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第一部
41 エレナとツンデレ公爵令嬢と溺愛無自覚の騎士
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「ダスティン。こんなところに呼び出してどういうおつもり?」
ダスティン様が新しいイヤリングをお渡しする為に、コーデリア様を中庭の 四阿に呼び出したのを陰からじっと見守る。
コーデリア様は待ち合わせ場所に到着するや否や 臨戦態勢に入っていた。
「ねぇ。エレナ。こんなところで隠れて盗み見しないでご一緒すればよくない?」
「駄目よ。お兄様ったらなにをおっしゃってるの。わたしたちが側にいたら、コーデリア様は人目を気にされるでしょ?」
「でも、だからって殿下までこんなところに隠れさせるなんて……」
「エリオット。私が勝手について来たのだからエレナ嬢の事は叱らないでやっておくれ」
四阿の壁を背もたれにして座る殿下は、わたしとお兄様に向き合ってにこやかに笑っている。
一人で隠れるのは心細いからと、お兄様に付き添ってもらおうと思ってただけなのに、殿下までいらっしゃるのは想定外だった。
だってこの作戦が成功してしまったら、殿下の思い人であるコーデリア様のお気持ちがダスティン様にあるのが誰から見てもあきらかになってしまう。
そんな決定的な場面を殿下に見せるのは躊躇する。
でも頭の片隅に、コーデリア様は殿下を好きだなんてこれっぽっちも思ってないんだから、決定的な瞬間を見て諦めてもらって、エレナに振り向いてほしいっていう気持ちもある。
ううん。これはエレナのためじゃなくて、わたしを頼って下さったコーデリア様のため。
いろんな感情がわたしを埋め尽くすして、心の整理がつかない。
わたしは四阿の中を覗く。
ダスティン様がわたしたちが隠れているのを確認して「頑張ります」と言わんばかりに頷くのが見えた。
本来察しのいいはずのコーデリア様なら、普段はそんなことしてたら近くに誰かいるって絶対に気がつくはずなのに、ダスティン様と二人きりという状況にいっぱいいっぱいで気が付いていない。
殿下には悪いけれど、まずはダスティン様がコーデリア様にイヤリングを贈り直せるように願った。
「コーデリア様! 先日は大変失礼なことをいたしました!」
ダスティン様は勢いよく頭を下げる。
「なっ! なんのことかしら! ダスティンが失礼なことなんてありすぎて、なんのことかこれっぽっちもわかりませんわ!」
コーデリア様はダスティン様の謝罪はイヤリングについての事だってわかっているはずなのに、白々しいほど下手くそな演技で、気がついてないフリをしている。
「私の勘違いでお送りしたイヤリングの事です」
「あら、勘違い? わたくしに殿下と婚約させたいのかと思いましたわ! だって青と透明の石ですもの、誰が見ても殿下の事を想像しますわ。まぁ、貴方が勘違いしたということはエレナ様に伺いましたが、だいたい街で何が流行っているのか貴方はちゃんとご存知だったの? 分かりもしないくせに、どうせ貴方はいつもの様に思い込みで冷静な判断力を無くして、周りも見ずに行動したのでしょう? 店主にでも自分がこれを婚約者に送って問題ないか尋ねればよかったのよ。貴方はそういう機転が利かないのよ! 分からないことは身分が下のものであっても尋ねればいいのに。だいたい、わたくしとの婚約だってそうだわ! 公爵として領地を治めるべき者として選ばれたはずなのに、貴方はわたしを女主人にしようとするのですもの! 未亡人ならまだしもいきなり女が家督を継ぐなんて……」
長々と憎まれ口を叩き出すコーデリア様は、ダスティン様が口を挟む余地を与えない。
ツンデレもやっぱり近くで見ると焦ったくてイライラする。
いつまでもキンキン捲し立てるコーデリア様の話に目をつぶって耳を傾けていたダスティン様が、決意したように目を見開く。
