【完結】破滅フラグを回避したいのに婚約者の座は譲れません⁈─王太子殿下の婚約者に転生したみたいだけど転生先の物語がわかりません─

江崎美彩

文字の大きさ
69 / 276
第二部

19 エレナと晩餐会前の準備

しおりを挟む
 歓迎式典は昼と夜の二部制になっていて、夜になったら盛大な晩餐会なのだそうだ。

 盛大な昼の部が終わって招待客が客室に戻っても、お屋敷の中は晩餐会の準備で活気付いている。

 晩餐会に参加しない……というかできない私はお留守番。
 お気に入りのワンピースに着替え直して、ようやく人心地つく。
 始まるまではと、お兄様がわたしのお借りしてる客室に居座ってくつろいでいるのは、きっと私が寂しくないようにと、お兄様なりの配慮なんだと思う。
 そう思いながら絶え間なく喋り続けるお兄様の話を流し聞きして過ごしていると、ランス様がいらした。

「エリオット様、エレナ様。殿下が部屋に来て欲しいとの事です」

 殿下が?

 目を見合わせたわたしとお兄様はランス様に連れられて殿下のお部屋に向かった。


 
 ただでさえ豪華で豪勢な公爵家のお屋敷の中でも、飛び抜けて豪奢な扉が開いて部屋に入ると、ソファに座るように促される。
 出迎えて下さった殿下はブラウス姿でくつろいでいらした。

 ギャー!
 襟っ! 襟が、めっちゃ開いてる!
 喉仏! 首筋! 鎖骨!
 カフスもしめてないから、腕もめっちゃ見える!
 前腕も筋張ってて……いい。

 殿下はいつもはボタンというボタンは全てしっかりとめて、なんならタイもしっかり結んでいるからこんなラフなかっこ見たことない。

 くつろぐイケメンいいな。

 そりゃまぁ、さっきまで、妹にスルーされてるのも気にもとめず、くつろいで喋り続けるイケメンを眺めていたけど、お兄様はラフな格好してる時よりも、普段見ない真面目な格好の時の方がときめく。

 真面目な格好しか見た事がない殿下のラフな姿は尊いどころじゃない。 

 私が殿下のラフな姿にときめく間に、お兄様と殿下は明日からのアイラン王女のエスコートについて確認をしていた。

 そうだ。うっかり役割を忘れるところだった。

「それにしても、王女様、もうちょっとだったのに惜しかったなぁ」

 確認が終わり、お兄様がそう感想を漏らした。

「もうちょっと? なにが?」
「最初、野良猫なみに僕達に威嚇してきたから、頑張って僕にときめいてもらおうって思ったんだけど、お付きの人に連れ去られちゃったからさぁ」
「……十分ときめいていたと思うわ」
「そうかなぁ? 結局最後は殿下とお近づきになるって息巻いてたじゃない? ごめんね、エレナ。王女様が殿下に接近しようとしてたら邪魔するって約束だったのにちょっと失敗しちゃった」
「え?」
「えっ?」

 わたしが驚いてお兄様を見つめると、お兄様も驚いてわたしを見つめ返す。

「やだ! お兄様ったらわたしのために『素直で天真爛漫な向日葵みたいな可愛い王女様』だなんて調子のいい事おっしゃったの?」
「あ、それはイスファーンの人が言ってたのを少し脚色したんだよ。でも確かに素直でちょろくて可愛いかったよね。もう少し時間があったら落せたのになぁ」
「……王女様相手に失礼なことばかりおっしゃらないの! そもそも落としてどうするおつもりなの?」

 お兄様は外交のお仕事したいはずなのにこんな失礼なこと平然と言い退けて、いつかどこかの国で不敬罪で罰されないか心配だわ。

「そうだな。外交問題を起こすような事は控えるんだ」

 わたしがため息をつくと、話しているのを見守っていた殿下も同時にため息をついてお兄様にそう告げる。

「子供相手にどうもしないよ。異国で素敵な紳士に優しくされたなって思い出を胸に帰国して頂くだけだって」
「素敵な紳士は自分のこと『素敵な紳士』なんて言わないわ」
「あはは。最近エレナは言うことが厳しいね」

 わたしに何言われても気にしないお兄様はあっけらかんと笑ってる。

「エリオット。お前はそうやって寄ってくる女性に調子のいい事ばかり言ってるから、後で痛い目を見るんだ」
「別に思ったことを素直に言っているだけなんだけどな。それに、一昨年で懲りたから最低限しか社交の場は出てないでしょ」

 思い出した。

 一昨年社交界デビューしたお兄様はこの調子で茶会や舞踏会で寄ってきたご令嬢達に甘い言葉を吐き続けた。
 そのせいで年頃のご令嬢達からお兄様への情熱的な恋心書き綴った手紙がひっきりなしに届いたり、ご令嬢の親達がこぞってうちに訪問したりと、てんやわんやだったんだ。
 そのくせお兄様はまだ誰とも婚約するつもりがないからと今度は急に最低限しか社交の場に出なくなって、それならばとアカデミーで親密になろうと虎視眈々と狙うご令嬢方に暮らしていた寮に押しかけてきた。
 殿下の警護だって大変なのにお兄様が無駄に負担をかけるからと退寮させらたりして、お母様がお兄様にさっさと婚約者を決めて落ち着いてもらいたがっていた。

