ嬢は二人の恋路を応援するつもりじゃないのかい?」
そう言って殿下はわたしに笑いかけ、コーデリア様達を見守るように勧める。
殿下は想いを募らせてるコーデリア様がダスティン様と口づけしたなんて聞いて嫌じゃないのかしら。
じっと見つめるといつもなら視線を逸らす殿下がわたしを見つめ返して笑う。恥ずかしくなったわたしは目を逸らす。
そうだ。
いまは殿下の整った顔にときめいている場合ではない。
「コーデリア様。私の話をお聞きください」
ダスティン様はコーデリア様から唇を離したと思ったら、今度はおでこを寄せて視線を逸らさないように見つめていた。
「聞いてくださいますか?」
多分声を出せないくらいパニックになっているコーデリア様が、コクコク頷いたのを確認してやっとダスティン様はコーデリア様を解放する。
「この一か月、王都内のシーワード邸と領地の屋敷に何度もお伺いしました。最初のうちは警戒していた使用人達も、通ううちに心を開きいろんな話をしてくれるようになりました。子爵の黒い噂を突き止めるのが私の役割でしたが、その役割を使用人達は皆知ってか知らずか、子爵の悪事を訴えコーデリア様が領地を治める事を願っておりました」
「……皆を不安にさせていたのね」
「不安だから訴えていたのではありません。皆が領地と領民の事を大切にされているコーデリア様を愛し、コーデリア様が家督を継ぐことを熱望しておりました。コーデリア様の愛は皆にしっかりと伝わっております」
ダスティン様はそういうとポケットから小箱を取り出しコーデリア様に開けて見せた。
「私は爵位を欲して貴女と結婚するのではありません。貴女が貴女の愛するシーワード領を治めるのを隣で夫としてお支えしたいのです。私も領地も、貴女のおそばにずっとおります。黒真珠はお好みですか?」
真っ赤になって何も言えないコーデリア様が頷くのを確認すると、ダスティン様は黒真珠のイヤリングをコーデリア様の耳に飾る。
シーワード領特産の黒真珠と自分のイメージカラーを合わせるなんて、そんなロマンチックなことダスティン様が出来るなんて思わなかった。
感心していると、したり顔の殿下と目が合う。
「ほら、ダスティンはやる時はやる男だろ?」
「……殿下が一枚かんでらっしゃるのね?」
「一枚かな?」
どこからどこまで殿下の手のひらで踊らされていたのだろう。
わたしの思いついた「いいこと」が効果を発揮する前に、殿下の作戦だけで丸く収まったみたいだった。
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