ダスティン様はコーデリア様の肩に手を置くと身をかがめて口づけをした……
ダスティン様が新しいイヤリングをお渡しする為に、コーデリア様を中庭の 四阿に呼び出したのを陰からじっと見守る。
コーデリア様は待ち合わせ場所に到着するや否や 臨戦態勢に入っていた。
「ねぇ。エレナ。こんなところで隠れて盗み見しないでご一緒すればよくない?」
「駄目よ。お兄様ったらなにをおっしゃってるの。わたしたちが側にいたら、コーデリア様は人目を気にされるでしょ?」
「でも、だからって殿下までこんなところに隠れさせるなんて……」
「エリオット。私が勝手について来たのだからエレナ嬢の事は叱らないでやっておくれ」
四阿の壁を背もたれにして座る殿下は、わたしとお兄様に向き合ってにこやかに笑っている。
一人で隠れるのは心細いからと、お兄様に付き添ってもらおうと思ってただけなのに、殿下までいらっしゃるのは想定外だった。
だってこの作戦が成功してしまったら、殿下の思い人であるコーデリア様のお気持ちがダスティン様にあるのが誰から見てもあきらかになってしまう。
そんな決定的な場面を殿下に見せるのは躊躇する。
でも頭の片隅に、コーデリア様は殿下を好きだなんてこれっぽっちも思ってないんだから、決定的な瞬間を見て諦めてもらって、エレナに振り向いてほしいっていう気持ちもある。
ううん。これはエレナのためじゃなくて、わたしを頼って下さったコーデリア様のため。
いろんな感情がわたしを埋め尽くすして、心の整理がつかない。
わたしは四阿の中を覗く。
ダスティン様がわたしたちが隠れているのを確認して「頑張ります」と言わんばかりに頷くのが見えた。
本来察しのいいはずのコーデリア様なら、普段はそんなことしてたら近くに誰かいるって絶対に気がつくはずなのに、ダスティン様と二人きりという状況にいっぱいいっぱいで気が付いていない。
殿下には悪いけれど、まずはダスティン様がコーデリア様にイヤリングを贈り直せるように願った。
「コーデリア様! 先日は大変失礼なことをいたしました!」
ダスティン様は勢いよく頭を下げる。
「なっ! なんのことかしら! ダスティンが失礼なことなんてありすぎて、なんのことかこれっぽっちもわかりませんわ!」
コーデリア様はダスティン様の謝罪はイヤリングについての事だってわかっているはずなのに、白々しいほど下手くそな演技で、気がついてないフリをしている。
「私の勘違いでお送りしたイヤリングの事です」
「あら、勘違い? わたくしに殿下と婚約させたいのかと思いましたわ! だって青と透明の石ですもの、誰が見ても殿下の事を想像しますわ。まぁ、貴方が勘違いしたということはエレナ様に伺いましたが、だいたい街で何が流行っているのか貴方はちゃんとご存知だったの? 分かりもしないくせに、どうせ貴方はいつもの様に思い込みで冷静な判断力を無くして、周りも見ずに行動したのでしょう? 店主にでも自分がこれを婚約者に送って問題ないか尋ねればよかったのよ。貴方はそういう機転が利かないのよ! 分からないことは身分が下のものであっても尋ねればいいのに。だいたい、わたくしとの婚約だってそうだわ! 公爵として領地を治めるべき者として選ばれたはずなのに、貴方はわたしを女主人にしようとするのですもの! 未亡人ならまだしもいきなり女が家督を継ぐなんて……」
長々と憎まれ口を叩き出すコーデリア様は、ダスティン様が口を挟む余地を与えない。
ツンデレもやっぱり近くで見ると焦ったくてイライラする。
いつまでもキンキン捲し立てるコーデリア様の話に目をつぶって耳を傾けていたダスティン様が、決意したように目を見開く。
ダスティン様はコーデリア様の肩に手を置くと身をかがめて口づけをした……
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