 イケメンはイケメンなりに苦労があるんだろうけど、お兄様のは自業自得だ。

「そういえば殿下は正装似合うね。さっき壇上で挨拶していた時にエレナも『おとぎ話の王子様がそのまま出てきたみたい』ってうっとりしてたよ」
「もう! お兄様恥ずかしいから言わないで!」

 私と殿下の冷ややかな視線を感じて、自分に都合が悪くなっているのを察したお兄様は話を逸らす。
 エレナの恥ずかしい事を暴露して話題を逸らすなんて酷い。

「はは。おとぎ話の王子様か……」

 殿下が困ったようにお兄様に笑いかける。

「殿下はおとぎ話の王子様じゃなくて、王太子殿下な事くらいはわかってるわ!」

 つい声を上げて頬を膨らましてしまい、慌てて表情を取り繕う。

 悪役令嬢にならないようにだけじゃなく、咄嗟に子供じみた振る舞いをしてしまうのもどうにかしないといけないわ。
 
しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます

宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。 さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。 中世ヨーロッパ風異世界転生。

【完結】第一王子の婚約者になりましたが、妃になるにはまだまだ先がみえません!

風見ゆうみ
恋愛
「王族に嫁いだ者は、夫を二人もつ事を義務化とする」  第二王子の婚約者である私の親友に恋をした第三王子のワガママなお願いを無効にするまでのもう一人の夫候補として思い浮かんだのは、私に思いを寄せてくれていた次期公爵。  夫候補をお願いしたことにより第一王子だけでなく次期公爵からも溺愛される事に?!  彼らを好きな令嬢やお姫様達ともひと悶着ありですが、親友と一緒に頑張ります! /「小説家になろう」で完結済みです。本作からお読みいただいてもわかるようにしておりますが、拙作の「身を引いたつもりが逆効果でした」の続編になります。 基本はヒロインが王子と次期公爵から溺愛される三角関係メインの甘めな話です。揺れるヒロインが苦手な方は、ご遠慮下さい。

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。

たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。 しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。 そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。 ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。 というか、甘やかされてません? これって、どういうことでしょう? ※後日談は激甘です。  激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。 ※小説家になろう様にも公開させて頂いております。  ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。  タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi(がっち)
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

そのご寵愛、理由が分かりません

秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。 幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに—— 「君との婚約はなかったことに」 卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り! え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー! 領地に帰ってスローライフしよう! そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて—— 「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」 ……は??? お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!? 刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり—— 気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。 でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……? 夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー! 理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。 ※毎朝6時、夕方18時更新! ※他のサイトにも掲載しています。

【完結】狂愛の第二皇子は兄の婚約者を所望する

七瀬菜々
恋愛
    兄の婚約者を手に入れたい第二皇子ジェレミーと、特に何も考えていない鈍感令嬢リリアンの執着と苦悩の物語。

見た目は子供、頭脳は大人。 公爵令嬢セリカ

しおしお
恋愛
四歳で婚約破棄された“天才幼女”―― 今や、彼女を妻にしたいと王子が三人。 そして隣国の国王まで参戦!? 史上最大の婿取り争奪戦が始まる。 リュミエール王国の公爵令嬢セリカ・ディオールは、幼い頃に王家から婚約破棄された。 理由はただひとつ。 > 「幼すぎて才能がない」 ――だが、それは歴史に残る大失策となる。 成長したセリカは、領地を空前の繁栄へ導いた“天才”として王国中から称賛される存在に。 灌漑改革、交易路の再建、魔物被害の根絶…… 彼女の功績は、王族すら遠く及ばないほど。 その名声を聞きつけ、王家はざわついた。 「セリカに婿を取らせる」 父であるディオール公爵がそう発表した瞬間―― なんと、三人の王子が同時に立候補。 ・冷静沈着な第一王子アコード ・誠実温和な第二王子セドリック ・策略家で負けず嫌いの第三王子シビック 王宮は“セリカ争奪戦”の様相を呈し、 王子たちは互いの足を引っ張り合う始末。 しかし、混乱は国内だけでは終わらなかった。 セリカの名声は国境を越え、 ついには隣国の―― 国王まで本人と結婚したいと求婚してくる。 「天才で可愛くて領地ごと嫁げる?  そんな逸材、逃す手はない!」 国家の威信を賭けた婿争奪戦は、ついに“国VS国”の大騒動へ。 当の本人であるセリカはというと―― 「わたし、お嫁に行くより……お昼寝のほうが好きなんですの」 王家が焦り、隣国がざわめき、世界が動く。 しかしセリカだけはマイペースにスイーツを作り、お昼寝し、領地を救い続ける。 これは―― 婚約破棄された天才令嬢が、 王国どころか国家間の争奪戦を巻き起こしながら 自由奔放に世界を変えてしまう物語。

処理中です...